下岡晃(Analogfish / m社)が選ぶ「旅に出たくなる本」
はじめまして。Analogfishというバンドで歌っています。下岡晃です。今回、ホンシェルジュさんでこうしてオススメの本について文章のようなものを書かせてもらうことになりました。何がわかってるわけでもない若輩者ですがよろしくお願いします。

これを書いている今、僕は一人北海道にいて東京へ帰るために札幌から千歳空港へ向かう電車の中にいます。車内は混んでいて隣のおじさんは眠っていて(手のビニール袋にお酒らしい空き瓶があるから酔ったんだろう)、隣のビジネスマンは同僚と話しながらパソコンのスクリーンを眺めている。

若かりし頃の旅といえば…の一冊

バンドは旅をする。今まで結構いろんなところに行ってきたし、これからも行くだろう。バンドをはじめた頃(もう20年近く前)、そういう生活を夢に見ていました。小澤征爾さんの『僕の音楽武者修行』は指揮者になるため貨物船でラビット(国産スクーターの名車、見たらわかる人、結構いると思う)と、裸一貫フランスへ旅立つ若かりし小澤さんの旅と青春の記録。小沢さんのこと好きになること請け合い。

著者
小沢征爾
出版日

バイクで旅といえば…の一冊

バイクで旅といえば、高校で親元を離れる時に母親から贈ってもらった浮谷東次郎さんの『がむしゃら1500キロ』も。戦後間もない日本で、外国製のバイク買ってもらえる高校生ってどんだけ金持ちなのよ、とも思いましたが、とても高校生らしいいろんな悩みも恥ずかしいほど見てとれてグッとくるし、当時の日本の空気を感じることができます。クライドラーというメーカーもこの本で初めて知りました。浮谷さんはその後レーサーとして未来を嘱望されてましたが、レース中の事故で若くして亡くなりました。

著者
浮谷 東次郎
出版日

高校時代の思い出といえば…の一冊

高校時代で思い出したのが落合信彦さんの『アメリカよ!あめりかよ!』。落合さんがアメリカに留学する話なんですが(この人もまた貨物船で)、途中から落合さんが得意の空手で悪いやつをバンバン懲らしめるという……。どこまで本当なのか「思ってたのと違う」けど痛快な一冊。

著者
落合 信彦
出版日

どうやら千歳空港に着きました。

サン=テグジュペリの生の言葉

窓の外には雲海が広がっています。飛行機はどうも苦手です。『星の王子様』で有名なサン=テグジュペリの『人間の土地』はまだ飛行機が今のように完成された乗り物になる前の時代、出来たての航路を郵便を積んで命をかけて飛んだ飛行機乗り、サン=テグジュペリの生の言葉がつづられています。生きることをもう一度考えさせられる一冊。ゴーっという風切り音の中の静寂が聴こえてきます。

著者
サン=テグジュペリ
出版日
1955-04-12

静けさを湛えた冒険の物語

同じ種類、静けさを思い出すのは堀江謙一さんの『太平洋ひとりぼっち』。小さなヨットで太平洋を横断した堀江謙一さんの旅の記録。いつ読んだかわからないくらい昔に読んだのですが、フカのくだりとか、ずっと心に絵として残っています。この本が好きな人にはグレートジャーニーで有名な関野吉晴さんの『縄文号とパクール号の航海』という映画もオススメです。

著者
堀江 謙一
出版日

旅、冒険に関わらず移動して新しい景色に触れることで自分の中で何かが変わっていくことってあります。自分がどこにも行けない時は本で追体験するのも楽しいんではないでしょうか。というわけで今回は、「若いうちに読んでおきたい、旅に出たくなる本」とかどうでしょうか。ではまた。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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