タイトルに「淫ら」と入っているから……と手に取るのを躊躇するのは、とてももったいない本作。思春期らしい健全なお色気と、妄想成分全開の純愛ラブコメディです。 2019年4月にテレビアニメも放送された『淫らな青ちゃんは勉強ができない』の魅力を、全巻分ご紹介いたしましょう。
カワハラ恋(別名・神田はるか)が描く純愛ラブコメディ作品。2015年10月より「少年マガジンエッジ」に連載されています。
タイトルに「淫ら」と付いていますが、主人公は性欲が強すぎて勉強に身が入らないわけではありません。むしろ、異性に対して嫌悪感を抱いているのです。
主人公・堀江青は、常に勉強ばかりしている真面目な女子高生。スタイル抜群の美少女ですが、とある事情により男性を毛嫌いしています。というのも、彼女は男性を制欲の塊として認識しており、隙さえあればすぐさま性交渉におよんでくると考えていました。
そのためクラスの男子にも隙を見せず、常に冷たい態度をとっているのです。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
男はみんな野獣だと考えているのにも、もちろん理由がありました。彼女の父は、人気の官能小説家。ご近所では「快楽先生」と呼ばれ、大きな家は「エロ御殿」と呼ばれています。
しかも彼女の名前の由来が、野外での性交渉を意味する「青姦」からきたものであり、そのせいでトラウマを抱えてしまった青は、性的な事や男性に対して嫌悪感を抱くようになってしまったのでした。
家から遠く離れた国立大学に進学し、静かに暮らしたいと願う彼女は、青春のすべてをなげうって勉学に励んでいます。そんな日常を乱す存在が、クラスで人気のイケメン男子・木嶋拓海でした。
何かと話しかけてくる彼に苛立つ青は、自分に関わらないように言うつもりでしたが、事態は思ってもいない方向に転がってしまうのです。
この2人を中心に、ちょっとエッチな妄想やアクシデントが発生する日常をコミカルに描いている本作。性的ワードがたくさん登場しますが、下品というわけではなく、女性が苦手とするような猥雑さはありません。思春期特有の性への興味や妄想が的確に描かれ、笑いを誘うラブコメディ作品となっています。
本作の魅力は、青が可愛い!の一言に尽きるのではないでしょうか。
黒髪ロングの美少女で巨乳という抜群のスタイルとビジュアルはもちろんですが、注目するところは日常の言動。父親が官能小説家だったばっかりに、妙に豊富な性的知識を植え付けられてしまった彼女は、言葉の端々から、すぐに性的な妄想をさく裂させます。
しかし、彼女は性に関して積極的というわけではありません。むしろ、ただの純情乙女であるため自身の妄想に赤面し、あたふたと落ち着かなくなってしまうのでした。
過去の出来事があるから興味関心はあるものの、素直に触れることができずにいる知識に振り回される様子はコミカルで可愛らしく、ついニヤニヤしてしまうでしょう。
男性に対しては冷たく接している彼女ですが、素直でまじめな性格。さらにツンデレ気質でもあり、気になる木嶋にも素直な態度をとることができません。しかし、ふとした瞬間に見せる無防備な姿は、読者もときめくほどのかわいらしさ。彼女に想いを寄せている木嶋の気持ちを、深く理解することができるでしょう。
警戒心が強くて素直になれないけれども、どこか無防備な女の子。そんな青の魅力に触れるうちに、あなたも虜になってしまうはずです。
青の父が官能小説家ということもあり、異性を避けているにもかかわらず、青の性的知識は豊富。妄想にはありとあらゆるシチュエーションが登場し、彼女を翻弄します。露骨な下ネタになりそうなワードもありますが、奇跡的なほどのクロスカウンターな会話のおかげか、笑いに昇華されてしまうのでした。
普段の会話でも、妄想たくましい青と、リア充ながら意外とピュアな木嶋では、心の中で思い描いていることが大きく違います。
たとえばクラスの男子の猥談から、木嶋の男性器の大きさを青が気にするというエピソードがありました。性行為的な意味で会話をしている青に対し、木嶋は気持ちの面での話をしており、かみ合っているようでまったく内容がかみ合っていません。
