トラウマになる絵本おすすめ5選!大人も子どもも怖いのに読みたくなる魅力

更新:2021.11.18

さまざなまジャンルが出版されている絵本。なかには、読んだらトラウマになってしまいそうな怖い作品もあります。この記事では、怖いのにページをめくりたくなってしまう不思議な魅力のあるおすすめ作を、読み聞かせのコツとともにご紹介していきます。

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トラウマになる怖い絵本!読み聞かせのコツは?

 

トラウマになってしまうほど怖い絵本は、幼い子どもに与えるとよくないと考えている方も多いかもしれません。しかしその一方で、「教訓をよりストレートに伝えられる」「怖いという感情を得ることで感性が豊かになる」などのメリットもあります。

子どもが自分から手に取ることはあまり無いかもしれないので、親御さんなどの大人が読み聞かせをしてあげるのがおすすめです。では読み聞かせのコツをご紹介しましょう。

【子どもが安心できる距離】

子どもは、親の声に無条件に安心感を覚えます。特に声を近くに感じることができると、「自分のために読んでくれている」と幸福感を得ることができるのです。おすすめは、膝の上や間に子どもを座らせること。子どもが見やすい距離であると同時に、頭のそばで声が聞こえるので、絵本の世界観に入り込みやすくなります。

【声の大きさ】

読み聞かせをする際は、シーンごとに声の抑揚をつけることが大切です。大きな声で読み続けるよりも、時には小声、時にはひそひそ声を織り交ぜることで、子どもは耳を澄ませて聞いてくれます。

またストーリーにあわせて、一緒に驚いたり怖がったり笑ったりすることも重要。読み手であると同時に、子どもと一緒に感情を共有する役割も担っています。

暗闇がトラウマになる怖い絵本『いるの いないの』

 

主人公の「ぼく」は、おばあさんの家でしばらく暮らすことになりました。木造の古民家で、床は板と畳。家の中にはおびただしい数の猫がいます。

「ぼく」はなぜか、暗がりが気になって仕方ありません……。

著者
京極 夏彦
出版日
2012-01-28

 

「百鬼夜行」シリーズや「巷説百物語」シリーズなどで有名な京極夏彦が文、イラストレーターで画家でもある町田尚子がイラストを担当している作品です。

「豊かな想像力と、想定外のことが起きても平静を保てる強さを育む」「命の尊さや他者を傷つける恐ろしさを知ってほしい」「絵本を通じて怪談に触れてほしい」というコンセプトのもと、おばけ好きの子どものために企画されました。リアリティのあるイラストが物語の不気味な雰囲気を引き立てています。

「はりから でんとうが さがっている。
そこから うえは うんとくらい。
はりより ずっとうえに ちいさな まどがある。
そこから あかりが はいってくる。
それでも うえのほうは くら。」(『いるの いないの』より引用)

おばあさんの顔ははっきりとは描かれていません。おびただしい数の猫と、男の子が見つめる先の暗闇がやけに気になります。いるのか、いないのか、想像力が膨らむ一冊です。

好き嫌いが多い子どもはトラウマになるかもしれない絵本『たべてあげる』

 

主人公のりょうたくんは、ピーマンが苦手。食事にピーマンが出てくるたびに、「誰か代わりに食べてくれないかな」と思っていました。

すると、コップの裏から小さなりょうたくんが現れます。小さなりょうたくんは、りょうたくんの代わりに嫌いなものを何でも食べてくれました。みるみるうちに成長し、だんだん様子がおかしくなってきて……。

著者
ふくべ あきひろ
出版日

 

絵本作家のふくべあきひろと、おおのこうへいの作品です。はっきりした色彩と親しみやすいタッチでありながら、ブラックユーモアの効いたホラーのような展開で、トラウマになると話題になりました。

作者によると、「後半のりょうたくんの目に光りがないのがこだわり」とのこと。ラストにりょうたくんがどうなるのか、ぜひ見届けてください。好き嫌いの多い子どもに読むと、効果は抜群でしょう。

恐怖の中に温もりを感じる絵本『夜の神社の森のなか』

 

友人と神社の敷地で遊んでいたケンジ。不思議なものを見つけ、鞄にしまいました。

その日の夜、再び神社の前を通ると、突然目の前に妖怪が現れて、「落とし物を返してほしい」と言ってくるのです。

著者
大野隆介
出版日
2015-10-09

 

「妖会録」シリーズのひとつ。グラフィックデザイナーの大野隆介が初めて手掛けた絵本です。

白黒のイラストは、鉛筆で書かれたもの。髪の毛の1本1本まで丁寧に書き込まれ、妙にリアリティがあり、妖怪が人間と同じ世界にいることがあたかも普通かのように感じられます。

妖怪は、人間たちの生活をどこかから観察しているよう。ページをよく見てみると、暗闇の風景のどこかに妖怪が紛れ、ひっそりとこちらを見つめているのです。緊張感たっぷりの物語。モノクロームの世界を堪能してください。

子どもが次々と死んでいくあっけなさがトラウマの絵本『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』

 

名前の頭文字がそれぞれAからZの子どもたち、26人。彼ら、彼女たちは、26通りの事故や犯罪で死んでいくのです。

イギリスの伝承童話「マザー・グース」風に、2行ずつの詩にあわせて物語は進んでいきます。

著者
エドワード ゴーリー
出版日

 

大人のための絵本を書くとして定評のある、エドワード・ゴーリーの代表作です。本書の内容はいたってシンプル。2行の詩に合わせて26人の子どもが26通りの方法で死んでいくのです。

翻訳を担当したのは柴田元幸。韻を踏んだリズムは軽快、だからこそそのあっけなさが怖くなります。ある子どもは階段から落ち、またある子どもは画びょうを飲む……実際に起こりえる出来事が死因となっているので、日常と死が紙一重であることを感じられるでしょう。

細い線で書かれたイラストは、繊細で美麗。その美しさと子どもが死ぬという大きすぎるギャップが、読者にトラウマを植え付けます。怖いのにどんどん先を読み進めてしまう絵本です。

トラウマになるからといって読み過ごせない絵本『ピカドン PICADON』

 

1945年8月、日本列島に原爆が落とされました。人々は、目が痛くなるほどの閃光を「ピカ」といい、その後の衝撃を「ドン」と呼びました。

本書は、「ピカドン」と名付けられた原爆がもたらした惨状を描いた絵本。大人も子どもも手に取ってほしい一冊です。

著者
["木下 蓮三", "木下 小夜子"]
出版日
2009-07-08

 

1978年に、木下蓮三、小夜子夫妻が手掛けた短編アニメーションを絵本に再編集した作品です。

本書の何よりの特徴は、文章がなく、絵だけで進行していく構成でしょう。前半は淡い色彩で日常生活を描き、中盤以降は原色を叩きつけたようなコントラストの激しい配色になっています。

特に印象的なのは、表紙にも描かれている親子が、原爆の熱線を浴びた直後にドロドロと溶けてしまうシーン。子どもたちにとってはトラウマになりかねない描写ですが、歴史を知ることも大切なことでしょう。戦争や核兵器は、一瞬にして日常を奪いとってしまうと痛感させられる内容です。

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