元ニューヨーク市警科学捜査本部長のリンカーン・ライムは、ある捜査中に事故に遭い、そこから四肢麻痺の生活を送ることに……。やがて彼は、自ら命を断つことを望むようになるのです。しかし、そんななかで舞い込む怪事件の捜査の依頼。彼は仕方なく、捜査に取りかかるのです。 「ジェットコースターミステリー」とも言われるほどのスピーディーな展開は、読者に息を着く暇を与えません。今回は、そんな本作『ボーン・コレクター』に関する5つの魅力をご紹介しましょう。 2018年月現在、アメリカではドラマ制作のプロジェクトも動いている、人気作です。
タクシーに乗ったまま行方不明となった、2人の男女。翌日、そのうちの男性が、骨が見えるほど指を削がれた状態で生き埋めになって発見されます。彼の指には、一緒に行方不明になった女性の指輪がはめられていて……。
この死体の発見から、奇妙な事件が幕を開けます。
- 著者
- ジェフリー ディーヴァー
- 出版日
捜査に駆り出されたのは、元ニューヨーク市警科学捜査本部長のリンカーン・ライム。かつて捜査中に事故に遭い、そこから四肢麻痺で首、頭、左手薬指以外動かせない生活を送っていました。
不自由な生活のなか、彼は自ら命を断つことを考えるようになります。しかし、そんな時にこの怪事件が起こります。
実はこの事件、犯人がわざと「事件現場にあるはずのない証拠」を残しているにも関わらず、捜査が難航していました。リンカーンは相棒のアメリア・サックスとともに、仕方なく捜査に乗り出します。
果たして、犯人「ボーン・コレクター」とは一体、どんな人物なのでしょうか?
本作は、映画監督フィリップ・ノイスの手で『The Bone Collector』というタイトルで1999年(日本は2000年)に実写映画化。アンジェリーナ・ジョリーとデンゼル・ワシントンが主演をし、マイケル・ルーカーがキャストとして出演しています。原作とは内容が異なっているため、小説を読んだ方でも楽しめるでしょう。
また、ドラマ化は『Lincoln(原題)』として、アメリカのNBCで放送予定です。
主人公リンカーン・ライムは、元ニューヨーク市警科学捜査本部長でありながら、過去の捜査中に起こった事故により四肢麻痺となってしまった人物。よくも悪くも、はっきりとものを言う性格です。
たとえば、階級付きの刑事が事件現場のトイレを利用したことで、そこにあった犯人の痕跡などの情報を下水に流してしまった事がありました。その時リンカーンは、「下水の網にあるものをすべて取ってこい」と、彼に命令しました。
相手の社会的な地位などに関係なく、臆することなく発言するリンカーン。しかし、それは捜査にかける情熱や、責任感の表れとも言えるでしょう。
彼は人工呼吸器なしで生活できるようになったものの、介護がないと生活できない現状、回復が見込めないことに、やがて自殺を望むようになります。ある本を執筆した際に受けたインタビューでは、「次の大きな目標は自殺、手を貸してくれる人を探している」と発言するほどでした。
その後、彼は安楽死を支持する団体に所属する医師ウィリアム・バーガーと出会います。しかし、やっと死ねる……と思った矢先に飛び込んできたのが、この奇妙な事件に関する捜査依頼だったのでした。
リンカーンがその事件に興味を持ち始めたことに気づいたウィリアムは、自殺の延期を決定。そこからリンカーンは、不本意ながら捜査に乗り出すことになります。
主人公の設定だけ見てしまうと重い物語になりそうなものですが、そうならないのは、リンカーンの個性的なキャラクターゆえ。死にたいのに死ねず、仕方なく捜査に取りかかるという様子が、本作の面白い設定でもあります。
本作では、数々の謎や伏線、それをもとにリンカーンが捜査していく様子に引き込まれていきます。
謎解き部分は、リンカーンの科学捜査の知識と、専門的な解析によって推理が展開。彼の状況把握能力の高さからくり広げられていく推理は、巧みの一言。読者に爽快感を与える展開です。
たとえば、2人目の被害者の場所を特定する時のこと。犯人によってわざと残された証拠から、そのメッセージを推測していきます。
1つめの証拠は、「紙切れ2枚」。1枚には午後3時、もう1枚にはページ番号の823が書かれています。犯人があえて残しているという点から、様々な可能性を考え、リンカーンは次の犯行を予告するメッセージだと特定しました。
さらに、2つ目の証拠品である「ボルト」には「CE」というアルファベットが刻印されていました。その情報から、これが特注のものであることが判明します。
他にもリンカーンの見事な推理は止まりません。「アスベスト」を調べることによって被害者の情報が判明し、現場に残された「砂」を調べることによって、操作上重要なある場所も判明するのです。
解析したものや問い合わせた情報を元に、自身の知識を使って推理を進めていくリンカーン。するすると次へと続く道筋が明かされ、どんどん読者を引き込んできます。
これらの残された証拠が、指し示すものとは何なのでしょうか?
