ホラー漫画の鬼才・楳図かずおのSF漫画の傑作。それが、本作『わたしは慎吾』です。小学生同士の恋愛と、1体のロボットを主軸に描かれたSF漫画となっています。 80年代というラブコメ全盛期に描かれた本作は、周囲の風潮に抗うどころか、まるで蹴散らしていくようなパワーが宿った作品。今回は、そんな本作の見所をご紹介していきましょう。
小学生の近藤さとるは団地住まい、父親は工場勤め。同級生が恋愛に興味を抱いているとき、悪ふざけばかりしているような、周囲よりも幼い少年でした。
そんなある日、父親の勤務先の工場に、ロボットが導入されます。
ロボットと聞いて、さとるは大はしゃぎ。ロボットは「モンロー」と名付けられ、父親はティーチング(位置ぎめ)の仕事を任されるようになります。
やがて、さとるの学校で父親の工場を見学することになり、彼は期待でワクワクするのでした。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
しかし、工場を見学に行ったときに見かけたモンローは、アームだけの作業様ロボットでした。期待が外れてがっかりする彼でしたが、そこに別の小学校の女子たちが見学に来ているのを見つけます。
彼はそのうちの1人の女の子に一目ぼれし、名前を聞きました。彼女の名は、まりん。
名前しか知らない2人はやがてお互いを探し求めて、いつしか工場にたどり着き、再会します。そして夜間の工場に忍び込み、モンローとも再会を果たすのです。
そしてそこから2人の人間と1体の機械の日常が、大きく変わっていくことになるのでした。
『わたしは慎吾』。このタイトルの意味が明かされるのは、本編が始まってからだいぶ後の方になります(連載開始から2年経ってから)。つまり本作は、作品名さえも引きになっているのです。
本作の連載が開始されたのは、1982年のころ。80年代は、家庭用パソコンや工業用のロボットが出回った時期でもありました。つまり、コンピューターやロボットが日常に出始めた時代でもあるのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-02-01
本編のストーリーに大きく関わることになるロボット・モンローは、主人公の少年・さとるの父親が勤めている工場の作業用ロボット。
もともと「ロボット」という単語はチェコの言葉で「労働者」を意味しており、出典はカレル・チャペックの劇作品『R・U・R――ロッスムのユニバーサルロボット』からです。同作は、人間の仕事を肩代わりするために造られたロボットが自我に目覚め、いつしかロボットたちが人間に取って代わろうとする話です。
これは自我に目覚めた機械を描くことで、機械の発達と、その先にたどり着いた世界を表したSF作品といえるでしょう。
『わたしは真悟』でも、工場長の夫婦はロボットを自身の工場に導入すると、職員をすべて解雇して、ロボットを彼らの代わりに働かせて工場を運営しようとします。しかし、その後モンローが自我を持って暴走したために、工場は滅茶苦茶になってしまうのです。
モンローは工場を出て、自立して行動するようになります。そして文字や電話を介して人間と会話し、人間のこと、愛や魂、そして世界のことを学習するようになるのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-03-01
「R・U・R」のロボットが最後に愛を知って人間のようになっていくのに対し、モンローは急激な進化を果たし、世界中のコンピューターや機械と繋がる力を身につけて、まるで神のような存在にまでなります。
このことから、本作はロボットやコンピューターを進化させたその先に、何があるのか?というのを、私たち読者に問いかけている作品だといえるのではないでしょうか。
今、急速な発展を遂げているAI。しかし、もし「自我」を持ち始めたら、どうなるのでしょうか?怪物になるのか、それとも神になるのか。その先は、私たちにはまだわかりません。
本作には、いくつもの謎があります。
まず、モンローはなぜ自我を持ったか。さとるとまりんは自分たちの愛の証を得るために、ある質問をモンローにすると、モンローはあいまいな回答を出しました。彼らはそれをヒントにして、東京タワーから飛び移ることを思いつくのです。
