『冥婚の契』ホラー?サスペンス?正体不明の怖さをネタバレ!

更新:2021.11.29

地方に転勤してきた女運のない主人公が、「冥婚絵馬」という奇妙な風習に巻き込まれ、非日常的な怪異に襲われていくホラー作品。独身で亡くなった人のために架空の人物を描いて奉納するという掟がありました。生きている人は描いてはいけないはずなのに、ある絵馬には1人の生きている男性の絵が……。祟りなのか、村人による故意なのか。ホラーでありながらサスペンスとも思える本作に、ページをめくる手が止まりません。

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『冥婚の契』が怖いけど面白い!【あらすじ】

とある事情から東京を出て、地方に赴任することになった学校教師の小沼正一(こぬままさかず)は、引っ越し早々に奇妙な出来事が起こっていました。白無垢の亡者に襲われる夢を見たり、列車の車窓から白いワンピースを着た不思議な女を目撃していました。

違和感を覚えながらも、着任したその日に、彼はクラスの生徒たちに町案内をしてもらうことに。連れて行かれたのは、町唯一の観光スポット「馬華寺(まかでら)」。

この街には、不思議な風習がありました。独身の故人のために伴侶を描いて、絵馬を奉納する死後結婚の風習「冥婚絵馬」。さらに、絵馬に生者が描き込まれると、死者に連れて行かれるという不気味な言い伝えもありました。

田舎の奇妙な風習に感心したのも束の間、小沼の周囲でおかしな出来事が発生し始めます。日中や夜半を問わず、白いワンピースの女がどこからか現れるように。眠れば、白無垢の亡者の夢を見るようになってしまいました。

そして、ある事実が発覚します。冥婚絵馬に小沼の姿が描かれ奉納されていたのです。小沼の周りで起きる不可解な現象は、冥婚絵馬の呪いなのでしょうか……。

著者
詩原ヒロ
出版日
2018-12-14

詩原ヒロ(しばらヒロ)は山形県出身の日本の漫画家です。

2006年ごろから個人サークル「炎色マッチ」で活動。2013年、COMITIA103で行われた即日デビューの新人発掘企画「モーニング・ツー×ITAN 即日新人賞」で『山谷さんのヒミツ』が大賞を受賞し、モーニング・ツー5月号に同作が掲載されて商業デビューを果たしました。

著者
詩原 ヒロ
出版日
2015-05-22

代表作は、田舎で暮らす色気の欠片もない年頃姉妹の残念な日常コメディ『おねいも』。他には、1999年のインターネット黎明期を描いたノスタルジックな青春漫画『オンラインの羊たち』も連載中です。いずれの作品も基本はコメディタッチで、ときどき感動するエピソードが含まれる日常漫画が作者の作風です。

本作は、今までの作風とは大きく異なります。どんな展開になるのか、期待が膨らみます。

『冥婚の契』の魅力1:癖のある登場人物たち

『冥婚の契』の魅力1:癖のある登場人物
出典:『冥婚の契』1巻

主人公は、女性とはどうしても長続きしない独身の小沼正一。

人当たりはよいのですが、自他ともに認める女運のなさで地方に飛ばされたことから、少々暗い男です。東京を追われた理由は、冤罪事件。生徒から訴えられ、無罪を訴えます。クビにはならなかったものの、その現場を離れることになりました。

そして赴任先でも、数々の災難が降りかかってきます。

小沼に付きまとう白いワンピースを着た謎の美女、サエカ。幽霊のように神出鬼没です。小沼には害意があるのか、あるいは警告しているようにも見えます。真意が読めず、不気味な雰囲気を醸し出します。

そして、不気味な女は1人ではありません。小沼の悪夢に登場する、白無垢の亡者も気になります。小沼の冥婚絵馬に描かれた伴侶のようですが、素性は不明。サエカとは何か関係があるようにも思えますが、その真実は不明なまま。

悩む小沼の味方となってくれるのが、同僚の最上愛理(もがみあいり)です。地主の娘であり、小沼をいろいろとサポートしてくれます。しかし彼女の家系は、小沼の怪異となんらかの関わりがあるようで……。

愛理だけでなく、小沼の生徒であり学級委員の今野、不良学生の岩渕らも現象の謎を解くための協力者となってくれます。全員がなんらかの秘密を抱えており、その言い知れない不穏な感覚が、本作のアクセントとなっていきます。

『冥婚の契』の魅力2:サスペンスのようなゾクゾクする演出

『冥婚の契』の魅力2:サスペンスのようなゾクゾクする演出
出典:『冥婚の契』1巻

一見すると本作は単なるホラー漫画のようですが、物語が進むにつれ、様子が違うことに気が付くでしょう。

小沼が馬華寺を訪れる前、田舎に引っ越すのと前後して、彼の周囲ではおかしなことが立て続けに起こっります。その1つが白無垢の亡者が寝床や夢に出てくること。花嫁らしきゾンビが、体中についている蛆を撒き散らしながら迫ってくる恐怖の絵面。描写のグロさもさることながら、生理的嫌悪感も強く感じます。

しかし、恐怖の存在はこれだけではありません。サエカと名乗る女が出没します。窓の外や部屋の影、ちょっとした隙間からひっそり覗いているシーンが多く、その姿はホラー以外の何者でもありません。

そんな恐怖の存在に怯える一方、対人関係でもギスギスしていきます。

同僚や隣近所の住民らの言動が、最初は地方都市らしい疎外感があったのに、だんだん敵対心を持っているようなものへと変化していきます。人間関係については、ほとんどサスペンス状態。ホラーとサスペンスの境界が曖昧で、数々の怪異も彼らの嫌がらせなのかも知れないと思えてきます。

このような演出により、ホラーとサスペンスの2種類の怖さが味わえるのが魅力なのです。

『冥婚の契』の魅力3:謎が謎を呼ぶ不穏な展開に目が離せない

主人公はどんどん深刻な状況に追い込まれていきます。肝心な部分は不穏な雰囲気が仄めかされるだけで、読者も困惑しながら読み進めることになるでしょ。読者にだけわかる不審な点はいくつかあるのですが、ミスリードであることが多く、まったく先が読めません。

小沼を描いた冥婚絵馬は誰がどのようにして用意したのか?

彼は馬華寺へ行った際に身分証を落としており、それをサエカが発見し、後に和なおが拾っていました。この段階ではサエカが最もあやしい人物。ところが小沼に親切だった和なおが、やがておかしな言動を見せ始め……。

著者
詩原ヒロ
出版日
2018-12-14

そもそもサエカは何者なのか?幽霊なのか人間なのか?幽霊だったとしたら、白無垢の亡者と同一人物なのか?地方の排他的な人間関係と、小沼への陰湿な風当たりはどう繋がってくるのか?

真相は徐々に明かされていきます。サエカや白無垢の亡者など小沼を襲う怪異と、和なおのように小沼を陥れようとする何者か。それらは別個に動いているようですが、どうやらは小沼に関する出来事は元を辿れば同じ理由から起こっていることだとわかっていくのです。

次々不可思議なことが起こっていく本作の展開から目が離せません。


いかがでしたか? 本作のストーリーは謎が謎を呼ぶ展開で、息つく間もない恐怖展開に飲まれてしまいそうになります。果たして物語がどこへ向かうのか、呪いの正体は。その真相はぜひ実際にご覧ください。

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