パラリンピックの歴史が5分でわかる!目的や競技、「パラ」の意味などを解説

更新:2021.12.10

近年、オリンピックとともに注目されるようになってきた「パラリンピック」。いつから始まったのかご存知でしょうか。この記事では、歴史や開催の目的、「パラ」の意味、陸上や水泳の特別なルールなどを解説していきます。あわせてより理解が深まる関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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パラリンピックの歴史と概要 いつから始まった?

 

パラリンピックは、ドイツのボンに本部を置く国際パラリンピック委員会(IPC:International Paralympic Committee)が主催する、身体障がい者スポーツの総合競技大会です。

1948年にロンドンでオリンピックの開会式がおこなわれたのと同じ日に、イギリスのストーク・マンデビル病院にて、第二次世界大戦で負傷した兵士たちのリハビリとして開催された競技大会が起源だとされています。

これはドイツ出身の医師ルートヴィヒ・グットマンが提唱したもので、入院患者向けの競技大会として毎年開催されていました。

やがて1952年には国際大会となり、1960年にはグットマンが会長となって「国際ストーク・マンデビル大会委員会」が結成されます。

1988年のソウル大会から、「パラリンピック」が正式名称となり、1989年にはIPCが設立されて、オリンピックと同一の都市で開催することとなりました。

シンボルマークは、2004年のアテネ大会から使用されている3代目。世界の国旗でもっとも多く使われているという赤・青・緑の3色を用い、人間のもっとも大切な「心(スピリット)」「体(ボディ)」「魂(マインド)」を表しています。

パラリンピックの目的は

 

パラリンピックの原点は、戦争で負傷した兵士たちの社会復帰を進めるためのリハビリで、その目的は「福祉」でした。

IPCは、スポーツを通じて障がいのある人にとってよりよい共生社会を実現することを理念とし、「勇気(負の感情に向き合い、克服しようとする精神力)」、「強い意志(難題に対し諦めることなく己の限界を突破しようとする力)」、「インスピレーション(心を揺さぶり、駆り立てる力)」、「公平(多様性を認める力)」の4つの価値を重視しています。

ただオリンピックと同様に、パラリンピックもまた障がい者スポーツの最高峰とみなされるようになり、福祉的な側面よりも競技的な側面に注目が集まるようになっていきました。

日本でも、福祉の観点から長らく厚生労働省の管轄下にありましたが、2014年からはスポーツ振興の観点から文部科学省へ移管されました。

1988年のソウル大会以降はオリンピックと同一の開催地となったことから、パラリンピックへの注目度もより一層高まっています。

障がい者スポーツへの認知度向上などの成果があった反面、オリンピックと同様にメダルを獲得できるかどうかに関心が集まることから、ドーピングや競技用車椅子などの高額化、障がい者を装った健常者の出場などの問題点も指摘されているのが現状です。

パラリンピックならではの競技ルールを紹介!陸上や水泳など

 

2020年に開催される東京パラリンピックでは、22競技539種目が実施されることが決定しました。そのうち陸上が168種目、水泳が146種目と、2競技だけで60%近くを占めていて、花形競技といえるでしょう。

陸上では、視覚障がい、車椅子や義足などの下肢障がいなど、障がいの種類や程度によって細かくグループ分けがされています。車椅子競技では「レーサー」と呼ばれる専用の車椅子を使うのですが、下り坂では時速50kmものスピードが出ることもあり、かなりの迫力です。

また視覚障がい者は「ガイドランナー」と呼ばれる伴走者と一緒に走ったり、跳躍や投てきなどの種目では「コーラー」と呼ばれる人の指示で競技をしたりしています。

水泳でも、障がいの種類や程度によって細かくグループ分けがされています。飛び込みスタートが困難な選手は水中スタートが認められている点や、ゴールタッチやターンの際に壁にぶつかるのを防ぐため、コーチが「タッピングバー」という棒を使って壁の接近を知らせる点などが一般の競技と異なる部分です。

その他、パラリンピックの原点であるストーク・マンデビル病院からおこなわれているアーチェリーや、スピード感あふれる車椅子バスケットボール、座ったままおこなうシッティングバレーボールなども、近年人気を集めています。

2020年の東京大会では、新たにバドミントンが正式種目として採用されました。SU5クラス(上肢機能障がいなど)で世界ランキング1位になった鈴木亜弥子選手に期待がかかっています。

パラリンピックの「パラ」とはどんな意味?

 

「パラリンピック」という名称はもともと、1964年の東京オリンピックにあわせて開催された、第13回国際ストーク・マンデビル競技大会の愛称でした。

下半身麻痺者を示す「パラプレジア」という言葉と、「オリンピック」を掛け合わせた造語です。

1985年、IOCが「パラリンピック」を正式な大会名として使用することを認め、この時点でパラブレジア以外の障がい者も数多く参加していたことから、意味をギリシャ語の「パラ」と「オリンピック」を掛け合わせたものに変更しました。

ギリシャ語の「パラ」は英語の「パラレル」の語源となった言葉で、「もうひとつの」という意味があります。1988年のソウル大会から正式名称となり、この時にさかのぼって1960年のストーク・マンデビル競技大会が第1回パラリンピックとされました。

 

もっと知りたいパラリンピック!学びのつまったオススメ本をご紹介

読んでおきたい、基礎知識が学べる一冊

著者
藤田 紀昭
出版日
2016-08-01

 

障がい者スポーツ研究の第一人者である藤田紀昭がまとめた、パラリンピックの入門書です。

各競技のルールや注目すべき点、過去の大会におけるエピソード、東京パラリンピックの見どころまで網羅し、わかりやすく解説しています。

オリンピックと比べると、まだまだ知られていないことも多いパラリンピック。歴史を知ると驚くことばかりです。

東京で開催されることをきっかけに興味をもった、という方にぴったりの一冊。本書を読めば、より一層楽しむことができるでしょう。

パラリンピックで活躍した陸上選手の物語

著者
佐藤 真海
出版日
2012-12-04

 

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を決定づけた招致最終プレゼンにて、プレゼンターを務めた佐藤真海の作品です。

佐藤は20歳の時に骨肉腫で右足下を切断することになりましたが、「神様は、その人に乗り越えられない試練は与えない」という母親の言葉を信じ、陸上の走り幅跳びでアテネ、北京、ロンドンと3大会に出場しました。

体の一部を失うという絶望に直面し、スポーツに出会い、アスリートとなった彼女の原点が詰まった一冊です。すべての漢字にルビがふってあり、子どもでも手に取りやすい作品でしょう。

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