『ギルガメッシュ叙事詩』に関する6のまとめ!BL?宇宙人?面白く読める!

更新:2019.1.25

今から6千年以上もの前のこと。メソポタミア文明で発生した、シュメール文学というものがありました。その1つで、世界最古の神話であり、英雄ギルガメッシュ王とパートナーであるエンキドゥの活躍を描いた作品が『ギルガメッシュ叙事詩』です。 ギルガメッシュはファンタジーゲーム『Fate/stay night』などにも登場する有名な英雄ですが、彼が登場する本作の物語は、いかなるものなのでしょうか?今回の記事でご紹介しましょう。

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『ギルガメッシュ叙事詩』とは?【あらすじ】

 

  • 本作を読む前に、注意が必要です……『ギルガメッシュ叙事詩』はメソポタミア文明の遺跡で発見された粘土板に刻まれた物語ですが、この粘土板は長い年月のために破損個所が多く、空白になっている箇所がいくつかあり、初めて本作を読まれる方は戸惑ってしまうかもしれません。読む時のコツは、文章を丁寧に追ってくのではなく、ページごと大まかに見ていくことでしょう。
     

ギルガメッシュ王は神々から見目のよい姿、雄々しさを授けられ、そのうえ3分の2は神、3分の1は人間であるために比肩するものがおらず、大変傲慢な性格でした。

人間を創った神アルルは泥を取って、それを地面に投げつけます。すると髪の長い、たくましい人間が誕生しました。それがエンキドゥです。

彼が動物とともに暮らしていると、とおりかかった狩人に発見されました。そして、エンキドゥが狩人の仕掛けた狩猟用の罠を逃れたことから、ただ者でないと発覚。その噂は、ギルガメッシュの元にも届くのです。

ギルガメッシュは宮廷の遊女を遣わし、エンキドゥを自分の思いどおりにさせるよう命じました。そして遊女の魅力に落ちたエンキドゥは野生の力を無くし、代わりに知恵が生まれました。

彼が国の広場に行くと、そこでギルガメッシュと出会います。2人は力を比べあい、そして両者の実力が互角とわかると、互いの力を称えて無二の親友となったのです。

 

著者
出版日
1998-02-10

 

本作は「シュメール神話」のうちの、ウルク第1王朝第5代の王ギルガメッシュを主人公とした物語で、記されたのは紀元前2千6百年前という途方もない時代です。

シュメール人は、今のイラク共和国に有史初の都市国家を形成しました。彼らは楔形文字、農耕による穀物の増産、パンの製造、ビール・ワインなどの酒を生み出し、高い水準を誇る文化都市を生み出したのです。

ギルガメッシュ王はエンキドゥと力比べをした後、実力を認め合い、友情を育むようになりましたが、どことなく日本のバトル漫画などにあるライバル同士の友情を感じさせる展開ですね。

その後ギルガメッシュ王は、杉の森に住むという怪物フンババの退治にいくことになりました。エンキドゥはその前に不吉な夢を見て、それを止めようとします。しかし、ギルガメッシュは強行。あわやという場面もありましたが、その後は2人で力を合わせてフンババをなんとか退治しました。

そこへ女神イシュタルがギルガメッシュを見初めて求婚をするのですが、ギルガメッシュはそれを断ります。

怒ったイシュタルは父アスに頼み、天の牛を遣わし、人々に危害を加えました。

その牛はエンキドゥによって倒されましたが、エンキドゥはフンババを殺したこと、天の牛を殺したことで神の呪いによって病に倒れ、やがて死んでしまいます。

友の死を嘆き悲しんだギルガメッシュは死を恐れるようになり、不死の法を探す旅に出ることになるのです。

フンババのくだりは、2011年に発見された新たな文献によって、さらなる解釈が加えられています。それについては「まとめ5」で詳しく説明しましょう。

神話の世界には、アキレウスやジークフリートのように不死の英雄が登場しますが、ギルガメッシュは神の血を引いているにもかかわらず、不死ではありません。

アキレウスやジークフリートも1か所だけ弱点があったように、どれほど蛮勇を誇る英雄も死から逃れることはできない、もしくは弱点を持っていると伝えられているようです。

ギルガメッシュは、エンキドゥがいなかった頃は傲慢でしたが、彼が傍にいるようになってから人間的に成長しました。しかし、その一方で、唯一無二の親友を失うという悲しみに見舞われることになるのです。

ギルガメッシュ王もまた完璧ではないという証であり、だからこそ魅力のある英雄、といえるのではないでしょうか。

 

まとめ1:ノアの箱舟の元ネタ!?

