「週刊SPA!」などで活躍する日本の漫画家。ブロガー出身のギャグ漫画家で、シュールな絵柄による実録エッセイ漫画も人気です。特に重度のアルコール依存症を告白した作品や、趣味が高じて作品となったサウナ漫画で知られています。 今回はそんな、まんしゅうきつこについて、詳しくご紹介しましょう。
埼玉県出身の女性漫画家、イラストレーター、エッセイスト。誕生日は1975年2月2日で、年齢は43歳(2019年1月現在)。身長、血液型は不明です。
既婚者であり、夫と息子がいます。後述するアルコール依存症の関係から離婚したのではないかといわれていましたが、実際にはしていないようです。
出身高校は栃木県の私立高校で、最終学歴は日本大学芸術学部。
- 著者
- まんしゅう きつこ
- 出版日
- 2015-04-09
大学在籍中に漫画家のアシスタントを務めて「ガロ」に投稿するなどしていましたが、鳴かず飛ばず。卒業後に職を転々としつつ、30歳の時に講談社に出したストーリー漫画で、ちばてつや賞を受賞しました。
……が、そこでもデビューには至らず、知り合いの勧めで始めたブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」が話題になり、漫画やイラストを手がかけるようになったのです。
名前の由来はデリケートな部分ですが、これには理由があります。SNSを始める際に、変な輩に寄りつかれないように、わざとこのようなペンネームにしたそうです。
代表作は『アル中ワンダーランド』『ハルモヤさん』など。
ここからはそんな濃すぎる特徴を持った彼女の意外な事実などをご紹介します。
エキセントリックな名前が目を引くまんしゅうきつこですが、漫画家を志したきっかけは、あの王道少年漫画『ドラゴンボール』だったといいます。
登場人物の孫悟空に本気で恋をしていたという、ちょっと変わった少女だったとか。悟空とチチが結婚した際には悔し泣きした、というエピソードまであります。
- 著者
- 江川達也
- 出版日
- 2015-09-26
そんな彼女が大学時代にアシスタント募集で行ったのは、やはり少年漫画『まじかる☆タルるートくん』などの作品で有名な江川達也の仕事場でした。絵のうまさが認められて、『東京大学物語』の背景を担当していたそうです。
ただ学業との両立が困難だったため、1年ほどで辞めたとのこと。そのまま通って入れば、もしかしたらまったく違う作風になっていたかもしれませんね。
『東京大学物語』の見どころについては<漫画『東京大学物語』の見所を最終回までネタバレ紹介!まさかの妄想オチ!?>の記事で紹介しています。
凄まじい名前と、名前負けしない破天荒なネタが魅力のまんしゅうきつこ。その作風からは想像出来ませんが、本人は意外にもスレンダー美人だというのだから驚きです。
そんな彼女の家族も、一筋縄ではいきません。
父親は経営者で、幼いころは羽振りがよかったようですが、あえなく倒産。その事実をギリギリまで家族に隠していました。
実弟は、カメラマンとして知られる江森康之。彼によれば姉との喧嘩で嘘泣きしたところ、本気にした父はまんしゅうきつこをボコボコに殴り倒したとか。恐ろしくて嘘だと言い出せなかったそうです。
母親は父親よりもしっかりしていたそうですが、会社の倒産と前後して、総額50万円以上のオレオレ詐欺に引っかかったというエピソードがあります。
また、祖母もなかなかキワモノ。一時期きつこが預けられていた祖母宅の風呂場は、なぜか食用の鯉やドジョウの泥抜き場と化しており、本来の用途で使えなかったのだとか。
こんなにも曲者だらけの家族も、なかなかいないでしょう。
まんしゅうきつこには、アルコール依存症の過去があります。
依存の状態が悪化すると、よくある手の震えや禁断症状が出てきたとエッセイやインタビューで語っているのです。さらに悪化するとアルコールだけ摂取するようになり(味もわからなくなったそう)、体は急激に痩せ細り、その反面、顔だけは異常なまでにむくんでいったのだとか。
やがて耳が悪くなり、現実と空想がごっちゃになって、鬱病も発症してしまいます。
父親に勧められて通院を初め、ようやく克服したそうです。この辺りの経緯は、実録エッセイに詳しく載っていますので、次の段落で少しご説明しましょう。
