天真爛漫で気遣い上手な少女・明日小路(あけびこみち)の学校生活を描いた『明日ちゃんのセーラー服』。可愛い少女たちの爽やかな青春の日々が眩しく描かれている本作の見所を紹介していきます。ネタバレも含まれますので、苦手な方はご注意ください。 スマホの無料アプリでも読むことができますので、気になった方はそちらもどうぞ。
廃校寸前、学年に1人きりしか生徒がいない小学校に通っていた明日小路(あけび こみち)。
彼女はセーラー服を着ることを夢見て、家から通える距離にある私立の名門女子中に入学を果たします。しかし彼女が入学する頃にはなんと制服はブレザーに変わっており、入学式ではただ1人セーラー服という状態に……。
そんな状況に思い悩むものの、彼女が夢にまで見たセーラー服。学校から特別に許可をもらい、胸を張ってセーラー服での登校を決めた彼女は、持ち前の明るさと可愛らしさでどんどんクラスに馴染み、初めてのお友だちを作っていくのです。
- 著者
- 博
- 出版日
- 2017-04-19
『明日ちゃんのセーラー服』はWEBマガジンである「となりのヤングジャンプ」にて2019年9月現在も連載中です。
本作の魅力は、なんといっても登場人物たちの可愛らしさです。
主人公の小路と、妹の花緒(かお)、そしてクラスメイトたち……本作に登場するキャラクター全員が、非常に可愛らしく描かれています。もちろん容姿も可愛らしいのですが、みんな純粋で素直、悪い子がいない、という点において大変魅力的な作品です。
転校生でもないのに、1人セーラー服で通うような子がいても、それを奇異の目で見るわけでも、好奇の目で見るわけでもありません。何を着ていても、「小路」という存在として受け入れてくれます。
彼女の愛想の良さなどもありますが、その姿はまさに純真無垢な少女という感じがします。
- 著者
- 博
- 出版日
- 2017-10-19
母が作ってくれたセーラー服だからと、胸を張って学校へ行ける小路も、優しい心を持っていて可愛いのですが、クラスメイトたちも負けず劣らず、穏やかな心の持ち主。
申し訳ないことをしてしまった、と思っても、ぐずぐずとそれを引きずるのではなく、すぐに明るく持ち直したり、態度が素っ気なく見えても相手のことをきちんと慮った行動をしたりする、魅力的な人物たちです。
また作者・博によって、少女たちの描写がとても丁寧に描かれているのもポイントです。服を着替えるシーンや、見せ場となるシーンにはセリフなどを入れず、彼女たちの姿だけを描いています。また、どこか写実的に揺れ動く服が、より「着用感」を出しており、どこかフェチズムを刺激されるかのようです。
中学生がもつ独特の肉づきもきちんと表現されていて、実体があるような感覚を得られるのも魅力的です。
周りは田んぼだらけ、小学校では6年間1人学級という生活を送っていた、明日小路。大好きなアイドルが着ていたセーラー服に憧れ、かつて母が卒業した私立蠟梅学園(ろうばいがくえん)への入学を決意します。
結果は見事合格。仕立ての仕事をしている母にセーラー服を作ってもらい、期待に胸を弾ませて入学式へと向かうのですが……制服はブレザーへと変わっていました。
しかし現在は違うものの、間違いなく昔の蠟梅の制服であること、母が手作りしたこと、厳しい条件をクリアした唯一の奨学金対象者であることから、セーラー服での登校を許可されたのでした。
- 著者
- 博
- 出版日
- 2017-04-19
セーラー服に憧れを持ち、そのモチベーションだけで勉強も何もかも頑張ってきたことを考えると、許可が出たとはいえ精神的ショックは大きいもの。それでも、「母が作ってくれた」「憧れのセーラー」ということで、彼女は覚悟を決めます。
思い悩み覚悟を決めるシーンは、彼女と家族の絆がうかがえるので、ぜひ注目したいシーンです。
また、初登校日の様子も、見所の1つ。道の途中で髪をポニーテールに結わくのですが、その動作が単純な流れのコマではなく、きちんと1枚1枚の絵に描き起こされているような描写なのです。輪に髪を通し、サラサラつやつやとうねるその様子は、独特な美しさと、滑らかさがあります。
さらに、その後に走って汗を流しながら駆けていく姿は、1人セーラーで行く気合い、新しい生活への期待などが見て取られ、少女の初々しさも感じられるでしょう。新しい道を見つけ、宝探しのように学校を目指す姿は、まるで冒険をしているような楽しさも感じられます。
人工物のようなものや、高い建物などがほぼ見当たらない景色から、人の手で整えられた美しい校舎に風景が映ることで、今までとはまるで違う生活を想像させるワクワク感が得られますよ。
明るく可愛らしく、クラスのみんなから人気を集める小路。特に、席の関係で一緒に給食を食べる3人とは、とても仲良しになっていきます。彼女たちはそれぞれの観点で小路に注目し、小路はそんなクラスメイトたちの視線を集めながら、依然変わらず、朗らかに学生生活を送っていました。
セーラー服より、小路そのものの華やかさに惹かれているクラスの面々。1番最初に話し、隣の席でもある木崎江利花(きざき えりか)は、特に小路の独特な感性と、飾らない性格に好感を持っているようでした。
- 著者
- 博
- 出版日
