主にTwitterなどwebを中心に活動している漫画家、やしろあずき。ちょっとシュールな日常ネタで人気を博していますが、「セフィロスの人」や「三角コーン」といった気になるワードでも知られています。お母さんとのやりとりなどが、とにかく面白いやしろあずきエピソードを、9つにまとめてみました。
やしろあずきは1989年5月6日生まれ。本名は柳谷達之といい、主にwebで活動をしている漫画家です。小学生のころ、学級新聞に4コマ漫画などは描いていましたが漫画家になるつもりはなく、中学生の頃は無職になると公言してたものの、心の中ではゲームを作る人になりたい、という漠然とした夢を抱いていました。
東京工科大学出身。在学中に、お題に沿った企画コンセプトをA4の紙1枚(ペラ)に描いて競う「CEDEC2011ペラ企画コンテスト」でベストアマ賞を受賞したことが縁で、「Aiming」や「SEGA」で、ゲームプランナー、ディレクターとして就職しました。Twitterや自身のブログで、家族や友人のこと、自身の黒歴史や日常、あるあるネタを題材とした漫画を掲載。
2018年現在、「つぶやきGANMA!」「ねとらぼ」等、webメディア上で10本以上漫画を連載、書籍化されている作品もあります。その後、フリーランスとなりました。
現在は漫画家だけではなく、webライターや関連企業のプロデューサー、執行役員なども務めています。 漫画家が様々な媒体に顔を出すことや、自身のプライベートを明かす機会は少ないですが、やしろあずきはかなりオープン。顔出しインタビューはもちろんのこと、家族のことも話題に上ります。
そんな彼は、2017年1月30日に自身のTwitterで結婚報告を行いました。ちなみに奥様はコスプレイヤーとして活動しており、お互いのTwitterに登場するなど、仲の良い様子を見せています。
漫画家として十分な知名度を獲得しているやしろあずきですが、名前が知られるようになったきっかけは、実は漫画ではありません。別名「セフィロスの人」と呼ばれるきっかけとなった、悲しくも爆笑せずにはいられない事件があるのです。
セフィロスとは、1997年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)が発売した、プレイステーション向けロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーVII」に登場するキャラクター。銀色長髪のイケメンで、主人公のライバルキャラクターとして、そのカリスマ性で多くのプレイヤーを魅了しました。
やしろあずきはこのセフィロスのフィギュアを持っており、面白いことをしようと動画を撮影していたところ、母親に目撃されてしまいました。しかも動画はそれで終わりではなく、セフィロス風にアテレコをしながら遊び始めたところから、母親に発見されたということで、冷静に怒られるという一部始終まで撮影されているのです。そしてその動画は、Twitter上にアップされます。
それが、Twitter社が提供する、動画共有サービス「Vine」のリアルタイム世界ランキング1位を獲得しました。以後「セフィロスの人」と呼ばれることになったわけですが、その後もセフィロスで遊ぶやしろあずきと、母親との軽妙なやり取りが、Twitterなどにアップされています。
ちなみにセフィロスのフィギュアは小学生のころ、アニメ関連の中古グッズを販売するお店で購入したらしいのですが、何かかっこいいから買っただけで、ゲーム本編は当時未プレイだったのだとか。買ったはいいけれどどう遊べばよいのかわからずに長年放置されていましたが、社会人になってから偶然発見されたことで部屋に飾られ、ついには遊ばれるという運命をたどりました。
どこに行くにも一緒、というわけではありませんが、現在もセフィロスの人形は健在な様子。その人が連想している有名人を、20個ほどの質問をすることで当てるというサイト「Akinator(アキネイタ―)」にも登録されており、自身の名前を当てさせようとしたところ、「セフィロスで遊んでいますか」と直球の質問をされたことも話題となっています。
