「ドクターストーン」が100倍面白くなる!アニメ、漫画の違いや裏話などを解説

更新:2020.12.9 作成:2020.3.24

原始的な風景が広がる未来世界で、科学を武器に道を開いていく冒険ストーリーが人気の『Dr.STONE(ドクターストーン)』。アニメではスピーディーながら濃密に作品世界を描き、注目を集めました。 2期の制作も発表、ますます目が離せない本作の魅力を、アニメや漫画の裏話も交えて解説いたします。これを読めば、アニメも漫画原作も、どちらもさらに楽しめますよ!

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目次

「ドクターストーン」の面白さをアニメ、漫画、両方から解説!【あらすじ】

 

『Dr.STONE(ドクターストーン)』は「週刊少年ジャンプ」に掲載されている、原作を稲垣理一郎、作画をBoichiが担当している漫画作品。いわゆる「ジャンプ」の王道からは少し外れたテイストながらも人気を博し、2019年7月から12月にテレビアニメが放送され、最終話で2期の制作が発表されました。

ここでは簡単にあらすじ、概要をご紹介しましょう。ご存知の方は読み飛ばしても問題ありません。

物語は現代から始まります。主人公の大木大樹が想いを寄せていた小川紅(おがわ ゆずりは)に告白しようとした時、世界は謎の光に包まれました。光は世界を包み込み、物はもちろんのこと、人も動物もすべてが石化させてしまいます。大樹は石化したまま、長い年月を過ごすことになりました。 

ある日、突然身体の自由を取り戻した大樹。そこに広がっていたのは、自分たちが知っている地球とは大きく異なる、樹木が多い茂った原始的な世界でした。大樹は先に目覚めていた幼馴染であるもうひとりの主人公、石神千空(いしがみ せんくう)と再会。彼とともに、自分たちの失われた文明を再興することを誓います。 

 

著者
Boichi
出版日
2017-07-04

本作の魅力は、様々な問題に対する科学的な解決方法。多くのジャンプ作品は強さによって道を切り開いていきますが、本作の大きな武器になっているのは知識なのです。

千空は科学マニアで、豊富な知識によって問題を解決していきます。知識はあっても道具や設備はもちろん整っていない状態。そんなところから万能薬を作ったり、料理を作ったり……。知識と工夫で乗り越えていく姿は、納得感があります。

また、人間関係も大きな魅力のひとつ。千空の科学知識はもちろんすごいものですが、1人の力で問題解決をしていくわけではありません。

大樹をはじめとした仲間の協力があってこそ、難局に立ち向かっていけるのです。仲間がいなければ大きなことは成しえないという、仲間を大切にして協力し合う姿に胸が熱くなります。

こちらの記事では本作の漫画とアニメ、両方から魅力を制作の裏話を交えながら解説していきます。

地道な主人公をかっこよく描こうと思って連載開始した?

まずは科学文明が失われた世界を科学知識で乗り越えるという冒険譚が、がどのような経緯で誕生したのかをご紹介していきましょう。

本作は先ほども少しふれたように、「ジャンプ」らしさが少ない作品。「ジャンプ」で人気が高く、かつ多く見られるのは、激しいアクションを伴うバトルを主体としたものです。では、なぜバトル漫画ではなく科学漫画になったのでしょうか。

それは本作が、地道な人間のカッコよさをじっくり描くために作られた物語だからです。

原作の稲垣理一郎には以前から、少年漫画にありがちな派手で特殊な能力を持っている主人公ではなく、地道に成果を積み上げていく人間がカッコいいといわれることが少ないのでは、という疑問がありました。

現実で称賛される偉人の多くは、何か特殊な能力や運によって成果を出したというよりは、泥臭い努力を重ねて結果を得ている人の方が多いでしょう。その地道な過程こそが人のカッコよさであると稲垣は考えたのでした。

科学もまた、多くの実験の結果を積み重ね、結論を得ていく学問です。科学知識が豊富な千空を主人公とすることで、本作の魅力はつくられていたのですね。

千空の地道なカッコよさは、物語の冒頭でも確認できます。無意味かもしれないことが成果につながると信じ、続けることを体現するかのように、彼は石化した1,000年以上もの間、時間をひたすら数えて過ごしていたのです。気の遠くなるような時間を生き続けた描写が、読者の心を動かします。

千空は『アイシールド21』の阿含が理系の天才になったキャラ!?

