『アドルフに告ぐ』をおすすめするための4つのこと。魅力をネタバレ解説!

更新:2018.11.18 作成:2018.11.18

「漫画の神様」の異名で知られる、手塚治虫。今回は、彼の作品の1つである『アドルフに告ぐ』をご紹介いたします。 この作品は、作者自身が体験した戦争の話も元にしており、その当時のドイツのナチスと、日本の神戸を舞台にして作られています。神戸は、手塚治虫にとって名残の地だそうです。 この記事では、そんな本作について徹底解説!スマホの漫画アプリでも無料で読むことができるので、そちらもどうぞ。

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『アドルフに告ぐ』が面白いので、おすすめしたい!無料で読める!【あらすじ】

峠草平は記者の仕事の一環で、ドイツへオリンピックを見にいきます。その流れでドイツに住む弟・勲を訪ねることになるのですが、何やら勲は重要な話があると言ってくるのです。

しかし草平が勲のもとへついた時、そこにあったのは、何者かによって殺害された弟の遺体でした。それを見た草平は弟の仇をとるために、ドイツと日本を駆け回ることになります。

時を同じくして、日本ではユダヤ人のアドルフ・カミルと、ドイツと日本のハーフであるアドルフ・カウフマンが、互いの友情を強め合っていました。しかし、それは思わぬ形でそれはしだいに歪んでいくこととなるのです。

著者
手塚 治虫
出版日
2010-06-11
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登場人物を紹介!

登場人物を紹介!
出典:『アドルフに告ぐ』1巻

 

ここでは本作の登場人物についてご紹介します。

  • 峠草平(とうげ そうへい)

    本作の狂言回し(語り手)。弟の仇をうつためにヒットラーの出生文書を探して、それを世界に公表するために奔走します。

    記者として働き出す前は、大学の陸上選手でした。考えるよりも、行動する方が得意なタイプで、よく無茶をしますが、大体の場合は女性に助けられます。
  • アドルフ・ヒットラー

    ドイツの、ナチス総統。ユダヤ人を極度に軽蔑し、部下を洗脳的に指導していきます。本作では、孤独な心境の描写が見受けられる人物です。
  • アドルフ・カウフマン

    ナチ党の幹部育成学校である、ドイツの「アドルフ・ヒトラー・シューレ」に入学するまでは、日本の神戸で育っています。

    ドイツ人の父と日本人の母を持ち、裕福な生活を送っていましたが、日本人の子供によっていじめに合います。それを助けてくれたのが、アドルフ・カミル。このことをきっかけに、彼と親友になります。

    しかし、やがてカウフマンは、ナチスの洗脳と、ユダヤ人の友人や愛する人への気持ちの間で苦悩することとなるのです。
  • アドルフ・カミル

    神戸でパン屋を営む一家の元に生まれた、純粋なユダヤ人。見た目はドイツ人ですが性格は生粋の日本人で、関西弁で喋ります。元来偏見の少ない性格で、カウフマンとも親友になりました。ドイツから亡命したエリザ・ゲルトハイマーをかくまい、後に婚約します。

    彼は幼いときに、ヒットラーにはユダヤ人の血が流れていると知ってしまいます。その事実によって、彼は大人になっても人生を振り回わされてしまうことになるのです。
  • 峠勲(とうげ いさお)

    草平の弟。ドイツのベルリン大学に留学していました。

    ドイツへやってきた兄に、重要な話をしたいと連絡をしたのを最後に、遺体で発見されます。彼は生前、共産主義活動をおこなっていました。その時にヒットラーの出生文書を手に入れていたことが原因で、ナチスの元で動くゲシュタポ(プロイセン州警察)によって暗殺されてしまいます。

    後に登場するゲシュタポの極東諜報部長であるアセチレン・ランプの娘、ローザと恋仲でした。
  • アセチレン・ランプ

    ヒットラーの出生文書を極秘に回収すべく、草平を執拗に嗅ぎ回ります。後に草平に犯されて心労で自殺した娘、ローザの仇としても、彼を追いかけるようになります。
  • 子城典子(こしろ のりこ)