なぜカラーコーンなのかといえば、きちんと理由があります。27歳の誕生日、自身のイラストとともに、ECサイトのほしいものリストをTwitter上に公開しました。そのなかにネタとしてカラーコーンを混ぜておいたところ、誕生日に自宅に大量のカラーコーンが届くという事態が発生。
工事現場に置く用など、わりと大きいサイズだったため、自宅内に異様なエリアが誕生することとなりました。その後、困ったやしろあずきはカラーコーン配布会を開催。サイン入りのカラーコーンは希望者に貰われていき、無事に事が済んだわけでは、もちろんありません。
その後もことあるごとにカラーコーンがやしろあずき宅に届けられることとなり、カラーコーン関連のつぶやきが増えていたところ、学校や企業からカラーコーンを譲ってほしいという要望が殺到。なぜかカラーコーン仲介業者となり、頻繁に利用する宅配業者の青年とも連絡先を交換するほど、交流が生まれる結果となりました。
2018年にはヤギがリヤカーでカラーコーンを届ける企画が発動。自身もネタにし、奥様はカラーコーンアクセサリーを作成するなど楽しんでいる様子も見られますが、くれぐれもコミックマーケットなどのイベントでは、他者の迷惑となるサイズのカラーコーン持ち込みは控えてほしい旨のツイートがされています。
SNSなどが普及したことにより、誰かと簡単につながることができ、友人関係や交流が広がったという方も多いでしょう。その反面、匿名の人から謂れなき攻撃を受けるツールにもなってしまっているというのは、嘆かわしい現実です。
やしろあずきも質問交流サービス「Ask.fm」を経由し、脅迫文を受け取っていました。しかしそれを嘆くわけでもなく、冷静かつユーモアにあふれた切り返しをした事で話題となっています。
脅迫文を受け取ったやしろあずきは、まず友人に添削を依頼。誤字脱字だけではなく、「てにをは」の誤り、言葉の誤用も訂正。相応しい言葉に改めてもらい、Twitter上に公開しました。添削は丁寧で、この言葉がふさわしくない理由も明記。自身も勉強になった点もあり、感謝が述べられました。
脅迫文をただの文章として受け取り、それについての評価や感想を述べるという返しは、多くの人の称賛を受けました。そんなやしろあずきは、「Ask.fm」に寄せられる、多くの質問やコメントにも丁寧に返事をしています。
庭に石油が沸いたと書かれれば、本気でDMで連絡がほしい旨を書き込み、3組の吉田くんとして挨拶してきた者に対しては、実在すること、昔彫刻刀を折ったことを告白。さらに最も自分らしいエピソードを聞かれた際には、同人誌の原稿の締め切りに間に合わなかったため、会社を辞めたことだと答えています。
ゲームプランナーという経歴であるため、ゲーム制作のことや、漫画制作に使用する機材やソフトに関しては、オチをつけながらも丁寧に解説。フォロワーが多いと女性にモテるのではという質問には、フォロワー2万5千人とドヤ顔で女性に言っても、女性にドン引きされると思うと冷静な回答。
さらに就活がうまくいかずに悩んでいる学生には、頑張ったら精神が死ぬので人間がやるものではない、と厳しい意見を見せながらも親身なコメントを寄せました。自分に自信はあるか、真面目に答えてほしいという質問に対しては、「自分の人生で自分に自信を持たないってどうなんだ」と回答。真面目な話をすると寿命が減るシステムと、付け加えたところに、照れ隠しの雰囲気が感じられます。
一昔前の漫画家や同人作家などは、取引やファンレター送付のためか、自身の住所を雑誌などで公開されていました。しかし、現在は個人情報を公開するどころか、秘匿すべきとされる時代。自身が映った写真の背景から住所を特定されるという危険もあるため、著名人は写真の公開にも気を使っています。
