2008年に『鉄腕バーディー DECODE』としてテレビアニメーション化され、2012年に完結した、ゆうきまさみの人気作品。全33冊におよぶ「日常に入り込む本格SF」作品について解説します。
本作は2003年から「週刊ヤングサンデー」で連載がはじまり、2012年に「ビッグコミックスピリッツ」で最終回を迎えるという、少し複雑な経緯を持った作品です。
最終回から遡ること13年、1985年に「週刊少年サンデー増刊号」で『鉄腕バーディー』第1部の連載が始まりました。途中、『究極超人あ~る』連載のための中断を挟んで、第2部までを連載。その後再び『機動警察パトレイバー』の連載が始まったために中断し、そのまま未完となっていたのです。
- 著者
- ゆうき まさみ
- 出版日
- 2003-06-05
この1980年代の未完となっていた作品を2003年にゆうきまさみ自身がリメイクしたものが、2012年に完結した『鉄腕バーディー』です。
前述のとおり「週刊ヤングサンデー」で連載が始まりましたが、2008年で「ヤングサンデー」は休刊。「ビッグコミックスピリッツ」に連載誌を移し、『鉄腕バーディー EVOLUTION』と改題して完結まで連載されました。
このような経緯で1985年に始動し、中断や仕切り直しを挟みながら、27年を経てようやく堂々の完結を果たした『鉄腕バーディー』。本稿では2003年連載開始の『鉄腕バーディー』および改題後の『鉄腕バーディー EVOLUTION』を、一連の作品として『鉄腕バーディー』と呼んで取り上げます。
ゆうきまさみのおすすめ作品を紹介した<ゆうきまさみのおすすめ作品ランキングベスト5!>の記事もおすすめです。
本作は、10年という長い時間をかけて語られたストーリーです。たくさんの起伏や節目、要素が含まれていて、1度に語るにはいささか長く複雑でもありますので、ここではいくつかに分けてあらすじの紹介をします。
読者によって、観点によって、分け方はさまざまあると思われますが、ここでは筆者独自に6つに分けて考えてみます。
主人公の1人、千川つとむは廃墟探検していたところ、連邦警察の捜査官バーディーと、宇宙人犯罪者ギーガーの捕り物に巻き込まれ、身体の一部を吹き飛ばされてしまいます。不幸中のさいわいにして脳には損傷がなかったため身体を修復しようとしますが、時間がかかることに。
修復が済むまでの間の応急措置として、つとむはバーディーと「二心同体」、バーディーの身体に意識だけが居候するかたちで過ごすことになってしまうのです。
バーディーは、テロリストのクリステラ・レビを追って地球に来ていました。しかし、居場所がわかりません。そんななか居場所を知っているであろうギーガーを追い詰めているところに、つとむが現れたのでした。
このような不幸な出会いによって結びつけられてしまった2人ですが、ここからクリステラ・レビにたどり着くまでに、2人で、ともに数多の事件と巨悪に出会い、挑むことになります。
バーディーの任務やその能力、バーディーの身体でつとむが生活することの不便などが描写の中でわかるようになっている「『鉄腕バーディー』入門の章」です。
この章では、クリステラ・レビが、地球人・火之宮水晶(ひのみや すいしょう)として新興宗教団体「浄火学館」の中枢にいること、アルタ人という宇宙人の種族は地球人そっくりで、古い時代に迫害を逃れて地球に飛来し、定住した者もいること、地球にはアルタ人難民のネットワークがあることなど、この後のストーリーに関わる重要な手掛かりが明らかになります。
並行して、日本では防衛庁(現在は防衛省ですが『鉄腕バーディー』連載開始時は防衛庁でした)と「氷川ケミストリィ」なる企業がレビと結びついて、地球には存在しない「酔魂草」からつくる麻薬「スピリッツ」によって、獣化兵を生み出す計画が進行中。
つとむのクラスメイトである千明和義(ちぎら・かずよし)は、出自にレビとのつながりがあるらしく……。
