怪異である少年と、女子高生を中心に描かれる学園ホラーコメディ漫画。人と怪異が織りなす人間ドラマや、可愛らしい絵柄で描かれるダークでレトロな世界観が話題となりました。2019年3月にはアニメ化が発表され、注目が集まっています。この記事では、そんな本作の魅力についてご紹介します。ネタバレも含みますので、ご注意ください。
かもめ学園高等部1年生の八尋寧々(やしろねね)が、憧れの源先輩と結ばれるために、代償を払えばなんでも願いを叶えてくれるトイレの花子くんを呼び出すところから物語は始まります。
先輩と両思いになるため、まずは自分の特技を活かすよう花子くんにいわれた寧々は、得意な園芸で源先輩にアプローチしますがうまくいかず、その後も失敗ばかり。何度めかの失敗の後、寧々は花子くんが落とした人魚の鱗を拾います。
この鱗には逸話がありました。「人魚の鱗を飲めば、呪いの代償に非常に強力な縁で結ばれる」花子くんから鱗の話を聞いた寧々は、彼の制止も聞かずに鱗を飲み、源先輩にも鱗を飲ませようとします。しかし、結局飲ませることはできず、人魚の呪いを一身に受けてしまいます。
呪いのせいで魚になった彼女の元に、人魚が迎えに来ます。花子くんは人魚を追い払い、寧々を人間に戻すため、残っている鱗を飲み込みます。寧々は人間に戻してもらった代償に、花子くんの助手として働くことになりました。
こうして、怪異の少年とオカルト少女、奇妙な縁で結ばれた2人の物語が幕を開けました。
そんな本作は、Gファンタジーより公式PVが公開されています。本作のレトロかわいい雰囲気がより伝わります。
また、作品の人気を受けて、2018年よりスピンオフの『放課後少年花子くん』がpixivコミックで連載しています。2019年3月には、本作のアニメ化が発表されました。2020年1月からの放送開始も決まり、アニメ版のPVも公開されました!
キャストなどもぞくぞく発表されています。気になった方は、TVアニメ『地縛少年花子くん』公式ホームページよりご確認ください。
本作はスマホの無料アプリでも読むことができるので、すでに作品が気になった方は、アプリから試し読みをするのもおすすめです。アプリボタンからなら簡単にインストールすることが可能です。
本作は、怪異の少年・花子くんと、その助手として働くことになった寧々の2人を中心に物語が展開します。
花子くんは、明るく社交的な男の子。寧々の呪いを抑える代わりに、彼女を助手としてこき使っています。寧々にはセクハラしたり、思わせぶりな態度や発言をするも、彼女がピンチの時には必ず助けに来てくれる、男前な性格をしています。
普段は飄々としていますが、普通の少年らしい一面もあり、泣いている寧々を見てあたふたしたり、彼女の言葉に赤面することも。
一方の寧々は、ロマンチックな恋愛を夢見る、心優しい少女。呪いの影響で、水に濡れると魚に戻るようになってしまい、呪いのことを隠しながら学園生活を送っています。芯が強く、友達を助けるために怪異相手に大胆な行動を取ることも。
花子くんをとても大切に思っており、ある怪異との戦いで花子くんに頬にキスされてからは、彼のことを少しずつ意識するようになりました。
花子くんと寧々の、友達以上恋人未満な関係は、見ていて微笑ましいところがあり、2人の可愛さに思わずにんまりしてしまいます。シリアスで重い展開が続く場面では、花子くんと寧々の可愛さが癒しになります。
2人の関係がこれからどう変化していくのか、今後のストーリーが気になります。
七不思議の番人たちは、花子くんを含め皆それぞれバックストーリーがあり、番人たちもどこか人間味のあるキャラクターとして描かれています。
「ミサキ階段」や「エソラゴト」など、真相が切ない七不思議もあり、時にはウルッと来てしまうような切ないエピソードも登場します。
怪異のなかでも特に切ないのが、「中等部の昇降口にいる幽霊」として登場する三葉惣助(みつばそうすけ)。中学2年生の冬に事故で亡くなった彼は、生前は写真部に所属。「生前に撮りたかった写真があったはず」という未練から、この世に留まっていました。
