「人の目を気にしない生活」を選んだがゆえに「人の目が異様に気になる」。 「ユニークな人になりたい」けど「常識はずれな人にはなりたくない」。 「普通なんてない」といいながら「平均が気になる」。 変わった人だねと言われることに喜びを感じつつも、その裏の裏まで気になってしまう……自意識過剰を順調に育てて来た筆者が送る、「自分との戦い」ならぬ「自分との痴話喧嘩」に悩むあなたにおすすめの新書、ご紹介します。
自分の強みをあげるとすれば、いろんなことに好奇心を持てるところだと思う。
自分の弱みをあげるとすれば、いろんなことに飽きっぽいところだと思う。
だからずっと続けられていることがせいぜい本を読むことくらいなのだと思う。
うまく今はその続けられていることを仕事にできているので、願ったり叶ったりなのだけれど、特に最初の仕事でしていたインタビューもなかなか好きなことの部類だと思う。
人のこれまでだったり、人の好きなことだったりはずっと聞いていられる気がする。
語っている人をみるのが好きだ。
- 著者
- 西尾 忠久
- 出版日
- 2017-01-26
とはいえ他人の人生ってたまに面白いのだけれど、他人の好きなことに関してはごくたまにどうしようもなく聞いていてつまらないな、と感じる時がある。そんな時にやっていることがある。
相手の話し言葉の中から、神妙な言葉(または猥褻とも取れるような言葉)や言い回しを探して勝手に妄想を繰り広げるのである。
「それってどういうこと?」と突っ込んで、妄想とさらに共通点を見つけられた時なんて特に楽しい。
語っている人を見るのが好きなので、仕事でも趣味でも語れる話のある人に魅力を感じやすい。
好きなことの話になると我を忘れてワーっと喋る早口「オタクっぽい喋り方」なんてツボだったりする。
自分も好きなこと、関心のあることが常にそこらじゅうに霧散しているので、つい引き出しの取っ手くらいにひっかかる話題があると、その限られた会話の時間に情報を詰め込もうとしすぎてしまう、いわゆる「オタクっぽい」喋り方になりがちで、気持ちがよくわかるというのもある。
この「オタクっぽさ」を楽しめるまで、特に苦痛だった話題が「自動車」と「虫」の話だった。
今回紹介する『企画のお手本』は、新書でありさらには「発送トレーニング副読本」を銘打ってはいるのだけれど、実際はフォルクスワーゲンのビートルの広告集である。
しかも広告集なのにカラーではない。しかもドイツで打たれた広告たちである。
そこはかとなく「オタク」臭がする。読者の都合とかこのタイトルに惹かれて手に取った人置いてけぼり感がすごい。
でもそれがなぜだか不思議と心地よいのである。
変に説教くさい世間一般の「それら」より、
「いやもう自分にとって『企画のお手本』ってこれなんで!!」感と、一気にまくし立ててくるそのテンションが伝わってくる。
白黒の車か昆虫か(ビートルという車種?なので、昆虫のモチーフも頻繁に出てくる)ばっかりの画面が続く。
でもその素直な欲求が、慣れてくると生命力に感じられる。
なんかそこに色っぽさがある。
そして、なんか自分もこういうもの作ってみたいわという欲望を湧かせてくれる。
ぜひまわりがオタクばっかで、どうにも話に関心が持てないなという時は、そんな彼らのひたむきさや一方的な愛にショック療法的に触れてみてはいかがだろうか。
困シェルジュ
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