主人公、千空の魅力にもう少し迫っていきましょう。石神千空は16歳。トゲトゲした白髪が特徴です。幼い頃にエジソンの伝記を読んで憧れた経験から、科学に傾倒していきました。

筋金入りの科学マニアで、頭の回転が速く、暗算なども得意としています。半面、身体能力はあまり高くありません。

本作を読んで、千空が誰かに似ているな、と疑問に思った読者もおられるのではないでしょうか。

その答えは、稲垣理一郎が原作を務めた、アメリカンフットボールを題材とした漫画『アイシールド21』にありました。

実は『アイシールド21』に登場する天才キャラクター、金剛阿含(こんごうあごん)のキャラクターが千空に踏襲されているというのです。(『アイシールド21』22巻の表紙にもなっている、長髪ドレッドヘアの男です)

著者
稲垣 理一郎
出版日
2006-12-04

ご存じない方もいるかもしれませんので、まず金剛阿含が何者なのかを簡単にご紹介いたしましょう。

阿含は関東大会9連覇という高校アメフトの強豪「神龍寺ナーガ」の一員です。100年に1人の天才と呼ばれる、作中でも屈指のプレイヤーで、身体的にも頭脳的にも優れています。文字どおりの万能の天才なのですが、女遊びが好きで喧嘩や飲酒もするという、自分の欲望に正直なキャラクターでした。

どちらかというと悪役タイプの阿含。稲垣は彼を気に入っており、阿含が理系の天才キャラクターなら面白いかも、と考えたそう。こんなところで他作品がリンクしているというのも面白いですよね。ただ、それにしては性格がかなり良くなっているのでは、と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。

稲垣はキャラクターを作る際、多くの引き出しを持つことは難しいそうで、自身の中でキャラクターを演じる役者が数人いるという設定にしているのだとか。なので阿含を演じていた役者に、『アイシールド21』では悪いところを前面に押し出してもらったけど、今度は良いところを前面に出して演じてみてください、とお願いして誕生したのが千空なのでした。

演じている人が同じなら、似ているところがあるのも頷けるところ。千空は傲岸不遜でズケズケと物を言うタイプですが、友情を大切にし、人の努力は決して笑いません。天才だけれども情に厚く優しいキャラクターとなったのには、こんな裏話が存在していたのでした。

作者の稲垣理一郎とBoichiはほとんど会ったことがない?作品の作り方がユニーク!

 

さてこれまでに、作品や千空という主人公の誕生裏話に触れてきました。本作は原作を稲垣理一郎、作画をBoichiが担当しているという、原作と作画が別々の作品です。そういった作品は少なからず存在しますが、このコンビの場合はどのように作品がつくられているのか、裏側を覗いていきましょう。

原作と作画として作業をしている2人。本作はち密な科学描写はある作品でもありますしし、顔を突き合わせて会議をしているのかと思えば、そんなことはまったくない様子。実は会ったのは数回だけなのだとか。普段は稲垣がネームを切って担当編集者にFAXし、そこからBoichiにネームが送られているようです。

もっと方向性のすり合わせが必要なのでは、と驚かれたのではないでしょうか。それぞれの作家によって現場は異なるようですが、本作ではこの方法がうまくいっているのは作品を見ても分かることでしょう。

そうなると気になるのは、原作付き漫画の場合、作画担当はどう決定されているのか、という点ではないでしょうか。

原作付き漫画の場合、原作者側から漫画家を指名することはできないのだとか。本作の場合は、稲垣がBoichiの絵がすごいと編集者に言っていたところ、それを覚えていた編集者から声をかけてタッグを組むことになりました。

今作では読者にとっても幸せなコンビの誕生となりましたが、原作者は絵描きの魅力を引き出すのが仕事、と稲垣はインタビューに答えています。この作品にこの漫画家と決まったら、そこからどう作るか考える、という作り方をしていることが多いそうです。

コンビで作成している作品は原作者の方がクローズアップされやすいですが、稲垣の言葉を聞くと、イーブンな関係で作品を作り出してることがうかがえますね。

 

当初アニメ化は難しいと思われていた?

