毎年何千冊と新作が出版される絵本のなかから、子どもに本当に読ませたい作品を選ぶのは至難の業です。そんな絵本選びに迷った時は、ロングセラーの作品がおすすめ。この記事では、50年以上売れ続けている定番を厳選してご紹介します。
まっさらな状態で生まれてくる子どもたち。人生で最初に手にする本は絵本でしょう。物語をとおしてさまざまな知識や経験を得てほしいものです。
しかし大人としては、どんな絵本を子どもに与えればよいのか、迷ってしまうことはありませんか?毎年何百、何千点と新しい作品が出版され、その数の多さに圧倒されてしまいます。
そんな時は、ロングセラーの作品を選ぶのがおすすめ。世代を超えて愛される作品には、子どもがワクワクするテーマや目が釘付けになってしまうイラスト、耳馴染みのよいフレーズなど、流行り廃りに左右されない魅力があるはずです。
そこで今回は、50年以上売れ続けている定番のロングセラー絵本のなかから、特におすすめの作品をご紹介します。この記事を読んでいるあなたも、読んだことがあるかもしれません。我が子にも読んでほしいと思える絵本を、見つけてみてください。
動物園から出たことがないこざるのジョージ。何にでも興味を示す、知りたがりです。外の世界が気になるあまり、鍵を盗んで檻から逃げ出してしまいました。
初めて見る外の世界は、不思議がいっぱい。レストランの厨房に飛び込んでお皿を洗う真似をしますが、ぐちゃぐちゃに……。今度は高いビルの窓拭きをするものの、うまくできません。
- 著者
- H.A.レイ
- 出版日
- 1998-02-16
ハンス・アウグスト・レイと、マーグレット・レイ夫妻による、「ひとまねこざる」シリーズの最初の一冊。日本では1954年に発表されたロングセラー絵本です。ハンスが亡くなった後は、ヴァイパー・インタラクティヴが「おさるのジョージ」として受け継いでいます。
人間たちからすればジョージのいたずらに見えますが、当の本人はいたって真剣。スパゲッティを体に巻き付けながら食べたり、部屋の壁にペンキでジャングルを描いてしまったり、最終的には映画に出演……?
大人のすることをまねしたくなる子どもの心理が描かれた一冊。失敗しても一生懸命チャレンジするジョージを、ついつい応援してしまいます。イラストはカラフルな色彩で、古臭さは感じません。まさに不朽の名作、おすすめです。
仲良く暮らしている、ふわふわさんとふわおくさん夫婦。ある日の晩、ふわおくさんのもとに天使がやって来ました。
「じきにあかちゃんができますよ」と告げられ、その言葉どおり、小さなうさぎの赤ちゃんが生まれるのです。「うさこちゃん」と名付けられた赤ちゃんを見ようと、たくさんの動物たちが訪れ、お祝いの言葉を伝えます。
でもうさこちゃんはまだ小さいので、疲れて眠くなってしまいました。動物たちはうさこちゃんを起こさないよう、静かに帰るのです。
- 著者
- ディック ブルーナ
- 出版日
- 2000-12-01
小さな真四角の本と、「ブルーナカラー」と呼ばれる鮮やかな色彩、そしてシンプルな線で表現されたキャラクターがかわいい「うさこちゃん」シリーズ。1955年にオランダで出版され、日本では1964年に発表されたロングセラー絵本です。キャラクター自体の人気もあり、英語名の「ミッフィー」として親しんでいる方も多いでしょう。
丸い目と×印の口をしたうさこちゃん。シンプルなのに、感情が伝わってくるのが魅力です。石井桃子の翻訳も、リズムがよくてわかりやすく、それでいて美しいもの。赤ちゃんの誕生が喜ばしいものであること、みんなで喜びをわかち合うことのあたたかさを感じることができるでしょう。
とあるジャングルの奥に「ぐるんぱ」という名前のとても大きなゾウがいました。ずっとひとりで暮らしてきたので、身なりは汚く、臭いもしています。孤独で寂しいぐるんぱは、涙を流すのでした。
