5分でわかるライチョウ!飛ぶのが苦手な鳥?生態や保護活動などを解説

更新:2021.12.10

丸みを帯びた体と、トコトコと地上を歩く姿が可愛らしいライチョウ。あまり危機感を抱かせない様子とは裏腹に、絶滅を危ぶまれている鳥でもあるのです。この記事では、そんな彼らの生態や生息地、名前の由来、保護活動などについて解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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ライチョウは飛ぶのが苦手?鳴き声や体の特徴など生態を紹介

キジ科ライチョウ属に分類される鳥で、体長は40cm弱、翼開長は60cmほどの大きさをしています。北半球の中緯度以上の地域に分布し、日本はその南限です。

夏羽の腹部は白く、背中はオスが黒と白のまだら、メスが黄褐色と黒の細かい縞模様をしています。また秋羽は焦げ茶色、冬羽は白色と年に3回も換羽することで知られています。これは気温の変化に応じて変わっているのではなく、日照時間にホルモンが反応して換羽しているそうです。

ずんぐりとした丸い体型で、ここから想像できるように、飛ぶことはあまり得意ではありません。飛ぶのは縄張り争いや外敵に襲われた際などの限られた場面のみで、普段の移動は歩いておこないます。

餌は地上性の植物の芽や茎、蟻やクモなどの昆虫を食べ、巣も背の低いハイマツなどの下に落ち葉や草を敷き詰めて作ります。ほとんどの時間を地上で過ごすため、周囲の環境に溶け込めるような色に換羽することで、外敵から身を守っているのでしょう。

 

ライチョウの日本での生息地と生息数

生息地の環境によって「森林性」「草原性」「林縁性」「ツンドラ性」と分類されていて、日本にいる種類は主に標高2000m以上の高山地帯に生息する「ツンドラ性」です。

彼らは、氷河時代に大陸から南下してきて、その後海が広がって大陸間に隔たりができたため戻れなくなり、取り残されて定着した「氷河時代遺存種」だと考えられています。

飛騨山脈や赤石山脈といった日本アルプスの一部の地域でのみ姿を見ることができ、1955年には国の特別天然記念物に指定されました。

これらの場所を訪れると比較的見つけやすいそうで、登山者にとっては馴染みのある鳥です。ただ個体数は年々減少傾向にあり、日本に生息する数は1980年代の時点で3000羽、2000年代には2000羽になっていると推定されています。

 

ライチョウという名前の由来

ライチョウが庶民の間に広く知られるようになったのは、江戸時代に入ってからです。呼び名が定着したのもこの頃だとされています。

当時、雷の鳴るような荒れた天候の時に活発に活動していたことから「雷の鳥」=「ライチョウ」と名付けられたと考えられていますが、はっきりとした記録は残っていません。

また鎌倉時代の後期に後鳥羽院が、「しら山の 松の木陰にかくろひて やすらにすめるらいの鳥かな」という歌を詠んでいることから、すでにこの時期にはライチョウという名前が付けられていた可能性もあります。

日本には古くから、高い山には神様が住んでいるという山岳信仰がありました。上述した歌も、修験のために白山に登った者がライチョウの姿を見たという話が後鳥羽院の耳に入り、詠まれたものだと考えられています。そのため「神様の鳥」=「霊鳥(れいちょう)」が変化してライチョウとなったとする説もあるのです。

 

ライチョウの保護活動は?絶滅危惧種に指定されている

環境省のレッドリストで「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」とされる絶滅危惧IB類に指定されています。

その最大の原因となっているのは、天敵となるキツネやカラス、また餌場が競合しているサルやシカなどの動物が高山に進出してきたことです。もともと彼らとライチョウの生息域は被っていませんでしたが、登山に訪れた人間が捨てたゴミを狙い、山に入ってくるようになったと考えられています。

さらにライチョウは、1度に産む卵の数が平均で5~6個と少ないうえ、抱卵はメスのみでおこなう習性があります。短時間とはいえ食事で巣を離れる時間があるため、その隙を狙ってカラスなどに卵や雛を捕食されてしまうことがあるのです。雛の生存率が低いことも、個体数が増えない理由のひとつでしょう。

環境省では保護増殖事業にもとづき、現況調査やケージ内飼育、外敵となる侵入動物の捕獲、餌のコケモモなどの成育を妨げるイネ科の植物の排除などをおこなっています。また上野動物園や富山市ファミリーパークなども、連携して増殖事業に取り組んでいるそうです。

長野県や富山県などの自治体も、有志のボランティアを募ってゴミの排除や保護柵の設置、登山者への注意喚起などの活動をしています。

 

生態と保護活動について学べる1冊

著者
中村 浩志
出版日
2013-08-02

ライチョウの生態や人との関わりなどの歴史を紹介するとともに、保護活動の内容や必要性を綴った1冊です。

作者は日本鳥学会の会長を務めたこともある、中村浩志です。信州大学の教授に職に就いていた時に、長野県から岐阜県にまたがる乗鞍岳でライチョウの調査に取り組んでいました。本書では、そのなかで得られた情報や人工飼育について詳しく解説しています。

乗鞍岳でどれだけの数の卵が産卵され、そのうちの何割が孵化し、さらにそこからどれだけの個体が1歳まで生きることができたのか、生存率などの詳細な情報を知ることができるでしょう。

また、日本に生息するライチョウは人間に対する警戒心がほとんどないそうです。これについては、日本人が彼らを神の使いとして大切に扱ってきたからだと言及しています。

ライチョウも含め、高山の自然そのものを守りたいという視点で書かれており、人間と野生動物の関わり方や保護について考えるきっかけになる内容です。
 

ライチョウを1年間追った写真集

著者
出版日
2018-02-08

富山県にある立山の登山拠点にあたる「立山室堂」に暮らすライチョウの1年を追った写真集です。

まだ雪深い4月、繁殖期の5月、雛が姿を現す7月、巣立ちの10月、そして巣立った雛が初めて迎える冬と、雛の成長を見ながらライチョウの暮らしを知ることができます。

親鳥に甘える姿や、気持ちよさそうに砂浴びをしている姿などは、なんとも表情豊かです。あまり人を警戒していない無邪気な性格もみてとれるでしょう。

ただ、タイトルのとおりころころとした姿に癒される一方で、彼らと彼らが暮らす大自然を守らなけらばいけないことも忘れてはいけません。巻末にある保護活動の項目も含めて目をとおしてもらいたい1冊です。

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