原作『この女に賭けろ』全巻ネタバレ紹介!ドラマ化漫画が色褪せない面白さ!

更新:2021.11.16

1993年から97年にかけて青年漫画雑誌「モーニング」に連載されていた本作。2019年冬に『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!〜この女に賭けろ〜』というタイトルでテレビドラマも放送される予定で、今あらためて注目を浴びている作品です。 今回は、全15巻分の見所をご紹介します。ネタバレを含むので、ご注意ください。

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ドラマ化の原作漫画『この女に賭けろ』が面白い!【あらすじ】

 

2019年冬にテレビドラマ化が決定した本作ですが、原作の舞台は90年代の日本。

バブルが崩壊し、混乱を極めた金融業界を舞台に、一行員である女性・原島浩美が自分の力で出世をしていくシンデレラストーリーです。

 

著者
周 良貨
出版日

 

女性で初めての総合職として入行した彼女は、女性であるがゆえの偏見なども、ものともせず、常に微笑を浮かべ、ひょうひょうとマイペースに仕事をこなしていきます。そのなかで、自分のポリシーや正義感を曲げることなく、しだいに銀行の腐った内部を改革するために動くようになっていくのです。

まさに無双ともいえる活躍に、心躍る方も多いでしょう。男女問わず楽しめる金融漫画です。

 

作品の魅力とは?

 

本作の魅力は、なんといっても主人公の原島浩美です。いち行員の女性が上司や頭取を相手にしても物おじせず、ひたすら自分の信じる道を行く姿には、憧れや気持ちのよさを感じることができるでしょう。

しかし彼女は、こういったタイプの作品に多い、正義感に燃える熱い性格であったり、元気いっぱいで明るい性格であったりするわけではなく、常に微笑を浮かべ、熱くなりすぎず冷めすぎず、ひょうひょうとマイペースに仕事をするタイプです。

朝が苦手でいつも遅刻ギリギリだったり、役員専用のエレベーターを平気な顔で使ったり、周りからは、仕事はできるのになんとなく面倒を見たくなる、などと言われることも。そんなふうに、決して完璧超人でないところも、読者を惹きつける一因になっているのかもしれません。

内容としては銀行を舞台にしているため専門的なところもあり、やや難しいところもあるかもしれません。しかし細かいところはわからなくても、ストーリーを理解するうえではそれほど支障なく読むことができます。

むしろ90年代の金融業界で何が起こっていたのかを知ることができるので、そういった面に興味のある方も、ぜひ読んでみてください。

 

『この女に賭けろ』1巻の見所をネタバレ紹介!

 

原島浩美は、中堅都銀・よつば銀行で女性総合職として働いていました。

ある日、彼女は上司から台東支店へ副主事として赴任するように言われます。それは、昇進であるとともに左遷ともとれる人事でしたが……。

 

著者
周 良貨
出版日

 

男女雇用均等法によって、女性にも総合職の道が開かれ始めた時代。本作の主人公である浩美は、女性総合職の第1期として、よつば銀行で働いている30歳の女性です。

社員としては優秀で、同期トップで副主事に昇任。鋭い観察力と発想力、行動力も兼ね備えた優秀な社員ですが、性格はひょうひょうとしていて、周りの空気に呑まれないマイペースなところがあります。

同期のなかではトップで副主事に昇進するものの、同時に業績不振の支店への異動も決定。それは、女性で優秀な彼女を厄介払いしたとも、あるいは女性ながら男性と同等の大抜擢とも、どちらとも取れる異動でした。

1巻では、異動先である台東支店で働き始め、そこでシンワ商事との契約を2ヵ月で取らなければならないという課題を突き付けられるさまが描かれていきます。

無理難題とも取れるその課題に対し、出来なかったら逆立ちで支店の周りを一周するなんて啖呵をひょうひょうと切ってしまう辺りに、浩美のキャラクター性の強さを感じることができるでしょう。

クールで、優秀で、マイペースな彼女の活躍がますます気になってくる第1巻です。

 

『この女に賭けろ』2巻の見所をネタバレ紹介!

 

ある日、浩美は支店長に呼び出されます。そこで伝えられたのは、本店から「赤紙」がきたということでした。

支店の存続さえも危ぶまれる危機に、彼女が取った行動とは……?

