社会派ミステリーやファンタジー、時代小説までさまざまなジャンルの作品を生みだす作家、宮部みゆき。直木賞をはじめ多くの文学賞を受賞していて、ファンだという方も多いのではないでしょうか。この記事では、そんな宮部みゆきが好きな方におすすめの作品をご紹介していきます。
3ヶ月前に自宅で殺されていたアサミという女のことを調べるため、ケンヤという若者が、生前に彼女と親交のあった6人のもとを訪ねてまわります。
その相手は、アサミと不倫関係にあった上司、アサミに元カレをとられたと思い込んでいる隣人、ヤクザの男、アサミを借金のカタとして売った母親、刑事、そして弁護士。
物語はすべて会話で進んでいき、徐々に殺人事件の謎が浮かびあがってきます。
- 著者
- 京極 夏彦
- 出版日
- 2012-11-15
なんといっても、タイトルが秀逸。この「死ねばいいのに」は、ケンヤが口にするセリフです。6人はそれぞれに自分本位な性格をしていて、死んだアサミのことなどどうでもいとばかりに自分の不幸を切々と語ります。そして最後に、まだ若者であるケンヤからバッサリと「死ねばいいのに」と言われるのです。
京極夏彦というと、ぎっしりと文字が詰まっている難解な文章や、怪異の世界というイメージを抱いている人も多いかもしれません。しかし実は、現代ものやSF、ギャグ混じりのものも発表しているのです。
本作は、会話から謎を読み解いていくタイプの現代ミステリー。難しい表現もなく、初心者でも読みやすい作品だといえるでしょう。
ある日突然、何者かに両親を殺害されてしまった3人の兄妹。事件から14年が経ちもうすぐ時効を迎えようとしていますが、犯人はいまだわかっていません。彼らは結婚詐欺をしながら生計をたて、「絶対に犯人に復讐しよう」と、お互いのことだけを信じて生きていました。
ある時、詐欺の対象として目を付けたのは、洋食チェーン店の御曹司です。しかし彼の父親の顔が、両親が殺害された日に家から出てきた人物に似ていると気付き……。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
2008年にドラマ化、2009年には「本屋大賞」にノミネートされ、大ヒットした作品です。執筆当時は殺人罪の時効が廃止される前でした。
復讐のために生きていた3人ですが、ようやく犯人の足がかりを見つけます。完璧に計画をたてるものの、なんと妹が仇の息子に恋をしてしまうのです。
切なすぎる兄妹愛と、ラストのどんでん返しまで一気読みさせる展開。構成や登場人物にも無駄がありません。ミステリーと人間ドラマの両方を満喫できる作品でしょう。
主人公は、ニュース番組の映像編集を担当している遠藤瑤子という女性。絶対的な自信と編集技術をもっていて、生放送のギリギリまで完成を粘り、上司のチェックをすり抜けながら虚偽すれすれの映像を放送していました。もちろん周りからはよく思われていませんが、彼女の作る映像は視聴者の興味をあおり、番組の高視聴率を支えていたのです。
そんな瑤子はある日、郵政官僚を名乗る人物から1本の告発テープを渡されます。その内容は、とある弁護士の転落事故が、郵政省の汚職に絡んでいるというものでした。
瑤子はさっそくこのテープを編集し、あたかも郵政官僚の麻生公彦という人物が犯人だと思わせるような映像を作るのです。そしていつものように上司の目をかいくぐり、放送。ところが、送られてきたテープが実は虚偽のものだったということがわかり、彼女は窮地に立たされてしまいました。
やがて瑤子のものには、彼女のプライベートを隠し撮りしたテープが送られるようになり……。
- 著者
- 野沢 尚
- 出版日
- 2000-07-15
作者の野沢尚は、脚本家としても活躍していた人物。自身も身を置くテレビ業界の闇を描いている本作は、「江戸川乱歩賞」を受賞しました。
主人公の瑤子は、自身の主観性に絶対の自信をもっていて、視聴者の心を動かすのに自分の力が必要だと疑っていません。それゆえ彼女のつくる映像は、主観が混ざっているにもかかわらず、見る者からは客観性のあるものとしてとらえられているのです。
何が事実で、何が真実なのか。そして瑤子の姿を隠し撮りしていた人物とはいったい誰だったのでしょうか。
本所・深川にある古道具屋の跡取り息子、長五郎。道具の目利きができないため、父親が亡くなると店を一膳酒場に改装してしまいました。さらに独り身の長五郎は店を開ける時間が遅くなりがちなため、夜8時ごろから朝方まで夜通し営業する「夜鳴きめし屋」になっていくのです。
深夜に営業する彼の店には、さまざまな客が来店。宮部みゆきの時代小説が好きな方におすすめの、江戸情緒あふれる居酒屋を舞台にした連作短編集です。
- 著者
- 宇江佐 真理
- 出版日
- 2014-09-11
全編をとおして、長五郎の幼馴染で芸者をしているみさ吉が登場。遠慮や迷い、意地などが相まって、もどかしい恋物語が描かれています。大きな事件が起こるわけではないですが、彼らと、店にやってくる江戸の市井の人々のちょっとした日常が折り重なり、深みを増しているのです。
物語に登場する食べ物も、おにぎりや卵焼きなど、素朴ながらもおいしそう。あたたかい気持ちになれる人情話です。
ヤクザにだまされて1260万円の借金を負ってしまった雅人。コンピューターに詳しい友人の道郎とともに、借金を返すために偽札作りを始めます。
当初はまったくの素人だったものの、徐々に腕をあげ、ATMを欺けるように。しかしそんな彼らをヤクザが放っておくわけがありません。
試行錯誤をくり返しながら偽札を作っていく過程と、ヤクザたちとの攻防戦が楽しめるクライムサスペンスです。
- 著者
- 真保 裕一
- 出版日
- 1999-05-14
偽札作りはもちろん犯罪ですが、執念を燃やし真剣に取り組む2人の姿はつい応援をしたくなってしまうもの。また紙の素材やインク、印刷技術などがかなり詳細に記されているので、どんどんと知識と技術をつけて腕をあげていく様子を追体験できます。
頭脳戦とともに、ヤクザとの駆け引きや肉体戦も描かれ、スピーディーに展開していきます。最後は二転三転してあっと驚く結末に。長編ですが一気読み確実の一冊です。