国民的人気を誇る『ちびまる子ちゃん』の作者・さくらももこが描く、一風変わったギャグ漫画「コジコジ」。本作は、さくらももこ独特のブラックジョークを挟みながら、メルヘン世界の住人たちの日常生活が描かれます。今回は、そんな「コジコジ」に出てくる登場人物の魅力や、数々の名言をネタバレしながら紹介します。 本作は、スマホの漫画アプリでも無料で読むことができるので、気になった方はそちらからもどうぞ!
本作は、メルヘンの国に住んでいる主人公・コジコジと、その周りの住人たちがくり広げる日常生活を描いたギャグ漫画です。
メルヘンの国というものの、ふわふわした世界観とは少し異なり、さくらももこ独特のブラックジョークが全面的に描かれています。もちろん子供も楽しめる作品となっていますが、奥深い名言が多いため、大人向けのメルヘン漫画といっても過言ではないでしょう。
後述しますが、本作はコジコジをはじめとした独特なキャラクターたちがたくさん登場します。
- 著者
- さくら ももこ
- 出版日
- 2009-04-15
たとえば有名人のサインを集める太陽の王様ゲラン、 メルヘンの世界でひとりだけ人間のジョニー君、コジコジの相方的な存在の次郎などです。
時々、哲学的なセリフでハッとさせられたり、かと思えばとんちんかんな言動で周りを呆れさせたりと、自由気ままなメルヘン世界の住人たち。基本的に1話完結なので、とても読みやすいです。
ここから先は、本作の主要人物のエピソードと名言の一部を紹介します!ネタバレを含みますので、苦手な方はご注意ください。
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さくらももこは日本のエッセイストおよび漫画家であり、作詞や脚本なども手がけるなど、幅広い分野で活躍されていました。
惜しくも2018年8月に死去され、4巻まで発売されていますが、「コジコジ」は未完の形で絶筆となっています。
彼女は、世界中で愛されている『ちびまる子ちゃん』の作者でもあります。
- 著者
- さくら ももこ
- 出版日
- 2001-03-16
さくらももこといえば、『ちびまる子ちゃん』のイメージが強い方も多くいると思いますが、漫画だけでなく、エッセイ集の『もものかんづめ』や『さるのこしかけ』、『たいのおかしら』なども代表作品として挙げられるでしょう。
どれも独特の視点と語り口、そして時折挟み込まれるブラックユーモアが読者の心に深く刻み込まれることが多く、「平成の清少納言」とも評価される人物です。
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「コジコジ」の魅力は、何といっても可愛い世界観にもかかわらず、エピソードのところどころに散見されるブラックユーモアや、哲学的なセリフとのギャップにあります。
丸い輪郭でつぶらな瞳のキャラクターが多い本作。見た目的にはゆるキャラのようにも見え、癒されます。またメルヘン世界に住むコジコジたちは、人間を喜ばせるための役目を持っています。
一見すると癒し系の漫画ですが、中身はさくらももこ独特のブラックユーモアがところどころに表現されています。また、ハッとさせられるようなセリフを、さりげなく表現するところも魅力のひとつです。
本作の主人公は、タイトルにもなっているコジコジ。彼は宇宙の子ということ以外は、何も明らかにされていません。
テストでは自分自身の名前を間違えて-5点を取るほどのおバカですが、性格は気楽で明るく、自由。そして時々、哲学的なことを言ったりして周囲を驚かせることもある、謎に包まれたキャラクターです。
たとえば、第1話にこんなエピソードがあります。
テストで-5点を取ったコジコジは、職員室に呼び出されることに。「勉強なんて1度もやったことがない」と言う彼に、先生は「毎日何をしているんだ?」と問いかけます。「空を飛んだり、お菓子を食べたり、山や海で遊んだり、寝たりしている」と答えるのです。
それを聞いた先生は激怒。しかし、コジコジは「え?悪いの?遊んで食べて寝てちゃダメ?」と聞き返すのでした。「盗みや殺し、サギなんかしていない。ただ遊んで食べて寝ているだけなのに、なんで悪いの?」かと、逆に質問をします。
確かに勉強は大事ですが、勉強が全てではないことも事実ですよね。そんな当たり前のことに気付かせてくれるひと言です。
また、最後に先生は「将来、何になりたいんだ?」と問いかけます。それに対してコジコジはこう答えました。
「コジコジだよ
