小説家・誉田哲也の代表作である「姫川玲子」シリーズ。『ストロベリーナイト』のタイトルでドラマ・映画化もされた人気作品です。2019年4月からは、『ストロベリーナイト・サーガ』のタイトルで再ドラマ化。男社会である警視庁捜査一課のなかで、主人公・玲子は凶悪事件に立ち向かっていきます。 今回は、そんな本シリーズのあらすじと魅力を、発売順にご紹介。ネタバレ注意です。
2006年に第1作目が刊行されて以来、高い人気を得ている本シリーズ。テレビドラマや映画では原作第1作目のタイトル『ストロベリーナイト』が使用されていますが、原作の小説版では、主人公の姫川玲子が活躍する「姫川玲子」シリーズとして刊行されています。
小説は長編、スピンオフ、短編集が刊行されている人気シリーズ。単行本の他に文庫版も発売されているので、気軽に読むこともできるでしょう。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2008-09-09
テレビドラマ版では主演の竹内結子をはじめ、西島秀樹、宇梶剛士などの豪華なキャストが集合。脚本家には多くの刑事ドラマを描いてきた林誠人を迎え、高い人気を得た作品です。連続ドラマだけでなく、スペシャルドラマも放送されました。
2019年4月から放送の『ストロベリーナイト・サーガ』では、これらのキャスト、脚本家、監督などすべてを一新。さらに内容も続編ではないリメイク作品として作られているので、これまでのシリーズを知らない方も1から楽しむことができるでしょう。
数ある警察小説のなかでも、名作の1つといえる作品です。
「姫川玲子」シリーズをはじめ、「ジウ」シリーズなど数多くの警察小説で知られる小説家。一方で『疾風ガール』や『武士道シックスティーン』シリーズなどコミカルな青春小説、ホラーやオカルトものまで手がける幅広い作風を持つ作家です。そのため、幅広い層から支持されています。
そんな誉田哲也の作品をまだ読んだことのない方に向けて、本作以外の作品のなかから、まずはぜひ読んでほしい作品ベスト3をご紹介しましょう。
剣道に邁進する2人の女子高生を主人公にした青春小説。剣道が大好きで、剣道以外はどうでもいいと考えているほどの剣道オタク、その実力も全国準優勝と剣道エリートの香織と、剣道歴はわずか3年ながら、日本舞踊をやっていた経験から独特な足さばきを持つ早苗。
この2人が剣道を通して出会い成長していく話は、まさに青春そのものです。漫画化や映画化もされる人気作品となっています。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2010-02-10
2017年にテレビドラマ化、2018年には映画化もされた作品。タイトルのとおり超能力を持つ人達が普通に存在する世界を描いており、「増山超能力師事務所」を舞台に超能力を使う人達が探偵となり、さまざまな依頼をこなしていきます。
超能力とミステリーが融合した作品は、コミカルで読みやすく、幅広い方が楽しめる内容といえるでしょう。
特殊班捜査係「SIT」に所属している美咲と基子、2人の女性警察官が活躍する物語。ストーリーは、女性の主人公を描くことに定評がある誉田哲也らしく、涙もろい美咲と筋肉オタクの基子のキャラクターはとても魅力的で、どんどん先を読みたくなってしまうこと間違いなしです。
2011年にはテレビドラマ化もされており、ぜひ押さえていただきたい作品といえるでしょう。
本シリーズの主人公は、もちろん姫川玲子です。
ブランドもののバッグやコートを愛用し、身長は170センチ。女優のような美人で人の目を引く彼女は、ノンキャリアでありながら27歳で警部補になった優秀な女性刑事です。天性の才ともいえるプロファイリングセンスを持ち、犯人像を的確にイメージするその能力の高さは、周囲を常に驚かせています。
犯罪被害者であるという過去が、彼女の刑事に対する強い思いを作り出していきました。
刑事としてはとても優秀ではあるものの、そうあるがゆえに敵を作ることも多い彼女。その1人に、勝俣健作という刑事がいます。彼は、警視庁の捜査一課に所属する刑事。元公安という経歴を持ち、犯罪者を逮捕するためには違法捜査もいとわない冷酷な人物です。玲子に対しても、容姿や態度を悪く言って毛嫌いしています。
そして、玲子にとって初めての年下の部下となったのが、大塚真二という刑事です。まだ若く経験も浅い彼ですが、捜査に対する真面目な態度や粘り強さは、玲子をはじめベテランの先輩刑事も認めている将来有望な人物。第1作目は、彼の存在なくしては語れないほど重要なキャラクターとなっています。