そんな中、やしろあずきの住所は広く知られることとなってしまいました。原因は、Twitterとインターネット初心者である母親の存在。ネットリテラシーがまったくない状態でインターネットの海に飛び込んだ結果、Twitterで母親にアカウントバレからの、顔写真アップに位置情報と本名でリプライというトリプルコンボが発生してしまいました。
SNS初心者にはありがちなことではありますが、意図せずに居住地を公開。しかし、それだけでは住所を特定できませんが、カラーコーン配布の頃に特定され、内輪で広まっているのではないか、と推測されています。
外から大きな声で呼びかけられたり、カラーコーンを被った人が訪ねてきたりと、踏んだり蹴ったりの様子。ブログ上で困っていること、迷惑行為であることを切々と訴えたのち、見つけ次第警察に通報するという、強い姿勢で臨むことを明記しています。
漫画家はペットを飼っている人が多いですが、やしろあずきも犬を飼っていました。名前はクッキー。最初は「アルテマウェポン」にしようとしたとのことですが、家族の武力介入によりクッキーに。白いプードルでした。
クッキーと小学生の頃からずっと一緒だったらしく、大の犬好き。映画を見ていて犬が危機に陥ると、映画の内容うそっちのけで犬の生存を願い、犬がツライ目に遭う時は、直視せずに飛ばしてしまうのだとか。
犬を飼う人の心得ともいえる「犬の10戒」や、亡くなったペットたちがたどり着く場所である「虹の橋」の詩を元に制作された絵本『虹の橋』を見れば号泣すると公言しているところから、犬好きであることは間違いないでしょう。
クッキーは19歳という高齢な犬で、やしろあずきの人生の半分以上をともに過ごしてきた大切な家族。しかし、2016年11月、誕生日を迎えた4日後に静かに息を引き取り、虹の橋へと旅立っていきました。2018年には、新しい犬を迎えようと考えているような呟きが見られましたが、やはりクッキーと同じ犬種を考えているようです。
言葉は違いますが、インターネットに国境はなく、ひとつの事柄を世界の人とリアルタイムで共有することができます。日本人が思わぬことで有名になることもあります。やしろあずきもその1人。
話題となったのは、あのセフィロスで遊ぶ動画でした。動画共有サービス「Vine」のリアルタイム世界ランキング1位を獲得し、セフィロスの人として認知されることとなった動画は、ランキングからもわかるように、海外の人にも試聴されていたのです。
台湾や中国で視聴した人が多いようで、「声がいい」「ご愁傷さま」「かわいい」など、様々な感想が寄せられました。中には、美少女フィギュアじゃなくてよかったのでは、という慰めの意見も寄せられています。
母親や友人とのネタを漫画にしているやしろあずきですが、日常で出会った面白い出来事も漫画化しています。なかでも大きな反響があったのが、昼休みにスターバックスコーヒーで遭遇した、小学生の話。
やしろあずきがスタバに行ったところ、小学生数人が来ていました。その中の1人、竹やんが高い椅子に座ったせいで降りられなくなり、騒動に。オレ達にはスタバは早すぎた、という印象的なセリフと、スタバで椅子から降りられないだけなのに、無駄にドラマティックな小学生たちの様子がシュールで、笑いを誘いました。
コーヒーが飲めないのに頼んだり、椅子から降りられなくなったりと、キャラの濃い竹やんも話題となりましたが、どうやらやしろあずきの周囲には面白い子供が集まる様子。ブログには、とあるイベントで「専属絵師になってほしい」という中学生くらいの男子とのやりとりが描かれました。
その内容は、自分の指定した絵を描いてほしいというもので、専属ということで自分意外の人に絵を描いてはいけない、中学生なのでもちろんお金は払えない、というぶっ飛んだ者。
中学生だからこそ少し笑えるエピソードとして扱われますが、相手が大人だったら笑えませんね。やしろあずきはこの後、絵なんてちゃちゃっとかけるだろう、という認識の人への苦言や、絵師や漫画家という仕事に対する、世間の認識や扱いについても言及しています。