 

漫画の魅力や制作裏話をご紹介してきましたが、ここからはアニメの魅力や裏話にも迫っていきましょう。文明を作るという、今までにないストーリーで注目を集めた本作。2019年に1期がテレビアニメ化され、2期の制作が発表されるなどアニメも大人気となっています。

アニメ制作側のインタビューによると、アニメ化の話が出た時、担当プロデューサーの本音としては、「アニメとは食い合わせが悪い」印象があったそう。なぜなら、本作は派手なバトルアクションがある作品ではなく、どう引きとなる画をつくるかが懸念点だったからです。

映像は「動き」が最大の武器。特に漫画のアニメ化は、常日頃静止画で見ているものを、動きとして認識しなおすことができます。それが最も引き立つのがバトルアクション。本作はそういった目に見えやすい見所が少ないため、アニメとして魅力のある作品を作るために、様々な工夫がなされています。

そのうちのひとつが、何かを作る描写、クラフトのシーン。科学描写に嘘があってはならないため、漫画同様に専門家が監修を務めたシーンはかなり本格的。漫画ではわからない材料の質感を映像で表現するため、試行錯誤が重ねられたそうです。

派手ではないものの、クラフトのシーンでより現実みを出す演出をしているのがアニメの見所のひとつなのです。

 

細かなアニメと漫画の違いがより両者を近くする?

 

アニメとして作るには難しい作品で、様々な工夫や試行錯誤の末に完成したという、「ドクターストーン」のアニメ作品。そのかいもあってか視聴者の評価は高いものになりました。

感想のなかには、漫画のコマとコマの間隔が適度に肉付けされ、雰囲気が壊されていない違ったところがあるものの、それがアニメならではの味わいになっている、という感想が見られます。

実はこれこそ、アニメ制作時に気を付けられていたポイントなのです。

原作側である編集者としては、漫画をアニメにするときに、コマやセリフをそのまま映像化するのではダメだという思いがありました。重要なのは、漫画とアニメ、どちらをみても印象が変わらないこと。そのため、シーンやセリフが多少前後してもかまわないというスタンスがとられています。本作の場合も、セリフの細部や登場する順番が変わっているエピソードも存在しています。

原作を読んでいる人ならば気が付いたところもあるでしょう。しかし、原作に忠実にすることだけが、アニメの存在意義ではありません。そこをおさえ、アニメとして最高のものを作るという制作側の創意工夫と意気込みがあったからこそ、視聴者の評価につながったのではないでしょうか。

アニメならではの表現はさまざまありますが、千空が石化から目覚めた後1年が経過するシーンで特にその工夫された表現を堪能することができます。アニメではタイムプラスという静止画を繋げるコマ落としのような撮影方法を使用することで、時間の経過を表現。映像ならではの時間の流れを、視覚的にとらえることができる内容になっていたのです。

このような漫画とアニメの細かい違い、その意図に注目して作品を読むのもいいかもしれませんね。

 

アニメでは音に注目!音楽やオープニング、リリアンの歌……

 

制作陣が力を入れていたのは、映像だけではありません。音楽も注目ポイントの一つです。大自然のシーンでは壮大かつ雄大なBGMが使用され、科学シーンではポップな印象の現代的な音になるなど、シーンによって音楽も大きく変化しています。

オープニングテーマのロックバンド「BURNOUT SYNDROMES」による楽曲、「Good Morning World!」は作品世界とリンクした世界観や歌詞に注目。原作が打倒ファンタジーをうたっているので、主要テーマである科学の要素を踏襲しつつ、倒すべきラスボスとしてファンタジーをイメージして制作されています。

また、劇中歌として注目したいのが、「One Small Step」。アメリカ人歌姫のリリアン・ワインバーグの歌として登場する楽曲です。音楽担当の堤博明が力を入れた音楽でもあります。

 

リリアンは、作中でも重要なポジションに立つ人物で、歌唱力は世界でもトップという実力の持ち主。彼女の歌が重要な役割を果たすエピソードがあるのですが、実際に音が流れるのも映像の醍醐味と言えるでしょう。

歌唱を担当したのは、イギリスの舞台女優Laura Pitt-Pulford。時間すらも超越する魅力を秘めた奇跡の歌声として登場する素晴らしい歌を堪能してください。

 

何でも言い合える制作陣のおかげで「ジャンプ」史上、最もシナリオの詰まったアニメになった?