ある日、ため池の近くで見つかった男の惨殺死体。さっそく捜査に乗り出した警視庁捜査一課の刑事達でしたが、玲子はあることに気が付きます。そして彼女は、ため池の中にも死体があると推理。そのとおりに死体が発見され、事件はますます複雑なものへと変貌していくことになるのです。
第1作目となる本作で起こる事件は、なんと11件にもおよぶ連続殺人事件でした。その捜査のなかで浮かび上がってくるのが、タイトルにもなっている「ストロベリーナイト」という言葉。
殺された被害者達に共通することは、急に積極的な性格に変化したことと、ある不可思議な行動を取っているということでした。その行動と「ストロベリーナイト」がつながった時、言葉の意味が判明します。
それは、闇でおこなわれていた、殺人ショーを意味する言葉だったのです。参加者のなかから選ばれる、殺す側と殺される側の人間。衆目の前でおこなわれる、ショーという名前の殺人。これまで連続殺人事件の被害者と思われていた人達も、すべてこの殺人ショーの参加者だったのでした。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2008-09-09
捜査の末に、このショーの存在が明らかになってくるスリリングな展開はもちろん、その内容に衝撃を受ける読者も少なくないはずです。
シリーズ1作目である本巻では、玲子の過去が語られます。このエピソードを読むことで、彼女がどうしてここまで犯罪捜査に心血を注いでいるのかがよくわかるでしょう。
またストーリーが進むにつれて、ある衝撃的な展開も。すでにご紹介している大塚が、なんと捜査の過程で殉職してしまうのです。
「ストロベリーナイト」の情報を手に入れたことがきっかけで、結果的に命を落としてしまうことになった大塚。捜査熱心なあまりに殉職という最悪の結果になってしまう彼の姿には、読者も大きな衝撃を受けることでしょう。
そして、それはもちろん作中の登場人物達も同じです。このことが玲子や他の人間達にどう影響を与え、事件解決に向けた捜査がどう変わっていくのか、そのあたりにもぜひ注目してみてください。
放置された車から発見された、男の左手首。鑑定の結果、その手首の持ち主は判明しましたが、発見されたのは致死量に至る大量の血痕のみで、手首の持ち主の死体は見つかりません。玲子達は、死体なき殺人事件の捜査に乗り出すことになります。
捜査が進むにつれて明らかになっていくのは、被害者の関係者が過去にさまざまな死に方をしていたり、トラブルを抱えていたりすることでした。
さらに、被害者について語られる証言は、どれも矛盾したものばかりで……。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2009-10-08
前作から続いている第2作目は、玲子をはじめ大きなキャラクターの変更もなく、前作を読んだ方であればより面白く読むことができるでしょう。
今回の事件は「死体なき殺人」。このワードだけでも、ミステリー好きにとっては興味をそそられるかもしれません。矛盾する証言や被害者周りの不審死なども、さらに深い謎を感じさせてくれます。
何よりも、この「死体」が、一見単純なようで、意外なトリックの鍵となっているのです。
そもそも、この「死体なき」というのは、手首だけが見つかっている状態のことを意味しています。そして後に胴体も見つかるのですが、そのことが被害者と思われていた人物や犯人をめぐり、意外な展開を見せることに。
このあたりのトリックは、まさに「死体がない」からこそできるもの。これこそ本作1番の見所ともいえるので、ぜひ注目してみてください。すべて読み終わった時、この言葉がしっくりくるトリックには、思わずうなってしまうこと間違いなしでしょう。
刊行の順番でいうと「姫川玲子」シリーズの3冊目となる本作。ただ本作は短編集なので、長編シリーズとは少し違う時系列で語られるストーリーもあります。 本巻に収録されているのは全部で7話。
玲子が巡査だった6年前を描く「東京」や、巡査部長となった5年前の話「手紙」をはじめ、少年法を題材にスピンオフ作品である『感染遊戯』との繋がりあるストーリーを楽しめる「過ぎた正義」、取調室を舞台に玲子と生意気な女子高生の対決を描き、玲子の意外な一面も垣間見ることができる「右では殴らない」が収録されています。
他にも、弱者の視点から事件の捜査をリアリティ溢れるテイストで描く「左だけ見た場合」、玲子が女性ならではの視点から事件を解決する「悪しき実」、そして犯人の一人称で事件を描き出す表題作「シンメトリー」などの話が楽しめる一冊です。