 

この女に賭けろ(2) (モーニングコミックス)

周良貨 (著), 夢野一子 (著)
講談社

 

台東支店に赴任してきた浩美は、2ヵ月で新規取引先の開拓に成功するなど、着々と実績を積み重ねていました。そんななか、台東支店に降りかかったピンチ。それは本店からの「赤紙」でした。

「赤紙」というのは、「取引再検討表」というもので、赤い紙でくることから「赤紙」と呼ばれていました。再検討という名前がついているものの、実際はリストに挙げられた取引先から早々に賃金を回収し、取引を辞めることを要求する紙です。

もともと台東支店は業績不振ということもあり、この「赤紙」をきっかけにして、本店は台東支店を片づけようとしているのではないかと、支店で働く人達は戦々恐々。

リストに載っていたのは渡辺興産という会社で、暴力団と繋がりがあるのではないかと考えられていました。早速その会社について調べ始めた浩美。そこで出会ったのは、いまだに夢を諦めきれずにいた老社長でした。

本巻では、この渡辺興産の物語がメインに描かれていきます。バブル時代、多くの人でにぎわっていた浅草。そんな華やかな時代と、バブルが崩壊した後の両方の時代を知っている老社長が、何ともわびしく、それでいて生き生きと描かれています。

そんな熱い社長の夢を応援するのに、浩美は相変わらずひょうひょうとしているのです。本店の思惑を自分の力だけで打ち砕いていく彼女に、快感を覚えずにはいられません。

 

『この女に賭けろ』3巻の見所をネタバレ紹介!

 

長く業績不振に悩んでいた台東支店でしたが、浩美の働きもあり、わずかながら目標を上回ることができました。

しかし、浩美の働きを危険視した支店長は、彼女の再教育を目論んでいて……!?

 

この女に賭けろ(3) (モーニングコミックス)

周良貨 (著), 夢野一子 (著)
講談社

 

これまでシンワ商事や渡辺興産など、新規開拓や事業支援などさまざまな形で実績を作ってきた浩美。その働きのおかげもあって、業績不振の台東支店もようやく目標を上回ることができました。その結果に大きく関わっている浩美ですが、支店長はむしろ、彼女を危険分子として見るようになります。

なぜなら彼女は、結果をもたらすとともに周りに敵も作っていたからです。要するに、いくら仕事ができても本部や上司など上の者に逆らう人間はいらない、と支店長は考えているのです。彼女を自分の考えに染めるため、彼は彼女の教育をしようと考えたのでした。

自分で考えて自分で動けとは、仕事に限らず誰しも1度は言われたことがあるかもしれません。しかし、本作に登場するこの支店長は、

自分で動き過ぎる人間は危険なのだ。
(『この女に賭けろ』3巻より引用)

と言っています。しかも同時に、

イエスマンばかりでは銀行の発展はない。
(『この女に賭けろ』3巻より引用』)

とも……。本作が発表されたのはもう20年以上も前なのですが、今でもこれらの台詞や考え方にドキリとする方は多いかもしれません。そんな思惑が渦巻くなかでも、マイペースに仕事にまい進する浩美は、ますます魅力的に見えるでしょう。

 

『この女に賭けろ』4巻の見所をネタバレ紹介!

 

東京経済新聞産業部で記者をやっている友人の話から、日本MTというベンチャー企業を知った浩美。

そのなかで融資課の丹波と知り合いますが、銀行ではベンチャー企業に対する融資や育成には限界があると知り……。

 

この女に賭けろ(1) (モーニングコミックス)

周良貨 (著), 夢野一子 (著)
講談社

 

前巻で、新聞記者の友人から日本MTの存在を知った浩美。そこへの融資を担当していた丹波とも知り合い、早速接触しましたが、そこで知ったのは企業乗っ取りに巻き込まれている日本MTの現状でした。

日本MTは、大日本半導体という大手企業から独立したベンチャー企業で、新しいタイプの研究開発企業として注目されている存在です。それを率いるのは、黒田法眼という女性社長。

お金と人材という分厚い壁に阻まれながらも、浩美は丹波とも協力し、銀行のシステムの隙間を縫うようなやり方で、ベンチャー投資へと足を踏み入れていきます。かなり危険な賭けではありますが、ハイリターンを求めるならハイリスクも仕方ないと、あっさりと考えている浩美は相変わらずカッコイイです。

彼女は自分で自分のことを、

内心ではけっこうジタバタしてるのに私はいつも笑っている
(『この女に賭けろ』4巻より引用)

と言っています。そんな台詞通り、どんな危険で大胆なことも微笑を浮かべながらやってのける彼女だからこそ、本作の主人公にふさわしいのかもしれません。

ちなみに前巻で明らかになったことですが、彼女は大学時代に格闘技研究会に所属していたよう。そのあたりにも、その胆力の秘密が隠されているのかもしれません。

 

『この女に賭けろ』5巻の見所をネタバレ紹介!

