本作は、同名アニメをコミック化したアリムラモハの作品です。魔女によってカエルにされてしまった王子様が、自分にかけられた呪いを解く……ことはせずに、家来にした芋虫とともにゆる〜い日常を送っていくショート漫画となっています。 今回は、ゆるゆるな日常にほっこりする本作の魅力をご紹介。スマホアプリからは無料で読めるので、気になった方はぜひどうぞ。
あるところに、カエルにされてしまった元人間の王子「カエル王子」がいました。元に戻るにはお姫様のキスが必要なのですが、面倒くさがった彼は芋虫の家来ヘンリーを従えて、日がな1日好きに過ごしたり、天敵に襲われて絶体絶命のピンチに陥ったりします。
劇的なことはたまにしか起こりませんが、王子は気ままにカエル生活を楽しんでいるのでした。
- 著者
- アリムラモハ
- 出版日
- 2019-01-25
本作は、アリムラモハ原作で2018年に放送されたアニメが元にあり、原作者自らコミカライズした漫画となっています。一部アニメと同じ話もありますが、漫画版だけのオリジナルエピソードがあるのも特徴です。
媒体こそ異なりますがアニメと同じゆるい感覚で読めるので、元々のファンにも、そしてもちろん新規の読者にもおすすめといえるでしょう。
主にインターネット上の媒体で活躍する漫画家、イラストレーター。
本名や性別、生年月日、その他詳しいプロフィールは非公開です。2010年頃から活動が目立ち始め、サメをモチーフにした『サメーズ』がTwitterを中心に人気となりました。
代表作は個性豊かなサメ達と、なぜか彼らに付きまとわれるアザラシの友情(?)を描いた『サメーズ』、そして怪物ケルベロスのゆるい日常の『冥犬ケルちゃん』です。
- 著者
- アリムラ モハ
- 出版日
- 2015-06-24
デザイン性の高いポップな絵柄に特徴があり、ゆるキャラ的な可愛らしさが人気。4コマ漫画に近いショートストーリーの物語はだいたいにおいて不条理ですが、毒がないので絵本のような感覚で安心して読むことが出来るでしょう。
アリムラモハ作品はサメやケルベロスなど、本来おそろしい存在がデフォルメされ、無害なゆるいキャラとして描かれることが魅力です。
その一方、Web情報マガジン「From A」の連載『ベア・イン・ザ・ベア』、あるいは「明日のレストラン」内『明日レスまんが』の担当回はキレのあるギャグや日常ネタにセンスが感じられ、巧みな漫画家であることが窺えます。そんなところにも注目しながら作品を読むと面白いでしょう。
主人公「カエル王子」は、名前どおりカエル(ただし2足歩行)の少年です。元はさる王国の王子様でしたが、悪い魔女の呪いによってカエルの姿に変えられてしまいました。
この設定だけ聞くと「グリム童話」の有名なお話とそっくりですが、カエルの王子様は驚くほどの面倒くさがり屋。童話のようにはいきません。
あまりにも面倒くさがりなため、変化した直後こそ困惑していましたが、すぐに「まぁ、いっか」と呪いを解くのを諦めてしまうのです。さらにポジティブシンキングなため、この境遇も好意的に捉え、生活を楽しむようになります。
本作にはもう1人、型破りなカエル王子を諫めるレギュラーキャラ、いもむしのヘンリーが登場します。こちらも文字どおり芋虫で、自分が食べられないことを条件に、従者として王子に仕えているキャラです。
常識人(常識虫?)のヘンリーは、カエル王子に振り回される苦労人。けっこうな頻度で酷い目に遭いますが、それでもめげずに貴重なツッコミ役としての役目を果たしてくれます。
憂鬱な雨の日。カエル王子は、ヘンリーとキノコの傘で雨宿りしていました。雨を見つめる2人は、他愛のない会話をしながら過ごしています。するとカエル王子が長雨に対して、こんなことを言い出しました。
早くやまないかな
ぬれるのいやなんだよねー
(『カエル王子といもむしヘンリー』より引用)
ここではきちんとヘンリーがツッコミを入れてくれますが、誰が読んでも「カエルなのに?」と思うシーン。本作のゆるさが一目でわかるエピソードといえるでしょう。
両生類であるカエルは本来ジメジメしてる方が過ごしやすいはずですが、カエル王子の感覚は人間時のままな様子。
この後ご紹介するエピソードでも触れていきますが、こんな人間らしい一面を見せる一方カエルとしての性質もしっかり活用していくので、かなり意外性の高いキャラといえるでしょう。
いつものように話をしている、カエル王子とヘンリー。ヘンリーはふと、カエル王子が人間だったころにどれくらい偉かったのかと尋ねてみました。
カエル王子は、王様の次に偉かったと回答。国中で1番偉いのが王様ですから、その次である王子であれば誰も頭が上がりません。その命令は絶対です。
それなら、とヘンリーは言いました。
離してもらうよう
命令してみたらどうですか?