コジコジは 生まれた時から ずーっと
将来もコジコジは コジコジだよ」
(『COJI-COJI』1巻より引用)
その返答に衝撃を受けた先生は、何も言うことができなくなったのです。自分を見失わず、どんな状況にも平常心でいられるコジコジの姿に、あらためて自分を振り返ってしまう名言でした。
次郎はコジコジの隣の席ということもあり、よく一緒にいます。おバカな彼に対して、ツッコミ役のキャラクターです。そんな彼も時々、読者をハッとさせるようなセリフを言うことがあります。ここでは、そんな次郎の名言を紹介します。
毎年6月になると日本に行くカエルのトミー。
「何で日本に行くの?」と聞くコジコジに「6月の日本は雨が降るから、ただ行くだけだ」とトミーは答えます。それを聞いたコジコジは、「カエルなんて雨にでも打たれてろってことだね。」と返してしまいます。それに対して、思わず「6月の雨はカエルにちょうどいい」のだと次郎はフォローします。
しかし、トミーは「コジコジの言う通りだ」と、自分には存在意義がないと意気消沈。そしてそれは彼だけでなく、ジョニーや次郎も同じでした。とくに何かの役に立つことなんてないなぁ……と落ち込むトミーたち。
すると、いつも悪さをしているあくまのブヒブヒや、ナゾ怪人のスージーたちのほうが、よっぽど役にたっているような気がしてきました。そのとき次郎は
「ブヒブヒやスージーは悪という立場で善を成立させる役に立っているよな
ああいう奴らがいなかったら善は成立しないぜ」
(『COJI-COJI』3巻より引用)
と語りかけます。一見、役に立っていないように見えても、じつは皆それぞれどこかで役に立っていると思わせてくれる名言です。
次郎と仲良しのコロ助。雪だるまの彼は可愛い女の子が大好きで、彼女募集中です。よく次郎とも女の子の話をしています。
そんなある年のクリスマスのこと。毎年、教会のクリスマス会にはお姫様天使がやってくることになっています。
コロ助も次郎も皆、お姫様天使に会えることを楽しみにしていました。しかし、今年はお姫様天使の父が倒れ、来られないことに。代わりの人を……と考える天使たちですが、お姫様天使のように美人の天使はなかなかいません。
そんななか迎えたクリスマスの夜は三日月。スージーは、三日月の夜だけ性格のいいとびっきりの美人になるのです。
クリスマスの夜、スージーがひとり佇んでいると、通りがっかったコジコジがクリスマス会に誘います。ナゾ怪人である自分は教会になんて行けない、と一度は断るスージーですが、コジコジの説得で教会へ行くことに。
教会に着くと、スージーはお姫様天使の代わりを頼まれてしまいます。怖気づく彼ですが、何とか無事に代理を果たすことができました。
教会からの帰り道、次郎とコロ助はお姫様天使の代わりを務めた人のことで大盛り上がり。2人はもちろん、今日出席した誰もが、代理を果たしたスージーがいつもの悪い彼と同一人物だとは気づいていません。
教会に一緒に来たというコジコジを羨ましいという2人。コジコジはいつものナゾ怪人のスージーだから、羨ましいのなら仲よくすれば?と言います。
しかし、彼らは「同じ名前の人は同一人物だとコジコジは考えている」と思い、ふだんのスージーとは別人だと決めつけていました。そんなコジコジを見てコロ助は哀れむのでした。
「ぜんっぜん分かってないよなぁ……」
(『COJI-COJI』3巻より引用)
本質を見抜く大切さを教えてくれるひとコマですね。
ゲランは太陽の城の王様で、有名人のサインを集めるのが大好き。そのことでだまされることも多い残念な王様です。
決して賢くはないキャラクターなので、名言は少ないほうです。しかし、はっきりと態度には出さないものの、いつもクラスメイトのことを考えている心優しい王様なのです。
そんな彼の優しさが1番分かるのは、コミックス第1巻に収録されている第8話「嵐が来るぞ!」です。嵐がやってくることが分かったコジコジたち。皆大慌てで家の補強をしたり、食糧を蓄えたりと嵐に備えます。
そんななか、ゲランがとった行動は、光の国へ応援を呼びに行くことでした。応援を連れてきたゲランでしたが、コジコジによって嵐の大王様は過ぎ去った後だったのです。
それを知ったゲランは、複雑な心境を吐くのでした。
「はるばる光の国まで応援を呼びに行ったのに……
まァ 何事もなかったんならいいけどさ……」
(『COJI-COJI』第1巻より引用)
言葉だけでなく、きちんと行動に移すこともできるゲラン。思いやりをきちんと行動で表すことの大切さを教えてくれるひと言です。
