アニメ映画『フラグタイム』の原作漫画が全2巻なのに濃密。作品の見所を紹介|ネタバレ注意

更新:2021.11.18

1日に3分間だけ時間を止められる不思議な能力をもつ女子高生・森谷美鈴。止まった時間は、他人のプライベートを覗き放題。ある時同じクラスで憧れの女子・村上遥のスカートの中を覗き見していると……彼女には時間停止が効いていない! そんな止まった時間の中でくり広げられる、少女たちの秘密の関係。百合好きな人には特におすすめの作品です。アニメ化も決定し、ますます注目が高まる原作漫画の見所をご紹介します。ネタバレも含まれますので、未読の方はご注意ください。

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『フラグタイム』が面白い!アニメ化の原作漫画をネタバレ紹介!【あらすじ】

 

主人公・森谷美鈴(もりたにみすず)は内気で人付き合いが苦手な女子高生。まともな友達も作れず学校生活を送る彼女は、「1日に3分間だけ時間を止められる」という不思議な能力を持っています。

彼女の日々の楽しみは、時間を止めて人間観察をすること。他人のプライベートを垣間見ることは、人付き合いの苦手な彼女にとって、刺激的でした。

ある日、美鈴は興味本位で同級生の美少女・村上遥(むらかみはるか)のスカートの中身を覗き見。しかし遥には時間停止の能力が効いておらず、秘密の遊びがバレてしまい……。

止まった時間を共有するようになった2人。人と関わることを避けていた美鈴は、ともに過ごす時間を通じて遥に惹かれていきます。

2013年から2014年の間に、「もっと!」と「Champion タップ!」で連載された本作。2019年3月にアニメ化が発表され、2019年11月には公開することが発表されました。

作者からは「素敵なスタッフさんたちに手がけていただけるので、素敵な作品になると確信しています」というコメントも寄せられており、期待が高まります。

2019年11月現在、シネマトゥディ公式チャンネルより、冒頭映像なども公開されています。

作者からは「素敵なスタッフさんたちに手がけていただけるので、素敵な作品になると確信しています」というコメントも寄せられ、その期待を裏切らないクオリティです。

キャストなどの詳しい情報は、「フラグタイム」アニメ公式サイトをご確認くださいね。

ここからは、アニメ映像に負けない作品の魅力を紹介していきます。

 

等身大の登場人物が魅力的!今注目の作者さと とは?

著者
さと
出版日
2019-06-14

作者・さとは、自身で運営していたWebサイト「99円均一」で作品を公開。その中の一つ、『いわせてみてえもんだ』は「ヤングガンガン」でも連載され、2007年に単行本が刊行されました。

その後も『美大道!あおぞら美術予備校』や『りびんぐでっど!』の連載作品のほか、読み切り作品も多く手がけています。Webサイト「ふらっとヒーローズ」にて連載の『神絵師JKと腐女子OL』は2019年6月に単行本第1巻が発売されています。 

作品の中心に描かれているのは、登場人物たちの自然な心の在り方。誰かを好きになったり、時には悩んで傷ついたり、その世界に生きている人間の等身大の姿を感じることができます。

『フラグタイム』の魅力1:ミステリアスな美少女・村上遥

『フラグタイム』の魅力1:ミステリアスな美少女・村上遥
出典:『フラグタイム』1巻

村上遥は、クラスで人気者の美少女。なぜか美鈴が止めた時間のなかでも普通に動くことができます。スカートの中を覗いたことを皆に秘密にする代わりに、自分のお願いを聞いてほしいと美鈴に持ち掛けました。
 

遥に対して「美人で明るい人」という印象を抱いていた美鈴でしたが、いざ関わってみるとマイペースな彼女に困惑するばかり。美鈴へのお願い料として、路上で自らパンツを見せつけたり、担任教師にセクハラされていると嘘をついたり、美鈴に止めてもらった時間でテストのカンニングを試みたり……。 

 

美鈴は遥のこうした言動に振り回されます。時に、遥がついた嘘にショックを受け、泣き出してしまうこともありました。しかし遥に遊びに誘われたら浮かれてしまうし、テスト中は彼女の姿に見惚れて時間をとめてしまうことも。美鈴は遥にすっかり惹かれてしまいます。 

一方で、彼氏の浮気現場を目撃しても平然としていたり、時おり何かを諦めているような冷めた態度をとったり……何を考えているのか掴めない彼女の言動は、美鈴だけでなく読者にとっても目が離せないことでしょう。 
 

 

