5分でわかる元禄文化。特徴や化政文化との違い、作品などをわかりやすく解説

更新:2021.11.17

江戸時代に華開いた「元禄文化」。歌舞伎や俳諧など、現代日本に伝わる芸事の基盤ができた時代でもあります。この記事では、特徴や化政文化との違い、代表的な人物と作品などを紹介していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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元禄文化とは。概要を簡単に説明

 

江戸時代前期にあたる1688~1704年の文化を、当時の元号にちなんで「元禄文化」といいます。上方(かみがた)といわれる京都や大阪を中心に栄えました。

ちょうど産業が発展していった時期で、経済力をつけた町人たちが、さまざまなジャンルにおいて華麗な作品を生み出していったのです。大和絵や浮世絵、浮世草子、人形浄瑠璃、歌舞伎、俳諧など、今日にも大きな影響を与えています。

1960年代の高度経済成長期に漫画やアニメ、芸能、スポーツなどが栄えたことを「昭和元禄文化」と呼ぶほど、勢いのあった時代として知られています。

 

元禄文化の特徴。化政文化との違いは?

 

「憂き世から浮世へ」という言葉で表される元禄文化。現世を「浮世」であると肯定的に捉え、現実的かつ合理的な精神にもとづく作品が多く生み出されました。

従来の日本の文化が貴族などの上流階級を中心とする雅なものであったのに対し、元禄文化は武士や豪商を中心に栄えたため、豪華絢爛ながらも人間味があるのが特徴です。

一方、もうひとつの江戸時代を代表する文化として、化政文化がというものがあります。江戸時代後期にあたる1804~1830年頃が最盛期で、当時の元号である文化と文政をあわせて名付けられました。

元禄文化が京都や大阪などの上方を中心に栄えたのに対し、化政文化は江戸を中心に、一般庶民の間で栄えています。庶民の生活を滑稽に描いた滑稽本や、恋愛事情を描いた人情本、勧善懲悪を主題とする読本、子ども向けの合巻など、大衆に受け入れられる作品が多く生み出されました。

特に庶民に人気だったのが、浮世絵です。多色刷りの木版画技術が開発されたことでヒットし、歌川広重の「東海道五十三次」、葛飾北斎の「富嶽三十六景」などの人気作が生まれました。

 

元禄文化が上方の町人を中心に栄えた理由

 

江戸時代前期、大阪は「天下の台所」といわれるほど物流や商業の中心地でした。人口も30万人以上と、大都市になっていたのです。

農村部では積極的に新田開発がおこなわれ、技術の発展も相まってたくさん作物を生産できるようになり、農民が裕福になっていきます。またそれにともなう産業の発展で、農民以外の町人も力をつけていきました。

一方でそれまで高い身分にあった武士は、決まった金額を大名から貰うだけなので、裕福になることはありません。

こうしてだんだんと町人が力をつけていき、余裕ができて娯楽や学問を求めるようになったことが、元禄文化が華開いた背景だといえるでしょう。

 

元禄文化の代表的な人物と作品を紹介!浮世絵や歌舞伎など

 

元禄文化を代表する人物と作品をご紹介します。

松尾芭蕉:俳諧

「俳聖」として日本のみならず世界でも知られている人物。彼の俳諧は「蕉風」と呼ばれています。「おくのほそ道」「野ざらし紀行」「俳諧七部集」などの作品を残しました。

井原西鶴:浮世草子

好色本や雑話もの、武家もの、町人ものなどさまざまなジャンルの浮世草子を手掛けた人物。現代の作家たちにも大きな影響を与えています。1682年に第一作目の「好色一代男」を出版し、その後「日本永代蔵」や「世間胸算用」などの名作を生み出しました。

近松門左衛門:浄瑠璃、歌舞伎

人形浄瑠璃や歌舞伎で一世を風靡した劇作家です。代表作は「曽根崎心中」。実際の事件をもとに書いた時代物で、当時は心中事件が多発するなど社会現象を巻き起こしたそうです。

竹本義太夫:浄瑠璃

義太夫節浄瑠璃の創始者。大阪の道頓堀に竹本座を開場し、近松門左衛門とともに人形浄瑠璃を大成させました。

初代・市川團十郎:役者

歌舞伎界を代表する役者です。現在も市川家の家芸とされる「荒事」の創始者として知られています。出身地が成田山新勝寺に近い場所だったことが、屋号である「成田屋」の由来となりました。「遊女論」の不破伴左衛門役、「金平六条通」の坂田金平役、「わたまし十二段」の佐藤忠信役などが代表作です。

菱川師宣(ひしかわもろのぶ):浮世絵

浮世絵を確立した「浮世絵の祖」と呼ばれています。本の挿絵でしかなかった浮世絵版画の地位を、絵画作品にまで高めたそう。生涯に絵本100種以上、好色本50種以上を手掛けました。代表作は「見返り美人図」や「歌舞伎図屏風」などです。

尾形光琳(おがたこうりん):画家

元禄文化を代表する画家のひとり。古典を学びながらも装飾的な作品を残し、その感覚は「光琳模様」と呼ばれて親しまれました。「八橋図六曲屏風一双」「紅白梅図屏風」などの傑作を残しています。

 

江戸時代の文化がわかる

著者
竹内 誠
出版日
2010-01-12

 

江戸時代の文化というと、上述した浮世絵や歌舞伎などを思い浮かべる方が多いと思います。本書ではそんな芸術や芸能のみならず、人々の暮らしそのものを文化として捉え、住まいや食、教育、信仰などあらゆる面にスポットを当てて当時を紐解いていきます。

その多様さは目を見張るものがあり、日本史上もっとも豊かだったのではないかと思うほど。江戸の文化がまるっとわかる一冊です。

 

元禄文化を読み解く一冊

著者
守屋 毅
出版日
2011-02-10

 

庶民が「遊べる」ようになった江戸時代。町人が主役となり、文学や絵画だけでなく、さまざまな風俗が生まれました。本書では、遊芸・悪所・芝居をキーワードに、太平の世に咲き乱れた文化に迫っていきます。

当時の雰囲気を感じられる一冊です。

 

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