いまや美術ミステリーの代表作家といっても過言ではない原田マハ。美しく耽美で、ドラマチックな展開に魅力を感じている人も多いでしょう。この記事では、そんな原田マハの小説が好きな方におすすめの、美術ミステリー小説を紹介していきます。
ある日ルーヴル美術館の館長が、レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を模した遺体で発見されるというセンセーショナルな事件が起こりました。
「ウィトルウィウス的人体図」は、円と正方形の内側に、両手と両足が異なる位置にある裸体の男性が重なって描かれているもの。「プロポーションの法則」や「人体の調和」とも呼ばれていて、実際にヴェネツィアの美術館に保管されています。
容疑者として疑われたのは、館長と会う予定があった宗教象徴学者のロバート・ラングドン。フランス警察から目を付けられますが、暗号解読官を務めていた館長の孫娘ソフィーの協力を得て、逃げることに成功しました。ソフィーは、祖父の象徴的な遺体の謎は自分にしか解けない暗号だと考え、その解読のためにラングドンの力を借りたいと思っていたのです。
そうして2人は、フランス警察から追われることとなります。ひとつの暗号を解くたびに現れる、次なる謎。2人はフランス警察と館長殺しの真犯人たちから逃亡を続けながら、ダ・ヴィンチの名画を巡る謎と聖杯伝説の秘密に迫っていきます。
- 著者
- ダン・ブラウン
- 出版日
- 2006-03-10
ラングドンとソフィーは、事件の犯人だけでなく、ダ・ヴィンチの絵画に隠された暗号や聖杯伝説の真相、秘密結社の存在など、古くから伝わる謎を解いていくことになります。しかし彼らは、殺人事件の容疑者として警察から追われるだけでなく、事件の真犯人からも狙われることに。
ひとつの謎を解くたびに次の暗号が現れ、知的好奇心をくすぐる仕掛けが次々と登場するのが魅力です。やがて事件は西洋の歴史や文化をめぐる大いなる探索へ……。
良質な美術ミステリーとして世界中で話題になった傑作だといえるでしょう。映画化もされ、そちらでは本作の舞台となった美術館や教会、アート作品をビジュアルとして見ることができます。ぜひ本書を読んだ後にご覧ください。
舞台となっているのは日本。「エコール・ド・パリ」とは、20世紀前半に各国から集まりパリを拠点に活動していた画家たちのことです。ある日、そんな「エコール・ド・パリ」を愛していた画商が、密室で殺されました。
しかし、貴重な絵画はまったくの手つかず。一体誰が、何のためにした殺人だったのでしょうか。被害者の残した美術書を手掛かりに、自由気ままなフリーターの神泉寺瞬一郎が、刑事で伯父の海埜とともに事件の謎に迫っていきます。
- 著者
- 深水 黎一郎
- 出版日
- 2011-05-13
深水黎一郎の人気作「芸術探偵」シリーズの第1作目にあたります。
被害者が書いた「呪われた芸術家たち」の論文が作中にいくつか挿入されているのが特徴。アートに入れ込み悲劇的な人生を歩んだ「エコール・ド・パリ」について論じた、作中作が面白いのも本書の魅力でしょう。
もちろん事件の推理には、この論文の内容が深くリンクしていて、謎のピースがピタリとはまる快感は抜群。クラシカルながらも完成度の高いミステリーを楽しめます。
正体不明の浮世絵師「東洲斎写楽」。浮世絵の研究をしている津田は、古書市で見つけた古い写真図録からヒントを得て、その謎に迫っていきます。
しかし彼の周りでは、浮世絵愛好会の会長の死や、津田の発見を横取りしようとした恩師の死など、連続殺人が発生し……。
写楽の謎と殺人事件の謎が描かれる二重構造のミステリーです。
- 著者
- 高橋 克彦
- 出版日
- 1986-07-08
作者の高橋克彦は、浮世絵の研究者でもあるのだとか。そのため本作中に詰め込まれた浮世絵に関する知識も、密度の濃いものになっています。
東洲斎写楽は、江戸時代中期に、約10ヶ月しか活動していないにもかかわらず140点あまりの作品を残して、忽然と姿を消した浮世絵師。その正体や経歴について、研究者の間で議論が交わされ続けている人物です。
徐々に写楽の正体に肉薄していく様子に、ぐいぐいと惹き込まれていくはず。物語を読み進めるごとに浮世絵にまつわる知識がついていき、読者も写楽像を描けるのですが、それをいい意味で裏切るような結末が待っています。
5年間で500点もの作品を残し、謎の自殺でこの世を去った画家の東条寺桂。興味を抱いた学芸員の矢部直樹は、桂の絵を求めて彼の妻だった女性を訪ねます。
しかし妻は、家族をかえりみることのなかった桂を恨み、死後ほとんどの作品を焼き払ってしまったというのです。残っているのは、知人や親戚に売っていた3点のみ。矢部は遺された絵を「図像学」という手法で読み解こうとします。
桂の絵と、20年前に彼の義父の家で起きた二重密室殺人の謎が絡み合い、事態は複雑になっていきます。
- 著者
- 飛鳥部 勝則
- 出版日
「図像学」というのは、絵画や彫刻など美術作品の、意味や主題を研究する学問のこと。作中で読者に示される絵画はなんと作者の自作だそうで、その絵を図像学で読み解くいていくのが本作の魅力です。そのほか絵画に関する知識も多く語られていて、美術ミステリー好きが十分楽しめる内容でしょう。
また過去に起きた殺人事件は、2つの部屋でほぼ同時刻に、同じ凶器が使われたというもの。不可能と思われる犯罪を推理していく過程では、読者をミスリードさせる叙述トリックや、思わぬところに張られた伏線など、さまざまな仕掛けが。ミステリーとしても満足できる一冊です。
ロンドンの絵画オークションで、ゴッホが描いた「医師ガシェの肖像」という絵を、とある日本人が180億円で落札しました。
やがて時が経ち、バブルが弾けた日本で、借金で追い詰められた男女のもとにある依頼が届きます。それは、債権として銀行の倉庫に眠っている「医師ガシェの肖像」を盗み出してほしいというものでした。
個性的な登場人物たちが1枚の絵に翻弄され、騙し騙されるコンゲーム小説です。
- 著者
- 望月 諒子
- 出版日
- 2013-03-12
芸術を愛している人たちにとって、作品が公開されることなくどこかに眠っている状態というのは、とても残念なことなのでしょう。本書では、そんな秘匿状態にある絵画に焦点をあてています。
生きている間は1枚も売れなかったゴッホの絵が、なぜ死後に莫大な値のつく作品になったのか、印象派の絵画は、時代とともにどのように評価されてきたのかなど、美術史にも深く言及。たった1枚の絵を盗むための壮大な計画、黒幕の正体などの謎と絡みあい、読者を飽きさせません。
さらに、美術品の取引や価格評価のからくりなども詳しく書かれているので、本書を読んだ後に美術館に行くと、また違った作品の見方ができるでしょう。
原田マハの作品を読んでみたい方は、こちらの記事がおすすめです。
原田マハのおすすめランキングベスト10!舞台化された『リボルバー』も
ゴッホをテーマにした『リボルバー』が舞台化されるなど人気沸騰中の原田マハ。美術に造詣が深く、アートをテーマにした作品を数多く著す小説家です。 この記事では、おすすめの原田マハの作品をランキング形式で紹介します。