 

よつばが約2千億円もの融資をしている実業家が破産の危機に陥り、その事態は浩美のいる台東支店の存続にも関わってくることになりました。

しかし、その負債はそもそも、よつばの融資が原因であることがわかり……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

約2千億円というとんでもない額の負債と、銀行内にうずまく派閥争い。どんどんとそのスケールが大きくなっていく本作ですが、スケールが大きくなっても敵が手強くなっても、浩美の顔から微笑が消えることはありません。

負債を背負った社長である桜庭に、これ以上わがままを言うなと別荘まで足を運んだり、よつば銀行を守るためには社長をはじめとしたよつば銀行の役員を敵に回すことも辞さなかったり、静かで冷静で、それでいて熱いものがあります。

特に、経営者ではなく会社を救うと決意している浩美の姿はとても頼もしい反面、恐ろしいものも感じさせます。同じ口で、本店よりも支店は人間同士の付き合いが楽しいと言っているので、よっぽど桜庭のやり方が気にくわなかったのかもしれません。

また、本巻では台東支店の支店長も奔走します。支店長といえば、浩美をよく思わず再教育を施そうとしたこともありましたが、この頃になると彼女のことを認めるようになっていました。その顔からはあまり善人のようには思えませんが、密かに根回しをする様子などは、なかなか頼もしいでしょう。

いずれにしても、敵は本店の副頭取。浩美はもちろん、台東支店がどうなってしまうのでしょうか。これからの展開がどうなるか、気になるところです。

 

『この女に賭けろ』6巻の見所をネタバレ紹介!

 

ノルマに耐え切れず、銀行から逃げ出してしまった吉田。

彼の進退をかけたピンチに、浩美は彼に仕事に臨む態度や信念を伝えますが……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

吉田と浩美の30億融資話が決着する本巻。前巻では、厳しいノルマに耐え切れず銀行から逃げ出してしまった吉田が、己の進退をかけて浩美とともに、青年実業家との融資対決に挑む様子が描かれていました。ここで、その決着がとうとうつくことになります。

吉田は1巻から登場している台東支店の社員で、内気で気弱な性格の男性です。そんな気弱な彼が、浩美の助けを借りながらも必死に強気でキツイ性格の青年実業家と渡り合う姿に、その成長を感じることができるでしょう。

青年実業家というのは、流通ゲリラをもくろむプライジャパンという会社の社長。巨額な投資を望む彼に対し、浩美と吉田が申し出たのは「企業は人」という理念でした。

銀行といえば巨大な融資を提案するものだとイメージする読者も多いかもしれませんが、こういった内容を読むと、そればかりでないことがわかります。

こんな銀行の裏側の世界を見せてくれるのも、本作の面白いところです。ちなみに、吉田は有能な浩美に対して憧れと淡い恋愛感情も抱いており、今後が気になるところ。他に、浩美がヘッドハンディングされる話や、島津副頭取の再登場など本巻も見所は満載です。

 

『この女に賭けろ』7巻の見所をネタバレ紹介!

 

君は野心家だと、取引先の社長から言い放たれた浩美。

その言葉をきっかけに自分自身がこれからどうなっていくのかを想像した時、彼女が思ったこととは……?

 

著者
周 良貨
出版日

 

前巻から始まった人材ビジネスに関する物語も、本巻冒頭でひと段落。

しかし、その結果、台東支店はさらに副頭取の島津に目を付けられることとなってしまいました。とはいえ、これまで不審だった業績は確実に上回っているので、心配ではあるけれども大丈夫だろう、という雰囲気が支店には漂っています。

7巻あたりになると、支店で働く同僚達の態度も始めの頃とは大きく変化。浩美に恋心を抱く吉田をはじめ同僚達は彼女を信頼している様子がうかがえますし、何より支店長は自分が台東支店を、そして浩美を守ると公言するなど、とても頼りがいのあるキャラクターとなっています。

本巻では、そんな支店長が本店に呼び出されることに。副頭取の島津を敵に回しているわけですからハラハラする展開ですが、ここではまさかの展開が待ち受けています。どんな展開なのかは、ぜひ実際に読んで確認してみてください。

また野心家だと言われた浩美が、自分の将来について考える姿も印象的です。たとえ自分が権力を持つことになっても、それを恐れず、そして力そのものを求めて振りかざすような人間になりたくない、と考える辺り、とても彼女らしさが出ていて、なおかつ読者もハッとさせられるでしょう。

女は度胸、と思う彼女の姿に、新たな幕開けを感じさせてくれる第7巻です。

 

『この女に賭けろ』8巻の見所をネタバレ紹介!