ここまでアニメでの注目ポイントをお伝えしてきました。「ドクターストーン」のアニメは、テンポが良くスピード感があるのが特徴です。しかしエピソードが薄いというわけではなく、内容はしっかりと詰まっています。

この魅力が生まれた背景には、制作陣の結束力がありました。熱い裏話もご紹介しましょう。

本作のアニメの制作陣は、比較的若い世代が集まっているチーム。何でも言いあえる現場になっており、個々のアイディアを活かしやすく、柔軟な対応ができていたんだとか。

そんな彼らの議題のひとつに、どれくらいのテンポで物語を進めていくか、というものがありました。当初は漫画の1話をアニメの1話にする、という案も出たそうですが、原作のテンポ感を表現するためには、もっといけるのでは、という挑戦心から、漫画の2話をアニメの1話に詰め込むことになったのでした。

実際にアニメの1話を視聴し、そこまで話が進むのかと驚いた原作ファンも多いでしょう。

しかし脚本をはじめとした制作陣は、話をどうまとめるかで苦労した様子。原作でもセリフに意味があるものしかないので、どこも削れなかったのだとか。

なのでどこも削らずに内容を詰め込み、かつ破綻しないようにまとめあげたことで、アニメ作品はスピード感としっかりと詰まった内容を両立することができたのでした。

さらに「ドクターストーン」の連載誌「ジャンプ」が、若い作家と新しいものを作っていくという媒体であるため、原作側とアニメ制作側のウマが合ったというのも本作の結束力を高めました。

結果、出来上がった映像は想像以上に面白く、制作側のやる気も倍増。そうして数多のアニメ化作品を世に送り出してきた「少年ジャンプ」編集者をして「ジャンプ」史上最もシナリオの詰まったアニメと評する出来になったのです。 

「ドクターストーン」は、名言がいっぱい!最後にいくつかご紹介

 

ここまで漫画作品とアニメ作品の裏話を見てきました。最後に名言の多い本作から、心に響く言葉をいくつかご紹介して終わりとさせていただきます。アニメで千空を演じている小林裕介をはじめとした声優陣が、言いたい、聞きたい名言がたくさんあると語る魅力が伝われば幸いです。

「『科学ではわからないこともある』じゃねえ 
わからねえことにルールを探す 
そのクッソ地道な努力を 科学って呼んでるだけだ......!!」

(『Dr.STONE』1巻より引用)

石化から目覚めた千空がまず最初にしたことは、石化を解く特効薬を開発することでした。自分や大樹の石化が解けたという事実から仮説を立て、何回も実験を繰り返していきます。

そうして季節が廻った後、ようやく薬は完成し、実際に石化した燕が息を吹き返しました。千空と作品の根底にある信念、そして魅力を詰め込んだ名言です。 

「無理だな それだけは」

(『Dr.STONE』2巻より引用)

石化を解く薬を開発した千空たちは、獅子王司という人物の石化を解きます。司は「霊長類最強の男子高校生」という異名を持っています。強い味方になってくれると思いきや、彼は過去の経験から若者だけを蘇らせることを提案します。

その提案をキッパリと断ったのが上記のセリフです。

小さなころから科学に親しみ、その可能性を追求してきた千空。たとえ自身の命に代えても捨てられないという、科学への熱い想いを感じる名言です。 
 

「いつの日か千空が目覚めた時 
絶対に仲間が必要になる 
繋ぐんだよバトンを 幾千年の未来に……!!」

(『Dr.STONE』5巻より引用)

千空たちの目覚めた未来は、全ての人間が息絶えてしまっていたわけではありません。千空たちは生存していた人々が住んでいる集落を発見し、石化の問題解決に取り組んでいきます。なぜ村が誕生したのか、この村と千空との関わりも明かされていき、そのなかで発せられた言葉です。

村の存在には千空の父親、石神白夜が関わっていました。彼は、千空の科学好きに影響を与えた人物。とある事情で石化の難を逃れた白夜は、いつか目覚めるであろう自身の息子に、地球の未来を託すという選択をし、そこにこの村が関わっていたのでした。

いつか人の命は尽きるもの。未来に可能性を託すという絶対的な意思は、現代を生きる自分たちにも重く響きます。それと同時に、長い時を経ても信じ合える父子の絆を感じられる名言です。

 

著者
Boichi
出版日
2018-04-04

漫画作品とアニメの魅力、裏話を中心にご紹介してきました。制作側がどのような点に注意し、作ってきたのか。その創意工夫や努力の跡を見ると、より作品に対する尊敬や愛情がわくものです。2期も期待以上のものが届けられることでしょう。原作の展開を注視しながら、アニメの続報に期待しましょう。


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