いくつもの要素が幾重にも重なり合って、日本を、世界を揺るがせようとしています。バーディーとつとむは、絡み合った因縁や執念を解きほぐすことができるのでしょうか。
とある県の温泉町で見つかった「阿留多(あるた)文書」。その謎の取材に行こうというフリージャーナリストの室戸に誘われ、つとむは雪の真城町に赴きます。
阿留多文書には、ある人物が当時地元を荒らしていた鬼を退治した、と記載されていました。そして、その人物とは、現在は旅館業を営む有田家の初代当主だというのです。
有田家には「鬼の手」などが所蔵されていて、近所の神社には「鬼のミイラ」が封じられていました。室戸やつとむらが鬼の手などを取材している一方で、ほかの者たちに封印を解かれた鬼のミイラは自ら動き出し、人を襲い出します。
バーディーと有田家の娘がこれを止めるべく動き出しますが、鬼には意外な由来がありました。千年前の地球と外宇宙とのつながりが明らかになるエピソードです。
連邦の神祇庁がクリステラ・レビを異端者と定め、異端者抹殺のために派遣した特殺官のネーチュラーや、外務省と軍との方針の違いに気を揉んで、穏当に地球との交渉を進めようと、単独行動に出た連邦外務省の書記官のクレドなど、連邦からの来訪者が増えてきます。
つとむと同級生たちが宇宙船にさらわれたり、バーディーとつとむ両者の精神の境界が曖昧になってきて、融合してしまわないようバーディーが2年ほど眠らされていたり、その間に防衛庁に「特務自衛隊」なる部隊が創設、昨年転校した少女・中杉小夜香と再開してつとむといい雰囲気になったりするなど、事件が波のように次々と押し寄せ、起伏の大きな展開は今後の波乱を予期させます。
連邦が成立する以前、600年以上も昔には「大アルタ帝国」が存在し、宇宙にはアルタ人の王が君臨していました。かなり昔のことのはずでしたが、いまなお帝国の残党は生き延びて皇統を継いでいたのです。
その帝国の残党が、レビ一派とつながりを持っています。他方、つとむとよい関係ができつつあった中杉小夜香は事故に遭い、浄火学館とつながりがある真僕会病院に運ばれていました。
人間の記憶のコピーをつくり、ロボットに移植する研究の最終段階に中杉は利用され、危ういところをバーディーとつとむが救出します。その研究もまた、レビの仕業。そのレビに、特殺官ネーチュラーが迫ります。
レビの逮捕は望んでいても抹殺までは望まないバーディーは、ネーチュラーを止めるべく動きますが、ネーチュラーとともに浄火学館の地下に囚われてしまうのです。
手引きする者があり、2人は浄火学館から何とか脱出しますが、ネーチュラーに異変が起こります。共闘していたはずの彼女は突然、自我を失くした体で再び特殺官として動き出したかと思うと、その身体が変貌して巨大化。一挙手一投足が、周辺に甚大な被害を及ぼすのです。
あまりに大きな被害によって、政府が「宇宙人による侵略」であると認識している、と発表する事態にまで発展。日本は、そして地球は、宇宙人を「敵」であると断定したのでした。
ネーチュラーの暴走を止めるために戦い、傷ついて療養していたバーディーに、上司メギウスから「ペリダンの禁書」を探すようにと指示が下ります。
「ペリダンの禁書」とは、読もうとしたり研究したり、それだけで神祇庁から異端認定されるもの。レビの、いまは亡き旧友マクセール・ペリダンが持っていたという古文書で、現在はレビが所持しているとされています。
バーディーが浄火学館に乗り込んだところ、レビは禁書を収めた未開封の箱と、禁書の一部のコピーを持っていて、バーディーはそのコピーを見ました。それはどう見ても「現代日本語の辞書」だったのです。
箱を開けてみれば、中身は現代日本語の辞書、医学書や「科学年鑑2025」などの書籍のほか、中杉小夜香の日記が含まれていました。
そこには、中杉は大学進学後は研究者となり、バーディーたちイクシオラ(調整アルタ人)と宇宙船の細胞にのみ存在するはずの「Q体」を開発すると書かれていたのですが……それは、彼女が19歳のつとむとは再会していない世界でした。
