【連載】例に漏れず、ニューヨークに行ったらカルチャーショックを受けた件

更新:2021.12.7

先日、たった3日間だけだけどニューヨークへ行く機会があった。海外に行くと価値観が変わる、などとはよく言うが、はい、まさにそのとおり。これまで訪れたどこの国とも異なる衝撃をガツンとくらってきました。

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自分を信じる=自信

 

まず驚いたのが、人種の多様さだ。当たり前なのかもしれないが、普段日本で暮らしている私にとっては新鮮すぎて、空港に着いた途端目のやり場に困った。黒もいるし白もいるし黄色もいる。

日本の街中で私が気にしているのは、目や鼻の大きさだったり、服装や髪型だったり、スタイルのよさだったり……そんなこと、本当に馬鹿らしくなる。そもそもまったく異なる素材で、比べること自体ができない。

というか、見た目の枠にこだわっている人がほとんどいない。ボリューミーな人でも惜しげもなく露出をするし、どんな髪質だろうが好きな髪型をしている。もし日本だったら……と考えると恐ろしいが、ここでは後ろ指を指されることはない。

私は毎朝その日の気温を調べて、これくらい寒ければタイツを履いてても浮かないかな、もう〇月だからアウターはこれのほうがいいかな、など世間一般に極力あわせることを意識しているが、ニューヨークではダウンジャケットを着ている人とTシャツを着ている人が隣同士に座っていることもあるのだ。

要は、完全に「自分」を信じている。これが自由の国なのか。

ニューヨークで気付いたこと

 

もうひとつ驚いたのが、めちゃめちゃ会話をするということだ。どんな店でも、入ったらまず挨拶。ホテルのエレベーターが一緒になれば、初対面でも雑談をする。おはようとか、その服かわいいねとか。ちょっとしたレストランに行ったり、デパートのカウンターに長居をしたりすれば、その密度はもっと濃くなる。

私のつたない英語も理解をしようとするオープンな姿勢があるし、反対に私が聞き取れなければ何度でも話してくれる。日本人だからって差別されることもない。

また、ショーなどに行けば、見たものに対して忌憚なく思ったことを言う。とにかく素直だし、感情表現が豊かだ。自分の意見を発することに対して抵抗がない。まずそれだけ意見があるということが羨ましい。極力他人と関わらないようにしていたほうが生きやすい日本では、なかなか考えられない。

この街で、日本人はとても目立つ。もちろん私が同じ日本人だから目に留まるのもあるだろうが、きょろきょろと辺りを伺いながら歩くところとか、日本人同士で固まって他を寄せ付けない空間を作るところとか、実は相手の話をよく聞いていないところとか。

ニューヨークでそんな行為をしていることは、圧倒的にマイノリティなのだ。周囲の目線を気にしすぎる過剰な自意識や、英語をうまく話せないことに対する気後れが、逆にその存在を目立たせている。

日本で、とにかく周りからどう見られるかに神経を集中させていた私は、肩の荷が下りた気分だった。街を歩いても恥ずかしくない。好きな格好をして、見たいものを見て、食べたいものを食べる。息が吸える。居心地がいい。

きっと、ずっとこの街に住んでいれば、性格も考え方も変わるんだろうなあ。そんなことを思いながら、帰りの飛行機で着陸寸前に化粧を済ませる。家に帰るだけなのに……と思いながらも、やっぱりまだその度胸は無い。

ニューヨークでちょっとだけ哲学した本

著者
苫野 一徳
出版日
2017-04-05

 

行きの道中で読んだ本。価値観の対立が起こる時、表層の意見だけでなく、本質の「共通了解」を見出す方法が書いてある。

ニューヨークに降り立って、同じ人間なのにこうも異なるものなのかと圧倒された私。そりゃ、1歩間違えれば争いも起こるよな、と思った。

特に現代は「相対主義」の時代。つまり、世界には絶対に正しいことなんてなく、人それぞれの見方があるだけだという考え方が、広く行き渡っている時代だ。たしかにもちろん、この世に絶対に正しいことなんてない。でもそれは、だからといって、僕たちが何につけても“共通了解”にたどりつけないことを意味するわけじゃない。
(中略)
それは「絶対の真理」とは全然ちがう。あくまでも、できるだけだれもが納得できる本質的な考え方。そうした物事の“本質”を洞察することこそが、哲学の最大の意義なのだ。

意見を対立させて「人それぞれ違うよね」という一言で片づけるのではなく、考えるための思考法が哲学なのだそう。考え方に関する考え方、とでも言えようか。

2500年以上昔から、偉人たちが「哲学してきた」からこそ地球は壊れていないのかも、と思えた一冊。思考を深めるだけ深めて戻ってこれなくなる私みたいな人におすすめしたい。

ニューヨークの裏側が書いてある本

著者
丸山ゴンザレス
出版日
2018-08-18

 

「クレイジージャーニー」でおなじみ、裏社会とか闇組織とか、危険な場所への取材をたくさんしている丸山ゴンザレスさんの本。実はニューヨークでお会いして、「この本を読んだら行くのが怖くなりました」と伝えたら、「普通の人が行ける場所じゃないんで大丈夫です」とあっさり言われた。確かに、危ない目にはまったくあっていない。街にはいろんな顔があるということですね。

本書に書いてある「ニューヨークと歌舞伎町が似ている」という意見にとても共感した。ブランドショップやデパートがあって、ご飯を食べるところにも困らず、老若男女が行き交う。その一方でホームレスもいるし、身体を売ってる少女もいるし、クスリでトリップしてる人もいる。まさにカオスの、経済中心地だ。また行きたい。

 

完全に余談ですが

もうひとつ驚いたことがある。ニューヨークのおじさまたちから、加齢臭をまったく感じなかったのだ。

日本では電車に乗るだけで鼻をつまみたくなることが多々あるが、隣に座ってもまったく香ってこない。この旅1番の謎でした。

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