オリンピックが舞台の小説おすすめ5選!東京で何かが起こる……!?

更新:2019.5.5

1896年にアテネで開催された第1回オリンピック。それから歴史を重ね、2020年には1964年以来となる東京大会が開催される予定です。この記事では、そんなオリンピックを舞台にしたおすすめの小説を紹介していきます。国が動く大きなイベントの裏には、どんな物語があるのでしょうか。

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オリンピックに潜む光と影を描いた小説『オリンピックの身代金』

 

時は1964年7月。大学院生の国男のもとに、東京オリンピックのための工事現場へ田舎から出稼ぎに来ていた、異父兄の初男が死んだという連絡が入ります。国男は実家へ仕送りを続けるため、兄の代わりに現場で働くことにしました。

しかしそこは、連日12時間以上も労働をさせられる過酷な環境。作業員の間にすら階級があり、さらには疲労感を忘れるために「ヒロポン」が横行。初男もヒロポンの過剰摂取で死んだことが判明します……。

オリンピックの開催に国民が沸く一方で、国男は「貧しい者たちの犠牲によって富と繁栄が成り立っている」と感じるようになるのです。ついには、オリンピックの開催を妨害するために、爆破テロをほのめかすようになりました。

 

著者
奥田 英朗
出版日
2014-11-14

 

2008年に刊行された奥田英朗の作品です。物語の舞台は、高度経済成長期の日本。10月に東京オリンピックの開催を控えています。

そんななか、オリンピックの警備本部長の自宅や警察学校が、何者かに火をつけられる事件が発生。しかし厳しいかん口令が敷かれ、一切の報道はされません。いずれも犯行は「草加次郎」と名乗る人物によるものでした。時間を前後させながらストーリーが進んでいき、やがて草加次郎の正体が明らかになっていきます。

オリンピックという世界規模の祭典は、多くの人の見えない努力によって成り立っています。特に当時の日本は貧富の差や、東京と田舎の経済格差が大きいものでした。ひとりの国民が国に対抗していく至極のサスペンス、ぜひ堪能してください。

 

異文化の食い違いを描いた小説『ベイジン』

 

中国の大連では、世界最大規模の原子力発電所が建設中。2008年に開催される北京オリンピックの開会式で、運転開始の様子を生中継する予定です。

しかし、技術顧問として日本から派遣されている田嶋は、現場で働く中国人の手抜き工事や、利権争いを目の当たりにします。

安全性に疑問があるにも関わらず、発電を実行しようとする責任者に対し、田嶋は停止を意見するのですが、オリンピックの開幕直前に拘束されてしまいました。

 

著者
真山 仁
出版日

 

2008年に刊行された真山仁の作品です。東日本大震災が起こる2011年以前の小説ですが、原発問題に深く切り込む内容になっています。

世界が注目するオリンピックにおいて欠かせないのは、人々を明るく照らす光です。発電所は「希望」そのものであり、本作においては本作では原子力発電所の完成こそが、中国人たちの「希望」でした。

彼らにとって田嶋は、「希望」を奪う「悪」でしかありません。互いの想いをぶつけあうやり取りや駆け引きが見どころでしょう。

 

オリンピックを終えた2023年の東京『東京の子』

 

舞台は2023年の東京です。舟津怜はパルクール・パフォーマーを15歳で引退した後、とある事情から戸籍を買って、新たな人生を歩んでいました。何でも屋として生計を立てる彼のもとに、ある日ファム・チ=リンというベトナム人の捜索依頼が舞い込みます。

時を同じくして、東京オリンピックの跡地に建てられた大学「東京デュアル」では、秘密裏に学生を使った人身売買がおこなわれていました。ファムはその実情を告発するため、校内にある料理店で働いていたのです。

 

著者
藤井 太洋
出版日
2019-02-08

 

2019年に刊行された藤井太洋の作品です。主人公の舟津がおこなっていた「パルクール」とは、まるで忍者のように街中や自然の障害物を飛び越えていくスポーツ。人間の身体能力の凄さを感じることができ、一時はオリンピック競技の候補にも名前が挙がっていました。作中で描かれる躍動巻も見どころです。

本書では、2020年の東京オリンピックをひとつの区切りとして、変わっていく近未来の日本が描かれています。法律が改変され、外国人労働者が増え、日本人の価値が下がる……まさに現代日本が直面している社会問題がとりあげられているのです。

そんな世の中を、舟津はパルクールで培った技術で文字どおり駆け抜けていきます。疾走感がありつつも、未来について考えさせられる一冊。読みごたえがありおすすめです。

 

脱北者とオリンピックをめぐる小説『羞恥』

 

3人の脱北者の男たちには、亡命の途中に家族を失ったという共通点があります。

ウォンギルはモンゴル砂漠で力尽きた妻を見捨て、娘を背負って逃げてきました。トンベクは国境を目前にして自分以外の家族全員が公安警察に捕まり、ヨンナムは別ルートで逃げていた家族が行方不明になっています。

3人は、自分自身は生き残ることができたものの、苦しい日々を過ごしていました。そんななか、冬季オリンピックを目前に控えた選手村の建設予定地で、朝鮮戦争時の人骨が大量に出土。国中が騒然となります。

 

著者
チョン・スチャン
出版日
2018-08-02

 

2018年に刊行されたチョン・スチャンの作品です。チョンは両親が脱北者で、その実情をリアルに描写。緻密な文章を斎藤真理子が翻訳で再現しています。

幸せな生活を求めて脱北を試みたものの、大切な家族を失ってしまう人がたくさんいます。また脱北者はどこに行っても異邦人と蔑まれ、満足に働くこともできません。タイトルは、「脱北者を受け入れながらも、排除する社会」と「脱北して生き残ったものの、死んだ方がマシに思えてしまう羞恥」という意味でつけられたそうです。

作中では、選手村の建設予定地から大量の人骨が出土。朝鮮戦争に巻き込まれ、何の罪もない民間人たちが死んだ場所であったことが判明します。しかし現場の人たちは、目先の金となるオリンピックのことしか考えていません。倫理観とは何なのか、読者に問いかける一冊です。

 

7人の作家から見たオリンピック『作家たちのオリンピック 五輪小説傑作選』

 

オリンピックは決して出場する選手だけのものではありません。誘致に名乗り出た地域や主催団体、観客など、多くの人たちがさまざまな視点からオリンピックを見ています。

普段とは別の角度からオリンピックを感じてみませんか。

 

著者
["浅田 次郎", "奥田 英明", "海堂 尊", "城山 三郎", "赤瀬川 隼", "小川 洋子", "額賀 澪"]
出版日
2018-09-11

 

2018年に刊行された作品です。浅田次郎や海堂尊、小川洋子などの人気作家7名が「オリンピック」をテーマに書いた短編小説をまとめた、アンソロジーになっています。

1932年のロサンゼルスオリンピックから2020年の東京オリンピックまでに焦点を当てているのですが、特定の競技を主軸にした物語はありません。ある話は主催団体、ある話はリビングでテレビを観ている家族など、さまざまな形でオリンピックに関わる人を描いています。

各物語の雰囲気も、風刺に富んだものもあれば史実を織り交ぜたものもあり、きっとお気に入りが見つかるでしょう。

 

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