船が舞台の小説おすすめ5選!最高の密室、海上で何かが起こる!

更新:2021.11.18

海に囲まれた密室状態の船上で展開される物語は、登場人物が限定されるのが特徴。そこでどんな事件が起こり、人々は何を考えるのでしょうか。この記事では、船が舞台の小説のなかから特におすすめの作品を紹介していきます。

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愛憎が船上の悲劇を巻き起こす小説『ナイルに死す』

 

あるところに、リネットという大富豪の娘がいました。親友のジャクリーンから、婚約者のサイモンが失業中なので、リネットの屋敷で雇ってほしいと相談を受けます。

後日、サイモンの姿を見たリネットは、一目惚れ。そしてジャクリーンから彼を奪うかたちで、結婚してしまうのです。

エジプトへ新婚旅行に来たリネットとサイモン。しかし行く先々でジャクリーンにつきまとわれます。彼女から逃げるようにナイル川を渡る観光船へ乗り込みましたが、船上にはすでにジャクリーンの姿がありました。

船旅中に、ジャクリーンとサイモンが口論になる出来事が発生。そして翌日の朝、部屋で何者かに殺されたリネットの姿が発見されます。

 

著者
アガサ クリスティー
出版日

 

1937年に刊行されたアガサ・クリスティの作品です。「クローズド・サークル」と呼ばれる、外界との往来が断たれた状況で事件が起こるミステリー。偶然船に乗りあわせていた名探偵のポアロが謎に挑みます。

本作で描かれる船は、ナイル川を渡る観光船です。婚約者を奪われたジャクリーンが、恨みを抱きながらリネットとサイモンの新婚旅行につきまとい、最終的に辿り着いた場所です。

ジャクリーンは小さなピストルを所持していて、サイモンと口論になった際に彼の足を撃ってしまう描写があります。しかしその後ピストルの行方はわからなくなり、またジャクリーンも看護婦に保護されて部屋から出ていないそう。では、リネットは一体誰に殺されたのでしょうか。船上で起きた殺人事件をポアロと一緒に推理してみてください。

 

人生を考えさせられる船上の会話『高瀬舟』

 

羽田庄兵衛は、罪人を舟に乗せて離島へ送る役人。ある時、弟殺しの罪に問われているという30代の男を運ぶことになります。通常の護送の際は、親族がひとり同乗していましたが、彼にはいないようです。

喜助という名のその罪人は、人を殺したのにも関わらず晴れやかな様子で、気になった庄兵衛は、思わず問いかけました。

喜助はこれまで、弟とともに支えあって生きてきたそうなのですが、ある日弟が病を患い、働けなくなったそう。弟は兄のためを思って自殺を図ったのですが、急所を外して苦しみます。喜助は弟を楽にするために殺したというのです。

また喜助は、これまでは仕事を転々として自分の居場所がなかったが、牢屋にいる間は働かなくても食事にありつけるし、島という自分の居場所をもつことができると言います。

 

著者
森 鴎外
出版日
1992-09-18

 

1916年に発表された森鴎外の作品です。国語の教科書に掲載されているので、読んだことがある人も多いでしょう。

舞台となっているのは江戸時代。当時は罪人を舟に乗せ、京都から大阪まで護送する「同心」という仕事がありました。本作のストーリーは、舟の上で交わされる庄兵衛と喜助の会話のみで進んでいきます。

不幸な身の上話が語られ、本来なら重たい空気になりそうなところですが、喜助は晴れやかな顔を見せています。自殺を図ったものの死に損なってしまった弟。そのまま放っておいても、いずれ大量出血で死んでしまうでしょう。喜助は弟が苦しまないようにと、自殺をいわば助けたのです。

庄兵衛は話を聞くうちに、喜助の行動は罪になるのか思考をめぐらせます。安楽死や幸せについて考えさせられる一冊です。

 

国を守る船上で起きた事件を描いた小説『亡国のイージス』

 

