鬱な気分になる小説おすすめ6選!読むのが辛いのにやめられない

更新:2019.4.26 作成:2019.4.26

小説のなかには、ハッピーエンドで終わるものだけではなく、読んでいくうちに気分が落ち込んでいくものや後味の悪いものなども存在します。心身ともに疲れてしまうのに、なぜだか読むのをやめられない……この記事では、鬱な気分になる小説のなかからおすすめのものをご紹介していきます。

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人間の闇に鬱な気分になるおすすめ小説『鬼の跫音』

 

本書は全6編を収録した短編集です。

どの話にも「S」というイニシャルの別人が登場するのが特徴。何気ない日常生活が描かれますが、そこから人間が心の内に抱えている闇を引きずり出していきます。

 

著者
道尾 秀介
出版日
2011-11-25

 

2009年に刊行された道尾秀介の作品です。人間の怖さを描いたホラー作品で、各話ともどのようなラストを迎えるのか予想がつかないのが魅力。ぞわぞわとする後味で、もう1度読むのはためらってしまうほどです。

登場するのはどこにでもいそうな人たちなのに、時には人を殺してしまうほどの狂気をはらんでいます。きっと誰しもが「鬼」になる可能性を秘めていることがわかり、読者の恐怖を煽るのです。

暗くて救いはなく、鬱な気分になりたい時にはおすすめの一冊です。

 

最適な治療法は何か?鬱な気分になる小説『廃用身』

 

医師の漆原は、デイケア医療に携わるなかで、「廃用身の切断」という治療法を思いつきます。患者と幾度も話し合いをしていざ実行に移すと、患者にとってもケアマネージャーにとってもこれまでの負担が軽減され、心身ともに身軽になったという驚きの結果が出ました。

この治療法は「Aケア」と名付けられ、漆原は「Aケア」に未来を感じ始めます。

しかし、一部の医療ジャーナリストが「悪魔の所業」と報道したことをきっかけに、マスコミから多大な批判を受けるようになるのです。

 

著者
久坂部 羊
出版日
2005-04-01

 

2003年に刊行された久坂部羊のデビュー作です。久坂部は医学部を卒業し、麻酔科や外科で勤務をした経験のある人物。作家デビューをしてからは、非常勤医師や大学の講師を務めています。

「廃用身」とは、たとえば脳梗塞などの病で麻痺してしまい、動かなくなってしまった手足のこと。漆原が考えた「Aケア」は、その手足を切断するという治療法なのです。

物語の前半は漆原の遺稿で、後半は漆原の過去やマスコミの「Aケア」に対する報道を、編集者の目線で語るという2部構成。奥付にも工夫が施されていて、まるでノンフィクションように感じさせられます。

漆原は患者のことを考える医師なのか、精神が歪んだサイコパスなのか……。「Aケア」に少なからずポジティブな側面があるからこそ、明確な答えを出すことができません。高齢化が進む日本社会で暮らす私たちにとって、深く考えさせられる内容です。

 

ある日犯罪者の弟に。鬱な気分になる小説『疾走』

 

中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、そして進学校に通う兄のシュウイチと4人で暮らしています。シュウジはキリスト教徒ではないものの教会に通っていて、聖書を愛読していました。それ以外の時間は、陸上に励んでいます。

ある時、町にリゾート開発計画が持ち上がります。教会に立ち退き令が出されますが、神父は頑なに譲ろうとしません。

そんななか、事件が起こってしまうのです。

 

著者
重松 清
出版日
2005-05-25

 

2003年に刊行された重松清の作品です。主人公のシュウジは、一見普通の少年ですが、心の中に孤独を抱えています。救いがほしくて教会に通い、神父や聖書に答えを求めますが、満足したものは得られません。それどころか周りの大人たちは、誰も彼の不安を受け止めようとしてくれないのです。

一方で兄のシュウイチは、高校生になると精神を病んでいき、仲が良かったはずのシュウジに暴力をふるうように。そしてある事件を起こしてしまうのです。それからシュウジは、犯罪者の弟として生きることになります。絶望の淵に落とされるとは、まさにこのことでしょう。

恨み、憎しみ、悲しみ、そして孤独が渦巻き、最終的には5人の死によって物語が終わります。読んでいて胸が痛くなる展開が続き、苦しくなることもあるかもしれません。沈鬱した気分から立ち直るには時間がかかるでしょう。

 

実際の殺人事件を追ったノンフィクション・ノベル『冷血』

 

1959年11月16日、カンザス州のとある村で、農場主とその一家が惨殺される事件が起こります。死体の状態はあまりにもむごく、犯人は被害者に対してひどい憎悪を抱いていることが予想されました。