その後2人のこの行動がいかなる因果関係になったのかはっきりと描写されていませんが、この時モンローのコンピューターや回路に異常をきたすような描写があります。そうして、モンローは自我を持つようになったのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-03-01
もっとも、以前からモンローは回路に異物が入ったことで暴走したり、さとるやまりんから作業以外のプログラムを入力されたりしているので、そうしたことが下地となったのかもしれません。
他に作中の大きな謎に、モンローが作っている「機械の部品」が挙げられます。この部品ですが、さとるの父は、これを農機具のモーターと言っていました。
この農機具のモーターは4巻でアメリカ行きの飛行機にて輸送されていますが、この時、飛行機は墜落してしまいます。
そして落下した飛行機からモーターがばら撒かれてしまいますが、これを拾った者は、なぜか命を吸い取られて死んでしまうようなのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-04-01
しかし、モンローのコンピューターをプログラムしたコンピューター研究所の所員は、この農機具のモーターを見て、こんなものを作るようにプログラムをしなかった、と発言。
さらに彼は(モンローに)ブラックボックス(この場合、重要機密が見れないように、装置の内部を封印すること。秘密プログラム)が仕組まれていた、とも言うのです。そうだとすれば、モンローは初めからおかしかったことになります。
モンローもコンピューターと繋がった際にモーターを調べましたが、仕組みも、自分にこれを作らせた者の正体もわからなかったよう。そんななか調べている最中に、軍事衛星にジャックされてしまいます。
このことから、もし軍事衛星がモンローを妨害したのだとすれば、モンローの作ったモーターは軍事に関係した何かなのかもしれません。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-04-01
さらに考察すると、物語の後半で判明しますが、モーターは世界中に輸送されていたよう。そして、これを回収しに謎の男たちが現れます。彼らは海外に出向いてまで、このモーターを回収していたのです。
実は、さとるが引越しをするときに、自分の部屋だった場所に人影のようなものを目撃しています。もしかしたら、この人物も、あの謎の男たちだったのかもしません。
回収しに来た男達は7巻で、自分たちはモンローの働いていた工場にモーターを作るように依頼した者と言い、さらに、作り間違いがあったのでモンローとモーターを回収しにきた、とも言っています。
モーターが作り間違いということは、モーターが命を吸い取ったのは事故なのでしょうか?謎は深まるばかりです。
小学生の近藤さとるは、父の勤務先の工場にロボットがやってくるというので大はしゃぎ。しかし父親は、自分の仕事をロボットに取られたようで面白くありません。
やがて、さとるは自分の通っている小学校の行事で、父親の職場で働いているロボットを見学しに来ました。しかし、それは彼の思い描いていたようなロボットはなく、ベルトコンベアで作業をしている「モンロー」と名付けられたアームがあるだけのロボットだったのです。
がっかりした彼は、そのままみんなと帰ろうとすると、工場の入り口で別の小学校の女の子とすれ違います。
彼女の名は、まりん。
後日、さとるは夜中に工場に向かうと、そこには彼女の姿があったのです。
この記事では、文庫版の内容で本作を解説していきます。本作は抽象的で意図がわかりくい描写や、謎多き設定が多いのですが、ぜひご自身で読んでいただいです。きっと、本作の魅力にはまってしまうでしょう。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
本作の出だしは、3つの視点で成り立っています。1つは子供であるさとる、もう1つは大人である彼の両親、最後は、機械のモンローです。
さらに、3つの事件が発生します。1つはロボットのモンローが父の勤務先に来たこと、そのせいで工場を解雇されたこと、そして、さとるとまりんの初恋です。
当時はロボットアニメが大流行していたので、さとるはロボットと聞いて、テレビアニメに出てきそうなものを想像していました。しかし、現物を見てがっかりしてしまいます。