- 2017-10-19
小路も江利花のことは好きなので、まずは家に招待することを決意。しかし、今までお友だちを作れる環境にいなかった彼女は、家に誘うことがなかなかできず、ついに金曜日を迎えてしまいます。
初めてのお友だちを家に呼ぶのは、なかなか勇気がいりますよね。それにしても、先週の日曜日に決意してから4日間も言えないというのは、いつも明るく前向きな彼女らしくないですね。彼女なら臆することなく誘いそうな気もしますが、やはり「友だち」は特別なのでしょう。1人挙動不審な小路の様子は、珍しくで可愛いので、ぜひ注目したいところです。
最終的に、小路は土曜日に一緒に遊ぶ約束を取り付けることに成功するのですが、そのときの彼女と江利花の様子が、また非常に可愛らしいもの。指切りの約束をしようとするものの、お互い同じほうの手ばかりを出してしまい、指切りをすることができません。
初めての約束に、小路はテンパってしまったようですね。そんな様子を察して、江利花は彼女の両手を取ると、耳元に顔を近づけて声をかけました。大きな声を出せない図書室だからとった行動のようですが、美しい少女が2人頬を寄せ合っている姿というのは、なんともいえない美しさがあります。
小路と一緒にいるときの江利花は一層きれいで、女子校らしさが詰まったシーン。この2人の話は、ぜひ見ておきたいところですね。
それぞれ入部する部活も決まった面々。クラスメイトの谷川景(たにがわ けい)の部活写真に協力した小路は、ついつい大好きなアイドルを真似たポージングをしてしまいます。そんな可愛らしく飾られた小路に対し、景は素のままの彼女を要求します。
一方、江利花は同じ給食班の兎原透子(うさぎはら とうこ)、古城智乃(こじょう ともの)に連れられ、茶道部の部室できれいな着物姿に変身していました。
夏が近づいてきたある日、学校は衣替えのシーズンを迎えることに。
小路は冬服同様、母手作りのセーラー服を着ることになりました。学校指定の制服もワンピースのようで非常に可愛いので、小路の半袖セーラーとともに注目したいですね。
明日ちゃんのセーラー服 3 (ヤングジャンプコミックス)
2018年05月18日
しかし、せっかく衣替えしたもののすでに体育祭の練習に入っていることから、体操服姿が少々多くなります。ただ小路は「応援」という、練習している人を応援するという役を買って出たので、体操着でもポンポン所持のヘソ出しスタイル。可愛い彼女のポニーテールヘソ出しチアに、ぜひ注目してみてください。
それぞれが体育祭の種目練習を頑張るなか、江利花は1人ピアノの練習をしていました。後夜祭で小路が演劇部として踊ることを知り、ピアノを弾きたいと思ったのです。彼女が、自分の伴奏でセーラー服の赤いリボンを揺らして踊る小路を想像しているシーンは、ぜひ見ておきたい場面になっています。
そこのシーンだけ赤い色が使われていて、漫画の紙も薄く赤みがかっているので、彼女と一緒に小路の踊っている姿をありありと想像することができますよ。楽しそうな江利花の様子にも、注視したいですね。
また本巻では、小学校で6年間でお世話になった、まこ先生が再登場するのも注目どころ。
体育祭の練習をするために体育館を貸してほしいと頼むのですが、予定していた6人よりも多いクラスメイトが体育館に集まったときのまこ先生の涙する姿から、1人ぼっちだった小路への愛情が見てとれます。
ついに待ちに待った体育祭本番。今まで同級生がいなかった小路にとって、大勢で参加する行事というのは、非常に新鮮なものです。いつでも全力な彼女の、本領が発揮されます。
その他にも、プール掃除や縁日の場面など、まさに夏一色。浴衣に水着にと、さまざまな服に身を包む少女たちが見られるのも魅力的な4巻です。
- 著者
- 博
- 出版日
- 2018-11-19
本巻での見所は、なんといっても体育祭の後夜祭でしょう。
後夜祭に向けて、踊りを練習してきた小路。ついに、その本番の時がやってきました。この彼女が踊る描写が、なんとも素晴らしいのです。
そのダイナミックかつ繊細な絵は、今にも実際に動き出しそうなほどのリアリティーを感じます。髪の毛1本1本まで丁寧に描かれている点にも注目です。その絵の美しさは、漫画の域を超えて、もはや画集を見ているような気持ちにさせられるでしょう。
そして、その描写に重なるように、体育祭のハイライトシーンが描かれるのです。
踊る小路、ステージの彼女を応援する少女たち、体育祭のハイライト……平和な日常を描いてきた本作ですが、少女たちの成長を見てきたという思いがあふれ、読んでいて思わず胸が熱くなるはずです。あまりにも美しく、ノスタルジックな後夜祭の場面に、ぜひご注目ください。
その他にも、縁日など夏の要素満点の4巻。夕立に打たれて笑いながら走る場面などは、実際に経験したことがある読者の方も多いのではないでしょうか。
キラキラと輝く、可愛い少女たちから、ますます目が離せません。
同級生がいる環境で、その生活を謳歌する少女の姿を描いた『明日ちゃんのセーラー服』。小路の明るさや可愛さ、みんなの彼女に対する愛が、心を温める作品となっています。みんなに愛されている小路の姿を見ると、読んでいるほうまで胸がいっぱいになりますよ。