いずれも玲子の意外な一面を楽しめたり、思わぬ視点から事件を見ることができたりと、それぞれの面白さや魅力があります。しかし、やはり表題作「シンメトリー」は読みごたえ抜群。深く重いタイプの話ではありますが、一気に読み進めてしまうことは間違いないでしょう。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2011-02-09
短い話なので、もちろん長編と比べるとそれほど複雑な設定や構成ではありません。そういった点では第1作、2作と読んでいる方にとっては、少し物足りなさを感じる部分もあるでしょう。しかし短いからこそ、時間を区切らず一気に読めるというメリットもあります。
「シンメトリー」では、飲酒運転の挙句に電車と衝突するという事故を起こした犯人や、その事故のせいで重大な怪我を負った人達などが描き出されていきます。この飲酒運転の電車事故を発端にして殺人事件が発生するのですが、それは事故に巻き込まれた被害者による、犯人への復讐だったのです。
殺人が悪いことだとは、誰しもが思うこと。しかし、この話を読むと、誰が悪人なのかと考えてしまう読者も多いのではないでしょうか。
玲子はもちろん、被害者や加害者の心情にもスポットを当てている話もあり、刑事ものというよりも、事件に関わった人物達の人間ドラマといったほうがよいかもしれません。そのため、できれば第1作、2作と読んでから手に取ったほうが、より楽しく読むことができるでしょう。
長編3作目となる本作。これまで連続殺人や死体なき殺人などが描かれてきましたが、本巻はどちらかというと、恋愛要素が強めの話になっています。
ある日、玲子達は、暴力団などと関わりのある事件を捜査する組織犯罪対策第四課(通称・組対)とともに捜査をすることになります。組対と一緒ということは、もちろん暴力団絡みの事件です。しかし、捜査が進むにつれて明らかになっていくのは、過去の事件に対する警察の不祥事でした。
事件の内容はもちろんですが、本巻での見所は玲子の恋愛模様。彼女は捜査のなかで、牧田という暴力団の会長と出会います。そして2人は、しだいに惹かれ合っていくことになるのです。
- 著者
- 誉田哲也
- 出版日
- 2012-07-12
玲子の恋愛は、読者にとっても意外に感じられるものかもしれません。これまで彼女と恋愛方面で絡んできそうだと感じられるキャラクターは存在していましたが、本巻ではそんな読者の予想はあっさりと覆され、新しく登場するキャラクター・牧田と恋愛関係になっていくのです。
何よりも刑事の仕事を大切にしていた玲子が、暴力団と恋に落ちるということ自体かなり驚きですが、そのことがストーリーの結末にも大きく関わってくるので目が離せません。
もちろん玲子も、自分の恋愛が刑事として正しくないことを感じています。優秀な刑事である彼女と、恋愛には不器用な1人の女性としての彼女。そんな2人の玲子の姿は、まさに必見です。
そして、今回のラストでメインキャラクターが異動をすることになり、玲子は本庁から池袋署に行くことになってしまいます。人間関係が一新されることが予想されるなか、彼女がこれからどうなるのかも気になる一冊でしょう。
「姫川玲子」シリーズ、初のスピンオフ作品。
玲子のことを毛嫌いしていて何かと対立している勝俣健作、通称「ガンテツ」をはじめ、玲子の部下である若手刑事の葉山則之や、『シンメトリー』で登場した元刑事の倉田修二など、それぞれが主人公となった話が4つ収録された連作短編集となっています。
事件解決のためには違法捜査もいとわないガンテツは、警察組織のなかではある意味で孤高の存在。スタンドプレーは当たり前で、周囲とは何かと衝突することも多い人物です。その一方で、事件解決に関しては確かな成果を上げているというタイプの刑事でした。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2013-11-08
そんな彼が関わっていた15年前の事件、葉山が関わってしまった老人同士のトラブル、さらに倉田が現役最後の捜査として関わった事件……一見するとバラバラに思える事件に共通するものが見えてきたことで、話は一気に加速していくことになります。
事件が巡り巡って、最終的にはさらなる恨みや事件の連鎖が始まるといった雰囲気をたたえたラストには、深く考えさせられてしまう読者も多いのではないでしょうか。
本編では何かと悪役ポジションになってしまうガンテツですが、事件に対する執着や良くも悪くも頑固なところなど、本作を読むと実は魅力的な人物であることがよくわかるはずです。
新しい一面を知られる「姫川玲子」シリーズのスピンオフを、ぜひ楽しんでみてください。
池袋署へ異動してからすでに1年が経った頃、玲子は池袋で発生したリンチ殺人の捜査に加わることになりました。