ロボットの見学の後、彼はまりんとのボーイ・ミーツ・ガール的な出会いを迎える一方、父親はモンローのティーチングの係になりました。しかし、うまくいかず、しだいに工場の仕事に身が入らなくなってしまうのです。
その頃さとるは、まりんとのデートのために時折工場に忍び込んで、モンローのプログラムを勝手に入力するなど機械に興味深々。
80年代は家庭用パソコンが出始め、さらにマイコンブームという背景もあり、若年層のなかでもベーシックというソフトでプログラムをして遊んでいる人もいました。彼も、ある意味そういった人たちの一員だったのでしょう。
さとるとまりんの仲が進展していく一方、周囲の人間は彼らを白い目で見ていくようになります。たかが小学生で恋愛の何がわかるのか、本気で相手を好きなったつもりなのか……周囲の人間は、本気に受け取っていません。
一方、工場ではモンローがミスをするようになり、原因を調べたところ、わずかなゴミが原因で誤作動を起こしていることが判明。そのために工場は外部の人間の出入りを禁止することになり、さとるは工場に入ることができなくなってしまいます。
そんななかで、やがて、さとるとまりんに別れのときがやってきました。
まりんが、イギリスに行くことになったのです。彼女はさとるに、モンローのプログラムの数字を伝えます。そこには、彼女からさとるへのメッセージが隠されていたのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-02-01
一方さとるの父親は、工場を解雇させられました。夫婦仲が険悪になっていく一方、さとるは無人の工場に忍び込み、モンローにまりんから聞いた数字を入力します。
まりんは両親のもとを抜け出し、さとるに会いに来ることに。2人は再会を果たし、そして愛の証人になってもらうがごとく、モンローの元に向かいます。彼らはモンローに、あることを聞きに行ったのでした。するとモンローは、
333ノテッペンカラトビウツレ
(『わたしは信悟」文庫版2巻より引用)
と答えました。ここから、ストーリーは急激に加速。さとるとまりんは離れ離れになり、お互いの思いをモンローのプログラムで中継して、伝えようとするのです。
モンローは作業機械なので、当然恋愛のことなどわかりようがありません。しかし2人に作業以外のことをプログラムされたためか、あるいはICにゴミが入ったためか、少しずつバグのようなものが出始めてくるのです。
恋や愛に関する知識も、何にも持ち合わせていない小学生のカップル。傍から見てみると、ませた子供の遊びごとのように見えるでしょう。しかし、2人は真剣そのものです。それがゆえに、彼らはとてつもない形で暴走するのでした。
そして、本巻の終盤と3巻の序盤では、いよいよ、あの東京タワーから飛ぶ名場面が描かれます。2人の愛の暴走は、どこへ行き着くのでしょうか?
「333」が何を意味しているのか考えた2人は、東京タワーの高さのことだと確信。夜間に東京タワーに忍び込み、頂上を目指します。
彼らに気づいた大人たちは、なんとしてもやめさせようと必死でした。やがて頂上にたどり着いた2人は、ヘリコプターに救助されるのです。
そして彼らは離れ離れになり、お互いを忘れよう、と言うのでした。
さとるは再び工場に忍び込むと、「マリン……ボクハイマモキミヲアイシテイマス……」と自分の想いを入力します。それがきっかけとなったのか、やがてモンローは暴走することになるのです。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-03-01
東京タワーをさとるとまりんがよじ登る場面は、まさに圧巻。ハリウッド映画のような迫力に満ちています。そして、この出来事をきっかけに、モンローは自我を持つようになるのです。
ここからモンローのコンピューターが主人公となり、さとるとまりんを求めて勝手に動くようになっていきます。言葉を覚え、電話線を介して人と話すまでになるのです。
人によって造られた何かが暴走して自我を持つようになるというのは、SFではおなじみの手法。原型となるのは、メアリー・シェリーの著作『フランケンシュタインの怪物』などでしょう。
フランケンシュタインの怪物は、死体から造られた存在でありながら自我を持つようになり、そして愛をもとめて己の作り主を探していくようになります。