 

遂に主事に昇格を果たした浩美は台東支店を離れ、本店の業務開発部調査役として働くことになりました。

その異動に島津の思惑を感じながらも、彼女は同僚の日々野聖子と湾岸新都市計画に関わることになり……。

 

著者
周 良貨
出版日

 

島津の思惑か、それとも女性登用に対して積極的になっていこうとしているよつば銀行の方針なのか、主事に昇格した浩美は再び本店で働くことになりました。

舞台が台東支店から本店へと移ったことはもちろんですが、8巻あたりから、物語はだんだんと銀行内部の派閥や権力抗争などへと重みが傾いていきます。

それまでの、お客さんと戦ったり応援したりしていた雰囲気からは少し変わってくるので、読者によっては好みも分かれてくるかもしれません。ただ、そのぶんスケールはどんどん大きくなっていくので、また違った面白みを感じることができるのは間違いないでしょう。

業務開発部調査役になってから一緒に働くことになったのが、日比野聖子という女性です。浩美にとっては後輩にあたる彼女ですが、ハーバード大学に社費留学したりニューヨーク支店で働いたり、まさにエリート街道を行くような女性。人事解析プログラムによると、将来は副頭取まで上り詰めるのではないかと考えられているほどの存在なのです。

一方、浩美は、このプログラムによると将来の予測は「?」のまま。つまりは、未知数。プログラムのパターンにハマらない彼女がこれから本店でどういった活躍を見せるのか、ますます気になるところでしょう。

 

『この女に賭けろ』9巻の見所をネタバレ紹介!

 

台東支店の窓口で働いていた女性・松田葉子の結婚式の二次会に出席した浩美。葉子の相手は、浩美と同じ頃に主事へと昇格した橋爪浩一でした。

島津派である彼ですが、それが気にくわない人間が二次会で暴れ出して……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

よつば銀行では副頭取の島津と、彼のやり方が気に入らない人間との派閥に分かれていました。本巻の冒頭で結婚式を挙げている橋爪は島津派の人間であり、本店のエリート。浩美と同時期に主事へと昇格したこともあり、彼女とはライバル関係にある男です。

そんな彼と結婚したのが、台東支店の窓口で働く松田葉子です。彼女は総合職として入行したものの、女性であるがゆえに正当な評価がもらえないと考え、一般職に変わった女性でした。

そのため、浩美が台東支店へやってきたばかりの頃は、総合職で活躍する浩美のことを気に入っていないようでしたが、エリートである橋爪と結婚してからは彼とともに上を目指していくことにしたようです。

上昇志向があるがゆえに浩美に冷たく当たっていた彼女も、浩美とは違う形で荒波の中を進もうとしているのかもしれません。

本巻では、浩美の同期である高杉が登場します。この人物は新入社員の頃から世話になっており、橋爪を慕っているようなのですが、その橋爪が島津派になってしまったことが気にくわないようでした。それは、島津の周りで、きな臭さがありすぎるからです。

このままではよつば銀行がダメになると考えているらしい彼は、「よつば銀行を守る会」を作ったと言って、浩美も仲間になるように誘ってきました。

ますます派閥争い、権力争い、さらによつば銀行の支店で起こったスキャンダルなど、浩美の周りでうごめき、黒い思惑から目が離せません。

 

『この女に賭けろ』10巻の見所をネタバレ紹介!

 

浩美が働く本店業務開発部。彼女と聖子の2人は「業開」の原島と日比野としてよつばのなかでは有名な存在となり、女性総合職のエースとしてその活躍が注目を集めていました。

そんななか彼女達のいる業務開発部では、男性社員はすべて浩美と聖子の補佐に回るという話が持ち上がり……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

すっかりよつばのなかで有名な存在となった、浩美と聖子。時代も女性登用の流れが強くなったこともあり、2人は女性総合職のエースとして認められるようになっていました。女性の活躍やそれをよく思わない流れがある反面、女性の活躍を推進する動きなど、さまざまなことが現実とリンクしているのも、本作の特徴です。

本巻に限った事ではありませんが、男性社会のなかで活躍する女性に嫌味がないのも、本作の魅力の1つ。ひょうひょうと微笑を浮かべながらマイペースに仕事をする浩美はもちろん、上昇志向が強く野心を抱えながらも決してヒステリックになることのない聖子のキャラクター性も、読者にとって読みやすく、面白い一因になっているはずです。

