「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう…自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。
昨月27歳を迎えた、恐ろしいことである。
くしくも誕生日が12月24日なこともあり、その日世の中は華やいでいる。しかし、悲しいことにその日に恋人がいる状態がかぶったことがない(正確には一度あるが、相手の殿方は正真正銘の行方不明となったあとだったのでカウントしていいものか判断に迷う)。
そして、私にとっては企業努力の賜物である「誕生日特典」が使える日でもある。近所のショッピングセンターは、インフォメーションに身分証を持っていくと、記念のマグカップと全店舗でお祝いしてもらえるパスポートなるものをくれる(どっかのテーマパークみたいだ)。だいたいは割引なのだが、店舗によってはプレゼントを用意してくれているところもあり、ちょっとしたウォークラリーを楽しめるなかなかオツな企画だ。
ここまで詳細に書けるのは、察しのよい方はお気づきだと思うが、実際にクリスマスイブに一人でショッピングモール巡りをしたことがあるからだ。
ケチな私は、パスポートについてきたUFOキャッチャー2回券も使い切ろうと、カップルでウフウフきゃっきゃしているモール内のゲームセンターに果敢にも飛び込んだ。「もうちょっとで落ちそうだよ〜♪」(落ちそうなのは恋か奈落か…)と楽しそうな2人に視線でプレッシャーをかけて、順番がくるやいなや、せめてぬいぐるみくらいは手に入れようと奮闘した。バチがあたったのか、コントロールがそもそも悪いのかもちろん取れはしなかった。
幸か不幸かそれ以来、1人○○には恐ろしいまでの耐性がついてしまった。
1人焼肉、1人旅、1人一軒め酒場…。
ちなみに今回の誕生日は美容院、1人回転寿司、1人スパを満喫した。
- 著者
- 金窪 周作
- 出版日
1人カラオケはもはやお手のものである。オールナイトまで経験済みである(3時を過ぎた頃には寝ていたが)。なかなか中毒性もある。月に1回どうしても行きたくてたまらない日がある。
皮肉大好きな人間なもので、身近な人より、世間への鬱憤が溜まりやすい。しかし、そんな大それたことは友人に話すのはこっぱずかしくて仕方がない。たまりたまったものの先が歌である。人と行くカラオケでは歌えないような、ロックンロールでアンチテーゼでソウルフルなやつをシャウトする。
今回おすすめする『恋するオペラ』は、そんなオペラをヒトカラ的に楽しんじゃおうよ、といった本だ。(ちなみにカラオケの話はでてこない)
筆者は冒頭でこう断言する。
オペラが面白いのはメロドラマであるからです。
教科書的な楽しみ方ではないので、興味メーターがグッと上がる。
さらに続く。
オペラを作り出した作曲家と台本作者のほとんどは男性でしたから、彼らにも観察の目を光らせなければなりません。ステージには登場しない彼らは、並外れた才能の持ち主でしたが、実はとんでもない色事師であったり、精力的な男、あるいはマザコンのかたまりだったりするのです。
ダメンズとして魅力的なラインナップである、期待に胸が高鳴る。
ちなみに前置きしておくと、有名なオペラ作品はびっくりするくらい男尊女卑要素が多い。
しかし本書はそれを、「まあダメンズが書いた作品なんだからしょうがないっしょ」くらいに笑い飛ばしている。実に気味のよい新書である。
せっかくなのでそういったこの本で紹介されている凄まじいオペラの一節を紹介したい。
女性の貞節ほど当てにならないものはない、それはアラビアの不死鳥のようなもの……みんながいると言うけれど、誰もその居場所を知らない(オペラ『コシ・ファン・トゥッテ』より)
現代なら「うまいこと言ったつもりか」どころじゃなく大騒ぎになりそうである。
また名作「カルメン」から筆者はこんなことも言っている。
ホセは南ヨーロッパによく見られる母親に弱いタイプの息子(いえ、どこにでもあるタイプでしょうか?)で、ミカエラと連れ立ってやむなく山を下ります。
皮肉もいいところである。
しかし筆者が各章で共通してまとめているのは「色恋」と「音楽」がうまくストーリーと絡んでいるからオペラは今見ても面白いということである。
日常生活の皮肉や愚痴や悪口も、「色恋」と「音楽」で味付けすれば意外と食えたもんになるのかもしれない。
困シェルジュ
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