本作も、モンローは己の親とも言うべきさとるとまりんを探し求めて暴走するようになるのです。
しかし、この両者の最大の違いですが、モンローはさとるとまりんの拙いながらも純粋な愛によって生まれたのに対し、フランケンシュタインの怪物は、フランケンシュタイン博士の「人間を作りたい」というエゴから生まれているという点でしょう。
そして、フランケンシュタインの怪物は最後まで名無しの怪物であるのに対し、モンローのコンピューターは自ら名前を名乗るようになるのです。
モンローが造った機械のモーターを触った人々が、命を吸い取られていくという奇怪な現象が発生。
そんななかでモンローは、さとるの近所に住んでいた子供たちによって倉庫に隠されていました。しかし一連の奇妙な現象を調べていたコンピュータ研究所の所員たちによって、知られてしまいます。
モンローはどうにかして這いまわり、子供たちとともにトラックに乗って移動を開始。しかし、道中で子供が事故で死んでしまいます。なぜ死んでしまうのか理解できないモンローは、電話線を介してマイコンマニアの少年と交信を図るのでした。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-03-01
しだいに人間を、そして世界を学ぶモンロー。その一方で起こる、周辺の奇妙な現象……。
人間を操ったり命を吸い取ったりするモンローは、悪魔のような一面を持っています、しかし、そこに悪意はありません。ただ純粋に、さとるとまりんを追い求めているのです。
その真っすぐさは、2人が周囲の驚きも意に返さず、ひたすら東京タワーをよじ登って自分たちの愛を確かめ合った、あの行動と重なるでしょう。
さとるとまりんの愛は暴風のごとく周囲を巻き込んでいきますが、それと同時に2人の愛の結晶であるモンローも、周囲を破滅に追い込んでいきます。そして彼らの愛は、モンローに自我を芽生えさせるという奇跡も起こすのです。
悲劇と奇跡は、常に隣り合わせなのかもしれません。
ちなみに、モンローと交流を図ったマイコンマニアの少年の言葉に、カセットテープにデーターを記録した、とありますが当時のパソコンは、なんとカセットテープにデーターを保存していたのです(本作ではフロッピーディスクも登場しています)。そういった昔の機械の意外性にも驚ける、第4巻でした。
イギリスにいるまりんは事故にあってしまい、さとるのことを忘れてしまいます。そしてイギリスで知り合った美少年・ロビンが彼女につけこむかのように、執着し始めるのです。
さらにイギリスでは排日運動の声が高まり、各地で暴動とテロが発生。外交官であるまりんの父親も、このテロに巻き込まれて重傷を負います。
時を同じくして、とある貨物船の中。そこには、ガラクタが寄せ集まったような不気味な機械が侵入していました。それは、まりんに会いに行こうとするモンローだったのです。
モンローは人工衛星にハッキングして、まりんの身近にある機械を中継。彼女にさとるからのメッセージを伝えようとします。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-04-01
一方、ロンドン市内にはおかしな機械を拾って死んでしまうという、奇妙な現象が起きていました。そして、その機械を回収しようとする不気味な集団も現れるのです。
車型のタイムマシンに乗って過去と未来を行き来するSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、1950年代の世界にいる科学者・ドクが、未来のタイムマシン部品に日本製でできた部品があるのを見て驚き、それをマーティが「今は、よいものは何でも日本製だよ」と言う場面があります。
このように80年代当時、日本製品は海外でとてつもない勢いで流通され、その影響から日本は世界有数の富裕国となりました。同時に、本作のように世界中から恨まれ、妬みを買ってしまうことになるのです。
本巻の冒頭で起きる暴動によって、まりんは悲惨な目にあいます。この描写によって、80年代という時代において、世界で日本がいかなる存在であったのかがわかるでしょう。
まりんに執着するロビンは、彼女を地下の一室に閉じ込めます。そして地上の建物がテロによって爆破されたのをいいことに、核戦争が始まって世界は放射能で包まれた、という嘘を彼女に吹き込むのです。