ギルガメッシュは不死になる術を求めて、『大洪水伝説』の主人公としても知られるウトナピシュティムに会いに行きます。その時ウトナピシュティムは、かつての大洪水の伝説の話をするのです。

彼はかつてシュルパックという町ににいたとき、突如、神から大洪水が起こるという啓示を受けました。そこで彼は洪水に備えて船を造り、生き物たちを乗せるために集めます。

彼は牛や羊を殺し、船の工夫(工事をおこなう人)たちにのためにワインをふるまいました。そして船は完成し、やがて洪水が起こります。神々は船を導き、船は二シルの山にとどまりました。そして、水が引いたので地上が出てきたか確かめるために鳩や燕を放ちましたが、すぐに戻ってきてしまうのです。

その後、大烏を解き放つと烏は地上に降り立ち、戻ってきませんでした。そのことでウトナピシュティムは地上が出てきたことを知り、船から降りたのです。

著者
アーヴィング・フィンケル
出版日
2018-01-10

このエピソードは旧約聖書に書かれている、「ノアの箱舟」の元となったといわれており、その証拠にいくつかの共通項が見られます。

 

  1. 1人の男が神の啓示を聞き、船を造る
     
  2. 船にはさまざまな生物を乗せる
     
  3. 洪水の後、船は山に乗り上げる(ノアの箱舟はトルコのアララト山に乗り上げました)
     
  4. 地上が出てきたかどうか確認するために烏や鳩を放つ
     

 

なお「ノアの箱舟」では、鳩がオリーブの葉を咥えて戻ったので、平和の象徴とされました。

違う点は、ウトナピシュティムは協力者がいたのに対し、ノアは周囲から信じてもらえなかったために自分の家族しか協力者がいなかったということ、そしてシュメール神話の方は洪水が発生した理由は明かされていないのに対し、「ノアの箱舟」では、人間があまりにも堕落しているので神が滅ぼすために洪水を起こしたとされていることでしょう。

この他にも、ギリシャに「デウカリオーンの洪水」という似たような逸話があります。

ではなぜ、洪水伝説は広く伝わったのでしょうか。それは都市社会には川が必要不可欠であったため、川の氾濫による洪水の危険性を促す必要があったからでしょう。神話などに当時の時代背景を考えるのも面白い見方です。

まとめ2:最古のワイン文献?

 

洪水伝説の船の製造の箇所で、ウトナピシュティムは船を製造した工夫にワインをふるまったとされています。

シュメール文明でワインが製造されていた証とした貴重な文献ととることができるのですが、古代オリエントはブドウの栽培に適さなかったといわれています。

しかし、シュメール人たちはブドウの栽培に成功し、ワインを造るまでに至ったのです。

本作をとおして、酒という嗜好品を、古代の人々がいかに求めていたかがわかります。しかし、それでもワインを飲めたのは一握りの王族くらいで、庶民の嗜好品はビールだったといわれています。

ウトナピシュティムがそれを工夫たちにふるまったというのは、彼がいかに彼らに感謝しているのかがわかる話でしょう。

 

まとめ3:BL展開がいい!?

 

ギルガメッシュとエンキドゥは、神話の世界屈指の名コンビといえるでしょう。

しかし、2人はあまりにも一緒にいることが多いので、彼らの間柄を同性愛と捉える方も多いようです。

本作に限らず、ギリシャ神話でもゼウスが美少年であるガニュメデをさらってしまったように、神話の世界には禁じられた愛がたびたび登場します。

またエンキドゥは雄々しい男性であるにもかかわらず、髪は女性のように長く艶やかと表現されています。野人でありながら動物を狩るといった蛮性を現すことはなく、動物と戯れることが多い表現があるため、深読みかもしれませんが、女性的な一面を持ったキャラクターにも見えるのです。

また本作は、スタジオジブリのアニメ『もののけ姫』の参考になった作品であるようですが、山犬の姫であるサンがエンキドゥ、蝦夷の一族の長であるアシタカがギルガメッシュだとすると、彼らの関係は本作の2人を恋人に見立てて思いついたようにも思えるのです。

ギルガメッシュはエンキドゥを亡くした時、途方もない悲しみに明け暮れましたが、それは友情によるものなのか、それとも……。

 

まとめ4:シュメール人が宇宙人とも取れるような情報が!?

 

有名な映画『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの秘密』では、古代人が宇宙人と関りを持っていて、彼らの力を利用して高度な文明を築いたという設定があります。

神話や民話では時折SF的な考察を加えられるということがあり、日本の『竹取物語』も、かぐや姫が実は宇宙人であったという解釈で映画化されたこともあります。

そしてシュメール文明もまた、宇宙人によって生み出されたという伝説があるのです!