ブログ「オリモノわんだーらんど」で一躍有名となり、漫画家としての仕事が舞い込むようになったまんしゅうきつこでしたが、彼女は人知れず苦しんでいました。
それは産みの苦しみ。ブログにしろ漫画にしろ、人を楽しませるには、必ずネタが必要です。しかし、面白い話などそうそうあるわけがなく、しだいに彼女はあることにはまっていくことに……。
- 著者
- まんしゅうきつこ
- 出版日
- 2015-04-09
そのあることとは、ずばりお酒。
ペンネームからは想像出来ないほど真面目な彼女は、(名前のこともあって)誰にも苦しみを打ち明けることが出来ず、そうこうしている間にも読者の期待は高まり続け、やがて心身ともに追い詰められていきました。
そんな時に逃避先に選んだのが、アルコールだったのです。気分転換に一杯引っかけてみたら、飲酒中の出来事は記憶に残っていないものの、いつの間にか(間違いなく酩酊時ですが)家事は片付いてネタ出しまで出来ていたのでした。
気分が爽快になれて、細々とした雑事も気付けば終わっており、ネタも出来ている。周囲の期待に応えんとするまんしゅうきつこが、アルコールに溺れていくにはそれだけで充分でした。
本作では、こうしてアルコール依存症一直線となった彼女の、アル中当時の異常行動が赤裸々に綴られていきます。依存症で悩む人にも、依存症を知りたい人にも、本作を読めばその実態が一目瞭然。
まんしゅうきつこ流の面白さと同時に、切実な問題が手に取るようにわかることでしょう。
とある漫画家のアシスタントを辞め、職を転々としていたまんしゅうきつこは、ある日、テレビ番組で体当たりでおこなう職業体験企画を目にしました。その内容とは、無名の新人アイドルがオムツプレイ専門の風俗店に体験入店するというものだったのです。
経営者の説明をぼんやり見ていた彼女は、「自分にも出来るかもしれない」と考え、軽い気持ちで後日応募したのでした……。
- 著者
- まんしゅう きつこ
- 出版日
- 2015-12-04
本作は、まんしゅうきつこの原典「オリモノわんだーらんど」で不定期連載されていた漫画と、2014年1月から同年12月にかけて「小説すばる」で連載されていた記事をまとめたものとなっています。
そこで描かれるのは、まんしゅうきつこ本人と、まんしゅう家の人々が実際に体験した抱腹絶倒の信じられないエピソードたち。あらすじで書いたオムツプレイ専門店への面接からして、かなりぶっ飛んでいるのがおわかりいただけるでしょう。
ちなみに同エピソードでは、面接時のやり取りがかなり詳細に記されています。SMプレイというより、介護職に近いらしいという事実に驚きます。
この他、実弟の包茎手術告白など、このレベルの体験談が満載です。ブログの方では今や読めない話となっており、あらゆる意味でまんしゅうきつこを楽しむうえでは欠かせません。
日夜空想に悩まされていたまんしゅうきつこは、実弟に指摘されたことでデトックスを決意。毒を抜くにはサウナで汗をかくのがよい、という助言に素直に従って、彼女は銭湯へと通い始めました。
ですが、そこは彼女にとって、別な意味で気の休まらない場所だったのです。どこのサウナに行っても、マナーにうるさい「主」のようなおばさんが待ち受けていたのですから……。
- 著者
- まんしゅう きつこ
- 出版日
- 2018-05-20
「週刊SPA!」で連載されている実録銭湯漫画『湯遊白書』を改題したのが、この『湯遊ワンダーランド』です。実録エッセイが面白いまんしゅうきつこによる、近年話題のサウナ体験がメインとなっています。
女性芸能人の影響でブームとはいっても、銭湯の女湯、ましてサウナともなれば、その実態は謎に包まれていました。それを、まんしゅうきつこはシュールに、面白おかしく赤裸々に描き出していくのです。
たかがサウナ、と侮ってはいけません。そこには気質の世界と異なる、未知の女の世界があるのでした。まんしゅうきつこ以上にアクの強いおばさんキャラ(実在の人物がモデル)は衝撃的。
こんなにもサウナが面白いと思える作品は、本作以外にありません。
いかがでしたか?名前で敬遠されがちかもしれませんが、彼女自身もエッセイ漫画も非常に面白いものとなっています。少しでも興味の湧いた方は、ぜひお手に取ってみてください。