小説「ダレン・シャン」シリーズは、タイトルと同名の作者による作品です。児童向け作品でありながら、裏切りや死がつきまとうダークファンタジー。魅力的で引き込まれる世界観や印象深いセリフの数々で、長年人気を博しています。この記事では、あらすじや登場人物、名言、主人公と作者の名前が同じ理由など、魅力を紹介していきます。
作者は、タイトル名と同じくダレン・シャンというイギリス出身の小説家。子どもの頃から作家になることを夢見ていて、本シリーズはいとこのために書き始めたものだそう。当初は1巻で完結する予定だったものの、出版社からの要望によりシリーズ化。外伝を含めると全13巻という大作になっています。
日本では2001年に発売され、人気に。2010年には映画化もされました。また2006年からは「少年サンデー」で漫画家もされ、多数のファンを獲得しています。
では「ダレン・シャン」シリーズの魅力を紹介していきましょう。
ダレン・シャン
本シリーズの主人公。好奇心旺盛な性格で、蜘蛛とサッカーが好きな少年です。ある日、友だちのスティーブに連れられて、異形の者たちが出演する巡業サーカス「シルク・ド・フリーク」を観に行きました。その際、団員のクレプスリーが飼っているペットの毒蜘蛛、マダム・オクタに興味を持ち、盗んでしまうのです。
しかしその後スティーブがマダム・オクタに噛まれてしまい、これをきっかけにダレンの運命は大きく変わっていきます。
ラーテン・クレプスリー
シルク・ド・フリークに所属するバンパイアです。生真面目で、冗談が通じないやや頑固な性格をしています。盗んだマダム・オクタが友だちのスティーブを噛んで動揺するダレンに対し、自身の手下になることで解毒剤を渡すと交渉をもちかけました。
ダレンをバンパイアの道へといざなった張本人で、後にダレンの師匠となります。しかし、しだいに彼をバンパイアにしてしまったことを後悔するのです。
スティーブ・レナード
ダレンの友だちで、ダレンがバンパイアになるきっかけとなった人物。性格は少々乱暴です。バンパイアに憧れていて、シルク・ド・フリークに行った際も真っ先にクレプスリーがバンパイアだと見抜きました。
クレプスリーに「手下にしてほしい」とお願いするものの断られ、そのうえ自分がマダム・オクタに噛まれ生死の境をさまよっている間にダレンがバンパイアとなっていたため、2人に対して憎悪を抱くようになります。
バンパイアとして奮闘するダレンを助けるように見せかけて、バンパイアと対立関係にある「バンパニーズ」として、ダレンとクレプスリーに復讐を目論んでいます。
ハーキャット・マルズ
「リトル・ピープル」という小人の種族。シルク・ド・フリークで主に雑用を担当しています。一般的に「リトル・ピープル」は知能が低く、会話はできないとされていましたが、ハーキャットは喋ることが可能。左足を引きずっていたので、喋る前は「レフティ」と呼ばれていました。
穏やかな性格をしていて、バンパイアとなったダレンの親友であり理解者です。物語が進むごとに会話も流暢になっていきます。
ある日、友だちのスティーブと一緒に、異形の者たちによる巡業サーカス「シルク・ド・フリーク」を観に行ったダレン・シャン。
スティーブは以前からオカルトに興味があり、団員のクレプスリーがバンパイアであることに一目で気づきました。手下になりたいと願い出るものの、クレプスリーはスティーブを「悪魔」と称し、認めません。
その間ダレンは、ショーの最中に一目惚れしてしまった毒蜘蛛のマダム・オクタを盗み出します。しかしマダム・オクタはスティーブに噛みつき、彼は生死の境をさまようことに。ダレンはクレプスリーに解毒剤を貰いにいきますが、その引き換えにバンパイアにならなければなりませんでした。