三葉は祓い屋の少年・源光(みなもとこう)と出会い、未練を晴らすのを手伝ってもらううちに2人は仲良くなっていきます。しかし、そこへ花子くんの双子の弟・つかさが現れ、三葉の願いを叶える代償に、彼を強力な怪異に変えてしまいます。
理性を失い、異形の姿になり果てた三葉は、最終的に花子くんに消滅させられます。ところが、つかさが三葉の霊体の一部を利用して、今度は3番目の七不思議「カガミジゴク」の力を受け継いだ「ミツバ」として復活させました。
ミツバには光の記憶がまったく残っておらず、つかさからは「三葉とはまったくの別人」とはっきり言われています。人間として生きた三葉惣助は、もうどこにも存在しません。ミツバの姿や思考が、三葉と瓜二つなのが余計に心をえぐります。
三葉の悲劇的なエピソードは、三葉と光を応援していた読者にも大きな衝撃を与えました。
物語では、人をやむなく襲うようになった怪異も登場しています。怪異は噂によって成り立ちます。簡単に噂を流す人間の身勝手さや、人の噂に翻弄される怪異の悲哀が感じられるでしょう。怪異たちの怖くも切ない物語に、気づけばどんどん惹き込まれていくことでしょう。
- 著者
- あいだいろ
- 出版日
- 2015-05-22
本作のテーマは、学園に潜む「七不思議」。七不思議をはじめとする怪異の世界は、ダークで幻想的な異世界として描かれています。
七不思議の2番目として登場する「ミサキ階段」は、怪異の世界でも特に印象的で、鳥居の奥に建物が所狭しに並んだ空間は、怖さと同時に怪しい魅力があります。
少女漫画のような可愛らしいタッチも、レトロな世界にマッチしていて、ミステリアスでありながらおしゃれな雰囲気に演出されています。ダークな魅力を持つ、本作の独特な世界観に、気づけばどっぷりハマってしまうかもしれません。
画面全体にも華があり、おしゃれでかわいいコマの演出に、作者のセンスが感じられます。本作は背景がとても丁寧に書き込まれているので、ぜひ作者のこだわりを感じてみてください。
ある日、寧々と光がかもめ学園に登校したら、花子くんと三葉が生きていました。寧々と光はそのまま2人と仲良く学園生活を送りますが、やがて違和感に気付きます。
実は、寧々たちのいる世界は、4番目の七不思議「エソラゴト」の番人・シジマメイが作り出した仮想世界でした。シジマメイは、絵に描いたものを具現化できる能力があり、寧々と光は絵の中の世界に囚われていたのです。
- 著者
- あいだいろ
- 出版日
- 2018-10-26
絵の世界から脱出する条件は、花子くんと三葉を殺すこと。2人を殺したくない寧々と光は、別の方法で偽物の世界からの脱出を目指します。
本巻では、花子くんが生前の姿・普(あまね)として登場しています。花子くんと三葉が、普通の人間として楽しそうに笑っているのが何ともつらい。果たして寧々と光は、この「幸せ」な世界を壊して、元の現実世界に帰ることはできるのでしょうか。
普として過ごす花子くんの生き生きとした表情や、そんな彼にドキドキさせられる寧々の姿にも注目です。
絵の世界で天体観測をすることになった寧々は、星座の話をする普の姿を見て、彼が本物の花子くんではないかと思い始めます。普に対し、一緒に現実世界へ脱出しようと持ちかける寧々。一方の光は、怪異のミツバと対峙します。
- 著者
- あいだいろ
- 出版日
- 2019-03-27
10巻のラストでは、寧々に関する衝撃的な事実も明かされ、ますます本編から目を離せなくなっていきます。
本巻の見どころは、光とミツバの戦闘シーン。怪異としての孤独から、光を偽物の世界に閉じ込めようとするミツバに、自らの熱い想いをぶつけます。光がかつての友達の「三葉」ではなく、怪異である「ミツバ」のために本気で動く姿は必見です。
怪異の少年と少女が織りなす、ホラーコメディな学園奇譚。ライトなホラー作品を読みたい人や、レトロな世界観が好きな人にぜひおすすめしたい作品です。