(『カエル王子といもむしヘンリー』より引用)
なごやかに話してるかに見えた2人でしたが、実はこの時、カエル王子はヘビに捕まって食べられる寸前だったのです。全体の雰囲気と状況のギャップに、驚かされます。誰よりも偉いはずのに、それでもどうにも出来ないことがある。ゆるい空気のなかに、そんなメッセージが感じられるエピソードです。
ちなみに王子は、出来ることならそうしてる、と諦め気味でその後どうなったかはわかりません。しかし、お話は続いてるので、たぶんなんとかなったのでしょう。
本作はこのように、カエル王子がカエルであるがゆえに食べられそうになるブラックジョークが多々見られます。まさに食物連鎖。自然界の厳しさが見られます。まぁ絵柄がゆるいので、状況ほどの危機感は感じられないのですが……。
他にも、カエル王子がヘンリーをエサに魚を釣ろうとするなど目を疑うような場面も出てくるので、そういったところにもぜひご注目ください。
カエルになったせいなのか、あるいは元からなのか、カエル王子はしょっちゅう何かを食べています。ヘンリーが童話『ヘンゼルとグレーテル』のように、パン屑を目印代わりに落としながら道を歩いた際には、そのパン屑を残らず食べてしまうほどです。
しかし、そんな拾い食いが祟ってか、食あたりにかかったカエル王子は吐き気を覚えます。思わず吐いて戻すと……胃の内容物どころか、胃そのものがひっくり返って全部出てきてしまったのです。
カエルには異物を飲み込んだ時に、胃を丸ごと吐き出すという性質があります。合理的かもしれませんが、元人間として考えるとかなり衝撃的です。
しかし、カエル王子本人はいつも通りに「まぁ、いっか」とケロッとしています。カエルだけに。
普段ゆったりのんびりなカエル王子でも、たまには走ることもあります。
ある時、彼はヘンリーと2人で何かから逃げているようでした。この状態に既視感を覚えたカエル王子は、人間時代に国中の女性から引っ張りだこになり、追いかけられていたことを思い出します。
ゆるキャラと化した彼ですが、人間だった頃はモテモテだった様子。ただし――カエルとなった今ではモテる相手は婦女子ではなく、餌に飢えた鳥類ですが。そう、カエル王子とヘンリーは、鳥の群れに追われていたのでした。
ここは何度目かの絶体絶命の場面ですが、この回想によってカエル王子がモテ男だったことが判明します。本当ならばどれくらい格好いいか見てみたくもありますが、果たして公開される時はくるのでしょうか?
ちなみに鳥の群れから逃げ切れらかどうかは、定かではありません。
いかがでしたか?アニメとはまたひと味違ったテンポのよさが、コミック版の魅力です。残念ながらアニメの放送波終わってしまいましたが、コミックならばいつでも楽しむことが出来ます。ぜひご一読ください!