殺された人物が暴力団の組長であったこともあり、捜査本部には暴力団犯罪捜査専門の部署もいます。玲子としては、嫌でも1年前の出来事――自らの恋愛を思い出さざるを得ません。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2015-06-11
彼女がそんな複雑な気持ちを抱えている一方で、事件は青い仮面をつけた殺人鬼に次々と男が殺されていくという展開を見せます。
青い仮面の殺人鬼、すなわち「ブルーマーダー」は暴力を商売にしているような男達を次々にリンチし、殺していました。その手口は組長を殺害したものと似ており、玲子達はさっそく捜査に乗り出します。
本巻では、複雑なトリックなどによる謎解きよりも、手に汗握るサスペンスがメイン。ブルーマーダーがおこなう残虐極まりない犯行とその理由などが緻密に描かれ、最後までページをめくる手が止まりません。
そして事件の真相と同じくらい気になるのが、玲子の元部下・菊田和男です。玲子が池袋署に異動してしまったので本巻時点では部下ではありませんが、今回は捜査の過程で再び顔を合わせることになります。
実はこの菊田は、玲子に少なからず好意を寄せていた人物。玲子もそのことを嫌とは思っていない、そんな微妙な関係でした。
しかし2人の想いはすれ違ったまま、玲子は牧田と恋をし、菊田は玲子の知らないところで結婚してしまっていたのです。微妙な気持ちを抱えた2人がともに事件に立ち向かう姿は、どこか人間くさいものがあって、読者も自然と引き込まれてしまう魅力を感じてしまうでしょう。
彼らの関係をめぐるラストは救いを感じられるので、そのあたりもぜひチェックしてみてください。
「姫川玲子」シリーズと並ぶ誉田哲也の代表作、「ジウ」シリーズ。その「ジウ」の世界観と「姫川玲子」の世界観がコラボした作品が、本作です。そのため厳密にいうと「姫川玲子」シリーズには含まれないのですが、玲子達が登場する作品として合わせてご紹介しましょう。
コラボ作品は次にご紹介する「N」と合わせて2つありますが、本作「R」は「姫川玲子」の世界観がメインに描かれていき、反対に「N」では「ジウ」の世界観がメインに描かれていくことになります。
ちなみに、「R」が表すものはルージュ。表紙も赤く、玲子をイメージしているのかもしれません。
- 著者
- 誉田哲也
- 出版日
- 2016-05-11
本巻では、地下アイドルをしている女性とその家族が暴行された挙句、肛門から銃弾を撃ち込まれるという凄惨な事件が発生。相変わらずグロテスクな事件の発生に、読者は一気に物語に引き込まれるでしょう。
事件の発生した管轄の成城署に本部が置かれ、玲子達も捜査に乗り出すことになります。しかし、捜査はなかなかうまく進みません。
そんな難航する状況に風穴を開ける存在となるのが、上岡慎介という人物。フリーライターだというこの男は、実はもう1つの物語「N」の登場人物で、「R」でも事件を動かす重要なキーパーソンとなります。ぜひチェックしてみてください。
そして本巻に限らず、メインに近いキャラクターがいきなり死んでしまうことの多い本シリーズですが、今回もまた1人、殉職してしまう刑事が出てしまいます。それが、林という刑事です。
彼は玲子の上司にあたる人物で、階級は警部補。優秀ですが何かと敵を作りやすい玲子のよき理解者でもありましたが、捜査の途中、真犯人と鉢合わせたことで殺されてしまいます。玲子が駆け付けるなか死んでいくその姿には、思わず熱いものがこみ上げてくる方も多いのではないでしょうか。
さらに、恋愛絡みの話も注目。玲子に密かな想いを寄せていた菊田は、彼女が異動した後に結婚していたのですが、その後、なんと離婚が判明。
玲子の禁断の愛でうやむやになってしまった彼との関係ですが、これからこの2人の関係も、また何か変わってくるのかも……と予感させる内容に、事件以外のことも気になってしまうこと間違いなしでしょう。
「R」同様、「姫川玲子」シリーズと「ジウ」シリーズがコラボした本作。「N」、すなわち「ノワール」は、「ジウ」の世界観をメインに描かれていく内容になっています。そのため「姫川玲子」シリーズを目的に読む方にとっては、どちらかというと少し物足りなさを感じることもあるかもしれません。
本作では、沖縄米軍基地反対デモの話が描かれ、さらに、そこに官房副長官の孫・麻尋の誘拐事件が発生するなど、政治がらみの話が展開していきます。
沖縄の基地が絡んできていることからもわかるように、官僚の世界や過激派テログループの暗躍などが壮大なスケールで描かれており、その設定だけでもワクワクする方も多いでしょう。
