コマンド少ない系女子【笑える不幸はハニーテイスト】

更新:2019.1.12 作成:2019.1.12

笑える不幸は蜜の味。悲しいことを単なる不幸に終わらせず、笑えるようなものにするのって、とても大事だと思います。この連載では、私が今まで生きてきたなかで支えられてきた、悲しさをハニーテイストにできるような色んな作品をご紹介します。 4回目は、タイの漫画家さんの短編集です。

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心の機微ってなぁに、おかあさん?

心の機微が、分からない。

読んでいただきありがとうございます。連載4回目くらいです。この連載のテーマは「何かに困っている」人への、ちょっとした手助けになるような選書ということなのですが、私では役不足感がすごいなと感じている今日この頃です。どんどん最近迷走しているような気がします。

さて、なんだっけ、あぁそう、心の機微。こう書くと冷徹な人間ゆえの悩みだと想像するかもしれないけれど、そういう理由で心の機微が分からないのではありません。犬が死ぬ系の映画では必ず泣くし、友情・努力・勝利に胸熱な、よくある感じの人間ではあります。

ただ私の場合、性格がズボラすぎて、人の心の些細な変化を見落としがちなんですよね。しかもズボラゆえに、おそらく私って、ズボラなんだろうな〜〜なんて今まで生きてきて薄々思ってはいたけど、そこらへんの感覚もゆるゆるなので、何となくハッキリさせてなかったんです。

でもこの前、「あぁ〜〜やっぱり私ってズボラなんだな」と否応無しに自覚させられる出来事がありました。

原始人なみのコマンドの少なさ

唐突ですが、実はわたしバーで働いてまして。そこでは夜な夜な笑えるエロ話がくり広げられてるんですが、まぁ、流れ的に私のターンが回ってきたんですね。

いちおうバーテンとしてカウンターの向こう側に立っているからには楽しいお話を提供せねば、ということで意気込んで最近のデートなんかについて話してたんですよ。

デートでエロい雰囲気になりました、というところまで話し終えて、私が

「お互いに、そういう雰囲気になって。

で、した後に……」

と話を進めると、鋭いツッコミが入ったのです。

「え、その間の過程は?」

どういうことかというと、私のエピソードの説明の進め方が、

①デートいくまでの説明

②デートでの内容

③そういう雰囲気になる

④致す

というもので、③の説明がほとんどなく、ストーリーとして大事な部分が抜け落ちていると指摘されたんです。たしかに、漫画でも目的や目的地までの過程をしっかり描かないのは、根本的にアカン。面白くない。

そう言われて思い出そうとするんですが、これが見事に覚えてないんですよね。「〜 あなた〜に、会え〜て、ほんとーに、……よかぁった ♪〜」っていう生命保険のCMみたいに、断片的に写真としては思い出せるんですけど、これが、流れについては、ほとんど覚えてない。

ちょっと困りながら、

「まぁ、目を見て、手を触って……

くらい?」

なんて答えると、

「コマンド少なっ!

北京原人並みの原始感だね!」

と、一刀両断されてしまったのです……。

さすがにそこまで言われると、いちおう現代人として生きているつもりだったのである程度ショックがあり、必死に、でもね、こうやったりね、なんてシンプルながらも奥深い味わいがあるコマンドなのだと伝えようとしたのですが、やはり少ないことには変わりなし。

何となく気づいてたことを突きつけられて愕然とすると同時に、そっか〜、他の人はみんな色んなことを考えて、色んなことをしてるんだなぁ、なんて、初めてセックスで子供が生まれるということを知った幼な子のように思ったのでした。

こういうのでいいんだよ、こういうので(と思いたい)

だからといってみんなを見習って、現代的な洗練されたコミュニケーション方法に追いつけるかと言われると、おそらく追いつけない。

その理由を考えた結果、スペックが足りないというのもあるけど、そもそも、そんなコミュニケーション方法が好みだというのが根本にあるように思いました。目を見て、触って、相手の感情や今だけを感じとることが、私的にはコミュニケーションの本質だと思っているフシがあるのです。

相手の年齢とか仕事とか過去とか現在とかを、ふっとばして、ただ目の前にいる存在として認識して、「今」の戸惑いとか緊張とか嬉しさとかを感じること、さらにそこに体温を乗っけることが、おそらく好きなのです。う〜ん、書いてみると、確かに原始的。でもやっぱり、とても好き。

小学生くらいの頃には、世界はこれくらいの解像度だった気がして、その時の状態が好きだったから、それからずっと、こんなんなのかもしれないです。

そんな、優しさは優しさだけ、愛は愛だけ、みたいな平和で単純な世界が好きなので、私はこの人の作品が好きです。

著者
ウィスット ポンニミット
出版日
2010-02-25

もちろん、彼の作品は私みたいにただ粗いだけじゃなくて、そこに豊かな含みたくさんあります。そしてそれが何だかぜんぶ、優しい。私にとっては理解できない含みではあるのだけれど、そこに優しさが確かにあることだけは感じられて、読んでいてとても心地いい世界観なんです。

悲しいことの描写もあるのですが、それがまた優しい。痛みすらも何だかせせらぎのように綺麗な雰囲気なのです。まるでトイレの音姫のような配慮と流水感が感じられて……。こうやって恥ずかしくなると茶化したくなるのも本当に子供っぽくて自分でも嫌になるのですが、まぁ、こういうのでいいんだよ、こういうので。(と、思いたい)

考えすぎちゃう人は、私みたいになることは微塵もおすすめできませんが、こんな優しい世界に癒されてみるのもおすすめです。

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