スリル満点、人間くささ満点の刑事小説シリーズ。主人公・碓氷は、あらゆる味方とともに大きな事件を解決していくことになります。一見普通な彼が、周りの能力を引き出しながら捜査を進めていく様子に、思わず読む手が止まらないでしょう。 この記事では、シリーズそれぞれのあらすじから結末まで、詳しく解説します。2度に渡ってドラマ化された注目作。ぜひ最後までご覧ください。
このシリーズは、警視庁捜査一課である碓氷刑事が、周りと協力しながら事件を解決していく物語です。
2017年4月、2018年11月と、2度に渡ってテレビドラマ化されてきました。主演は、約12年ぶりに刑事役を務めたユースケサンタマリア。そして、その他のキャストに相武紗季、滝藤賢一、三浦貴大といった豪華キャストが出演しました。
警視庁捜査一課・碓氷弘一1 - 触発 - 新装版 (中公文庫)
2016年05月19日
そんな本作は、警察小説としてはもちろんのこと、社会派小説としても面白いところがポイント。よく読んでみると、執筆当時に起きた大きな事件が下敷きになっているとわかる描写が多々見られます。
事件と捜査のスリル、そして主人公・碓氷の人間くささが本作の見所です。
作者は、ミステリー作品の評価が高い、今野敏。警察小説をはじめ、多くの作品がシリーズ化している人気作家です。
爆弾魔を主とした事件を、碓氷が解決していく本巻。たまたま夜勤中であった碓氷のもとに、1件の予告電話が入ります。それは、地下鉄に爆弾を仕掛けたという内容でした。
一応所轄に対応を求めましたが、本心ではただのいたずら電話だと思っていた碓氷。しかし、その爆弾は本当に仕掛けられており、実際に爆破事件が発生してしまったのです。取り返しのつかないミスを犯してしまった彼は、汚名返上とばかりに爆弾魔を追っていきます。
その犯人は、元軍人。爆弾のプロが作成し、仕掛けたものだったのです。爆弾のプロには、こっちも爆弾のプロだということで、政府の上層部から岸辺和也という陸上自衛隊三等陸曹が送り込まれてきました。彼は、自衛隊が誇る爆弾処理のスペシャリストです。
碓氷、そして岸辺は、第2、第3の爆発を防ぐことができるのでしょうか。
警視庁捜査一課・碓氷弘一1 - 触発 - 新装版 (中公文庫)
2016年05月19日
本巻の見所は、なんといっても本当の黒幕が別に存在することです。そして、その黒幕の正体は、意外な人物でした。予想外の展開に裏切られ、そして、ある意味で納得させられてしまうでしょう。
その黒幕の正体とは、いったい誰だったのでしょうか。ちなみに、その黒幕は小説の随所で、自分が黒幕であるというメッセージを発しています。それに気づくことができれば、より一層面白く読むことができるでしょう。
ぜひ、その存在は誰なのか考えながら読んでみてください。
秋葉原での事件を題材にした一冊。
ロシアのマフィアが、秋葉原で大規模な窃盗をおこなおうと考えました。日本の家電を、海外で売りさばくのです。碓氷は、ファティマ、そして、ベーリという工作員とともに、ロシアマフィアの弾圧に乗り込みます。
そんななかロシアマフィアは、別の件で秋葉原にきていたヤクザと、激しい銃撃戦をくり広げるのです。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2016-05-19
この作品の見所は、なんといってもファティマとベーリの行動です。2人は、それぞれいくつもの戦場を経験している手練れではありますが、本来事件を解決をする義務はありません。しかし彼らには、この事件に協力する理由があったのです。
もともと、ファティマのある行動のせいで、ロシアマフィアとヤクザが対立することになってしまい、その結果として激しい銃撃戦になっていたのでした。
落とし前をつけようと、ロシアマフィア弾圧に乗り込むファティマとベーリ。ファティマは余裕の表情を見せていましたが、ロシアマフィアに捕らわれてしまいます。絶対絶命のピンチ。
しかし、このピンチを救ったのは、たまたま秋葉原にきていたある1人の少年だったのです。彼はいったい何者なのでしょう。そして、彼らの運命とは。
短時間にさまざまな事件が起きて展開していく、疾走感のある展開。サクサク読み進めたい人におすすめの一冊です。
人を操ることを題材にした一冊。
暴走族、ストリートギャング、非行少年が、首都圏内で次々に殺されていきます。その殺され方は非常に特殊で、外傷がまったくないのです。こういった殺し方は、武術を極めた達人にしかできない方法でした。
つまり、武術を極めた人物が、次々と彼らを殺していったのです。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2016-05-19
サスペンス、アクション、武術と、さまざまなジャンルが取り入れられた内容となっています。そのなかでも特に、オカルトの要素が強いのではないでしょうか。しかし、それでもリアリティーを感じられるのは、作者の力量あってのことでしょう。
本巻では主人公の影がやや薄いように感じられますが、それは周りに魅力的なキャラクターが多い証拠。本巻はかなり多くのキャラクターが登場するので、そこも見所の1つです。
事件は、武術の達人が起こしたと推測されました。しかし、なんとこの事件は、達人たちがまったく意図しないもとでおこなわれていたのです。達人たちは、なぜ少年たちを殺してしまったのでしょうか。
さらに、この事件には、ある1人の大物政治家の影が見え隠れしました。怪しい人物達の登場に、黒幕の存在を感じずにはいられません。果たして、事件の真相とは。