しかし、農場主は誠実な人柄で知られていて、家族も周辺住民との関係は良好。当初は強盗を視野に入れて捜査がおこなわれましたが、それにしては不可解な点が多く、難航していきます。

後日、有力な情報から加害者2人を逮捕。取り調べをするなかで、事件の真相と加害者の生い立ちが明らかになっていきます。

 

著者
トルーマン カポーティ
出版日
2006-06-28

 

1966年に刊行された、アメリカの小説家トルーマン・カポーティの作品です。1959年に実際に起きた殺人事件を取りあげていて、ノンフィクション・ノベルとして発表されました。単なるルポルタージュとは異なり、関係者の人間関係や心情が丁寧に描かれている「小説」の体を成しているのが特徴です。

『冷血』というタイトルは、加害者の残虐性を表しているといわれる一方で、「取材を重ねるうえで加害者に同情を抱きつつあった心情」と「作品発表のために早く死刑が執行されてほしい心情」の間に揺れ動く作者自身を表したものだともいわれています。

身の毛がよだつほど残虐すぎる事件に鬱々としてしまう作品です。どんなことがあっても殺人は絶対にしてはいけないことですが、それでも加害者の生い立ちを知ると、彼らの境遇が事件を引き起こしたと思わざるを得ません。死刑制度についても考えさせられる一冊です。

 

少年たちの根源悪に鬱な気分になる小説『蠅の王』

 

戦争中に疎開地に向かっていた飛行機が墜落。乗っていた少年たちは、南太平洋の無人島に置き去りにされてしまいました。ラルフという少年を中心に島での規則を作り、のろしを上げて、助けが来るのを待つことにします。

しかし、かねてからラルフと仲の悪かったジャックは、彼が中心になって皆を仕切っていることが気に入りません。ジャックは仲間を連れて狩猟隊を結成し、好き勝手に暮らし始めます。時には狩りに成功してごちそうを食べることもでき、それを見ていたラルフの仲間たちも、しだいにジャックの隊へと加わっていきました。

ある日、のろしを上げ忘れたがために、島のそばを船が通ったにも関わらず素通りされるという出来事が起きます。これをきっかけにラルフの仲間たちは対立し、心の隙をうまくついたジャックに次々と引き抜かれていきました。残った仲間も殺され、ついにひとりになったラルフは、自分の命を狙ってくるジャックの手から逃れるため、島中を逃げ回ることになるのです。

 

著者
["ウィリアム ゴールディング", "William Golding"]
出版日
2017-04-20

 

1954年に刊行された、イギリスの小説家ウィリアム・ゴールディングの作品です。おなじく「漂流もの」の『十五少年漂流記』の舞台を架空の未来に移した内容ですが、悲劇的すぎる展開だと話題になりました。

やはり注目したいのは、少年たちの悪が徐々に噴出していくさまでしょう。タイトルにもなっている「蠅の王」とは、聖書に登場する悪魔のこと。本書では「蠅が群がる豚の生首」の形容として使われています。

頭の回転が速くて誰からも慕われるラルフに対し、プライドと承認欲求のかたまりのジャック。ジャックはラルフから仲間を奪うたびに自信をつけ、自分を守るためならば他者を攻撃しても、殺しても構わないと思うようになるのです。ジャックのもとについた少年たちも、生き残るためには彼の指示に従わなければなりません。

作者のゴールディングは、第二次世界大戦に従軍し、実際に人間の殺し合いを経験しています。だからこそ、人間がもっている残虐性や、集団心理の恐ろしさを迫真の筆致で描くことができたのでしょう。

 

自分のしてきた行動に鬱な気分になるかもしれない小説『春にして君を離れ』

 

主人公のジョーンは、初老の女性。優しい夫と子どもに恵まれ、理想の家族を築きあげたことで満ち足りた日々を過ごしていました。

ところがある日、バグダッドからイギリスへと帰る途中に出会った友人との会話をきっかけに、これまでの夫婦関係や親子関係に疑問を抱くようになるのです……。

 

著者
アガサ・クリスティー
出版日
2004-04-16

 

1944年に刊行された、イギリスの小説家アガサ・クリスティの作品です。タイトルは、シェイクスピアの詩の一説を使用。女性の儚げな感情を表しているといえるでしょう。

物語は、ジョーンの心情を中心に進んでいきます。これまで自分の価値観にもとづいて生き、正しい人生を歩んできたはずの彼女が、友人との会話をきっかけに実は自己中心的で周囲の人のことを考えていなかったのではないかと焦り、困惑していくのです。

殺人などの大きな事件が起きるわけではありませんが、これまでの生き方が間違っていたかもしれないという事実は、真の意味でのサスペンス。読者も自分の人生を見つめなおし、鬱な気分になってしまうかもしれません。