又吉直樹のおすすめ本5選!『火花』だけじゃない、絶対に読んでほしい書籍

更新:2018.9.23

お笑い芸人でありながら、小説『火花』で芥川賞を受賞し、作家としても活動している又吉直樹。1度彼の作品を読んだことがある人は、圧倒的な情景描写と、どこか物悲しくも笑えてしまうその文章力に驚いたのではないでしょうか。この記事では、そんな彼の著作のなかから、話題になった『火花』以外でおすすめの作品を紹介していきます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

又吉直樹とは

 

1980年に大阪で生まれた又吉直樹。お笑いコンビ「ピース」のボケ担当であり、小説家でもあります。著作の『火花』が芥川賞を受賞し、大きな話題にもなりました。

小学生のころからサッカーを始め、高校時代は強豪校に所属し、大阪府代表としてインターハイにも出場した経験があります。

しかし又吉はその後、サッカーではなくお笑いの道に進もうと考えます。ちなみに大阪出身にもかかわらず、吉本興行の養成所であるNSCの東京校に入ったのは、サッカー部の監督が吉本興業に顔の利く人物で、大学推薦を蹴ったことが発覚するのを恐れたからだそうです。

パーマをかけたウェーブの長髪を肩に垂らし、古着や和服を着用することも多い又吉直樹。吉本興行のおしゃれ芸人ランキングで1位をとったり、日本ベストメガネドレッサー賞の芸人部門を受賞したりと、ファッション面での評価も高いタレントです。
 

読書が趣味で、数千冊の本を所有。特に太宰治や芥川龍之介などを好んでいます。執筆活動を始めたのは、芸人としてデビューして間もないころ。広報誌でコラムを書いたことがきっかけでした。その後は舞台の脚本を書いたり、放送作家のせきしろと共同で自由律俳句の本を発表したり、有名作家の作品の帯を務めたりと活動の幅を広げていきます。

初めての単著は2011年の『第2図書係補佐』。2015年には『火花』で純文学デビューをし、同年芥川賞を受賞しました。『火花』は累計発行部数が230万部を超えるベストセラーとなり、歴代の芥川賞受賞作品のなかでもトップとなっています。

 

又吉直樹が本を語る『夜を乗り越える』

 

2016年に発表された、又吉直樹初めての新書です。自他ともに認める読書家である彼が、少年時代から読んできた本を振り返り、「なぜ本を読むのか」「文学の何がおもしろいのか」「人間とは何か」を考える内容になっています。

さらに、ベストセラー小説『火花』の創作秘話や作品に込めた思いも掲載。又吉のファンだけでなく、読書家必見の一冊です。

 

著者
又吉 直樹
出版日
2016-06-01

 

「死にたくなるほど苦しい夜には、これは次に楽しいことがある時までのフリなのだと信じるようにしている。のどが渇いている時のほうが、水は美味い。忙しい時の方が、休日が嬉しい。苦しい人生の方がたとえ一瞬だとしても、誰よりも重みのある幸福感を感受できると信じている。」(『夜を乗り越える』から引用)

この言葉に共感を覚える人も少なくないのではないでしょうか。人生において苦しい局面に陥った時、又吉にとってそれでも夜を乗り越えさせてくれる力をくれたのが本でした。

作品のなかの登場人物が迷い、葛藤したすえにくだした決断が、生きるうえで答えのない問題の何かを教えてくれます。本を読むことは、賢くなるためでも知識をつけるためでもなく、次の1歩を踏み出すための手段であることを教えてくれる一冊です。

本好きの又吉がおすすめの本を紹介『第2図書係補佐』

 

又吉直樹が自身にまつわるエピソードを語るエッセイ集で、その内容に即した本を紹介していく構成になっています。

選んでいる作品は太宰治や尾崎放哉、江戸川乱歩など近代小説がメイン。書評をすることを目的としているのではなく、ただ又吉の生活のなかには常に本があり、本を愛していることが伝わる内容。それでいて並の書評よりも実際にその作品を読んでみたい気持ちにさせてくれるのが、彼の才能なのではないでしょうか。