まずは半バンパイアとなったダレン。人間である自分を捨てきることができず、人の血を飲むことを拒否していました。友だちの血を飲んで克服した後は、さまざまな経験を積んで成長。ついにバンパイアの最高位にまで昇格します。
やがて掟を重視する高潔な一族「バンパイア」と、バンパイアの掟に不満を持つバンパイアハンター「バンパニーズ」による「傷ある者の戦」に参加することになり、過酷な人生を歩んでいきます。
壮大なファンタジー作品として知られる「ダレン・シャン」シリーズ。特筆すべきは、本作が「ダークファンタジー」であることでしょう。
主人公が冒険を通して成長し、仲間とともに世界を救い、ハッピーエンドを迎えるという内容ではなく、主人公が人間からバンパイアへと変化していくまでの葛藤や、友情の崩壊、仲間の死、多数の流血表現といった児童向けの作品としては珍しい要素が含まれています。
特に主要人物が亡くなるという読者にとってはショッキングな展開で、生きていくのは簡単ではないこと、多数の困難が待ち受けていることを教えてくれているのです。
本シリーズの黒幕といえる人物、ミスター・タイニー。時間を移動する能力があり、バンパイアとバンパニーズの対立などさまざまなことを予言しています。ダレンがクレプスリーの手下になることも、友だちのスティーブがダレンを恨んで対立するようにしたこともすべて彼が仕組んだことでした。
さらに本シリーズでは、ミスター・タイニーを超える何かが存在し、たとえ過去を変えたとしても他の人物が同じ役割を果たすため歴史を変えることはできないとされているのです。
ダレンは、自分自身がバンパイアになること、またスティーブと対立することを防ぐため、時間を移動して過去に戻るのですが、そうしたところで他の誰かの人生が狂うことになってしまいます。
そこでダレンは、 過去に戻って作家となり、物語を制作。自信が体験したことを世間に公表することで、バンパイアとバンパニーズの争いに注意するよう促したのです。
つまり「ダレン・シャン」シリーズは、作者のダレン・シャンが、未来で経験したことを物語にした作品だったのです。
「死してなお、勝利の栄冠に輝かんことを!」(『ダレン・シャンVI -バンパイアの運命-』から引用)
本シリーズにおけるバンパイアたちの生きざまを象徴するセリフです。常に高潔であることを誇りに思い、老いて死ぬぐらいなら熊と戦って死ぬ運命を選ぶ彼ら。「ダレン・シャン」シリーズファンの間でも人気のある名言です。
「憎しみに人生をゆだねるな」(『ダレン・シャンIX -夜明けの覇者-』から引用)
クレプスリーが、死にゆくかたわらでダレンに向けて発した言葉です。クレプスリーは、ダレンのかつての友だちスティーブによって騙されて殺されるのですが、それでもなお彼は復讐を人生の目的としないよう諭すのです。
「おれは、自分の人生をぞんぶんに生きた。好きなように生きて、その結果こうなった。今度はハーキャットが生きる番だ」(『ダレン・シャンX -精霊の湖-』から引用)
リトル・ピープルで、ダレンの親友でもあるハーキャットの正体は、かつてバンパイアとバンパニーズの和解を求め、最終的に裏切り者として殺された「カーダ・スモルト」でした。カーダの魂は、カーダとハーキャットの2人に分散されますが、そのままの状態で2人が生きていくことは叶いません。その結果、カーダはハーキャットに自身の魂を託すことになります。
- 著者
- ダレン シャン
- 出版日
「ダレン・シャン」シリーズの始まりの巻。ダレンとスティーブがシルク・ド・フリークのショーを観に行くところからスタートし、ダレンが人間と半バンパイアの狭間で葛藤する展開で幕を閉じます。
見どころは、ダレンとスティーブの間にしだいに溝が生じるところでしょう。彼らがどういう経緯で対立し、バンパイアとバンパニーズの戦いに巻き込まれ、終幕を迎えるのか、ぜひ読んでみてください。