つまり、ここで書かれていたのは、つとむが高校受験に失敗してほかの学校に進学してしまい、中杉とクラスメイトになることがなかった、並行世界のできごとなのです。
その事実をつとむ達が知る頃、通信の行き違いや地球での連邦軍人の虐待映像の流出、航空機の衝突などアクシデントが続き、一触即発だった連邦と地球の間でとうとう戦闘が始まります。
そんななかで、神祇庁の中枢であり、連邦を支配する「奥の院」が地球に姿を見せました。奥の院の正体は、中杉が並行世界でやがて開発するQ体による、量子コンピューターのなれの果てだったのです。
奥の院に召喚され、直接対面したバーディーとつとむが何をするのか。一緒にいるレビや中杉はどうなるのか。それはどうか、ご自身で確認してください。
本作は、群像劇でもあります。長い物語のなかに実に多くの、さまざまな立場の人物が登場するのです。
主たる人物だけを取り上げてもかなりの大人数になってしまいますので、ここでは「ストーリーを追ううえで、この人たちだけは知っておかなければ」という人物を厳選して紹介します。
主人公。彼女が地球にやって来て、任務中に千川つとむを誤って死なせてしまったことから『鉄腕バーディー』の物語は始まります。
名前のうち固有名は「バーディー」だけで、「シフォン」は生まれた星の名、「アルティラ」は「アルタ人の」という意味。「シフォン生まれのアルタ人バーディー」といった感じです。
宇宙をほぼ二分する勢力の一方、連邦の警察組織に属する捜査官で、階級は巡査。「狂戦士(バーサーカー)殺し」の異名を持つ、強力豪腕の女性です。
アルタ人のなかでも「イクシオラ」(調整アルタ人)と呼ばれる人種で、姿かたちは地球人と同じですが、遺伝子操作などで抜きん出た身体能力を与えられています。イクシオラのなかでも特に腕力が強いようで、同じイクシオラからさえも「怪力」と評されることも。
捜査中に誤って攻撃を加えてしまい、つとむの身体の半身近くを吹き飛ばしてしまいます。身体を大きく損傷しながらも脳には影響がなかったため、身体を修復することになりましたが、思いの外時間がかかってしまうことに。
そのため修復が終わるまでは、彼の記憶や遺伝子情報などを身体から読み取り、バーディーが自身の身体を以て、彼の身体を補うことにしました。こうして、ひとつの身体にバーディーの意識とつとむの意識が同居する、「二心同体」として過ごすことになったのです。
もう1人の主人公。高校1年生の、廃墟マニアです。
同級生たちと廃墟探検に行った先で、バーディーが追う事件に巻き込まれ、身体を大きく破壊されてしまいます。脳はさいわい損傷がなかったため修復されることになりましたが、それが終わるまで意識だけがバーディーの身体に収められ、「二心同体」となるのです。
彼の意識が表に出るときは、彼の身体から読み取った遺伝子情報をもとにバーディーの身体をつとむの姿に変化させるため、後天的な身体の傷や虫歯、近視などは再現されません。幼馴染みにはその辺りをごまかしながらの生活となり、気苦労も少なくない様子。
もともとは特段の特徴もなく、優柔不断で頼りない少年でしたが、バーディーとの生活のなかで何かを思ったのか、しだいにしっかりした発言をするようになり、顔つきも徐々に凜々しくなっていきます。
バーディーの上司。連邦警察刑事部特捜課長で、階級は警部(のちに星務次官室監察部長、警視)。ルベラント人で、地球人から見ると昆虫のカマキリによく似た容姿です。バーディーの親代わりでもあり、彼女を幼い頃からよく知るだけに、心配の絶えない人物でもあります。
普段は冷静沈着ですが、正義に反することには怒りを以て対処。途中、連邦政府の権力の構図が変わり、警察内部でも大幅な人事異動があって特捜課から外されてしまいますが、その後も独自にクリステラ・レビについて調査を進め、地球にやってきます。