ある日ジャングルの会議で、ぐるんぱを働きに出すことが決まりました。綺麗に洗われて、見違えるほど立派になったぐるんぱは、まずビスケット屋で働きます。しかし大きすぎるビスケットを作ってしまったため、追い出されてしまいました。
次にお皿を作る仕事に就きますが、ここでも大きすぎるお皿を作ったため追い出され、最終的に、大きなビスケット、お皿、靴、ピアノを大きなスポーツカーに乗せた状態で、またひとりぼっちになってしまうのです。
- 著者
- 西内 ミナミ
- 出版日
- 1966-12-15
本書は1966年に出版され、語感のよい文章と、カラフルで親しみやすいイラストが世代を超えて愛されるロングセラーとなりました。
何をやってもうまくいかず、ひとりぼっちになったぐるんぱのもとへ、子だくさんのお母さんが子守をしてほしいとやってきます。大きなピアノで歌を歌い、大きなお皿はプールに、大きな靴はかくれんぼに使って楽しい時間を過ごします。ぐるんぱはもう寂しくありません。
スケールの大きさが楽しく、遊び心にもあふれた絵本です。ぐるんぱは最初、何をやってもうまくいかず、失敗ばかり。でも最終的には「大きい」という自分のアイデンティティと経験を活かして、幼稚園を開くまでになりました。自分の居場所を見つけたぐるんぱの姿に、あたたかい気持ちになれる作品です。
ちいさいだるまちゃんは、友達のてんぐちゃんが持っているものに興味津々。家に帰り、「てんぐちゃんみたいなうちわがほしいよう」と言うと、お父さんのだるまどんをはじめ家族が家中のうちわを持ってきてくれるのですが、どれもだるまちゃんが思っているものとはちょっと違います。
その後も、帽子や履き物、最後には長い鼻が欲しくなって……。
- 著者
- 加古 里子
- 出版日
- 1967-11-20
1967年に発表されてロングセラーとなった、加古里子の代表作です。赤くて丸いだるまちゃんの、子どもらしい言動が魅力です。
だるまちゃんが、てんぐちゃんの持ち物を羨ましがるたびに、家族が頭をひねって家中のものを取り出すシーンが見どころです。ページいっぱいにいろんな種類のうちわや帽子が並び、そのなかからだるまちゃんはてんぐちゃんの持ち物に似ている物を選ぶのです。
最後に長い鼻をほしがったてんぐちゃん。どんなアイディアを思いつくのでしょうか。
双子の野ネズミ、ぐりとぐらは、お料理することと食べることが大好き。ある日どんぐりや栗を拾いに森の中を歩いていると、途中で大きなたまごが落ちているのを見つけました。持ち帰るにはとても大きかったので、2匹は外でカステラを作ることにします。
大きなフライパンで料理をすると、おいしそうな香りが森中に広がり、動物たちが集まってきました。
そうしてできあがった大きなカステラを、みんなと一緒に分けて食べるのです。
ぐりとぐら [ぐりとぐらの絵本] (こどものとも傑作集)
1967年01月20日
児童文学作家の中川李枝子と、絵本作家の山脇百合子の姉妹によって作られた絵本。1963年に発表されたロングセラー絵本で、後にシリーズ化もされています。10言語以上に翻訳され、世界中の人々に愛されている作品だといえるでしょう。
ぐりとぐらの2匹は「お料理すること」と「食べること」が大好き。大きなたまごでカステラを作り、2匹だけで食べることもできたはずですが、集まってきた動物たちにも分けることで、みんなで食べるともっとおいしくなることや、楽しくなることを実感できるでしょう。
背景をシンプルにしたイラストで、ぐりとぐらの赤と青、カステラの黄色が映えています。特にカステラは、見ているだけで香りがしてくるようなおいしそうなもの。大人気シリーズの最初の一冊、ぜひ読んでみてください。