立松和平のおすすめ作品5選!代表作『遠雷』や道元、知床にまつわる本など

更新:2019.2.7

小説家としては異例の、膨大な量の作品を発表した立松和平。絵本や紀行文などその数はゆうに100を超えます。この記事では、そんな立松の作品のなかから特におすすめのものを厳選してご紹介していきます。

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立松和平とは

 

1947年生まれ、栃木県出身の立松和平。「立松」はペンネームで、本名の「横松」をもじったそうです。100を超える作品を発表し、数多くの賞を受賞している小説家です。

日本各地だけでなく、韓国や東南アジアなどさまざまな場所を放浪し、紀行文を執筆したほか、自然環境の保護問題にも積極的に取り組み、人間と自然の共生を題材にした作品も多いのが特徴です。

早稲田大学在学中に執筆した処女作『途方にくれて』は、立松和平が那覇のナイトクラブでアルバイトをした経験をもとに書きあげたもの。雑誌「早稲田文学」に掲載されました。当時は学生運動が活発におこなわれていた時代で、立松も活発にデモ活動に参加していたそうです。

その後執筆を続けながら数年間の放浪生活をし、1973年に宇都宮市役所に就職。以降は栃木県を題材にした小説を書いています。1979年に退職した後は本格的に作家活動を始め、1980年に『遠雷』で「野間文芸新人賞」を受賞し一躍話題となりました。同作は翌1981年に映画化もされています。

立松和平は小説や紀行文、絵本などの執筆活動のほか、メディアにも多数出演し、コメンテーターとして活躍しました。晩年には仏教への関心を強め、特に道元の生き方を憧れとし、複数のエッセイを執筆しています。

 

立松和平の代表作『遠雷』

 

1980年に発表され「野間文芸新人賞」を受賞した作品で、立松和平の代表作でもあります。

主人公は、トマトの栽培を中心に農業を営んでいる青年。彼にとっては、農作物に触れる時間が憩いでもありました。

しかし当時の日本は、高度経済成長期の真っ只中。青年が暮らす穏やかな土地にも、都会化の波が押し寄せます。

 

著者
立松 和平
出版日

 

本書の魅力は、文字から感じとれる鮮やかな色の移り変わりです。青年の栽培するトマトがみずみずしく美しい赤の時もあれば、どす黒い赤の時もあり、彼が置かれている状況の変化が表れています。

「遠雷」とは、遠くのほうで鳴っている雷のこと。自分の暮らしている場所にも徐々に都会化の波が押し寄せるさまは、彼にとってまさに「遠雷」のように感じられたのかもしれません。

高度経済成長期の日本で、何か大切なものを手放しながら都会化をしていく過程と、そのなかで生じる人間関係をじっくりと描いた作品です。

 

教科書にも載った立松和平の絵本『海のいのち』

 

1992年に発表された作品で、小学生の国語の教科書に採用されたこともありました。

主人公の太一は、漁師をしている青年です。彼はかつて父親の命を奪った巨大な魚に復讐するため、漁師になったのでした。

しかし彼の亡くなった父親をはじめ、祖父や師匠と仰ぐ人物もみな、いつも決まった数しか魚をとらないのです。海の生き物は有限で、人間は彼らの命を奪って生きているからだといいます。

 

著者
立松 和平
出版日
1992-12-01

 

自然保護活動や、人間と自然の共生について考えていた立松和平らしい作品だといえるでしょう。

人間は、海に生きる生物たちの命を奪って生きています。太一の父親は巨大な魚と格闘のすえに溺死しましたが、それまで彼もたくさんの命をいただいていました。海とともに人間が生きるということは、人間も命の連鎖のなかに組み込まれているということ教えてくれます。父親の仇である巨大な魚と対峙した時、太一は何を思うのでしょうか。

挿絵を担当している伊勢英子は、本書を担当するにあたり実際に海に潜ったそう。美しい青で描かれている世界が、物語に色を添えています。

 

良寛の生き方を書いた作品『良寛 行に生き行に死す』

 

良寛は江戸時代後期に生まれ、曹洞宗の道で修行をした僧侶です。詩人としても活動し、さまざまな作品を残しました。

晩年になり仏教に関心をもつようになった立松和平。本書では、良寛の生き方に自身の人生を重ね、良寛に通じる道を求めていきます。

 

著者
立松 和平
出版日
2010-06-01

 

良寛は、曹洞宗の教えを厳格に守りつつも、詩を詠むことや子どもたちと遊ぶことが大好きな、心優しい僧侶でもありました。本書では、前半でそんな良寛が残した詩とともに彼の生涯を振り返り、後半では良寛の生き方を考察していきます。

良寛に憧れ、禅の世界に身を投じていった立松和平。立松が亡くなる直前に執筆した文章ということもあり、その姿からは、立松自身の生き方を垣間見ることができるでしょう。

 

立松和平が解説する『道元禅師』

 

2007年に発表され、「泉鏡花文学賞」と「親鸞賞」を受賞した小説です。

貴族階級が没落していった鎌倉時代。歌人の名門の家に誕生した道元は、二重まぶただったことから「天下人」になると予言をされて育ちました。

しかし幼少期に母を亡くし、世の無常を痛感。真実の道を求めて出家することを決意するのです。

 

著者
立松 和平
出版日
2010-06-29

 

仏教に関心のあった立松和平にとって、良寛とともに道元も憧れの対象でした。本書では、道元の幼少期や出家をするまでの流れ、宋へ渡っての修行、永平寺の建立、そして死という生涯をわかりやすく綴っています。

祖母に仕える右門という人物がストーリーの進行役として登場し、読者の理解を促してくれるのも読みやすいポイントでしょう。

文庫本は全3巻で読みごたえ抜群。仏教という宗教ががどのような性質をもつのかを知るのにも役立つ一冊です。

 

立松和平とともに見る知床の世界『知床に生きる―大船頭・大瀬初三郎とオホーツクの海』

 

大船頭の大瀬初三郎は、何十年もの間、オホーツクの海を見てきました。その間に生態系や自然界は変わっていき、知床は世界自然遺産に登録されます。

観光名所となった知床の今昔を大瀬初三郎が語り、まとめた作品です。

 

著者
立松 和平
出版日

 

行動派の作家ともいわれる立松和平。20年という長い歳月をかけて大瀬初三郎が語る知床の世界を取材し、記述しています。

世界自然遺産に登録され観光地となった知床は、多くの人間が足を踏み入れたことで良くも悪くも変貌してしまいました。しかし世界遺産を守るためには、自然と人間から隔離するのではなく、共生することが大事だと語っています。

これからの在り方を考えるきっかけになる一冊です。

 

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