日本の伝統工芸である備前焼にスポットを当てた本作は、岡山の芸文化賞功労賞も受賞した話題作です。2019年秋には実写映画の公開も決まっており、これからますます注目度が上がるのではないでしょうか。 今回は、そんな本作のあらすじと魅力をご紹介します。
毎日地道に仕事をし、特に変わったこともなく、いつかは結婚して家庭を持ち、普通の生活を送っていくだろう……そんな漠然とした日々を過ごしていたOL・小山はるか。
ある日、偶然目にした備前焼の大皿に心を奪われ、そのまま仕事を辞めて備前焼の本場・岡山県へ向かうことを決めます。目的は、大皿を作った陶芸士・若竹修に弟子入りすること。
本作は、彼女が備前焼職人を目指す物語です。
- 著者
- ["西崎 泰正", "ディスク・ふらい"]
- 出版日
- 2011-09-15
本作は職人を目指すはるかと若き陶芸家・若竹修が、備前焼に真剣に向き合いながら、日々の交流をとおして成長していく物語。
備前焼の魅力もわかりやすく教えてくれ、陶芸に詳しい人も、そうでない人も楽しめるようになっています。制作の過程を知ることができるのも見所です。
また、2019年11月に同名の映画が公開されます。これは、岡山県備前市で「地域に活力を」ということから始まったプロジェクトです。ロケはすべて岡山で行われ、松崎夫妻や林を演じる出演者を決定するオーディションも開催されました。キャストには、主人公の小山はるか役を奈緒、若竹修を平山浩行、榊陶人を笹野高史が演じることが発表されています。
本作は、原作をディスク・ふらい、作画を西崎泰正が担当しており、彼らがタッグを組むのは2回目です。
原作を担当したディスク・ふらいは、漫画原作のほかに、小説も執筆しており、『ロミオの大人観察日記』で福永令三児童文学賞などを受賞しています。岡山県生まれであり、本作を描くにあたって活かされている部分も多いのではないでしょうか。
- 著者
- ["西崎 泰正", "ディスク・ふらい"]
- 出版日
- 2009-07-21
作画の西崎泰正も同じく岡山県出身の漫画家。今も岡山に在住しています。ディスク・ふらい氏とは、「ザ・非情禁講師」でもタッグを組んでいます。
西崎は癖のない絵柄が特徴で、ほのぼのとした雰囲気から、躍動感あふれるものまで、幅広く表現できる作家。本作でも、備前焼の美しさをぞんぶんに描いています。
岡山県ゆかりの2人がタッグを組んだからこその魅力がある、本作。備前焼の魅力に引き込まれていく内容です。
本作の魅力が備前焼にあることは、もはや言うまでもありません。
キャッチコピーは「業界初の備前焼マンガ」。その言葉どおり、作中に登場する陶芸は備前焼のみで、全面的にそれを押し出した本作は、備前焼の本場・岡山県で、岡山芸術文化賞功労賞を受賞しました。
全3巻からなる本作。1巻は土練り、2巻がロクロ、3巻が窯と、全巻読むことで備前焼ができあがるまでのすべての工程を知ることができるようになっています。
作中では、はるかと若竹の交流も描かれますが、それほど深堀りされていくことはありません。本作の見所は、やはり備前焼というものをを描ききること。そこに重きを置いているので、陶芸に興味がある方には、ぜひ入門書としてもおすすめしたい一冊です。
25歳の小山はるかは、大学を卒業して就職3年目のOL。特にドラマチックなこともない人生を送るのだと思いながら日々を過ごしていましたが、ある日、職場の部長と買い物に出たとき、若竹修という陶芸家が作った備前焼の皿を見て衝撃を受けて……!?
- 著者
- ["西崎 泰正", "ディスク・ふらい"]
- 出版日
- 2011-09-15
ある日、上司と一緒に訪れた陶芸展で、若竹修という陶芸士が作った備前焼の大皿を見て、はるかは衝撃を受けます。
一瞬にして心を奪われたはるかは、何とその場で上司に辞職することを告げ、備前焼の本場・岡山県へと向かってしまいました。そして皿を作った若竹修に弟子入りを志願するのです。
しかし、いきなり弟子入りさせてくれと言ってきたはるかに、若竹修は、自分探しをするためにすぐ仕事を辞めるようなヤツなんか信じられないと、彼女を追い返します。もちろんはるかはそれであきらめることはなく、弟子入りさせてもらうために奮闘することに。
若竹はまだ若い陶芸士ですが、その実力は確か。しかし幼いころに両親を亡くし、大人達の自分勝手な行動を見たために他人のことをあまり信用しません。しかし、はるかの存在によって少しずつ変化していきます。
はるかの行動力と度胸に、驚かされる1巻。しかし、つい変わりばえしない日々を送っていると、彼女の行動力が魅力的に、ドラマチックに感じられ、つい引き込まれてしまいます。
そんなはるかと若竹の出会いや交流はもちろんのこと、備前焼の最初の関門である土練りをメインに、備前焼の魅力も存分に盛り込んだ始まりの巻です。
若竹の弟子になったはるか。様々な備前焼に囲まれて充実した日々を送っているなかで、自分でも作品を作ってみたいと申し出ます。それに対し若竹は……?
- 著者
- ["西崎 泰正", "ディスク・ふらい"]
- 出版日
- 2011-12-15
備前焼は、土練り3年ロクロ6年焼き一生と言われるほど、果てしなく根気のいるもの。しかし彼女はかなり早めの段階で自分でも作品を作ってみたいと申し出ます。
反対されるかと思いきや、意外にもあっさりとおりた許可。しかし、いざ実践してみると想像していたものとまったく違う感覚に、あらためて自分の未熟さを痛感する結果となったのでした。
そんな一進一退がありつつも、備前焼まつりでは小町の代役を頼まれたり、さらにはOL時代の上司がはるかを連れ戻しに来たりと、波乱万丈な出来事がはるかにふりかかります。
まさかの展開がこれでもかと過ぎていく第2巻ですが、そんなトラブルも柔軟に乗り越えていくはるか。そんな彼女の明るい性格や、備前焼に対する情熱が若竹に影響を与えていく姿を楽しむことができるでしょう。
ちなみに、作中に出てくる伊部駅2階のギャラリーは、実在するもの。さまざまな備前焼を見ることができるので、機会があればぜひ見にいってみてはいかがでしょうか。
ついに初めての窯焚きを迎えるはるか。備前焼の花形ともいえる工程にワクワクが止まらない彼女とはうらはらに、いざその日になっても、若竹はなかなか動きださなくて……!?
はるかの初めての作品は、無事完成するのか、ハラハラの完結巻です。
- 著者
- ["西崎泰正", "ディスク・ふらい"]
- 出版日
- 2012-05-16
土練りから始まり、ロクロ、作品作りとしてついに窯焚きが描かれることになる本巻は、まるまる1冊を使って窯焚きの様子が描かれます。
冒頭での天候問題に始まり、24時間体制で炎を管理し、温度を調整するなど、さまざまな窯焚きの難しさやアクシデントがはるかを襲います。初めての窯焚きに浮かれ気分となっていましたが、あまりにも大変な作業を目の当たりにして、備前焼の奥深さを痛感することになります。
一度窯に入れてしまったら、途中で中を確認することはできません。これまでの努力が成功するか失敗するかは、窯の火を落とすまでわからないのです。そのもどかしさや、無事完成したときの作品への愛情は、備前焼を体験したことのない人でも共感できるもの。
果たして、はるかの初めての作品は、一体どうなるのでしょうか。気になる結末・最終回は、ぜひ手にとって確認してみてくださいね。