『人は見た目が100パーセント』の大久保ヒロミによる、イケてる!? 節約生活漫画、『節約ロック』。2019年1月にはKAT-TUN・上田竜也主演でドラマ化される注目作です。30歳、貯金なし、彼女にフラれた松本タカオが、さまざまな節約テクニックを試みるストーリーです。 ここでは、キャラ、節約術、名言など、いろいろな角度から本作の面白さに迫ります。
会社勤めや子育てで忙しい女性たちから支持を集める漫画家・大久保ヒロミ。主な代表作は『人は見た目が100パーセント』『あかちゃんのドレイ。』です。そんな人気漫画家が放つ注目作『節約ロック』。
2018年現在1巻のみ刊行している本作は、「イケてる」をはき違え、浪費癖のせいで彼女にフラれた松本タカオの節約生活を、コメディ要素たっぷりにテンポよく描いています。
- 著者
- 大久保 ヒロミ
- 出版日
- 2018-01-23
主人公は、松本タカオ(30)。広告代理店勤務、貯金なし。浪費癖が原因で、彼女にフラれたばかりです。ロックを愛する浪費家の彼には、どことなく哀愁が漂います。
浪費のせいでお金も食べるものもなく、家にあるのはお茶、豆乳、醤油……液体だけ。食べるものがないと嘆く彼の目に、豆乳のパッケージの「豆腐もできる」という文字が飛び込んできます。この豆乳をきっかけに、彼は節約に目覚めるのでした。
節約は、かっこわるいことじゃない。節約して貯金をして、彼女を迎えにいこう。
そう決意したタカオは、食費、光熱費、医療費、あらゆる生活費を浮かせる方法を実施します。しかし、おバカな性格ゆえに、時にはやりすぎることも。
愛のために始めた節約術は、果たして実を結ぶのでしょうか。読めばお金が貯まるかもしれない、試してみたくなる節約術と、笑いが詰まった作品です。
タカオは、彼女にフラれたことで節約に目覚めます。彼女が別れを告げたのは、30歳で貯金もないうえに、浪費家の彼には将来性がないという理由からでした。自分の生活を見直すまでの彼の生き方は、あまりに置かれた環境とバランスが取れていないものだったのです。
ロックな生き方に憧れ、ギターにお金を費やす彼のダメンズっぷりには思わず笑ってしまうでしょう。まずは「ロックとは」「イケてるとは」をはき違えて突き進んできた彼の、ダメ男確定な生き方をご紹介します。
彼女にフラれた翌日、給料日前日の全財産は138円。30代ともなれば、普通は将来のことを考えて、ある程度貯金をしているもの。しかし彼は貯金どころか、その日の晩ご飯さえもないありさまだったのです。
その原因は、彼の生活を振り返ってみれば歴然。自炊はせずに外食メイン、もちろんお酒も飲みます。光熱費や通信費も抑えることはしません。そして、疲れた日にはタクシーで帰宅することも。
もっとも大きな要因は、頻繁にギターを買ったりバンド仲間との飲み会をしたりしていることでしょう。お金がなくなれば、彼女に借りればいいと思っていたのです。一時の楽しみのためにお金を使うのが、彼のやり方でした。
彼に言わせれば、「節約なんてロックじゃねえ!!」なのです。
単純な考えで、ダメな生き方をしているタカオ。それは実は、面白くない仕事や知り合いのリア充アピールで、疲弊した生活をごまかすためなのでした。しかし彼女との別れという制裁を受け、これまでのダメなおこないを省みます。そして、節約に対する考え方も変わってくるのです。
そうなってくると、読者としては彼のダメさに呆れ、笑いつつも、だんだん応援したくなるはず。節約術も、時に行き過ぎてしまう単純な彼のロックな生き方を、ぜひご覧ください。
タカオの節約術は、湯葉丼を手作りすることから始まります。無調整豆乳を煮て、上澄みをすくっていくだけの、簡単湯葉です。
そんな手軽に試せる方法から、そこまでやらなきゃダメ!?というヘビーなものまで、数々の節約術が登場する本作。知っていれば得をするかもしれない、タカオが実践する節約術をご紹介します。
彼がまず見直すことにしたのは、光熱費です。これまで使い放題だった電気ですが、ちょっと気を配るだけで節約することができます。電気はこまめに消す、使わないコンセントは抜く、たったこれだけです。
そして彼のアイディア節電、暖房便座じゃないので便座カバーをつける。履かなくなった靴下を便座にはめるだけの簡単節電です。かっこいい・かっこ悪いは、この際気にしないのが、ロックなのでしょう。
また、電気の契約アンペアを下げるのも有効です。ひとり暮らしなら、20Aで十分なのだそう。契約アンペア数によって基本料金が変わるので、見直してみるといいかもしれません。
タカオは決意の15Aで生活しようとしますが、これは耐えられるかどうか賭けです。なぜならブレーカーがすぐに落ちてしまい、生活がままならないから。エアコンと電子レンジを同時に使えば落ちる、テレビとトイレの電気で落ちる。