    小学校の教師。峠勲の恩師であり、カミルとも知り合いです。

    戦争反対側の人間であったことから、政府にアカ(共産主義者)だと疑われ、拷問にかけられました。ヒットラーの出生文書に関して、大きな手助けをします。
  • 由季江(ゆきえ)

    カウフマンの母。

    登場時は「由季江・カウフマン」ですが、夫の死後に草平と再婚するので「峠由季江」となります。息子がナチスに染まっていっても愛し続けましたが、後に彼を勘当してしまいました。

    戦後は、草平との娘を産んだ直後に死亡します。
  • 仁川(にがわ)刑事

    草平が捕まった際に知り合います。草平から真実を聞かされた後、彼の無実を証明し、その後も何かと世話を焼くお人好しな性格です。しかし、最期は……。
  • 仁川三重子(にがわ みえこ)

    仁川刑事の娘。草平と同居することになった時、最初は彼を男として意識していました。後に本多芳男とお互いに一目惚れし、本当の恋を知るようになります。しかし、芳男の死によりショックを受け、家出をしました。終盤に、居酒屋を営む女性・お桂の元で働いていることがわかります。
  • 本多芳男(ほんだ よしお)

    大佐の一人息子でしたが、当時の政府には反感を持っていました。そのため、父の持つ重要な情報などを国際スパイ組織に流してしまいます。三重子と恋仲になった後、そのスパイ行動がばれてしまい、父に射殺されてしまいました。

    その時ヒットラーの出生文書を隠し持っていましたが、カウフマンに見つけ出されてしまいます。

 

見所1:引き込まれる導入部!

最初に登場する草平は、自分で、私は主人公ではなく狂言回しだと告げています。ここで、3人のアドルフの物語であると言っているので、読者にアドルフ……ヒットラーが3人!?と疑問に思わせるのです。

さらに本作は、草平の弟である勲が何者かに殺されてしまうという、衝撃的な展開からスタートします。さらに、その事件を証拠づけるものが消し去られてしまうのです。それは勲が生活していた痕跡から遺体に至るまで、何もかもでした。

著者
手塚 治虫
出版日
2010-07-09

一方、日本では芸者・絹子が殺されるという事件が発生。この2つの事件は、まったく別の場所で起きていながら、ヒットラーの出生文書に関して共通点があるのです。

勲は、その出生文書そのものを持っていました。また絹子は、出生文書が隠された石像のうちの1つを所有していたのです。その石像は、世界に5つあるのみ。そのうち4つはフェイクで、1つだけが本物であり、出生文書が隠されているという仕組みなのです。そして、勲もこれを持っていました。

このように、シリアスでミステリアスな展開が、物語の序盤で広がっていきます。

この時点では、まさかそこに一国を左右するほどのものが存在しているとは、登場人物たちは夢にも思っていなかったでしょう。

この数々の謎や疑問で、読者を虜にしていくのです。

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見所2:歴史の激流、その中に巻き込まれる3人それぞれの物語に引き込まれる!

見所2:歴史の激流、その中に巻き込まれる3人それぞれの物語に引き込まれる!
出典:『アドルフに告ぐ』3巻

 

この物語に激流起こした張本人、アドルフ・ヒットラー。

ユダヤ人差別に疑問を抱き、幼いながらも本気でそれに染まることを否定していたのに、最終的にナチスに染められてしまう、アドルフ・カウフマン。

そして、気のよい性格で、日本文化を愛し、ユダヤに誇りを持って生きたユダヤ人であるアドルフ・カミル……彼らはその人生のなかで、何度も決断を迫られます。

ヒットラーは自分の力でドイツの頂点に立ち、何千人もの部下を従えていながら、常に孤独を背負って生きていました。

またカウフマンは、ユダヤ人との友情を誓いながらも「アドルフ・ヒトラー・シューレ」に入学。あるきっかけから友人がユダヤ人であることに対して、怒りを持つようになります。ここが彼の劇的な心情の変化であり、血に汚れた人生の始まりとなるのです。

そしてカミルは、ユダヤの敵ともいえるカウフマンにも親しくするような人間でした。しかし後にユダヤ帝国を築くため、アラブ民族との戦いで冷酷な一面を見せていくようになるのです。

歴史の波に飲み込めれていく彼らの運命とは……。それぞれの人生が時代の荒波に揉まれて変化していく様子に引き込まれます。

 

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見所3:フィクションとノンフィクションがおりまざる、巧妙な展開!