噛み合っていないくせに成立する会話や、確実に一方通行なのに、きちんとときめく展開になってしまうところに笑いが誘われるでしょう。
また、本作はラッキースケベが多い作品でもあります。とはいえ、青がドジっ娘というわけではありません。何かと勘違いした父親や、ライバルの少女の策略により、スケベイベントが発生してしまうのでした。
そして、ギャグパートの要といえるのが、青の父。さまざまな異名を持つ売れっ子の官能小説家です。ことあるごとに青に偏った知識を植え付け、なぜか学校に来てはエロトラップを仕掛けるなど、トラブルメーカーとしての役割も果たしています。
なぜそこまでエロに情熱を燃やすのかはわかりませんが、欲望のままに突き進む姿は、いっそ清々しささえ感じられるのでした。
性的妄想やラッキースケベというエロコメディ要素に惑わされがちですが、本作は王道の少女漫画のような展開もある物語。
男性を苦手として避けている青に、木嶋はアプローチを仕掛けますが、彼が大切にしているのは心の触れ合い。多少興味のあるそぶりは見せますが、青が警戒しているような身体を目的とした付き合いはありません。
青が彼を避けているのも、元々は彼女の思い込みや勘違いが大きく、そのため互いを知るにつれて態度が軟化していきます。このように徐々に距離が近くなっていくところも、少女漫画好きにはたまらないところでしょう。とはいえ、勘違いの根っこが間違った性知識であるため、エロコメディ部分は外せないわけですが。
ツンツンしていた青が少しずつ木嶋に心を許し、気持ちを通わしていく過程はニヤニヤ必至。関係が変わっていくにつれて妄想の内容も変化していくところに笑ってしまいますが、恋する少女の過剰な妄想として、微笑ましく映るでしょう。淫らなところもあるゆえに、純粋な気持ちの変化や触れ合いが際立つのです。
早く実家から遠く離れた場所に進学して静かに暮らしたいという願いを叶えるため、青春をなげうって勉強に打ち込んでいる青。そんな彼女は、何かと話しかけてくるクラスのリア充イケメン男子・木嶋に、自分に関わらないように伝えるつもりでしたが、逆に告白されてしまいます。
男子に告白された経験がない彼女はイメージトレーニングで断ろうと試みますが、即性交渉的な妄想しか浮かばず、あえなく断念。関わらないようにしようと心に決めるのです。
しかし、クラスの男子のうわさ話に踊らされた結果、交際を考えると答えてしまうのでした。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
本巻では、他者と関わらないように過ごしてきた青に転機が訪れるところから始まります。
父親やクラスの男子の性的な話題に踊らされ、右往左往。夜も寝られないほど悩んだりしていますが、実は英才教育の賜物か、なぜその方向に?という妄想力のたくましさを、序盤から発揮していきます。
コメディ要素はもちろんのこと、徐々に触れ合う距離が近くなっていく青と木嶋の関係も見所の1つ。ときめくシーンにも妄想が出てきますが、ニヤニヤできるポイントは押さえているので、笑いながらも胸がきゅんとなるでしょう。
1巻後半で、青に恋のライバルが登場しました。とはいえ、青自身は木嶋との恋に消極的であるために、一方的にライバル視されているというような状態ではありますが。
青にとって黒歴史である、彼女の名前の由来も知っている小学生時代の同級生・高岡雅。青の父である花咲も認める美少女です。
合コンで出会い、意外と純情だった木嶋に惹かれた雅は、青に手を引くように告げます。青としては願ったりかなったりの申し出のはずでしたが、気持ちはモヤモヤ。
そして青と木嶋の関係も膠着状態になったところ、冒頭で事件が発生するのです。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2016-11-17
なんと青が、木嶋と雅がラブホテルに入っていく現場を目撃。合意のうえではなさそうに見えますが、実際に性交渉におよぶであろうという事実を突きつけられ、少なからずショックを受けます。
お約束の妄想はありますが、ラブホテルの利用時間を知っているなど細かい知識を知っているあたりに、笑いがこみ上げてしまうでしょう。
