片思い中の少女・杠に告白しようとしていた大樹と、彼の友人・千空は、突然謎の光に包まれます。それは全世界に広がっていき、人類はすべて石になってしまったのです。そして、石から復活した千空と大樹が見たのは、数千年も経過して文明が崩壊した地球で……。 2017年に「週刊少年ジャンプ」で連載が始まった漫画『Dr.STONE』。ヒットメーカーとして名高い漫画原作者・稲垣理一郎と作画・Boichiがタッグした本作は、2019年にテレビアニメ化。「このマンガがすごい!2020」ではオトコ編のトップ20に選ばれ、ますます注目度があがっている作品です。今回は、そのあらすじと魅力をご紹介しましょう。
16歳の石神千空(いしがみ せんくう)は、「科学は地道な探求」がポリシーの科学少年。ある日、幼馴染で友人の大木大樹(おおき たいじゅ)が、長く片思いをしていた小川杠(おがわ ゆずりは)に告白をすると宣言したのを密かに応援しながら眺めていると、突然、妙な光が世界を覆いました。
それは一瞬にして世界中の人間を石に変える、謎の光。千空や大樹、杠も、他の人間と同様に石に変えられてしまいます。それから数千年の時を経て、千空と大樹は自力で復活。壊滅状態に陥っている地球を前に、新たな文明を作るために動き出すのです。
突然世界を襲った謎の光により、すべての人類が石化、そして文明が崩壊するという現象から始まる本作。その数千年後の世界を舞台に、物語がくり広げられていくのです。
- 著者
- Boichi
- 出版日
- 2017-07-04
千空達は、すべてを失った世界に新たな文明を作り上げよう考えます。しかし、彼らと同じように復活を果たした獅子王司(ししおう つかさ)という少年を筆頭に、選ばれた人類だけで生きていこうとする者も登場。彼らは、科学は人類に過剰な力を与える悪だという考えのもと行動します。
ここで、両者が対立。
物語はこの2つの派閥が争いながら、千空達が科学を取り戻し、さまざまな技術を作り上げていくというストーリーがメイン。冒険やバトルといったジャンプらしい要素はもちろんあるのですが、同時に科学を1から作り出すというモノづくりの面白さは、ジャンプ漫画の新しい魅力といえるかもしれません。
最初を読むだけでもその面白さは伝わってくるので、まずはぜひ1巻を手に取ってみてください。
さらに、2019年7月からは待望のテレビアニメがスタート!声優には小林裕介、中村悠一など人気声優が多数がキャスティングされています。テレビアニメ版では、アニメならではのダイナミックな演出が期待できそうです!テレビアニメから「ドクターストーン」の世界に触れてみるのもいいかもしれませんね。
『Dr.STONE』は、原作の稲垣理一郎と作画のBoichiの2人で作られています。原作・稲垣の代表作は、なんと言っても『アイシールド21』でしょう。この作品は2001年に「週刊少年ジャンプ」主催のコンテストで大賞を受賞し、その後、作画に村田雄介を迎えて連載を開始。大ヒット作品となりました。
稲垣の作品は、構成や読者受けに関して、とても練られているのが特徴。「アイシールド」では、当時スポーツものが読者に受け入れられやすい傾向にあったことを踏まえたうえで、なおかつ比較的マイナーなスポーツであるアメフトを選び、読者に新鮮な面白さを提供しました。
本作でもその特徴は健在で、人類が石化して文明が滅んだ世界で、主人公達が1から文明を作り上げるという斬新な設定が、読者の心をつかんでいます。
アイシールド21 1 (ジャンプコミックス)
2002年12月20日
一方、作画・Boichiは韓国出身の漫画家。韓国や日本でさまざまな作品を発表しており、日本では青年漫画から少年漫画まで幅広い作品を描いています。劇画調の絵柄で、アクションやSF作品の世界観をち密に描いている漫画家です。
『Dr.STONE』では小学館漫画賞も受賞。本作は、斬新な設定と練りこまれたストーリーを描く稲垣と、それを表現する絵を描くBoichiがそろって、初めて生まれた作品なのです。
本作の主人公は、石神千空です。全編を通して登場していますし、その科学の知識や合理的な性格、その反面人を見捨てられない性格などは、まさにジャンプ漫画の主人公らしいキャラクターといえます。
- 著者
- Boichi
- 出版日
- 2017-09-04
ですが、本作の主人公は彼だけではありません。その友人である大木大樹も、主人公の1人なのです。頭脳明晰な千空とは対照的に、体力が自慢の大樹。5年間も杠に片思いをしているなど、性格は純情で誠実です。体力自慢ではありますが争いを好まないので、喧嘩は得意ではありません。
作中でも、頭を使う仕事は千空に任せるから、体を使う仕事は自分がやると言っており、千空が頭脳の主人公で、大樹は体力の主人公といったところでしょうか。ストーリーの途中で、ある理由から千空と行動を別にしますが、その体力と誠実な性格で重要な役割を演じることになります。
性格や役割がきっちりと分けられているぶん、2人ともお互いのないところを補い合っている関係であり、まさに物語を支える2本の柱のような主人公達。それぞれ魅力があるからこそ、物語が成り立っているのです。
本作の魅力は、なんと言っても、その斬新な設定にあります。