見所3:フィクションとノンフィクションがおりまざる、巧妙な展開!
出典:『アドルフに告ぐ』1巻

本作は1936年のベルリン・オリンピックから、1983年の47年間を描いており、その間の史実通りに、物語は進んでいきます。ナチスの興亡、ユダヤ人大量虐殺、第二次世界大戦、原爆の投下……また、「アドルフ・ヒトラー・シューレ」など実際に存在していた施設も、本作には登場しています。

ここで、もっとも重要となってくるのは、「ヒットラーはユダヤ人の血を受け継いでいる」ということ。

これは実際に存在した説の1つで、手塚治虫はこれを本作に取り入れました。しかし2018年現在では、この説はほとんど否定されています。ですので、この点に関しては、フィクションであると認識されることが多いようです。

実際のヒットラーがどうだったのであれ、この「フィクション」を取り入れることで、本作にドラマが生まれす。

作中では、ヒットラーがユダヤ人であるという事実があることで、彼の政権に苦しめられたユダヤ人たちや、当時のナチスに疑問を持つ共産主義者たちは、分かり合えるかもしれないという希望を見出します。しかし草平のように、それに巻き込まれた人間の肉親は、わけもわからず、それを恨むことになるのです。

そんななかでナチスを狙っている国家や、国力を上げようと躍起になる国は、その事実の証拠を手に入れるために大金をつぎ込みます。

実在しないフィクションとして登場するカウフマンは、その事実を知っても、ヒットラーに忠誠を誓い続けることになりました。彼はこの時代に生きる、正にヒットラーにとって「思い通りの手駒」として生きた人間なのです。

一方、同じく架空の人物であるカミルは、日本を愛し、ユダヤ人であることに誇りを持つ優しい人物でした。しかし後にユダヤ人の土地を守るため、アラブ民族と戦うことになります。彼もまた争いのなかで生まれた恨みに、支配されてしまったのです。

このような様々な人の思惑が渦巻く状況のなかで、ヒットラー自身も、孤独感や不安、緊張が増すことになり、巧みにフィクションを取り入れることによって、登場人物それぞれの苦悩が生まれ、物語を彩っていくのです。

見所4:『アドルフに告ぐ』の結末とは?タイトルの意味にも繋がる?

史実どおり、ナチスは敗退。ヒットラーは亡くなり、1つの歴史の幕がおりました。

しかし、物語はまだ終わりません。

カウフマンはナチスの残党狩りから逃れ、やがてアラブ人と結婚し、家庭を持ちます。しかし、それもユダヤ人によるアラブ人への攻撃で、妻子を失ってしまうのです。

そのユダヤ人の指揮官をしていたのが、かつての親友アドルフ・カミルでした。カウフマンはそれを知るなり、復讐を誓います。反対するアラブ人の仲間に反撃までして、彼が配ったビラには、「アドルフに告ぐ」とプリントされていました。

そして彼らは、最後の決闘を始めるのです。

著者
手塚 治虫
出版日
2010-08-12

その数年後、草平は、彼の書く本にアドルフたちを登場させるために、カミルの墓参りにやってきます。その時には彼はもう年を取っており、カミルの妻であるエリザも、息子と2人で静かに暮らしているようでした。そして彼は、元記者の意地で、この本を書き上げたいと、その題名を2人に告げるのです。

かつての親友同士の決闘、そして年老いた草平……物語は、どのように終わりを告げるのでしょうか。その結末が気になる方は、ぜひ本作をご覧ください。

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