やしろあずき漫画に欠かせない人物といえば、母親です。セフィロスの動画にも登場し、ノリノリで軽妙なやり取りをしていた母親は、かなりキャラクターの濃い人物。特にすごいのが、エイプリルフールだからとやしろあずきがしかけた、「宗教に入ろうと思う」というLINEから始まるやり取りでした。
宗教とはいっても既存のものではなく、やしろあずきが考えた「ネオ・ガブリエル」という天使を崇拝するという、架空のもの。中二病全開の危ない宗教に母親もドン引きかと思いきや、まさかの新設定返し。ネオ・ガブリエルは禁忌を破って起こった宗教であると指摘します。
その後は、さながら会話劇のような応酬。お互いに最初から設定を作ったのでは、と思わせるような緊迫したやりとりが続きました。最後は母親が飽きたとのことで終幕したやりとりでしたが、やしろあずきが降参したことにより、母親の勝利に終わりました。
母親と仲が良いのには、もちろん理由があります。やしろあずきに兄弟はおらず、ひとりっこ。ファッション関係の経営者だったという父は小学5年生頃に亡くなり、それ以降はファッションデザイナーをしていた母に、女手一つで育てられました。 引きこもりになりかけたり、学校に行かないとゴネたときは物理的にどうにかしようというやりとりがあったようですが、ゲームや絵を辞めさせるという事は一切なかったそうです。
興味をもってやったこと、作ってみたものは純粋に褒めてもらえたため、とても嬉しかった、好きな事だけさせてもらったことに感謝していると、ブログで本音が明かされたことも。 ちなみにしんみりしたり、シリアスになる時にはオチをつけたがるやしろあずき。母親のことを綴ったブログにもしっかりとオチが付けられており、母に感謝したら詐欺だと思われた、というLINEのやり取りも公開されています。
母子家庭だったこともあり、母親とのエピソードが多いやしろあずきですが、父は小学5年生の時に亡くなりました。海外を中心としたファッション会社を経営していたそうで、当時かなり多忙だった様子。やしろあずき自身もめったに会うことのない人という認識で、一緒に遊んだ記憶や出かけた記憶がほとんどなかったそうです。
そんななか、母親の急病がきっかけで、父親と2人でハワイに出かけたことがあるということで、その漫画がTwitter上に掲載されました。父親との軽妙なやり取りや、少しだけ縮まった親子の距離にほっこりする内容ですが、その漫画では数カ月後に病気が悪化し、父は帰らぬ人になったということも描かれます。
あまりにもさらりと描かれているように感じられるエピソードですが、「家族と過ごす時間、大切にね!」というコメントには様々な想いが込められているのでしょう。旅行が一生の思い出になった、切ないエピソードです。
様々なwebメディアで漫画を掲載しているやしろあずきですが、電子書籍で発行され人気を集めているのが『やしろあず記』です。創作ジャンル限定の同人誌即売会「コミティア」で発行された同人誌を電子書籍化したもので、当時購入できなかった人、最近やしろあずきの存在を知った人には嬉しい知らせだったのではないでしょうか。
1巻に発行に至った経緯が描かれているのですが、トークショーやサイン会で「家族ネタまとめたものが読みたい」という要望があったのだとか。やしろあずきの黒歴史である、中学時代のイラスト本を公開することを条件に、発行されることになったそうです。
内容はTwitterやブログに掲載されている作品同様、母親や奥様など家族のことが中心。母親のキャラクターが濃いことは知られていますが、セフィロス動画の裏側や、母親と奥様とのやり取りが4コマ漫画で描かれています。
面白さを言葉で表すのは難しいですが、家族の予想の斜め上を行く反応と、やしろあずきの的確なツッコミが秀逸。テンポが良くオチがしっかりついているため、1つ1つのエピソードでしっかりと笑わされてしまいます。大変なところもあるかもしれませんが、家族の気安くも楽しいやりとりに、心が温かくなります。
漫画以外のエピソードの多いやしろあずきですが、的確なツッコミとシュールな笑いはクセになる面白さ。ご本人に興味を持った方は、ぜひ作品にも触れてみてください。