というのも、シュメール文明自体、そもそもどのように発生したかわかっていないにも関わらず、高度な医学知識や法体制を持っていたからです。なんと、白内障の手術まで出来たといわれています。

あくまで一説ではありますが、人類の起源を古代宇宙飛行士と唱える学者ゼカリア・シッチンは、ニビルという太陽系にある惑星にいるアヌンナキという種族こそが人間たちを創ったと言うのです。

神話では、人間は労働力のために神の血を媒介に生み出されたとされています。シュメール神話の人間創生のくだりを読んでみますと、神は人間に鋤(すき。農作業などに使う道具)や籠を持てるようにし、聖殿を造れるように、畑に境界を作れるようにしたと書かれているのです。

これは、神々が労働力たる人間を効率よく働かせるために、彼らに農耕や建築の知恵・技術を施したとも受け取れます。そして神が宇宙人だとすれば、人間は宇宙人によって労働力として生み出された人造人間ということになるのです。

そうだとすると、あの有名な聖塔ジグラットは神が宇宙から来たという意味合いを込めて製造されたという解釈ができ、あの洪水伝説はもしかしたら川が氾濫したのではなく、単純に文明の発達による自然破壊だったのかもしれません。こんな都市伝説的な読み方をするのも面白いですよね。

 

まとめ5:新発見で、また新たな物語が発見された!?

 

上記の「『ギルガメッシュ叙事詩』とは?」の項で書いたとおり、本作は文字盤が破損していたり未発見の文書があるために、空白の箇所があります。

しかし、2011年に新たに文献が発見され、そこで物語が追加されました。

それは、ギルガメッシュとエンキドゥがレバノン杉の森を守る怪物フンババを退治する前。彼らがレバノン杉の森に入ると、あの怪物フンババが鳥や動物たちと楽しげに過ごしている場面があったのです。

もともとフンババはエンリル神より、森を守る使命を帯びていた存在。単に力の強い恐ろしい怪物などではなく、動物を愛する心の優しい森の主であったのです。

さらに彼を殺す際、ギルガメッシュはフンババが命乞いをしてきたので助けようとしたのですが、エンキドゥは「エンリル神がそれを知る前に殺せ!」と強く言った後「我々は森を荒地に減少させた、エンリル神にどう答えるべきか?」という不安を口にしています。

エンキドゥは、フンババのことを神の下僕であることを知っていたような口ぶりです。また上記でも、彼はなぜかフンババの退治に行く前に気弱になり、退治を嫌がる場面があります。これはフンババを恐れたのではなく、神に背くのを恐れたと見ることができるでしょう。

こうしてみると、今までのフンババの退治の場面はファンタジーによくあるモンスター退治のようでしたが、新しい文書が発見されると『キングコング』のように人間に淘汰されてしまう悲しいモンスターのドラマのように思えてきます。

 

まとめ6:『ギルガメッシュ叙事詩』があらわす人生観、死生観とは?

 

上記のとおり、多くの神話のに登場する英雄のなかにも不死の力を持った者はいます。

「ギリシャ神話」のアキレウスがその1人です。しかし彼は足首が弱点となっていて、そこを攻撃されると死んでしまいます。「北欧神話」の神バルドルも不死とされていましたが、ヤドリギ(宿り木)が弱点であり、それを突かれて死んでしまいます。

多くの神話の英雄が不死になることができなかったように、ギルガメッシュも結局不死を手に入れることはできなかったのです。

矢島文夫翻訳の『ギルガメッシュ叙事詩』では、ギルガメッシュは不死を求めて旅をしていた時、宿屋の女主人から、今を楽しみなさい、家族を大事にしなさい、と忠告されます。

本作は、「死」からは決して逃れることはできないというだけでなく、今生きている現実を大事にしなさい、というメッセージが込められているのです。

シュメール文明でワインやビールがのような嗜好品が好まれていたのも、少しでも現世を楽しみたいという思いからだったのではないのでしょうか。

 

著者
出版日
1998-02-10

 

さらに興味深いことに矢島文夫翻訳のものでは、遊女が神官の役割を果たしています。なぜ神職である女性が性的奉仕をするようになったのかは定かではありませんが、エンキドゥに近づいた遊び女は、この類の女だったといわれています。

つまりエンキドゥは性の快楽によって、自身を人間として自覚するようになったという見方もできるのです。もしかするとシュメール人は、快楽は生きる事そのものではないか、と考えていたのかもしれません。

また「シュメール神話」では、豊穣の神イナンナが冥界を巡る話があります。『シュメール神話の世界』によると、豊穣、すなわち大地の恵みを司る女神が死の世界へ行くというのは、作物の栽培と収穫のサイクルを暗示しているとのこと。古代人たちは農耕をはじめとした日常で、生と死を見つめていたのではないでしょうか。

フンババ退治のくだりでは、ギルガメッシュとエンキドゥはもともとレバノン杉を伐採するために、森の番人であるフンババを退治しようとしたのですが、巡り巡って最終的に神罰という形で、エンキドゥが犠牲になってしまいます。

自然破壊に対して警鐘を鳴らすような内容に取れますが、何かを破壊したら、その報いは人間の生命でもって償わなければならないという戒めのようにも思える内容となっているのです。

 

「シュメール神話」は、まだ未発見の文書・翻訳不能の箇所が多く、これからも新発見があるかもしれません。

これを機に、ぜひ『ギルガメシュ叙事詩』を読んでみてはいかがでしょうか。あなたなりの変わった読み方で考察してみるのも面白いかもしれません。

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