エタニオラ(エタナ系アルタ人)で、「アルタ人史上最高の駿才」と呼ばれるほど優秀な頭脳の持ち主。
科学省総監まで務めましたが、のちに大規模なテロ事件をいくつも引き起こすテロリストになります。このため連邦警察により指名手配されていて、バーディーは彼を追って地球に来ました。
地球では「火之宮水晶」を名乗り、新興宗教団体「浄火学館」の教母。日本政府ともつながりを持ち、酔魂草による強化兵を量産する計画にも関わっています。また大アルタ帝国の残党ともつながり、何でも利用しようとしている風が見える人物です。
しかし、本当は学生時代の経験により、連邦神祇庁の「奥の院」を倒すことが目的。これまでのテロや現在の地球でのおこないは、そのための手段だったのです。
常にサングラスをかけた、口髭の男性。「G&G商会」という小規模な輸入家具の会社を営んでいて、住まいは逗子市。妻と、娘が1人います。
しかし、それは表の姿で、もうひとつの姿はクリステラ・レビの優秀な配下。徒手空拳で、バーディーを軽くいなすほどの体力と格闘の技術を持ちます。
古くは連邦警察の捜査官で、もとの名をグレイ・シフォン。「超速のグレイ」の異名を持っていました。
レビが関わる事件の全容を知る数少ないうちの1人で、彼の目的のために手を貸してはいますが、決して盲従しているわけではありません。その目的ややりようが変わったら見限る可能性もあることをバーディーに示唆していて、まったくの敵でもなく、ときに助け船を出したり共闘を持ちかけたりもするのです。
直情径行のバーディーに対して、いつでも冷静沈着。くせなのか、たびたび首を「コキ」と鳴らします。
本作のストーリーは、事件がひとつで、敵がひとつで、味方がひとつ、という単純な構造ではまったくありません。複数の事件から大きなひとつの事件が成り立ち、また、その事件から枝葉のように事件が派生して関係する人物も多いのです。
ここでは、そんなストーリーに関わる者たちが、どのような思惑を抱いているかを整理してみます。
バーディーは連邦捜査官ですから、第1の目的はクリステラ・レビの逮捕です。かつ、彼女は高い戦闘能力を持つイクシオラであり、イクシオラには「不殺条項」が課せられています。どんな凶悪犯も、決して殺してはいけません。
彼女はこれを強く自分に言い聞かせていて、それは融通が利かないと言っていいほどです。
レビだけではなく、どんな犯罪者も生かしたまま捕らえて法廷に立たせることが、彼女の正義。つとむもまた他者が生命を落とすところを見たくはないし、殺してはいけないという倫理観を持っていますから、二心同体とはいえ2人の目指すところは同じといえるでしょう。
連邦警察としては、不殺条項はもちろん守られねばならないもの。しかしバーディーほど厳しくは見ておらず、正当な理由があれば傷つける、あるいは殺害も認めるところです。
しかし、イクシオラで捜査官というバーディーと同じ立場でありながら、カペラ・ティティスは敵と見なした者をすぐさま惨殺する残忍さと能力を持ち、それを悪いことと考えていません。悪しき者、邪魔な者は躊躇なく抹殺する。これが、カペラの正義なのです。
このおこないが、やがて、地球と連邦の間に火種を生み出すことにもつながっていきます。
日本の防衛庁と米国情報組織はともに、まだ接触もしていないうちから「宇宙人は侵略者」であるとして、対抗手段を講じています。米国の改造人間部隊や、防衛庁のスピリッツによる獣化兵を経て生み出された強化兵で構成される4特(第4特務自衛隊)が、それです。
獣化兵を生み出すためのスピリッツ開発を統括をしていた重信参事官は、政界の黒幕とつながり、自らも出馬を望んでいました。この獣化兵を生み出すという役割は、彼にとって出馬のための足掛かりだった風にも窺えます。
その後任である椿参事官は、4特の創設者。日本が軍事力を伸ばし、世界のイニシアティブを取って地球統一政府を立てることを望んでいる人物です。そのためには、地球外からの脅威に打ち勝つ必要があるのでしょう。
