絵本『そらいろのたね』の3つの魅力。作者やあらすじ、教訓も紹介!

更新:2021.11.17

絵本『そらいろのたね』は、『いやいやえん』や『ぐりとぐら』を手掛けた中川李枝子と大村百合子の姉妹による作品。庭に埋めた種が大きな家に成長する独創的な物語は、子どもたちの豊かな想像力を育ててくれるでしょう。この記事では、そんな本作のあらすじや教訓、そして3つの魅力をご紹介していきます。

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絵本『そらいろのたね』のあらすじを紹介!最後はどうなる?

 

ある日のこと、ゆうじが野原で宝物の模型飛行機を飛ばして遊んでいると、森のきつねがやって来ます。そして、自分の宝物である「そらいろのたね」と、ゆうじの模型飛行機を交換してほしいと言うのです。

きつねの提案を快く受け入れたゆうじ。手に入れた「そらいろのたね」を庭に埋めてみました。「大きくなあれ、大きくなあれ」と唱えながら水やりをします。

すると次の日、種を植えた場所から、まるでおもちゃのような小さなそらいろの家が生えていました。ゆうじがさらに水をやると、家はどんどん大きくなっていきます。しまいには、お城のような立派なものに。ゆうじの友だちだけでなく、街中の子どもたちや森中の動物たちが遊びに来ます。

そこへ、森のきつねもやって来ました。そして「模型飛行機を返すから、この家を返してほしい」と言うのです。

ゆうじはみんなにお願いして家から出てもらい、きつねに返します。きつねは家が自分のものになると、窓や扉の鍵を閉め、独り占め。すると、突然家が大きくなっていき、もう少しで太陽とぶつかるところまでいってしまうのです。

慌てたゆうじが「お日さまにぶつかる!」と叫ぶと、家は崩れてなくなり、そこには失神したきつねが横たわっていました。

著者
なかがわ りえこ
出版日
1967-01-20

絵本『そらいろのたね』から学べる教訓は?

 

教訓1:欲張ってわがままな行動をとると、失ってしまう

『そらいろのたね』においてきつねは、自分の気に入ったものを手に入れ、独り占めをする性格として描かれています。

自分にとって宝物だった「そらいろのたね」よりも、ゆうじの模型飛行機の方が魅力的に感じたきつね。交換してほしいと頼みます。しかし成長して立派な家になると、今度は模型飛行機より家が魅力的に感じたのでしょう。羨ましくなり、「家を返してほしい」と言うのです。

そして自分のものになると、誰も入って来れないよう家中の鍵をかけてしまいました。その結果、家は崩れてなくなってしまいます。

欲張ってわがままな行動をとると、すべて失ってしまうと知ることができるでしょう。

教訓2:愛情をもって育てると立派に成長する

ゆうじはきつねと交換した「そらいろのたね」を、「大きくなあれ、大きくなあれ」と毎日大切に育てました。すると種は立派な家へと成長し、たくさんの友だちを招いても充分遊べるだけの大きさになります。

おそらく「そらいろのたね」は、ゆうじの愛情に応えてくれたのでしょう。大切に慈しむ気持ちをもつと、立派に成長することを学ぶことができます。

絵本『そらいろのたね』の作者は?

 

文章は児童文学作家の中川李枝子、挿絵は絵本作家の大村百合子が担当しています。2人はなんと実の姉妹です。

中川は1935年生まれ、北海道出身。4歳の頃に東京へ移り、小学3年生までを祖父の家で過ごしたそうです。この間、1941年に大村が生まれています。一時は札幌へと疎開をしたものの、戦後再び東京に戻りました。

中川が保育所で働き、大村が上智大学に在学中の1962年、初めての共著『いやいやえん』を発表。同作は「厚生大臣賞」「サンケイ児童出版文化賞」「野間児童文芸推奨作品賞」など多数の賞を受賞し、一躍有名になりました。

その他2人の代表作として、「ぐりとぐら」シリーズ、『ももいろのきりん』などが挙げられます。

絵本『そらいろのたね』の魅力1:見たことのある動物たちが登場!

 

さまざまな動物や友だちが「そらいろの家」にやって来る『そらいろのたね』。実は中川李枝子と大村百合子が手掛けた他の作品を読んだことがある人にとっては、見覚えのあるキャラクターが登場しているのです。

たとえば『いやいやえん』の主人公しげるや、こぐまのこぐちゃん、おおかみ。そして「ぐりとぐら」シリーズのぐりとぐらも!しかもこぐちゃんは赤いバケツを持っていたり、ぐりとぐらは2人でバスケットを持っていたりと、元の設定をいかした細かい遊び心が満載なのです。

小さい子どもは特に、絵本を読む際にイラストに注目しているといいます。宝探しをする感覚で楽しむことができるでしょう。

絵本『そらいろのたね』の魅力2:とにかく「そらいろ」の色合いがキレイ

 

もうひとつの『そらいろのたね』の魅力は、なんといっても色彩の豊かさ。なかでも作中で重要となる「そらいろ」がとても鮮やかに表現されています。

青色でもなく、水色でもなく「そらいろ」というだけあり、どこまでも続く青空のような清々しい気持ちにさせてくれるのです。

物語の冒頭、宝物の模型飛行機で遊ぶゆうじにとって空を華麗に飛び回る飛行機を連想させるような、特別な色だと考えられるでしょう。

絵本『そらいろのたね』の魅力3:子どもの想像力を育てられる

著者
なかがわ りえこ
出版日
1967-01-20

 

『そらいろのたね』の最大の見どころは、小さな種からどんどん成長していく「そらいろの家」です。最初はおもちゃのようなミニチュアサイズの家が土から顔を出し、ゆうじの愛情とともに成長し、いつしか太陽に届くほど大きな家となります。

たとえばお金を埋めればお金の木が生える、アイスの棒を埋めればアイスの木が生えるなど、子どものころはたくさんの想像をするでしょう。『そらいろのたね』では、種を植えると家が生えるという、子どもの想像力の上をいく物語です。

家はお城のように大きくなり、友だちやたくさんの動物が訪れます。成長するたびに部屋の数が増えたり、ベランダができたりと形を変えるのも楽しいです。

ページをめくるまで次の展開がわからない『そらいろのたね』。子どもの自由な発想を育ててくれる作品です。

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