まず物語の始まりである、人類が石化して滅びてしまうというところ。人類がどうして石化してしまったのか、その原因が何なのかについても、ストーリーが進むにつれて重要なキーワードになってきます。しかし、しばらくはそのあたりが明かされることはありません。
- 著者
- Boichi
- 出版日
- 2017-12-04
ですが、普通の高校生だった主人公達が、ある日いきなり石化し、そのまま数千年もの時を過ごしてしまうという始まりは、読み始めてすぐに心を掴まれてしまうでしょう。
そして数千年後、滅びた文明を1から作ることを決めた千空が、携帯電話やお酒、火薬などを知識と工夫で作り上げていく様子も、新鮮に読むことができます。
読者にとっては普通に存在している身近なものを1から作り出していくところにはロマンを感じることもできますし、同時に、自分達の生活がどれほど恵まれているのかなんてことも考えてしまうかもしれません。
そんな魅力とともに、野生動物やライバルとの戦いなど、少年漫画らしい躍動感あふれる展開もあり、どんどんページをめくってしまいます。
すでにご紹介したように本作の特徴は、文明の失われた世界を舞台に、主人公達が1から文明を作っていくことです。
主人公の1人である千空は科学に詳しく、頭脳明晰なキャラクター。その知識は高校生とは思えないほどのもので、数千年後の世界ではその知識をフル活用して、さまざまな文明の利器を1から作り出していきます。
- 著者
- Boichi
- 出版日
- 2018-02-02
たとえば、現代では当たり前のようにある携帯電話やアルコール、果ては火薬まで作成してしまうのです。これらを作るエピソードでは、真似しないようにという注意書きが付くほど詳しく書かれています。
もちろん詳しく書かれているからといって簡単に真似できるものではありませんが、自分でもやれるかもしれないと思えるところに、ワクワクしてしまいます。
また、千空達が作るものが現実離れしたファンタジーなものではなく、現実にある身近なものであることもポイント。作り上げるのがファンタジーなものだとすべてが架空になりますが、そうではない現実にあるものを作りあげることによって、より身近に、リアリティーを感じることができるのです。
物語の始まりは、すでにご紹介したように、世界中の人類が石化され文明が滅びるところから。千空や大樹も石になったまま、3700年の時を過ごすことになります。その後、復活を果たした2人は、すべてがなくなってしまった世界で1から文明を作り上げることを誓うのです。
それから石になった人達を復活させる薬品を作ったことで杠、そして「霊長類最強」と呼ばれる高校生・獅子王司を蘇らせます。しかし司は、千空達が科学を使って文明を取り戻そうとしているのに対し、科学は人間にとって害でしかないという考えのもと、両者は対立することになるのです。
- 著者
- Boichi
- 出版日
- 2018-09-04
その後、司との対決を経て、千空と大樹は別行動を取ることに。大樹と杠は司を見張るため、彼に従ったと見せかけて行動をともにすることにしたのです。そうして単独で動くことになった千空が出会ったのは、生きている人間達が集まって暮らす村でした。
この村には科学を研究している人物・クロムがいて、彼をはじめ、千空は数人の協力者を得ることになります。しかし、村は閉鎖的。千空は、彼らと対立することになってしまいます。
そんな紆余曲折を経て、この村のある秘密が明かされます。それは、村の創始者が、千空の育ての親・石神百夜(いしがみ びゃくや)であるということ。
そのこともあって村に受け入れられた千空は、新たな仲間を得ることになります。一方で司も仲間を増やして、両者は再びぶつかることになるのです。
戦いのため、千空は日本刀や携帯電話、蒸気機関車などさまざまな道具を作っていくことになります。まさに産業革命ともいえるような発展を生み出す彼、そしてそれに反対する司達。対決がますます加速していきます。
司率いる司帝国と、千空率いる科学王国。2つの勢力が、いよいよ対決の時を迎えようとしていました。
千空達は情報を得るべく、開発した携帯電話を駆使して敵を捕縛したり、仲間に引き入れたりします。しかし、反対に自分達の仲間も捕らえられてしまうなど、互いに一歩も引きません。
Dr.STONE 8 (ジャンプコミックス)
2018年12月04日
そんななか、大樹と杠、そして千空が1年越しに言葉を交わす時が訪れます。携帯電話超しだったので再会とは言えないかもしれませんが、物語のなかでは、およそ1年ぶりの邂逅です。
2人の主人公が再び言葉を交わす姿には、読者もようやくこの時が!と熱い気持ちになることでしょう。
また、千空の仲間で、村の住人であるクロムの活躍も注目したいところ。千空と出会ったことですっかり科学に夢中になっている彼が、敵地でどのような行動を取っていくのかが気になります。
大樹や杠がとうとう千空と接触し、司帝国との対戦がますます楽しみになってきている最新巻です。
いかがでしたか?ジャンプらしい友情や努力といった内容に加え、思わず真似してみたくなるような科学によるモノづくりが魅力の本作。普段ジャンプ漫画は読まないという方も新しい面白さを発見できるかもしれないので、この機会にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
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