著者
さと
出版日
2014-03-07

『フラグタイム』の魅力2:「付き合おっか」から加速する二人の関係

『フラグタイム』の魅力2:「付き合おっか」から加速する二人の関係
出典:『フラグタイム』1巻

秘密を共有し、遥と「同じ時間を過ごしてみたい」と思うようになった美鈴。しかし仲良くなったと感じる一方で、交友関係の広い彼女の姿を見て湧きあがるのは嫉妬の感情。

やきもちで時間停止を乱発してしまう美鈴に、遥は「付き合おっか」と提案します。これを機に、止まった時間でくり広げられる彼女たちの行動もエスカレートしていきます。 

時間が動き出すギリギリのタイミングでキスをしたり、教室で制服を脱いだり。スリリングな行動にはハラハラしてしまうことでしょう。

しかし、楽しいだけの時間は長くは続きません。ある日美鈴は、停止できる時間が少しだけ短くなっていることに気づきます。能力が無くなったら遥に必要とされなくなってしまうと焦り、その事を隠そうとする美鈴。しかしそれが、かえって遥に不信感を抱かせる結果になってしまいます。

美鈴が遥に振り回されるだけでなく、マイペースだった遥が美鈴のことを気にしている様子もしだいに描かれ、彼女たちの関係がより深くなっていることが感じられるでしょう。

2人の距離が近づくほど、遥が暗い気持ちを抱えていることにも気づきます。果たして、彼女が隠している秘密とは……?

 

『フラグタイム』の魅力3:少しずつ変わっていく美鈴の人との関わり方

『フラグタイム』の魅力3:少しずつ変わっていく美鈴の人との関わり方
出典:『フラグタイム』1巻

今まで美鈴は、クラスメイトに話しかけられて居心地が悪くなると、そこから逃げ出すために時間を止めていました。しかし遥のために時間を止める能力を使うと決めたため、必然的に人との関わりに向き合っていくことになります。

何度も卓球部に勧誘してくる同級生を苦手に思っていた美鈴。しかし、話してみると好きな小説の話ができたり、一緒にお弁当を食べたり、意外と普通に接することができました。やがては彼女の将来の夢を打ち明けられたり、美鈴も遥との関係について相談するなど、交友は深まっていきます。 

美鈴がこうして人と関われるようになったのは、遥と一緒に過ごした時間のおかげ。同時に、美鈴は遥との関係を見つめ直していくことにもなります。

「村上さんは私のこと利用してるのかな」と不安になることもあった美鈴。時間を止める能力が弱まっていることが分かった時は、「能力が無くなったら嫌われてしまう」という焦りに襲われます。しかし友人からの励ましもあって、美鈴は勇気を出して、能力について遥に告白することができました。

初めは人と関わることから逃げ出していたのに、物語が進むにつれて自分から悩みや気持ちを他人に打ち明けられるようになっていく美鈴。彼女自身が人との関わりに向き合い、成長していることが感じられます。

『フラグタイム』の魅力4:動き始めた2人の時間【結末ネタバレ注意】

遥の自宅に遊びに行った美鈴は、ついに彼女の秘密を知ることになります。単語帳に記された全校生徒の名前と特徴。遥は周囲の人たちを分析し、皆が喜ぶように振る舞い、「優しくて何でもできて頼りになる村上遥」に成りきっていたのです。 

「他人が望む自分」を演じ続けた結果、本当に自分がしたいことや好きなことがなにもなくなったと語る遥。彼女が抱える虚しさを目の当たりにして、美鈴は「このままにしておけない」と強く感じます。

翌日、美鈴はクラスの皆の前で今までしてきた事を大声で告白。もう2人だけで時間を止めて遊ぶことはできません。しかし、そうしてでも美鈴は遥の本当の気持ちを知りたかったのです。 

ずっと澄ました態度だった遥。しかし美鈴に全てを暴露され、感情が剥き出しになってしまいます。聞いたこともない遥の怒鳴り声に驚く生徒たち。遥の表情にあらわれた「本当の気持ち」とは……。

著者
さと
出版日
2014-11-07

他者と関わりあう生活のなかで、傷ついたり悩んだりすることは避けられないこと。美鈴と遥が作中で感じている悩みは、多くの人が共感できるのではないでしょうか。 
 

しかしぶつかり合った分だけ、相手を深く理解できるということも感じることができます。他者を想う「好き」という感情を、素敵なものだと感じることができるのではないでしょうか。人との関わりに悩んでいる人にとっては、一歩踏み出す勇気をもらえる作品となるはずです。

「2人だけの秘密」という魅力的な時間。けれど、いつまでも止めておくことはできません。動き出した彼女たちの関係が辿り着く先とは……ぜひご自身の目でお確かめください。

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