そんな本巻最大の見所は、木嶋の衝撃的な告白です。リア充だけどピュアな理由に納得できるところもあり、より好感が持てるようになるのではないでしょうか。
リア充だからこそ警戒していた青の態度が、手のひらを返したように変化する姿にも要注目です。
木嶋との関係が近くなるにつれて妄想がより一層たくましくなっていく青は、目標だった国立大学合格が難しくなるほど成績が落ち込んでしまいました。妄想に振り回される彼女でしたが、2巻の後半でクラスの同級生たちと勉強合宿に参加します。
夏休みともなると、海水浴や肝試しと、カップル向けのイベントが盛りだくさん。超人気の学習塾の勉強会に参加しに来たはずが、なぜか木嶋と海で泳ぐことに。水着姿の木嶋をガン見したり、逆に水着姿にヤキモチをやかれたりと、よい雰囲気になるのです。
ラッキースケベ的な事件も発生しますが、より一層青の気持ちが木嶋に傾いていくのでした。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2017-03-17
恋のライバルだった雅と微妙な友人関係を築いているなど、青の交友関係も少しずつ広がっている様子が見てとれます。勉強に関してはダメダメですが、恋愛方向に関しては一歩進もうと努力する様子が見られました。
見所は、自分の恋心に向き合おうともがく青の姿。とても乙女らしく、可愛らしい姿を見せてくれます。彼女を真っ直ぐに想う、木嶋の男らしい姿にも要注目です。
初めての恋と欲求不満、勉強ができない事へのイラ立ちなどが重なり、手酷く木嶋を拒絶してしまった青。
しかし、木嶋は彼女に幻滅することはありませんでした。ただ彼女が勉強に打ち込んでいる理由を聞いて身を引こうとします。しかしそこで逆に青が自分の気持ちを素直に告げたことで、はれて両想いとなるのでした。ただ、付き合った訳ではありません。
とはいえ両思いの合意がとれたということで性的な方向への道も解禁といえる展開。しかし、青の目標はあくまでも大学合格。正式な交際は受験の後、ということになってしまいます。
彼女の事情とはいえど、いろいろ期待を膨らませていた青は内心がっかり。欲求不満に拍車がかかるのでした。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2017-07-14
ついに両想いになったものの、公式的にはお付き合いしていないという微妙な関係にやきもきする4巻。とはいえ、青の方からキスをしたり、今までの妄想を取り返すくらい、いちゃいちゃしたところを見せてくれます。だがしかし付き合っていない……。
本巻の見所は、性別逆転した場合というテーマで描かれた番外編。青が男の子で、木嶋が女の子になったら、というイフが描かれています。木嶋の超ピュアなところにキュンとなり、こちらのバージョンの続きも読みたくなるでしょう。
別の学校に通う雅の学園祭で、木嶋がミスターコンテストに出場することになったこと。なんとか阻止しようと、青が健気な奮闘を見せますが……。
最初に恋のライバルとして登場した雅ですが実は面倒見がよかったり、ちょっとズレたところがあったりするなど、悪い子ではないなという印象が強くなってきました。何だかんだと青のよい友人ポジションに落ち着いてきたな、というところで新たなライバルが登場です。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2017-11-16
そのライバルは、知的で巨乳な眼鏡美少女の金子碧。文化祭で知り合いましたが、何かと2人に関わってきます。また木嶋を狙う女子なのかとヤキモキする青でしたが、実は彼女の狙いは青(!)だったのです。
本巻の見所は、青と木嶋カップルのいちゃいちゃにくわえ、突然の百合展開と、新たな波乱が巻き起こる内容。碧は女の子が好きなだけでなく、少々特殊な性的趣向をしているのでは?と思わせるセリフを口にするのです。
青の貞操がどうなるのか、ハラハラしてしまいます。