本作は、特徴的な殺害方法も読者の興味を喚起してきます。
作中には、「被害者が死んでいることを祈る。被害者のために」という言葉が登場します。つまり、生きている方が辛いということが容易に想像できるほどの、あまりにもひどい殺害方法ばかりなのです。
1つ目が、あらすじでもご紹介した「生き埋め」。被害者は手を手錠で固定され、脳を傷をつけないように顔を撃たれたあとに、そのまま歩き、自ら生き埋めの場所へ向かいます……。
しかもそれだけでなく、犯人は警察に向けてのヒントを与えるために、被害者がまだ生きている状態で薬指の肉を削ぎ、女性の指輪を嵌めます。あまりにもむごいやり方です。
2つ目は、「高熱の蒸気」による殺害。被害者を密閉空間に拘束し、高熱のスチームで殺害したのでした。その死体は、まるで巨大なウロコをまとったような見た目に。皮膚の色も「オレンジに近い赤」と描写されており、凄まじさを感じさせるでしょう。
3つ目が、「生物に生きたまま捕食される」という殺害方法。被害者は部屋に固定され、刃物で深く刺された後、大量のネズミに生きたまま襲われます……。結果的に被疑者は助かりますが、ネズミに生きながらに食べられる描写は、読者にも痛いほどの恐怖を強く感じさせるものです。
このように、さまざまな方法で残虐な殺害方法が描かれています。怖くておそろしい、だけど、読まずにはいられない不思議な魅力があります。
捜査のなかで、この一連の事件が、かつて「ボーン・コレクター」と呼ばれた過去の犯罪者ジェームズ・シュナイダーを模倣したものであると判明。犯人は、この事件の被害者に近い人物を選び、殺害していったのです。
- 著者
- ジェフリー ディーヴァー
- 出版日
- 2003-05-09
この事実をもとにリンカーンたちは次の犯行現場を探し出し、犯人のアジトを発見します。しかし、あと一歩およばず、犯人は逃亡。
そんななかでアメリア、さらにリンカーンに忍び寄る犯人の魔の手……。彼は、そこで犯人「ボーン・コレクター」と対面することに。何とその人物は、彼のよく知っている者で……。
息をもつかせぬ展開、そして華麗な謎解きも魅力の本作ですが、リンカーンとアメリアの関係の変化にも注目したいところ。自ら死を望んでいたリンカーンの心境の変化も必見です。
その結末が気になる方は、ぜひ本作を手に取ってお確かめください。
『ボーン・コレクター』の続編で、リンカーン・ライムを主人公としたシリーズの第2弾『コフィン・ダンサー』。今回の犯人は、その刺青から「コフィン・ダンサー(棺桶の前で踊る死神)」と呼ばれる殺し屋です。
武器密売人に不利な証言をするであろう証人を消すために雇われた彼。民間航空運輸会社の社長兼パイロットを殺害し、さらに彼の妻を次なる標的と定めます。
- 著者
- ジェフリー ディーヴァー
- 出版日
裁判まであと2日と迫ったなかで、追うリンカーンと、追われるコフィン・ダンサー。手に汗握る展開から目が離せません。
見所は、爆発や破壊行為、銃撃戦など、まるで映画のような迫力満点の描写でしょう。多くの犠牲が出るなか、緊迫した場面が続きます。
ターゲットにされている人を1人でも多く生き残らせること、そしてコフィン・ダンサーを逮捕すること。リンカーンは、この2つをクリアできるのでしょうか?
前作が気に入った方は、こちらもぜひご覧ください。