本巻の事件の犯人は、全員現行犯で逮捕されていました。つまり、疑いの余地はありません。しかし、すべての犯人が「自分はやっていない」と証言するのです。そして、それらは、どうも嘘のようには思えないものでした。
犯人逮捕に市民の人が協力してくれていたのですが、警察が駆けつけると彼らは颯爽といなくなってしまい、駆けつけた警察官も、その人物の顔を覚えてる人はいません。
このことから、本当の黒幕は別にいるのではないかと考える碓氷を含める警察は、心理学のプロフェッショナルである、藤森紗江と一緒に捜査を進めます。
本当の黒幕は、複数の事件をエチュード(練習曲)として、まったく関係ない人を犯人に仕立て上げていたのでした。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2013-12-20
本巻の見所は、なんといっても、藤森紗江の存在です。心理学のプロフェッショナルは、他の刑事と見る視点が違います。彼女がいなければ、事件は解決されなかったといっても過言ではないでしょう。
碓氷たち刑事を混乱させたトリックとは。そして、犯人はいかにして自分のエチュードを完成させたのでしょうか。
藤森のプロファイリングに、自分の経験を踏まえてともに捜査を進める碓氷の活躍にも注目です。
ペトロとは、ペトログリフという、洞窟や岩石に刻まれてメッセージのようなものです。
最初の殺人現場に、1つのペトログリフがありました。事件の鍵になるこの印を元に、碓氷はアルトマン教授と一緒に捜査を進めていくことになります。そして判明していく、示された1つの糸口……。
それは、聖ペトロを示しているというものでした。聖ペトロとは、キリストに使えた12人の使徒のうちの1人だったのです。
これは、犯人の思惑をわかっていた者が、現場に残したメッセージでした。本巻には犯人の他に、もう1人の重要な人物が存在します。その人物が、ペトログリフのメッセージを残していたのです。
果たして、犯人とその重要人物は誰だったのでしょうか。そして碓氷とアルトマン教授は、無事に事件を解決することができたのでしょうか。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2015-01-23
この作品の見所は、アルトマン教授の存在ともいえるかもしれません。扱っているテーマが考古学という難しいテーマですが、彼という存在が考古学を身近に感じさせ、小説を読み進めることができます。
考古学教授の鷹原の妻と弟子が殺害された、今回の事件。「ユダ」と影で言われている追放された弟子・尾崎の存在、鷹原の前妻との離婚、鷹原の浮気など、事件に結びつきそうな怪しいエピソードが、あちらこちらに散りばめられています。
誰が事件に関わっているのか、動機などとともに予想しながら読んでみるのも面白いかもしれません。
碓氷とアルトマン教授のコラボレーションが気になる方は、ぜひ本編でお確かめください。
タイトル通り、人の心をマインドコントロールする犯人を題材にした一冊。
ある日、同日同時刻に、東京都内で7件の事件が発生しました。
同日に事件が起きることがあったも、まったく同じ時刻の事件が7件もあったことに対して疑念をもった碓氷たち警察は、捜査に動き出します。
- 著者
- 今野 敏
- 出版日
- 2018-05-22
一見すると、7件の事件に関連性はないように見えたのですが、1つだけ共通点がありました。事件に関係している全員が、ある心理クリニックに通っていたのです。
関連者全員が精神に何らかの不調を抱えており、治療を受けていました。そして、彼らが通っていたクリニックは「アクア・メンタルクリニック」。碓氷たちは、そこに聞き込みにいき、ある1つの糸口を見つけます。
それは、事件関連者全員が催眠術、もしくは、洗脳されて犯行におよんだのではないかというもの。事件関係者は全員、心に不安を抱えているため、その道のプロがしようと思えば、あっという間にコントロールできるような状態であったのです。
点と点が線で結ばれたとき、事件の背景が明らかとなってきます。そこには、予想だにしない黒幕の存在があったのです。果たして、なぜ、同日同時刻に事件は起きたのでしょうか。
このシリーズは刑事小説ではあるものの、難解な表現が非常に少なく、すんなり読み進めていくことができる内容です。また事件のトリックが難しすぎず、小説が苦手な方でも読みやすいことが特徴でもあります。
さらに、碓氷という主人公も、この小説の大きな特徴です。通常の刑事ものであれば、主人公が自らどんどん事件を解決していくかもしれませんが、彼は違います。実は彼は、そこまで全面に出てきません。
物語ごとに別の主人公がおり、彼はすべてサブ主人公的な役割で、サポートに回っています。しかし、それがシリーズものでも飽きることなく、面白く読める魅力なのではないでしょうか。
警視庁捜査一課・碓氷弘一1 - 触発 - 新装版 (中公文庫)
2016年05月19日
碓氷の事件への解決のストーリーももちろん魅力ですが、彼の家庭での生活も1つの魅力です。彼はある意味、日本の男性サラリーマンの特徴でもあるような描かれ方をしています。仕事に邁進し、家庭がおろそかになっているのです。
家庭がおろそかになってしまった彼は、どんどん家庭での居場所がなくなり、やがて孤立していきます。その状況を彼自身がどんな受け止め方をしているのかにも要注目。妻子との関係の変化にも、とても現実味があり、つい引き込まれてしまうでしょう。
「警部補・碓氷弘一」シリーズの全貌が気になる方は、ぜひ本編でお確かめください。