なんとか貞操の危機を脱した青でしたが、何かとトラブル続きで心が安らげないのは、正式な彼氏彼女ではないからなのでは?と悶々としてしまいます。さらに心が安らげない要因のもう1つは拍車がかかっている妄想。不安が多いせいで、より一層暴走していくのです。
そんな彼女の心をよそに、ハロウィンに温泉とイベントが続きます。美容師をしている木嶋の姉が登場するなど、2人の周囲の関係も広くなっていくのも見所です。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2018-04-17
据え膳喰わぬは男の恥という言葉がありますが、青が不安になるくらい木嶋の忍耐力が強いところに、読者も感心するやら背中を押したくなるやら、心中は複雑です。
そんなピュアでカッコよく、青のことを大切にしてくれる彼の意外な姿を見られるところが、6巻最大の見所。酔っぱらってドSになってしまった木嶋に、果たして青はどんな反応を見せるのでしょうか。妄想ではない、リアルな木嶋とのやりとりに注目です。
温泉で混浴してしまうというアクシデントからの、一緒にお泊りという、読者待望の展開から始まる7巻。
保護者とは連絡が取れず、最終のバスはとうに出発しており、外は暴風雨で帰ることも出来ません。1つの布団で寝ることになり、これはついに一線を越えるか……!と期待ばかり高まりますが、実際には飛び越えないところが、本作のよさでもあります。
- 著者
- カワハラ 恋
- 出版日
- 2018-09-14
青としては、関係を持ってしまった方が気持ちは落ち着くのでは?という問答を幾度もくり返し、頭の中がぐるぐるしています。彼女と木嶋の関係は彼の告白から始まりましたが、より深い関係に対する積極性は青の方があるようです。
忍耐力があるのは立派ですが、では木嶋はどう考えているのでしょうか。彼の真意を見ることができるのが、7巻の大きな見所の1つでしょう。
安心安定のイチャラブでも楽しませてくれますが、2人には新たな試練が立ちふさがります。それはなんと留学。つまり、物理的に離れてしま危機です。
彼らの気持ちや関係性にも変化がみられた本巻ですが、試練にどう立ち向かっていくのかにも注目してみましょう。
木嶋と一刻も早くイチャイチャしたい青。彼女はそのために受験で推薦を勝ち取ろうと、意を決してアメリカに旅立つのです。晴れて恋人同士になれたのに、離れ離れになった2人。木嶋は心なしか寂しそうな様子です。
そんななか、彼の周りは将来に向けて着実に動き出していきます。一方、未だに進路希望を出せずにいる木嶋。嫌でも将来を考える局面を迎えることになるのです。
淫らな青ちゃんは勉強ができない(8) (マガジンエッジKC)
2019年01月17日
無事に留学から帰ってきた青。これで思いっきりイチャイチャできる!……と思っていましたが、受験一色でそれどころではありません(それでも普通にイチャイチャしてます)。
彼女は受験が近くにつれ、ストレスがピークになっていきます。面接で、名前の由来を「青姦の青です」と言ってしまう夢を見たり……。そんななかで迎えた受験当日。彼女は痛恨のミスを犯してしまいます。
なんと、受験票を家に忘れてきてしまったのです。
これではどうしようもありません。彼女は涙を流しながら、木嶋を呼ぶのでした。しかし、ここは九州。彼がいるはずありません。が、なんと前から木嶋が現れて……。
まさかの事態から、2人の強い絆が感じられた本巻のエピソード。2人で泊まることになったホテルでは、微笑ましい場面も見られます。そして受験当日の青の姿からは、彼女の大きな成長が感じられるでしょう。1巻から読んでいる人にとっては、感慨深いものがあるかもしれません。
本巻で、高校生編は終了。次巻からは新章であるオトナ編がスタートします。新たなステージへと踏み出した2人の、今後のイチャイチャからも目が離せません!
『淫らな青ちゃん』を含むおすすめのラブコメを紹介した<ラブコメ漫画おすすめ34選!無料で読める作品も!>の記事もおすすめです。
とにかく青の暴走しがちな妄想と、ピュアな恋愛模様のギャップが激しく、楽しい作品です。
読者は、2人の恋を見守るクラスメイトや、親兄弟といったような、近しい人の目線を持ってしまうことでしょう。