「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう…自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。
旅行は本番より計画を立てる方が楽しい。
期待もあるし、想像も膨らむし、体じゃなくて頭を使っている気がするし。
空論も机上にあるうちはいくらでも広がりようがある。
あれも必要かも、これも必要かもなどと思っているうちに旅行準備の方がお金を使っているんじゃないかと思うことすらある。
自分は頭でっかちな人間なので、知識の吸収は好きだし、ガイドブックを買い込むのも好きだ。旅の行き先のイメージを作りすぎるほど作ってから向かうのが楽しい。
再来週、60を迎える父のお祝いもかねて、家族旅行で香港に行くことになった。
おせっかいなので、予約がらみは全部引き受け、本屋でガイドブックと関連書籍を買い漁った。
買った小説が『上海ベイビー』なあたりが、詰めの甘さを顕著に表している。
(『上海ベイビー』は宣伝文では「麻薬と酒とセックス。」ということだったが、麻薬描写はものたりない。山田詠美作品の主人公in上海くらいのものである)
- 著者
- 衛 慧
- 出版日
- 2001-03-01
旅行に行くと、現地の博物館へ行くのが好きである。
日に3〜4箇所回るものだからショッピングも食事もおろそかになる。
行った先での方が安上がりなんてことになる。
今回のお目当は「香港医療博物館」、纏足と東洋医学の歴史が展示されているとか。
オリエンタルの文化圏の人間とはいえ、そういったものには情緒としてのオリエンタルを感じずにはいられない。
そんな今回おすすめするのは『酒池肉林』である。
帯には「『清貧』から文化は生まれない!」とある。なかなか潔い。
- 著者
- 井波 律子
- 出版日
昨今「酒池肉林」というと色事的文脈で捉えられがちだが、本書は新書なのでいたって淡々と分析している。
裏表紙の目次からの抜粋には「狂気の不滅願望」「巨大建築マニア」「欲望の自己増殖」「酒浸りか薬漬けか」といった、ヴィジュアル系バンドのアルバム名か、いかがわしいビデオシリーズのタイトルかというようなものが並ぶが、「やってる本人」ならぬ「書いてる本人、おおまじめ」である。
この感じもまた新書の魅力の一つである。
今回はそんな本書から悩みが軽くなる抜粋を紹介する。
・明の時代に書かれた長編小説『金瓶梅』の主人公、西門慶について
西門慶の色情が際限もなく膨張すればするほど、その商業的欲望もまた無限に自己増殖するという仕掛けなのである。
「モテたい」も、「給料上がんないかな」も「自己増殖する仕掛け」って言うとなんかかっこいい気がする。
・魏晋南北朝時代のアル中の賢人、大人先生について
さらに、彼は酔うと家のなかで素裸でいることもあり、その姿を目撃した人が非難すると、得意の老荘的誇張法を楯にとって開き直る。「わしは天地を家と考え、家の中を褌だと思っておる。君たちはなぜわしの褌の中に入ってくるのかね」といって、常識人を鼻白ませたりもした。
「酔っ払うと脱いじゃう」なんて人はぜひご自身のお召しものに置き換えて使ってみて欲しいフレーズである。
老荘的誇張法という言葉も素敵だ。
困シェルジュ
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