横溝正史のおすすめ小説5選!探偵小説・金田一シリーズの生みの親。

更新:2016.11.30

金田一耕助シリーズを中心に、探偵小説を数多く書き上げた横溝正史。熱烈なファンも多い作家ですが、血なまぐさい作品を避けている方も多いかもしれません。ただ思い切って飛び込めば虜になるはず。今回は、横溝正史作品のおすすめを5作ご紹介します。

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元雑誌編集長、結核とも闘った作家・横溝正史

横溝正史は、1902年に兵庫県神戸市東川崎(現・中央区、神戸ハーバーランド界隈)で生まれます。神戸二中(現・兵庫県立兵庫高等学校)を卒業後、第一銀行神戸支店で勤務し始めます。

1921年に、雑誌『新青年』の懸賞で入選した『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』でデビュー。本作は、横溝の処女作でもあるそうです。

1924年に大阪薬学専門学校(大阪大学薬学部の前身)を卒業した後、実家の生薬屋で従事しますが、1926年には江戸川乱歩の招きで上京し、博文館に入社します。1927年に『新青年』編集長に就任し、『文芸倶楽部』『探偵小説』などの編集長を歴任。創作や翻訳活動も続けていましたが、雑誌が廃刊になり退社。専業作家となりました。

1945年から3年間、岡山県吉備郡真備町岡田(現・倉敷市真備町)に疎開します。終戦後、本格推理小説を続々と発表し、のちの金田一耕助シリーズのヒットにつながっていきます。

1976年、勲三等瑞宝章を受章。1981年12月28日、結腸がんのために亡くなりました。

閉所恐怖症で電車嫌い。電車に乗るときには酒の入った水筒を首から下げ、それを飲みながら乗車。夫人と同乗の際には、夫人が手を握り続けていないとダメだったとか。

執筆に行き詰まると編み物をし、プロ野球・近鉄バファローズの大ファンでした。クラッシック音楽を好み、性格は誰に対しても偉ぶることのない温厚な性格だったそうです。自著の映画に出演している姿を見ても、夫人も含めて優しそうな雰囲気が伝わってきます。

横溝正史18歳の処女作『恐ろしき四月馬鹿』

著者
横溝 正史
出版日

4月1日午前3時、中学校の寄宿舎に寝ていた葉山は、同室の栗岡が、鮮血に染まったシャツと短刀を行李(こうり)に詰め込む姿を目撃しました。翌朝、寄宿舎の一室で、血に染められたシーツと、粉々になった石膏細工の破片が発見されます。部屋に住む小崎が、深夜に何者かによって殺されたことが判明するのです。しかし肝心の遺体はなく、争ったあとがあるというのに、両隣の部屋の学生は誰ひとりとして物音を聞いておらず……。

初期の横溝の特徴である、洋風でモダンな作風が生かされた本作。後年に顕著になる和風テイストも、ところどころ顔を覗かせています。横溝正史という作家を知るためには読んでおきたい1作です。

横溝が結核療養中に書き上げた長編ミステリー『鬼火』

著者
横溝 正史
出版日

従兄弟同士でありながら、お互いに憎み、呪い合って育った漆山万造と漆山代助。画家である二人は、美しい妖婦・お銀を巡って対立することになり……。

1934年秋から冬の約3ヶ月にかけて、信州諏訪にて結核の転地療養中に書き上げた作品です。体調のよい日でも1日に3、4枚しか原稿が書けず、疲労困憊の中、執筆を続けます。当局の検閲によって部分的に削除を命じられますが、原文が見つかっており、現在は、横溝自身が大幅な加筆修正を行った作品が出版されています。

金田一シリーズ以前の横溝による、耽美的代表作。21世紀には存在しない世界観、雰囲気を味わうことができるでしょう。

「蝶々夫人」を殺したのはだれか?『蝶々殺人事件』

著者
横溝 正史
出版日

名探偵・由利麟太郎と相棒・三津木俊助が活躍します。

昭和12年(1937年)10月19日、『蝶々夫人』の東京公演を終えた翌日、原さくら歌劇団一行は、大阪公演初日のために2組に分かれて大阪へと移動しました。ところが主宰者であるソプラノ歌手・原さくらは、19日の夜に大阪のホテルにチェックインした後に外出し、行方不明となります。数日後、さくらは死体となり、バラと砂と共にコントラバスの中から発見され……。

ロマンスまでも書き込まれる、上質な推理小説です。大小さまざまなトリックを組み合わせ、似たようなトリックを知っている読者ですら欺く本作は、見事としかいいようがありません。

名作探偵小説『不連続殺人事件』の著者・坂口安吾も絶賛した傑作。ミステリー好きでもそうでなくとも、読んでおかないと損をするかも?

人形のような美男・佐七親分の捕物シリーズ『人形佐七捕物帳』

著者
横溝 正史
出版日

神田・お玉が池に住む岡っ引きの人形佐七が、次々と江戸の事件を解決していく捕物(時代劇)シリーズ。全180編に及ぶ作品であり、岡本綺堂『半七捕物帳』、野村胡堂『銭形平次 捕物控』、佐々木味津三『右門捕物帖』、城昌幸『若さま侍捕物手帖』と並んで五大捕物帳と称されています。

美男で好色な佐七、やきもち焼きの年上女房・お粂、佐七の子分である江戸っ子の辰と上方っ子の豆六など、キャラクターが魅力的な捕物シリーズ。練りこまれたトリックとそれを暴く名推理、おどろおどろしい筋立てや濃密な性描写などが特徴的です。

時代小説に縁がなくても、横溝好きなら問題なし。横溝を読み慣れていなくとも捕物ものが好きなら、きっとハマります。

横溝正史が生んだ世紀の名探偵・金田一耕助『本陣殺人事件』

著者
横溝 正史
出版日
1973-04-20

昭和12年(1937年)11月25日。岡山県の旧本陣の末裔・一柳家では、長男・賢蔵と小作農の娘・久保克子の結婚式が滞りなく執り行われ、午前2時前にお開きとなります。2時間後の明け方近く、新郎新婦のいる離れ家から、悲鳴と琴をかき鳴らす音が聞こえてきます。克子を育て上げた叔父の久保銀造たちが、雨戸を叩き壊して中に入っていくと、賢蔵と克子が布団の上で血まみれになって死んでおり……。

江戸川乱歩の明智小五郎、高木彬光の神津恭介と並び、日本三大探偵のひとりである金田一耕助の初登場作品です。日本家屋には不向きとされた密室殺人を描いた作品としても知られています。本作では岡山県に疎開した作者が、人伝いに聞いた話をまとめる形式がとられています。これは谷崎潤一郎著『春琴抄』の懐古物語形式の影響があるのだとか。

金田一耕助が真相を究明する家庭に興味と少々のじれったさを感じつつ、物語が展開していきます。一気に謎解きをするシーンには爽快感があります。

既読者は、金田一シリーズの魅力を再発見できることでしょう。未読の方は金田一耕助を知るきっかけとして、読んでみてはいかがでしょうか。

横溝正史といえば金田一耕助が思い浮かびますが、それ以外にも多くの傑作を残しています。時代を超えて味わえる横溝作品を、ぜひ堪能してくださいね。

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