ブラック企業で働く動物たちの日常を描くショートコメディ作品で、かわいいけど世知辛いアニマル社員たちの日常が、SNSで大きな話題となった本作。2019年3月、テレビアニメ化も発表され、盛り上がりをみせています。この記事では、そんな本作の魅力についてご紹介します。ネタバレも含みますので、ご注意ください。
本作は、アフリカの動物たちがサラリーマンになり、社畜として働く日常をショートコメディ漫画にした作品。
物語にはライオン、トカゲ、オオハシの3人の主人公が登場し、世知辛い資本主義の社会に生きるアニマル社員の悲哀を、シュールかつコメディに描いています。
- 著者
- ガム
- 出版日
- 2015-05-27
同作は2014年11月より、月刊誌「コミックジーン」から派生したネットだけで全部無料で読める「ジーンピクシブ」で連載がスタート。アニマル社員たちの可愛さや、サラリーマンのあるあるネタに、多くの共感と癒やされたという声が集まり、SNSを中心に大きな話題となりました。
2015年1月にコミックス化、2017年6月には、縦型アニメ配信アプリ「アニメBeans(旧・タテアニメ)」でショートアニメ化されました。
2019年3月、KADOKAWAから『アフリカのサラリーマン』のテレビアニメ化が発表され、監督と主人公3人の声優が発表されました。監督は畳谷哲也、ライオン役は大塚明夫、トカゲ役は津田健次郎、オオハシ役は下野紘が務めます。
作者のガムは、普段は会社員として働いており、2019年現在は不定期で『アフリカのサラリーマン』を連載しています。動物園でアフリカの動物を見たことが、同作を描くきっかけとなったそうで、スーツを着せたライオンのイラストをキャラクターとして動かしていった結果、現在の形になったそうです。
動物の特徴を丁寧に捉えたリアルな作風が特徴で、時折入るゆるいタッチのイラストが、作品のシュールな面白さをより一層引き立てています。
『アフリカのサラリーマン』は、会社員の人なら一度は経験したような、あるいは聞いたことがあるようなあるあるネタが面白い作品です。さらに動物の習性やパロディ要素を随所に取り入れることで、斬新なギャグ漫画となっています。
サラリーマンあるあるはどうしても自虐ネタが多くなりがちで、読者の共感や笑いが得られないと、作品全体が暗い雰囲気になってしまいがち。
しかし本作は、社員たちの動物としての特徴や習性などをきっちり活かしており、他作品との違いや個性を出しつつ、明るくコミカルな作風にしています。
登場するアニマル社員たちは、それぞれに人間味があり、普通の人間と変わらないような場面もあり、彼らの日常を描く本作は、共感できるポイントや笑えるシーンもたくさん。
ギャグのテンポも良く、2コマ、3コマできっちりオチがつく展開は、読んでいて心地よさすら感じます。パロディネタも、かなり豊富に練り込まれており、読者を全力で笑わせにきてくれます。
もちろん、主人公3人以外の登場人物も登場。理不尽で横暴な老人のカメ社長や、日本から来た忍者の新人社員・ツル、生態の多くが謎に包まれた殺傷ハムスターなど、設定だけみてもアクの強いキャラクターが多数登場し、読者を飽きさせることがありません。
アニマル社員たちがくり広げる面白おかしな日常に、思わず心の疲れも吹き飛ぶでしょう。
本作の主人公の1人・ライオンは、3人の主人公の中で最も先輩です。妻と年頃の娘がおり、会社では中間管理職という立場。見た目は怖いですが温和な性格で、後輩の社員たちから慕われています。
作中では癒やしキャラのポジション。後輩社員の車のボンネットを好むなど、たびたびネコ科動物の習性や振る舞いを見せては、後輩たちにイジられたりもしています。まさに理想の上司というような雰囲気です。
普段はのんびりとした雰囲気ですが、時折百獣の王としての顔を覗かせることもあります。今度子供が生まれる後輩社員トカゲに「子供は崖から落としておけばいい」と笑顔でアドバイスしたり、痴漢冤罪のエピソードでは「悪い人は食べる」と、さらりと怖い発言をしています。
普段温厚な人ほど、怒らせたら怖い……そんな人と置き換えることもできるかもしれません。
本作の主人公の1人・トカゲは、公式からも「唯一の良心」として紹介されています。登場人物の中ではイケメンのようで、ことあるごとに女性にモテるキャラです。
種族はアルマジロトカゲで、身の危険を感じた際に自分の尻尾を噛んで身を守る習性を持っています。しかし身を守るための大事な尻尾をオオハシに引きちぎられることもあり、苦労が絶えない人物。
作中ではツッコミに回ることが多く、破天荒な行動ばかりのオオハシに振り回されることもしばしば。また冗談が通じないところもあり、取引先の「真面目すぎ」という言葉に本気で悩み、オオハシに相談するという真面目さを持っています。
しかし、これだけではなくたまに天然なところもあるというギャップの持ち主で、美味しいところを持っていくこともあります。
本作の主人公の1人・オオハシは、お調子者で性格が悪く、しょっちゅうトラブルを起こしては周囲を巻き込んでいます。基本的に不真面目ですが、自分に有益になると判断した場合のみ本気を出し、隠れた有能さを見せてくれます。
作中ではボケが多いですが、一方でわりと酷い目に遭っている回数も多い人物。鳥インフルエンザで寝込んだ際には、危うく焼却処分されかけていました。口や態度が悪いものの、清々しいクズっぷりにどこか憎めないところがあり、ファンから高い人気を得ています。
また実はアフリカ出身ではなく、オニオオハシという南アメリカ原産の種類の鳥で、作品の随所で故郷のブラジルネタを挟んできます。
ショートストーリーなので、読みたいときにサクッと読めてしまうのも魅力の一つ。疲れた体の一休みに、最適な作品です。