本巻では、そんな2人が「業開」の立て直しに尽力することになります。浩美達が活躍している一方、男性社員の成績はあまり芳しくなく、さらにバブル期に採用されている社員達はリストラ対象になっていることから、注目度が高く優秀な女性の下に男性が付くことになったのです。

このことが「業開」にどういう結果をもたらすのかは、ぜひ実際に読んで確認してみてください。

また、仕事だけではなく恋愛事情にも触れられています。男の幸せ、女の幸せ、仕事と家庭と、どこにどんな幸せがあるのか、読んだらつい考えてしまうなんてこともあるかもしれません。

 

『この女に賭けろ』11巻の見所をネタバレ紹介!

 

浩美と聖子を中心に、ますます飛躍を遂げていく業務開発部。特に聖子のチームは大幅に成績を伸ばしていきます。

しかし、彼女はそれで満足はしておらず……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

女性総合職のエースとして、よつばのなかでは知らない人はいないほどの有名人になった浩美と聖子。業務開発部は、2人を中心にますますその活躍を高めていき、それがよつば銀行全体の動きを左右するほどのものになっていました。

特に浩美の働きは、よつば銀行の今後の方向性を巻き込むものとなっていて、そのことを理解している聖子は、ますます彼女にライバル心を燃やしていくことになります。

しかしライバル心を燃やすといっても、あからさまにバチバチするわけではありません。仕事では協力するし、実力も認め合っています。心の中だけでは、浩美に勝つためにはどうしたらいいのか、常に考えているのです。その様子を、どこかヒリヒリとするような感覚で読むことができるでしょう。

また経営破綻寸前の信組マンモスを救うか救わないかで、浩美と島津は再び敵対することに。浩美は島津を敵に回しながらも、マンモスを救済する方法を模索していきます。そんな彼女の行動が、女性総合職というポジション、そして彼女自身をとにかく嫌う島津の立場を、少しずつ危ういものにしていくのです。

さらに、島津の腹心の部下である草柳の思惑があったり、浩美の意表を突いたやり方だったりに、思わず感嘆の声をあげてしまう方も多いかもしれません。島津の威信がますます揺らいでいく、第11巻です。

 

『この女に賭けろ』12巻の見所をネタバレ紹介!

 

銀行の社会的責任を果たすためマンモスを救済することに成功した浩美でしたが、それと引き換えに島津の陰謀が牙を剥きます。

彼女の行く先に陰が落ちた時、周りにも変化が……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

社会的責任を説いてマンモスを救済した浩美でしたが、それと引き換えに、彼女自身は初めての降格処分という憂き目に合うことになってしまいました。降格されれば、これまで順調だった出世街道にも陰が落ちてしまいます。

出世を当てに媚びを売っていた女性社員は、そんな彼女を見限ろうと考えます。しかし、浩美があまりにも余裕である様子と、聖子が降格された浩美を高く評価していることから、浩美には何か秘密があるのかもしれないと考え、彼女の周りは調査されることに。

実は、浩美は左遷される危機もあったのですが、それを防いだのは島津派の橋爪でした。なんと浩美は、橋爪とともに島津を頭取にさせるというビジョンを考えていたのです。敵対している島津ですが、彼女にとっては敵でも、よつば銀行にとっては必ずしも敵とは限りません。

橋爪も同じ考えで、毒にも薬にもなりえる可能性がある「島津頭取」という存在に賭けてみようと考えていたのでした。

一方、浩美と橋爪が密かに会っていたことを知った女性社員は、不倫のデマを橋爪の妻・葉子に伝えます。女性社員の野望はとてもシンプルでわかりやすく、人間味があるともいえるでしょう。

好き嫌いや大小はともかく、それぞれがそれぞれの思惑や信念を貫いている様子は、とても清々しく読むことができるのではないでしょうか。静かなのに心がざわめく展開に、ますます先が気になります。

 

『この女に賭けろ』13巻の見所をネタバレ紹介!

 

新頭取となった島津!

しかし、そんな新しい頭取に対し反旗を翻すべく着々と準備を進める常務は、浩美に工作員として働くように求めてきて……!?

