『サ道』とは、すなわち「サウナ道」のこと。 一見ただの蒸し暑い部屋と思われがちなサウナですが、正しい方法で入浴すると驚くほどの恍惚感を得ることができるのです。作者の体験を基にサウナの魅力・楽しみ方を紹介する本作は、2019年7月からドラマ放送も決定している注目作品。本作を読んで、奥深いサウナの世界への扉を開きましょう。ネタバレも含まれますので、未読の方はご注意ください。
作者自身がモデルになっている主人公・サウナ大使。本作では、サウナ大使がサウナ仲間の「偶然さん」や「イケメン蒸し男」と語り合う形で、サウナの魅力を解説・紹介していきます。
サウナのことを「高温の部屋で汗を掻くだけ」と思っている人も多いかもしれません。しかし、サウナ室と水風呂に交互に入ることで、まるで宇宙へ旅立つような快感を得られるのだとサウナ大使は語ります。
彼が『サ道』に足を踏み入れることになったきっかけや、本場フィンランドのサウナを体験したエピソードなども綴られており、読めば読むほどサウナの世界の奥深さを知ることになるでしょう。
- 著者
- タナカ カツキ
- 出版日
- 2016-01-22
2019年7月からテレビドラマの放送も決定。
キャスティングも、サウナ愛に溢れたものになっています。サウナ大使は、自他ともにサウナ好きと認める原田泰造が務めます。さらに、「偶然さん」を演じるのはサウナ歴20年以上を自負する三宅弘城。「イケメン蒸し男」は、最近サウナに通うようになったという磯村勇斗が演じます。
プロデューサーをはじめとするスタッフ陣も、サウナを愛する「サウナー」が集結。登場人物たちが「ととのう」様子をどのような映像で表現するのでしょうか。期待が高まります。
マンガ家であり、映像作家でもある作者。『コップのフチ子』の企画・デザインなども行なっているほか、水草水槽など幅広い分野で活躍しています。
2011年に本作の前身ともいえるエッセイを発表し、サウナの魅力を世間に広く発信しました。これをきっかけに、日本サウナスパ協会は作者を「サウナ大使」に任命。
サウナ大使としての活動はエッセイや漫画の執筆に留まらず、海外のサウナを訪れる外交活動など、多岐にわたっています。
- 著者
- タナカカツキ
- 出版日
- 2009-07-30
作中で使われる「ととのう」という言葉。サウナと水風呂に交互に入る「温冷交代浴」によって全身の血行が良くなり、脳に大量の酸素が送り込まれ、快感ホルモンが分泌されるのだそうです。これによって陶酔感を得た状態を、作中では「ととのった」と表現しています。
身も心もまっさらに清められ、得られるのは深いリラックスと恍惚感。この状態が病みつきになり、人々はサウナに通ってしまうのです。
ととのっているときのサウナ大使の表情は、まるで宇宙の真理に辿り着いたかのような喜びに満ち溢れています。これほどまでに素晴らしいものならば、体験してみたいと思うのは自然なこと。本作を読み終わる頃にはサウナに行きたい気持ちが湧き上がっていることでしょう。
「ととのう」ためにサウナ大使がオススメする入浴方法は、「サウナ室→水風呂→休憩」という行程を3回ほど繰り返すこと。その後は、リラックスできる姿勢でゆっくり休憩します。すると、やがて全身に軽い痺れが訪れ、ととのった状態に辿り着くのだそうです。
サウナ大使は、サ道に目覚め始めた頃、他の常連客の行動を真似してこの入浴方法を学びました。夏は水風呂から入り、冬はサウナで〆るなど、季節によって順番を変えることも有効なようです。
初めこそ水風呂に抵抗を感じていたサウナ大使ですが、サウナの楽しみを知ってからは、より冷たい水風呂を求めるようになります。一般的な水風呂は17~18℃ですが、サウナーの道を究める人にとっては物足りない温度です。14℃の水風呂など見つけようものなら、よだれが出る勢いで大喜び。
水風呂なしのサウナは「イチゴののっていないショートケーキ」と言うほど、水風呂とサウナは不可分な関係。サウナ大使は、水風呂を素通りして出ていく若者の後ろ姿を見送りながら、彼らがいつかサウナの本当の楽しみを知ってくれることを願っています。
もちろん人によって体質や体調が異なるので、あくまでも自分のペースで、無理をせずにおこなうことが大切。実践するときは暑さや冷たさを我慢しすぎないように、気をつけてサウナを楽しみましょう。
近年のサウナで人気の一因となっているのが「ロウリュ」と「熱波師」。ロウリュとは、サウナ室内に設置された熱された石(サウナストーン)に水をかけることです。水蒸気によって体感温度が上がり、発汗と温熱効果が高まります。
アロマ水を使うと、香りによって効果を追加することもできます。たとえばレモンのアロマは乾燥肌や消化不良、便秘の改善に効果があるそうです。
ロウリュは、ただ水を掛ければよいというわけではありません。水量が多いと暑くなりすぎたり、近づき過ぎて火傷を負ったりという危険を孕んでいます。そのため、客がセルフでロウリュができるサウナは少なく、店のスタッフが時間を決めて行っているのです。
このロウリュをおこなうのが「熱波師」と呼ばれるスタッフ。水蒸気を発生させた後は、タオルやうちわで客を扇いで風を送ります。 高音の室内でタオルを振り回すので、熱波師は体力的に過酷な仕事です。だからこそ、客はよい風を感じられると彼らを拍手で賞賛します。
ここで得られる客同士の一体感や、熱波師との交流もロウリュの魅力の一つです。作中では「偶然さん」の激励を受け、仕事のやりがいを感じる熱波師の姿も描かれています。
- 著者
- タナカ カツキ
- 出版日
- 2016-01-22
ヴィヒタとは、白樺の小枝を集めた束のことです。ヴィヒタが吊るされているサウナ室では白樺の香りが漂い、さながら森のような爽やかな空気を楽しむことができます。
楽しめるのは香りだけではありません。サウナで火照った体をヴィヒタで叩くと、葉に含まれるミネラル分と叩いた刺激によって血行が促され、疲労回復や肌の活性化にも効果があるそうです。
サウナでは植物による効用も重要。主人公が初めてトランス状態になった時も、木の香り成分による効用が大きかったと振り返っています。
「よいサウナ」として描かれている施設には必ずヴィヒタが吊るされています。サウナを訪れた際にはチェックしたいポイントですね。
読み終わるころにはサウナに行きたい気持ちが募っていることでしょう。巻末では日本全国のオススメサウナが紹介されており、サウナ大使の心遣いが行き届いています。本作を読んで『サ道』の世界に踏み出してみませんか?