 

著者
又吉 直樹
出版日
2011-11-23

 

エピソードを読んでみると、まず又吉の思考の広がり方が常人では考えられない範囲におよんでいることがわかるでしょう。ひとつの出来事に対してよくここまで……と感心してしまいます。

これでもかとネガティブな可能性を考え、自虐性にも富んでいるのですが、なぜかチャレンジ精神にもあふれている又吉。だからこそ嫌味なく哀愁が漂い、クスリと笑えてしまうのです。

芸人でもなく作家でもない、等身大の又吉直樹が垣間見える一冊です。

 

又吉直樹が東京での経験を語るエッセイ集『東京百景』

 

高校を卒業し、大阪から東京に出てきた又吉直樹。本書を書き終えた時には32歳になっていました。

そんな彼が東京のゆかりの地を100ピックアップし、その場所にちなんだ文章をつづったエッセイ集です。タイトルは太宰治の『東京八景』からインスパイアされたものです。

 

著者
又吉 直樹
出版日
2013-08-26

 

芸人としてブレイクするまでの下積み時代。仕事もお金もなく、時間だけはたくさんあるまさに青春と呼べる日々を、又吉直樹は東京でどのように過ごしていたのでしょうか。「自意識」というワードが頻出し、物事を深く深く掘り下げていく彼の思考に触れることができます。

読者の間で絶賛されている「池尻大橋の小さな部屋」は、又吉の過去の恋愛のお話。不器用で切なすぎるやりとりに、胸が締め付けられるでしょう。

『火花』や『劇場』の原点ともなるエピソードも隋書にみられるので、両作を読んだことのある方はより楽しめるのではないでしょうか。

 

又吉直樹とせきしろの自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』

 

放送作家で著作も多数発表しているせきしろと、又吉直樹の2人による自由律俳句集です。

自由律俳句とは、五・七・五の形式にとらわれず自由な韻律で詠む俳句のこと。季語や切れ字などを用いず、口語調なことも特徴です。

 

著者
["せきしろ", "又吉 直樹"]
出版日
2013-10-10

 

「遅刻が確定した電車で読書」
「防水機能をそこまで信用するのか」
「醤油差しを倒すまでは幸せだった」
「やはり原宿で降りたか」(『カキフライが無いなら来なかった』から引用)

たった一行の言葉ですが、ありありと情景が思い浮かぶのが秀逸。両者の目の付け所が光ります。

合間には日常を切り取った写真も挿入され、それがまた私たちの日々の言動のなかに、滑稽なことがいかに詰まっているのかを思い知らせてくれるでしょう。

プレゼントにもおすすめの一冊。続編として『まさかジープでくるとは』も発表されているので、あわせてお楽しみください。

又吉直樹の恋愛小説『劇場』

 

『火花』で芥川賞を受賞した後に、初めて発表された長編小説です。実は『火花』よりも本作のほうを先に書き始めていたそうで、完成まで実に足かけ3年ほど。

劇団を主宰している主人公の永田と、沙希という女性の2人の関係を描いた、恋愛小説です。

 

著者
又吉 直樹
出版日
2017-05-11

 

「この人なら、自分のことを理解してくれるのではないかと思った。」と、永田はとある画廊で見かけた沙希に話しかけます。又吉の過去の作品を読んだことがある人は、この出会い方に彼の姿をダブらせるのではないでしょうか。

沙希に出会って救われた永田ですが、自身をとりまく環境が変わるにつれて、沙希との関係も変わっていってしまうのです。純粋すぎるがゆえに言ってはいけないことを言ってしまったり、自分のことを受け入れてくれるその優しさに恐怖を抱いたり。

読者にとって永田のとる言動は、歯がゆく、それでいて理解ができるからこそ苦しい。どんどんすれ違い傷つけあっていく2人の様子に、打ちのめされながらもページをめくる手が止まりません。

又吉直樹いわく、「自分の書きたいことを書いたうえで、なおかつ人に伝わるようにすることを意識した」とのこと。『火花』を読んで「難しい」と思った人にもぜひ手にとっていただきたい作品です。