節約は「程よく」が大事なようです。ほかにもスポンジで毛玉取りができる、病院にお薬手帳を持っていくとお得など、すぐにチャレンジできるものがたくさん取り上げられています。いかにして休日を0円で過ごすか、いかに飲み代を抑えるかなど、笑えて役立つ知識の数々をお試しあれ。
節約術だけでなく、タカオを中心とした人間関係も見所のひとつです。独身サラリーマンでロックを愛する主人公、松本タカオ。そして、浪費癖のあるlあれに愛想を尽かして別れた、マキコ。
彼女とヨリを戻そうと奮闘するタカオですが、ここで彼女に忍び寄る人物が現れます。
稲葉コウタは、25歳の癒し系イケメン。タカオは、マキコがSNSに投稿した彼との2ショット写真を見て、ショックを受けます。そして一方的にライバル視するようになるのです。
男くさいタカオとは対照的に、スマートな稲葉。彼のSNSには美容に関する投稿が多く、ファンもいるようです。しかも、タカオの取引先になった関係で話してみると、なんと節約が趣味で、そのテクニックはプロ級という事実が発覚。
イケメンで節約家で、美容メーカーに勤めているという彼の登場に、タカオの闘争心に火がつくのもうなずけます。まだタカオが一方的にライバルとして見ているだけですが、今後三角関係になんらかの動きがあるかもしれません。
また、職場の敏腕CMクリエイターや、常識知らずで規格外な後輩など、タカオを惑わせる個性豊かな登場人物も期待通りに笑わせてくれるでしょう。
稲葉を交えたラブコメ要素、タカオと稲葉の節約術、そして職場の人々の型破りな言動など、登場人物の関係性における見所が満載です。2巻以降、これらがどう動くのかが気になります。
ロック×節約という異色の組み合わせから成る本作では、思わず唸るようなパワーワードが多数飛び出します。ちょっとおバカなタカオが生み出すのは名言?迷言?どちらでしょうか。
笑えてためになる言葉たちをご紹介します。
- 著者
- 大久保 ヒロミ
- 出版日
- 2018-01-23
気がつけばオレは… 家に帰って豆乳を煮ていた……
(『節約ロック』1巻より引用)
彼女にフラれて傷心のタカオが、豆乳で湯葉を作ろうとしているときの言葉です。投げやりな気持ちになっていた時に、偶然見かけた飲食店のメニューにあった湯葉丼。それを家で作ってみることにした彼は、お金をかけずとも心が満たされるということに気づきます。
このことが、節約に魅せられていくきっかけになったのでした。ついさっきまで自暴自棄になっていたのに、ページをめくると突然豆乳を煮ているタカオに笑ってしまうはずです。
オレの中の生理現象がすべて騒いでいる!
(『節約ロック』1巻より引用)
一見すると、名言風なタカオのセリフ。「オレの中の生理現象がすべて騒いでいる!」「オレは今 なんの電源を入れるべきなんだ!」と続きます。電気料金を節約しようと契約Aを下げたため、同時に家電を使えなくなってしまった時のセリフです。
ブレーカーが落ちてしまった暗闇の中、トイレか、寒さか、お腹もすいた、テレビも見たい、と真剣に葛藤する彼は、一見の価値ありでしょう。節約も楽じゃありません。
赤子なのに……誰もかわいがってくれない……
(『節約ロック』1巻より引用)
タカオは、お金もおかずも彼女も、何も持っていない自分を嘆きます。そして何も持っていない自身を、赤子にたとえるのです。30代のオジサンが何を言ってるんだ、と言いたくなりますね。
しかし、発想を転換して「赤子なのに働いてえらい」「赤子なのにひとりで生活できる」と考えると生きやすくなるかも、という可能性を秘めたライフハック的名言です。
節約は ロックだ!!
(『節約ロック』1巻より引用)
タカオは「節約なんてロックじゃない」と言っていたので、このセリフは革命的。節約しないのがかっこいいと思っていた彼の価値観が、180度変わった瞬間のセリフなのです。
0円で食事ができたことで、心の貯金箱にお金が貯まる音を聞きながら、彼の中で節約とロックが結びつきます。これ以降、節約術を試すたびに「ロック!!」をくり出すようになるのです。物語のなかでもっとも重要な、彼ならではの名言といえるでしょう。
くだらないと思うようなことでも、彼はいたって真剣なので、よけいに面白く感じます。
ページをめくるたびといっていいほどのハイペースで、たくさんの名言?が出てくるので、必ず心に刺さる言葉があるはずです。
いかがでしたか?ドラマ化で注目を集める『節約ロック』は、人物、セリフ、節約テクニックと見所多数です。
2018年現在、1巻までの刊行なので、気楽に読むことができるのではないでしょうか。タカオのおバカでロックな節約の日々を、ぜひご覧ください。
ひらめきを生む本
書店員をはじめ、さまざまな本好きのコンシェルジュに、「ひらめき」というお題で本を紹介していただきます。