 

著者
周 良貨
出版日

 

浩美や橋爪の思惑通り島津新頭取が誕生したものの、よつば銀行のすべての人がそれをよく思っているわけではありませんでした。むしろ反島津派の人間は増える一方であり、反島津派の不満は爆発寸前です。

そんななか島津を引きずり落そうとしている常務は、よつば銀行全支店を反島津の拠点とするべく、島津派と中立派の人間を懐柔しようとしていました。その工作を、昇格と引き換えに浩美に命じてきたのです。

ですが、支店こそ銀行の命と考える浩美にはとても受け入れられる考えではなく、彼女は断ったうえでストライキを決行します。

ここで彼女が言う「支店こそ銀行」という台詞は、1巻で支店に配属され、銀行の最前線でさまざまな人と触れ合い、本店に戻ってからも支店との繋がりを重視してきた彼女の信念を端的に表していて、とても重みがあります。

浩美のここまでのストーリーを読んでいる人にこそ、この台詞は響くのではないでしょうか。

物語もそろそろ佳境に入ってきたことで、派閥争いもますます激化。残り2巻でどんな展開が待っているのか、早く先が知りたくなること間違いなしです。

 

『この女に賭けろ』14巻の見所をネタバレ紹介!

 

新たに支店統括部の調査役となった浩美と聖子は、関西地区の支店へ視察へ赴きます。

そこでくり広げられていたのは、賄賂や接待が横行している現状で……。

 

著者
周 良貨
出版日
1997-08-01

 

本部でますます激化する、島津新頭取と反頭取の派閥争い。そこに乗じて反乱を企てたのが、関西地区の支店長達でした。彼らが求めているのは、人事や予算の決定を本部から独立させ、支店主導にするというもの。

それは単なる支店の要望という枠から大きくはみ出して、もし実現すればよつば銀行という組織、さらには金融業界をも変える一大事です。

そこで浩美と聖子は火消し役として、櫛田常務とともに関西へと派遣されたのでした。関西地区の支店では、毎日のように融資先から物品を受け取ったり、料亭で接待されたり……。

聖子はそれを賄賂、収賄と受け取り糾弾しますが、浩美の方はそれだけとは考えていません。関西地区を管轄する櫛田常務のそういったやり方は、数字ではなく人を判断する1つの方法として捉えていたのです。

この考え方は前巻で浩美が言っていた、支店こそ銀行だという台詞に根付いたものといえるでしょう。支店を重要視する彼女が、金融業界を変えようとしている支店を舞台にどう立ち回っていくのかが、本巻の見所の1つとなっています。

ラスト一冊を残すところになって、加速度を増すストーリーから目が離せません。

 

『この女に賭けろ』15巻の見所をネタバレ紹介!

 

ニューヨーク支店で発覚した不正取引。その落着に向けて設置された「特別広報室」の室長に、浩美は任命されました。

それに伴い昇格もして、女性初の参事になった彼女でしたが、その前に現れるのは曲者ばかりで……。

 

著者
周 良貨
出版日

 

10年分の出世ともいえる大出世を果たした浩美。よつばの行員のなかでは、常識破りの原島浩美と、2つ名のように呼ばれている彼女らしい抜擢ではありましたが、この「特別広報室」の正式名称は「ニューヨーク支店不正取引に係わる特別広報室」。

つまり、不正に関することを記者会見をする係でもあり、彼女はマスコミから客寄せパンダのような扱いを受けることになります。また、この不正をきっかけに、よつば銀行は大蔵省から合併の話を持ち掛けられていました。都銀の数を減らしたい大蔵省にとって、よつば銀行の不正は渡りに船だったのです。

そんな、よつば銀行全体の危機のなか、浩美は相変わらず微笑を浮かべてひょうひょうと仕事をこなしていきます。室長の就任は確かに大出世ではありますが、取りようによっては女性初参事という物珍しさや、女性というイメージを利用した客寄せパンダでもあります。

取り方1つでプラスかマイナスかになるあたりは、ちょうど1巻と同じ構図であり、最終巻を読む読者の気持ちを熱くしてくれるでしょう。また、ここにきて強力な個性を持った官僚・門脇というキャラクターも登場。

頭取の島津や、官僚の門脇、大蔵省とさまざまな相手を前に浩美がどう立ち回り、最後はどうなっていくのか……ぜひ手に取って確認してみてください。

 

いかがでしたか?バブルが崩壊した後、日本の金融業界は混乱をきわめていました。また女性の社会での活躍も、今より厳しかった頃でもあります。そんな時代背景のなか、マイペースに自分のスタイルを崩さず、出世街道をまい進する浩美の姿に、男性も女性も魅了されること間違いなし。

2019年1月にはテレビドラマも始まる本作。これを機に、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

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