アンデルセン童話「パンをふんだ娘」が怖い!あらすじや教訓を紹介!

更新:2021.11.16

アンデルセン童話のひとつ「パンをふんだ娘」。インゲルという娘がパンをふみ、地獄に落ちてしまうという物語です。日本では影絵劇としてテレビ番組で放送され、その衝撃的な内容にトラウマを抱えた人もいるのではないでしょうか。この記事ではあらためてあらすじを説明し、なぜインゲルが人間の姿に戻ることができなかったのか、物語から得られる教訓とは何かを考察していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひご覧ください。

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アンデルセン童話「パンをふんだ娘」が怖い!あらすじを紹介

 

アンデルセン童話のひとつ「パンをふんだ娘」。デンマークの作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが手掛けた『童話と物語の新集』に収録されました。日本では1975年に影絵劇としてテレビ番組で放送され、広く知られることとなります。

ではあらすじを紹介していきましょう。


ある村に、インゲルという名のとても美しい娘が住んでいました。裕福な家庭へと奉公に出されることとなりますが、彼女は以前から自分の美貌を鼻にかけてわがままに過ごしていたため、奉公先でもまともに働くことはありませんでした。

ある日里帰りをすることになり、奉公先の夫人からお土産にパンを貰います。家までの帰り道、先ほどまで降っていた雨が振っていたため、道にぬかるみができていました。

インゲルは自分のドレスを汚したくなかったため、お土産に貰ったパンをぬかるみに投げ入れ、その上へと飛び乗ります。ところがパンは彼女を乗せたままぬかるみの底へと沈んでいき、二度と浮かび上がることはありませんでした。

後にこの出来事は人々の間で伝承となり、噂話が絶えることはありません。その様子は、地獄に落ちたインゲルの耳にも伝わります。また村に住む母親もこの噂を聞き、愚かな娘をもったことを嘆き悲しみながら死んでいきますが、それを聞いてもインゲルはまったく反省せず、自分がなぜ地獄に落ちたのかも理解していません。

ある日そんな噂話を聞いて、インゲルを憐れんだ少女がいました。少女は年老いて死ぬまで、インゲルが天国に行けるように祈りを捧げ、涙を流し続けます。

そしてついにその祈りは聞き届けられ、インゲルは灰色の小鳥として生まれ変わりました。それからは、どれだけ小さなパン屑も粗末にせず、他の鳥に分け与える日々を送ります。

分け与えたパン屑の量が、インゲルの踏んだパンと同じ量になった時、彼女の罪は許され、ようやく天国に行くことを許されたそうです。

童話「パンをふんだ娘」でインゲルはなぜ人間に戻れなかったのか

 

作者であるアンデルセンは、熱心なカトリック教徒としても有名です。「パンをふんだ娘」をはじめ「人魚姫」や「マッチ売りの少女」などの物語には、彼の信仰心が反映されています。

カトリックにおける「パン」とは、「キリストの肉体」を象徴するものです。つまり本作においてインゲルは、神の体をふんでしまったということ。地獄に落とされたのは、彼女が神を冒涜し、怒らせたからだと考えられるでしょう。

後にインゲルは、優しい少女の祈りのおかげで小鳥として蘇りました。小さく弱い存在の小鳥は、偉ぶることはできず、また1羽だけで生きることもできません。神はインゲルを小鳥の姿にすることで、罪を償わせる機会を与えたのでしょう。

童話「パンをふんだ娘」から学べる教訓は?

 

物語の冒頭でインゲルは、生まれ故郷の村から裕福な家庭へ奉公に出されます。作品によっては養女となるパターンもありますが、どちらも「貧しい村で一生を終えるより幸せに暮らせるだろう」と願った、母から娘への優しさでしょう。

奉公先の家族もインゲルのことを気遣い、里帰りの際にはパンを持たせてくれるなどあたたかく彼女に接していました。

ところが当のインゲルは、その優しさに気づくことはありません。自分の美貌にかまけて奉公先でもわがままばかり言い、ドレスを汚したくないからとパンをぬかるみ投げ入れてしまうのです。

さらに地獄に行ってもその慢心をあらためることはなく、灰色の小鳥になったことでようやく周囲の人々の優しさや、食べ物を大切にしなければいけないことに気づくことができました。人の優しさに感謝の気持ちをもつことの大切さを表しているとわかるでしょう。

また、かつて日本にも、「米粒を残すと目が潰れる」という言い伝えがありました。毎日の食卓に何気なく並ぶ米ですが、かつて米はお金よりも貴重だといわれていたのです。そこから米粒には仏が宿っていると考えられるようになり、米粒を粗末にすると罰が当たるとされるようになりました。

インゲルも、小鳥の姿になったことで食べ物を得る苦労を知り、他の鳥たちに分け与えるほどその大切さやありがたみを知ることとなったのです。

繊細なイラストが光る「パンをふんだ娘」

アンデルセン童話全集Ⅰ

2011年08月03日
ハンス・クリスチャン アンデルセン
西村書店

 

スロバキアの画家ドゥシャン・カーライ夫妻が、4年の歳月をかけて挿絵を手掛けたアンデルセン童話集です。本書には「パンをふんだ娘」を含む54作品が収録され、淡い色彩で描かれた繊細なイラストが随所に散りばめられています。

翻訳された文章も、原文の雰囲気を残した読みごたえのあるもの。子どもも大人も満足できる内容でしょう。

想像力をかきたてられるアンデルセン童話

著者
アンデルセン
出版日
2000-06-16

 

文学者であり翻訳家でもある大畑末吉が訳を手掛けた作品。「パンをふんだ娘」や「人魚姫」などの有名どころが12編収録されています。

大畑の訳は個性的で、なかでも動物や家具が人間と同じように話すシーンが印象的。不思議と物語の世界観に入り込みやすくなっているのです。

キリスト教の死生観とともにアンデルセン自身の死生観もよく表れていて、大人が読んでこそさまざまなことを考えられるような一冊です。

「パンをふんだ娘」など海外文学を集めたアンソロジー

著者
["ハンス・クリスチャン アンデルセン", "アントン チェーホフ", "ウィリアム・バトラー イェイツ", "グスターフ ウィード", "アナトール フランス"]
出版日
2014-12-10

 

本書は「生きる」をテーマに、有名な海外文学の短編作品を集めたアンソロジーです。

読みさすさを追求し、仮名遣いや送り仮名なども配慮されています。また作品ごとに解説がついているので、物語を楽しんだ後にさらなる深読みができる構成。

海外の文学作品に初めて触れる方にもおすすめの一冊です。

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