疲れてしまって気力がなくなり、どうにも動けなくなった時、ちょっと腰をおろして小説を読むのはいかがですか。人と人との繋がりやあたたかい料理の描写が、心を癒してくれることもあるはずです。この記事では、気分がほっこりするおすすめの小説を紹介していきます。
とある町の路地裏に、夜しか営業しない「マカン・マラン」というカフェがあります。オーナーのシャールは、大柄な体躯のドラッグクイーン。
仕事や家庭の問題に悩み、疲れた人たちがマカン・マランを訪れると、シャールは体にも心にも染み入る、優しくてあたたかい料理を出してくれるのです。
- 著者
- 古内 一絵
- 出版日
- 2015-11-21
2015年に刊行された古内一絵の作品です。
ピンクの髪をしたドラッグクイーン、シャールが開くカフェは、深夜に不定期で営業しています。幻の店としてメディアから注目を浴びるものの、彼女は決して表に出ようとはしません。
本書では、人生に疲れを感じている人たちがマカン・マランへと足を運び、温かい料理とシャールの言葉から活力を貰います。登場する料理の描写がどれもおいしそうで、読んでいるだけで癒されるのが魅力でしょう。各話に登場するお客さんが、最後には元気になって店を出ていくのもうなずけます。
ほっこりするストーリーの数々に、心がじんわりと癒される一冊です。
主人公の梅本杏子は、ちょっと太めの女の子。目標がないまま高校を卒業し、アルバイト先を探していました。
突然の雨デパートで雨宿りをしていると、和菓子屋の求人広告が目に入ります。ここなら自分でも働けそうと応募をし、晴れてデパ地下にある和菓子屋「みつ屋」で働くことが決まりました。
個性的な店長や同僚と関わるうちに、杏子は自然と和菓子の魅力に気付いていきます。しかし怪しい人物が来店したことをきっかけに、彼女の日常にちょっとしたミステリーが巻き起こるのでした。
- 著者
- 坂木 司
- 出版日
- 2012-10-11
2010年に刊行された坂木司の作品。和菓子屋を舞台にしたお仕事ミステリーです。ドロドロとした要素はなく、謎解きを楽しみながら、目標も自信もなかった主人公の変化を見ていく物語になっています。
また、和菓子のうんちくの面白さも本書の魅力でしょう。季節ごとの種類や、歴史、冠婚葬祭とのかかわりなどを、和菓子の色や味の描写とともに学ぶことができます。
杏子の純粋すぎでまっすぐな性格と、彼女の周りの人々のあたたかさを読んでいると、まるで疲れた時に甘いものを口にした時のようにほっこりできるはず。元気を貰える一冊です。
新宿三丁目のねこみち横丁に、「BAR追分」という店があります。昼は「バール追分」として女店主が定食屋を営業し、夜は「バー追分」としてバーテンダーがお酒やおつまみを提供していました。
新宿という街には、さまざまな事情を抱えた人が歩いています。そして「BAR追分」は、どんなお客さんでもあたたかくもてなしてくれるのです。
- 著者
- 伊吹 有喜
- 出版日
- 2015-07-11
2015年に刊行された伊吹有喜の作品です。
「追分」とは、道が2つに分かれる分岐点のこと。各話の登場人物たちは、それぞれが人生の分岐点に立ち、悩んでいました。会社が倒産してしまったライター、不器用な父と娘……「BAR追分」は、彼らの固く閉ざされた心を解きほぐし、優しく背中を押してくれるのです。
また本作は、ほっこりできる小説であると同時に、お腹がすく作品としても話題になりました。匂いまで感じられそうな描写の数々に、とにかく胃袋がそそられます。
主人公は、浪人生の光一。いつリストラされるかもわからない父親、パートや家事でいつもイライラしている母親、荒れた生活をしている妹ととともに暮らしています。家族の間には、いつしか笑顔がなくなっていました。そんななか、祖父が亡くなったことをきっかけに、祖母が一家と一緒に暮らすことになるのです。
おばあちゃんはもう85歳。光一たちはいつボケてしまうかと心配していましたが、実際のおばあちゃんは足腰も丈夫で元気いっぱい。自分のことは自分でやり、時々変なポーズをとり、我が道を突き進んでいました。
ある日光一は、おばあちゃんが以前働いていた書道教室の教え子に会うことになります。そして、おばあちゃんを慕う生徒たちの熱量に驚くことになるのです。おばあちゃんは一体何者なのでしょうか。
- 著者
- 山本 甲士
- 出版日
- 2016-10-13
2014年に刊行された山本甲士の作品です。タイトルの「魔女」から連想されるようなメルヘンな物語ではなく、おばあちゃんの言動で家族が再生していく人情物語です。しかし、強く優しく包み込むように物事を変えていくそのさまは、まるで魔法のようにも感じるでしょう。
光一の家族は、おばあちゃんを引き取ることが決まった当初、不安要素ばかりを考え、心配していました。ところがいざおばあちゃんと暮らしてみると、彼女はおいしいご飯に感謝をし、他人を思いやることを心がけ、日々を大切に生きていることがわかります。
人として何を大切にするべきなのか、どんな風に生きていきたいのか、考えるきっかけになる一冊です。
東京の下町の一角に、老舗の古本屋「東京バンドワゴン」がありました。三代目の店主である79歳の勘一をはじめ、大家族の堀田家が営んでいます。
堀田家には家訓がいくつもありますが、なかでも「如何なる事でも万事解決」が表すように、次から次へと起こる事件をみなで協力して解決していくのです。
- 著者
- 小路 幸也
- 出版日
- 2008-04-18
2006年に刊行された小路幸也の作品です。本書は長編シリーズの第1巻で、テレビドラマ化もされています。
大家族の堀田家ですが、実は愛人の子と実子が一緒に暮らしていたり、未婚の母がいたりと、なかなかに複雑な事情を抱えています。次々と事件が起こるどたばたのホームドラマながら、ついつい涙が出てしまうような心のやりとりが描かれているのが魅力でしょう。何があっても前向きに生きる堀田家の面々に、愛と絆を感じることができます。
読後は心がほっこりとあたたかくなる人情劇。ぜひ続編も読んでみてください。