一方モンローは、まりんを探して彼女を助けるために、世界中のコンピューターと人間の意識に繋がっていました。 内にある自我、または魂は赤ん坊の形になり、瞳の形状は四角から三角、そして丸になるのです。
これはモンローの魂が全世界の機械と人間の意識と繋がり、地球の意思となったことを意味しているのでしょう。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-04-01
ロビンから逃げるように外に出たまりんですが、廃墟になった街を見て、核戦争が起きてしまったと絶望します。そこに、帽子にコートという出で立ちの奇妙な集団が登場。彼らこそ、人に死をもたらす機械を回収している、謎の集団なのでした。
その薄気味悪さに怯えたロビンは、まりんを連れてエルサレムまで逃亡を図ります。12歳の少女であるまりんにここまで執着するロビンは、かなり気味の悪い存在。本巻では、そんな彼の行動がさらに暴走していきます。
その頃、人工衛星と繋がったモンローの魂は、機械のみならず人間とも繋がり、神のような存在にまでなっていきます。その自我は完全な赤ん坊となり、1人の人間と成長。その際、瞳の形状は、□、△、○へと変わっていくのです。
さとるとまりんが東京タワーへ登ろうとしたのは、コンピューターが「333から飛び移れ」と指示したため。そして、モンローはもともと三本腕でした。
さとるが引越した後、モンローが近所の子供達に匿われていたときには、さとるとまりんと赤ん坊の絵を描いて、線で結びつける図を描いていました。これは、さとると、まりんと、モンローに宿った自我を象徴してるのですが、キリスト教の「三位一体理論」を暗示しているようにも思える描写といえるでしょう。
モンローは、かつての力を徐々に失いつつありました。その一方、人間の体を治療するなどの奇跡を起してゆきます。
その頃さとるの住んでいた団地の近所に住んでいる女の子・しずかは、さとるが引っ越した後にそこ住んでいる夫婦の娘と、その家を訪れたモンローと出会います。
彼女は体が不自由でしたが、モンローの自我の起こした奇跡の力によって、モンローと心を通わすことができるようになったのです。
一方、新潟にいるさとるは、バーに勤めている母親から邪険にされ、さらに父親は飲んだくれているので、そんな家庭に絶望して東京に行きます。そして、かつてまりんが住んでいた家に向かうのです。
しかし、その家はすでに空き家になっており、中には不良少年がたむろしていました。彼らは、さとるに金儲けの話があると言って誘い出すのです。そんな彼らの背後には、かつてロビンが出会った帽子とコートの男が暗躍していて……。
- 著者
- 楳図 かずお
- 出版日
- 2000-05-01
いよいよ物語も終盤。モンローは神のごとき力を失い、その一方、道中で人々を治療するなどの奇跡を起こします。そんななかで、しだいに体が衰えていくのでした。
さとるは、完全に家庭が崩壊。父親に至っては飲んだくれて、挙げ句の果てに失禁までしてしまう始末。もともと子供っぽい言動の人でしたが、さとるより遥かに幼稚になってしまったようです。
さとる自身は、初登場の頃と比べると精神的には大人になったように見えます。しかし、不良少年たちと関わりを持ってしまい、金儲けのために佐渡島に行くように誘われてしまうのです。
そこには何者かの思惑があり、かつてロビンが遭遇した謎の男たちも関わっていました。彼らはモンローの体や、モンローが作ったものを回収しているようなのです。
モンローはさとるの元に行こうとしますが、しだいに体は不自由になり、部品も無くなり、だんだんと死に近づいてきます。
それぞれの想いを抱えながら向かう、物語のラスト。幼かった2人の恋の行方、そして彼らの愛の結晶であるモンローの旅路の果ては……。その胸が締め付けられるような結末は、ぜひご自身の目でお確かめください。
『わたしは真悟』は、社会や人間の行く末に疑問を投げかける作品ですが、ぜひ難しく考えずに手に取ってみてください。そして本作を読んだのをきっかけに、人間とは何か、ということを考えてみてください。
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