海上自衛隊の戦艦「いそかぜ」と「うらかぜ」は、訓練のために太平洋の海域へと向かっていました。その最中に、オセアニア航空の墜落事故が発生します。近くにいた「いそかぜ」は救助活動をおこない、奇跡的に女性を救出したものの、やがて彼女は亡くなってしまいました。

その出来事以降、艦内では次々と不可解な事故が発生します。亡くなったはずの女性が生き返ったという噂が流れたり、訓練中の隊員が事故死をしたり、艦内に工作員が潜入していることが発覚したり……。

さらに艦内で次々と爆破が発生し、ついに「うらかぜ」が撃沈。「いそかぜ」は、護衛艦の「ひえい」へ緊急事態を伝えますが……。

 

著者
福井 晴敏
出版日
2002-07-16

 

1999年に刊行された福井晴敏の作品です。

舞台となっているのは、アメリカの海軍によって開発された艦載武器システムをモデルとした、ミニ・イージスシステム搭載の「いそかぜ」。日本の海上自衛隊と、北朝鮮工作員の対決が展開されます。そこにアメリカの思惑が絡み、壮大な物語が展開されていくのです。

それぞれの登場人物たちのキャラクターや、抱えている事情が丁寧に描かれているのが魅力です。タイトルの「イージス」とは、ギリシャ神話に登場する「盾」のこと。戦艦「いそかぜ」と、そこに乗り合わせる自衛隊たちは、日本を守る盾となりうるのでしょうか。

 

マッコウクジラとしのぎを削った捕鯨船の物語『白鯨』

 

時代は、捕鯨が盛んにおこなわれていた19世紀後半です。捕鯨船ピークォド号の船長、エイハブは、白いマッコウクジラに片足を奪われた過去があります。鯨の骨で義足を作り、復讐心を燃やし続けていました。

彼の執念は船員たちにも伝播し、一同は白鯨への報復を目指して数年間の航海を続けます。

そしてついに、日本の沖で目的の白鯨を発見。激しい死闘をくり広げるのです。

 

著者
ハーマン・メルヴィル
出版日
2004-08-19

 

1851年に発表されたハーマン・メルヴィルの作品です。作者は捕鯨船の乗組員だったことがあり、その経験が活かされています。

語り手は、海に憧れる風来坊のイシュメイル。エイハブを船長とする捕鯨船の乗組員として雇われ、白鯨への復讐心に感化され、自身も白鯨探しに夢中になっていくのです。

捕鯨船の構造などは図解がついているので、より具体的な創造を膨らませながら読み進めることができるでしょう。乗組員と白鯨の激しい戦いのシーンも見どころです。どのような結末を迎えるのか、ぜひ確かめてみてください。

 

船上の老漁師の生きざまを描いた名作小説『老人と海』

 

主人公は、キューバの老漁師サンチャゴ。一本釣りで大型の魚を獲り、生計を立てていました。しかし数ヶ月間にわたって不漁が続き、助手の少年にも見限られてしまいます。

サンチャゴがひとりで漁に出ると、巨大なカジキが食いつきました。素手で糸を巧みに操り、3日かけてカジキを仕留めることに成功。獲物が大きすぎて船に引き上げることができないため、横に縛りつけて港へ戻ることにします。

しかし、カジキから流れる血の匂いをかいで、サメの群れがやってきました。サンチャゴは抵抗を続けるものの、サメは執拗にカジキを襲い、肉を食いちぎります。

 

著者
ヘミングウェイ
出版日

 

1952年に刊行されたアーネスト・ヘミングウェイの作品です。ヘミングウェイは本作を発表した2年後に「ノーベル文学賞」を受賞しました。

本作に登場するのは、老漁師サンチャゴが操る小さな船。巨大なカジキを3日かけて仕留めるシーンや、サメとの戦いは迫力満点です。サンチャゴが対峙しているのは、タイトルにもあるように「海」そのもの。老いた彼がたったひとりで立ち向かう姿に、一種の凄みを感じます。

またサンチャゴは、漁をしながら過去に経験したさまざまなことに思いを馳せます。生きることを考えるきっかけになる、読みごたえのある一冊です。

 

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