「LaLaDX」で2017年から連載されている、石原ケイコの作品。数機な運命を辿って、一国の指導者とならざるを得なくなった少女・フレイヤ。彼女を主人公として、中世ヨーロッパ風の王道ファンタジーが展開されます。 ここでは、スマホの漫画アプリでも無料公開されている本作の魅力をご紹介しましょう。
主人公のフレイヤは、テュール王国の辺境テナ村に住む少女。彼女は隣人に優しく見守られながら、病気に伏せる母親を看病していました。
テュールは目下、隣国シグルズ帝国との間に不穏な空気が流れていましたが、彼女の周りにはまだ平穏があったのです。
- 著者
- 石原ケイコ
- 出版日
- 2018-04-05
そんな折り、3年前に王都に出て騎士となった幼馴染・アーロンとアレクシスが、久しぶりの帰郷を果たします。
彼らはテュール国のエドヴァルド王子の側近になるという大出世を遂げており、王子の所用に付き添って近隣まで赴き、ついでに村に立ち寄ったのでした。王子の所用とは、シグルズ帝国との会談です。
しかし、それとは別に、2人が故郷に帰ったのは他にも目的がありました。それは、王子の替え玉を用意すること。
実は、フレイヤと王子の容姿は、瓜二つだったのです。
アーロンとアレクシスは密命を受けながらも、フレイヤを巻き込むつもりはありませんでした。しかし、その2人の思惑に反して、運命の大きな流れがフレイヤを飲み込んでいきます。
彼女は愛する人のために、自ら偽りの王子となる道を選んでいくこととなるのです。
主人公となる少女・フレイヤは、人に比べて妙にすばしっこく、身体能力が高い以外は普通の娘でした。
非常に感受性が高く、感極まって嬉し泣きすることもよくあり、友人知人からは泣き虫として知られています。とても優しい性格をしており、病に伏せる母親・スカディのため、自ら野山を探索するほど。それでいて日夜勤勉に働いており、そのため誰からも好かれています。
そんな彼女だからこそ、想い人アーロンのため、テュールの人々のため、私情を殺して王子に扮することを決めるのです。そのところが、非常に魅力的に映ります。
そんな彼女が自分を偽って王子になりきるからこその、『偽りのフレイヤ』というタイトルなのです。
泣き虫少女が逆境を跳ね返し、人前では凜々しく気丈に振る舞って頑張る姿は感動的で、読んでいるとつい応援したくなってくることでしょう。
ちなみに、固有名詞には北欧神話由来の名前が多く使われているので、元ネタの関係性(スカディとフレイアは義理の親子神、など)を調べながら読むのも面白いかもしれません。
本作は「LaLaDX」で連載されている少女漫画です。作者の石原ケイコは、これまで『ストレンジドラゴン』『花嫁と祓魔の騎士』などを発表してきましたが、いずれも恋愛ファンタジーでした。
ところが本作は、これまでのものとはまったく毛色の違う作品となっています。まるで大河ドラマのように流血と謀略が横行し、主人公が苦難の道を歩んでいく本格的ファンタジーなのです。
小国テュールと大国シグルズの間で起きる、摩擦や暗闘。少女が細腕1本で乗り切るにはあまりにも険しい現実が、非情なまでに描かれていきます。
国家間の諍いにおいて、人死には避けられません。そして、それは主要人物であっても例外ではないのです。普通なら主役級と考えられるキャラクターが、呆気なく命を落とすのも本作の特徴。
極論すれば、主人公フレイヤ以外の全員(下手をするとフレイヤ自身も)に命の保証がないので、目が離せません。
ここまでご紹介してきたことからわかるように、『偽りのフレイヤ』はハードボイルドといっていいくらい、凄まじく厳しい世界観の漫画です。とてもではありませんが、少女漫画とは思えない作品といえるでしょう。
そんな作中で僅かながらに描かれるロマンスは、砂漠のオアシスのように貴重で、切なくなります。
まず1番に挙げられるのが、フレイヤがもっとも強く想う相手、アーロンとの場面です。兄のような幼馴染みのような、包容力のある頼れる存在です。短いなかで見られる心の交流は、何物にも代えられないほど大切なものだと感じさせられます。
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そして、そんなアーロンにコンプレックスを持っているらしいアレクシス。彼もまたフレイヤにとっては兄であり、幼馴染みに近い相手です。フレイヤが偽りの王子となってからは、彼の支えが心強くなっていきます。
他にも建前上王子という身分とはいえ、近衛騎士との関係も気になるところです。
テュール国のエドヴァルド王子と、シグルズ帝国セーブルとの間で、両国の衝突を避ける会談が設けられました。その会談で、エドヴァルド王子は毒を盛られてしまうのです。
彼がいなければ、会談はシグルズの有利となり、テナ村を含む領土の割譲か、近衛騎士――アーロンの首が持っていかれる……。
- 著者
- 石原ケイコ
- 出版日
- 2018-04-05
そんななかで、毒に冒された王子は瓜二つの容姿を持つフレイヤに一縷の望みを託し、彼女を捜索させていたのです。王子の健在をアピールし、国と臣民を守るために。
物語は1巻から怒濤の展開を見せていきます。大事な人々、何よりも愛するアーロンの命のため、自分を捨てることに決めたフレイヤ。本心の弱さを押し隠し、エドヴァルドとして気丈に振る舞う彼女の、痛ましくも気高い姿に心が痛みます。
会談は、王子の機転とフレイヤの熱演で辛くもまとまりました。しかし、その直後に思いもよらぬ出来事が巻き起こるのです。言葉を失うその展開からは、これからフレイヤに待ち受ける過酷な運命を、否応なく予感させます。
フレイヤはエドヴァルドの替え玉として、誰にも知られることなく王子を演じます。しかし、その振る舞いに慣れるよりも早く、次の問題が起きました。
彼女は王子付き近衛騎士の1人、ミカルが何者かにさらわれる場面に出くわすのです。彼女は咄嗟に、彼を連れ去るその馬車に飛び乗っていました。
- 著者
- 石原ケイコ
- 出版日
- 2018-10-05
2巻もまた、波乱で幕を開けます。
エドヴァルド王子の存在は周辺国への抑止力であり、国民にとっての心の支えです。フレイヤは王子として公務に務めつつも、生来の優しさから思わぬ行動を取ってしまうので、正体が露見するのではないかとハラハラさせられます。
そんななかで、彼女の実情を知る数少ない味方が従騎士となったアレクシスと、近衛騎士・ユリウスです。勇ましくも、本来か弱い少女でしかないフレイヤにとっては、何よりも心強い者達。
ミカル救出や、不穏さの増していく情勢での彼らの活躍が見所となっています。ユリウスの強さはまさに圧巻なので、そうしたバトル要素にも、ぜひご注目ください。
悪化していく国難危難を、果たして乗り切ることが出来るのでしょうか。
いかがでしたか?少女漫画とは思えないほど、読みごたえのある王道ファンタジーです。ぜひ1度読んでみてください。