つとむがバーディーと出会った廃墟が爆発炎上した事件以降、不可解な事件が続いていて、しかもことごとくつとむの影があるものですから、彼について聞き込みをする刑事もいました。
獣人(スピリッツ中毒者)による刑事事件などもあり、バーディーが介入することもありましたが、宇宙人(バーディー)についてはあまり関知していなかったようです。
辺境観測船オプラ・ガルテを地球近辺に派遣しましたが、船内で起きた事件により大破し、月に墜落。船体を回収するために、政府は地球と穏便に交渉しようとしますが、軍部は強硬論を唱えていて分裂の危うさもあります。
交渉のため使節団を地球に送ったときには、地球(米国)は洋上に艦隊を展開するなどの行動を取り、一触即発の状態を生み出しました。
連邦において、政府よりも強い権力を持つ省庁。神祇庁は、奥の院の意向を政府に影響させる機関です。クリステラ・レビを、異端者として抹殺しようとしました。
かつては罪を犯したわけではない者を、政治に不都合である、邪魔であるという理由で暗殺するということもおこなっていたようです。その一方、連邦と地球との戦端が開かれると連邦の人々を「我が子ら」と呼び、「矛を収めよ」と争いを止めようと介入してきました。
600年前に滅亡した、アルタ人の帝国。跡形もなくなくなったものと誰もが考えていたところ、皇帝の血統を守り、生き延びてきた者たちがいたのです。
彼らはもう1度帝国を復活させようとして、米国やクリステラ・レビと手を組みました。機を見て連邦に挑み、再び宇宙に君臨しようと画策しています。
本作が初めて発表された1985年は、映画『スター・ウォーズ』の第3作「ジェダイの帰還」が国内で公開されてから2年が経つ頃。一世を風靡したと人気作『スター・ウォーズ』の最初の3部作を見終えた人々のなかで、SFのイメージが『スター・ウォーズ』の姿に定まろうかという、そんな頃です。
「連邦」と「同盟」の2大勢力が広大な宇宙で微妙なバランスを保ち、連邦は帝国が滅びたのちに興り、7つの星系が集まった連邦には爬虫類や昆虫、鳥などの姿の宇宙人が入り交じって住んでいるという世界を語る『鉄腕バーディー』。
そんな本作は、舞台のスケールは『スター・ウォーズ』に似て壮大ではありますが、仕切り直した2003年ともなると、SFとしてはいかにも古典的な要素を含んだ作品だったというのは事実でしょう。
しかしながら、「古い」というのは「馴染み深い」ということでもあります。『鉄腕バーディー』は『スター・ウォーズ』を経験した人たち、またその人たちが生み出した「次のSF」に親しんだ人たちに受け容れられやすいかたちのSFでした。
また、それでいて斬新な特徴を持っています。それは、連載されている時点の「現在」に住む主人公の日常が、SFに直結しているいうことです。
現代日本に住む主人公・つとむの生活は、宇宙人であるバーディーとともにあり、彼の部屋は押し入れを開けると彼女の宇宙船につながっています。
彼は毎日をバーディーと一緒に過ごし、ときには宇宙船に入って連邦警察とのやり取りを見聞したり、宇宙人と直接対峙して戦ったり、そんな非日常が日常のなかに混じっているのです。
宇宙へ飛び出すわけでもなく、宇宙人として転生するわけでもなく、その時代の平凡な学生のまま、彼は外宇宙の存在と接触していきます。
けれども1度は死んでいながら、宇宙からやってきたイクシオラという特殊な人間であるバーディーの身体を借りて何とか生き延びている彼は、この作品のなかで、ある意味もっともSF的であるといえるでしょう。
複雑に事件や人物がからみ合いながら進行するストーリーですが、細部にまで配慮が行き届いた設定と構成のおかげで、極上のエンタテイメントに仕上がっている『鉄腕バーディー』。SF好きなら、ぜひとも読んでおきたい作品です。全部で30冊以上になりますが、その長さも苦にならない面白さ。ぜひご一読ください。