一方で「姫川玲子」シリーズに登場する勝俣健作が出てきたり、反対に「R」のほうにもゲスト登場していた上岡慎介が殺されてしまったりと、随所で2つの世界観が重なるなど細かなところも描かれていきます。
「R」で描かれた玲子達が捜査している地下アイドル一家の惨殺事件と「N」で描かれる米軍基地反対デモや誘拐事件が複雑に絡み合う辺りは必見。 この2つの事件がからみ合いながら進んでいく流れは、先のわからない展開にドキドキしながら読み進めることができるでしょう。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2016-05-11
ちなみに、「N」と「R」は同時に発売されたことでも話題になりました。1や2といった巻数もなく、どちらを先に読まなければいけないといった決まりもありません。どちらを先に読んでもストーリーを理解して楽しむことはできるので、ぜひ好きなほうを選んでみてください。
「R」と「N」の両方を読むことで浮き上がってくる面白さを知るためにも、最終的には両方読んでみることをおすすめします。
「姫川玲子」シリーズ2冊目となる短編集。カフェの店員視点で描かれる話や、玲子が捜査一課に復帰する話など全8話の短編が描かれています。
関西人になりきり詐欺グループに潜入する玲子を描いた「アンダーカヴァー」、殉職した大塚と玲子が初めて一緒に捜査した事件の「女の敵」、警察官になる前の玲子をカフェの店員視点で描く「彼女のいたカフェ」、上司から取り調べのダメ出しをされる「落としの玲子」、本庁に戻り新しくなった姫川班が動き出す「お裾分け」、その新生姫川班が総動員で通り魔事件を捜査する「夢の色」、「闇の色」。
そして表題作「インデックス」は、すでに刊行されている長編『ブルーマーダー』事件の後日談で、ある行方不明の暴力団関係者を調査する話になっています。
なかでもカフェの店員視点で描かれる「彼女のいたカフェ」は、残虐な事件が起きるわけでもなく日常のほのぼのとした雰囲気があり、「姫川玲子」シリーズのなかでは少し珍しい話。好みは分かれるもしれませんが、意外なところから描かれる玲子の姿などを見ることができて、新しい魅力を発見することができるでしょう。
- 著者
- 誉田 哲也
- 出版日
- 2017-08-08
本巻では、本庁に復帰した玲子が描かれています。捜査一課を追い出されて所轄に飛ばされてしまった彼女ですが、それまでの間にさまざまなことを経験していました。そのうえで再び自分のチーム、つまり「姫川班」を作ろうとしている彼女の姿は、読者に強い印象を残してくれるでしょう。
また離婚の噂もあった菊田の結婚問題も、何かとストーリーを騒がせていきます。「姫川玲子」シリーズとしては前作より2年の間を空けての刊行となった本作だからこその、再スタートの物語といえるのかもしれません。
「姫川玲子」シリーズ最新刊の本巻。「ジウ」とのコラボ作であった「硝子の太陽」の世界観を引き継いでいる部分もあり、同作を読んでいる方にとってはより楽しめる内容となっています。とはいえ読んでいなくてももちろん理解はできるので、どちらを先に読んでも特に問題はありません。
林の最後を目の当たりにして、心身ともに疲れてしまっている玲子。そんな彼女の姿には、前作の短編とは違う弱々しさもあって、混乱とともに切なさを読者に感じさせるかもしれません。
しかし、事件は待ってくれません。失意のなかでも、発生した殺人事件に対し捜査本部が作られ、玲子も捜査に参加することになります。しかし、情報共有がうまくされていないのか、さまざまな情報が錯綜。玲子達の捜査にも影響が出るのです。
しかし、もちろんそんなことで捜査をあきらめる玲子ではありません。このあたりになってくると、従来の強い彼女の姿を見ることもできるようになり、面白さもどんどん加速していきます。
- 著者
- 誉田哲也
- 出版日
- 2017-11-16
また、殉職した林の代わりに主任となった、日下守という警部補にも注目したいところ。天性のプロファイリング能力を持つ玲子は、ある意味感覚で捜査をしているところもあります。しかし日下は、対照的に物証を最重要視し、機械のように正確に慎重に捜査を進めていくタイプのようです。
玲子とはソリが合わず何かと衝突していますが、一方で彼女の能力を認めている面もあり、これから彼が玲子にどういう影響を与えていくのかも気になるところでしょう。新しいキャラクターにも注目しながら、ぜひ最新の「姫川玲子」を楽しんでみてください。
いかがでしたか?グロテスクで衝撃的な事件はもちろんのこと、天性の能力を持つ玲子や、警察内部の詳細な描写にも定評がある本作。お仕事ものとして読んでも満足できる部分があるでしょう。さまざまな面から内容を楽しむことができる本シリーズを、ぜひ手に取ってみてください。