太陽の城の王様ゲランとよく一緒にいる、雷の城の王様ドーデス。彼はとても冷静に物事を考えることができます。
そして、クラスのなかでも1番地味で静かな「おかめちゃん」。彼女は「問答えんぴつ」という喋る鉛筆をたくさん持っています。問答えんぴつは鉛筆ですが、生き物のような存在で、おかめちゃんはたくさんの問答えんぴつを飼育しています。
ある日、おかめちゃんから、問答えんぴつのコンテストで優勝し、50万円もらったということを聞かされた次郎たち。しかし彼女は50万円を手に入れてもハデに使ったりしません。そのことをおかめちゃんに言うと、「バカじゃあるまいし」とクールに返されてしまいました。
そんな彼女をやけに気にするコロ助は、恋愛に興味はあるのかと聞き、それに対して「愛だの恋だのに興味はない」とまたしても返り討ちにされてしまう始末。
そんな問答をしていると、大金を手にしたことを耳にしたブヒブヒ達が、おかめちゃんからお金を奪おうと問答えんぴつを売りにきます。
- 著者
- さくら ももこ
- 出版日
- 2009-06-15
しかし、おかめちゃんは興味を示しません。「信用できるバイヤーからしか絶対に買わない」と言って去っていくのでした。そんな彼女の姿を見た次郎たちは、やはりクールだと感じるのです。
翌日、クラスでもおかめちゃんのクールさが話題になります。そこで、おかめちゃんにその秘訣を聞くと、ムダなことはしないことだ、と答えるのでした。
その意見に賛成したのは、コジコジたちだけではありません。ドーデスもそのひとりで、彼もあまりムダなことをしません。
「ムダなことをせず更に他人に迷惑をかけず
自由に自分の人生をのびのび生きるのがクールといえるかもな」
(『COJI-COJI』4巻より引用)
とゲランや次郎たちに話すのでした。コジコジたちと同級生とは思えぬかっこよさのおかめちゃんとドーデス。今、少しでも息が詰まっていると感じる人は、ムダなことをしていないか考えてみると良いのではないでしょうか。
やかん君は、光の粒でもあるペロちゃんに恋している「やかん人間」です。
ペロちゃんのことを思うといつも熱くなり、沸騰することもしばしば。消極的な一面もまた彼のチャーミングポイントのひとつとなっています。 そんな彼には、こんな名言があります。
「ボクらはうまくいかない恋やなんかで悩みすぎてるよね
もっとクールに生きる必要があるんだよな」
(『COJI-COJI』4巻より引用)
コジコジたちのクラスでは、クラスメイトのおかめちゃんが何につけてもクールだと話題になります。そんな彼女の様子を見て、やかん君は上記の言葉を発するのでした。
世の中にはどうしようもないことがありふれています。そのようなことにとらわれず、考え過ぎないで、もっと気楽にいこう、という作者なりのメッセージとも受け取れるセリフですね。
スージーは、いつもブヒブヒと一緒に人をだましたり、盗みをはたらいたりする、メルヘン世界には到底似つかわしくないキャラクターです。とにかくいつも悪さばかりするので、よいことはなかなか言いません。
しかし、三日月の夜だけはなぜかとびっきりの美人になり、性格も乙女チックに。それはもう、いつもの彼女とは正反対の外見と性格なのです。変身したときに発する言葉と外見は、『コジコジ』の見所のひとつになります。
とある三日月の夜、スージーは言いました。
「久しぶりに恋でもしたいわ 外に出てみようかしら」
(『COJI-COJI』3巻より引用)
と言動も前向き。いつものスージーからは想像もつかないセリフですが、何かを手に入れたいのであれば、積極的に動く必要があることを、暗に教えてくれているようです。
そして翌日、そんな自分を思い出して「気持ち悪いできごと」と言っている悪いスージーも、微笑ましく感じるでしょう。
ジョニーは、「ハレハレ君の友達に」と人間界からメルヘン世界へと連れてこられた可哀そうな人間です。むりやりメルヘン世界に連れて来られた挙句、ホームシックにならないようにと記憶まで消されてしまいます。
そんな彼はいつも自分探しをしています。記憶がないこともあり、基本的に暗く、無口なのが特徴です。
名前は人間界で使っていたものを使っています。しかし連れて来られるときに、ヨーグルトを食べていたからと、勝手にブルガリア人だと決めつけられたまま、メルヘン世界で過ごすことになりました。そして作品の中で、彼は何者なのか分からないまま連載が終了してしまいました。
- 著者
- さくら ももこ
- 出版日
- 2009-06-15
タヌキの夜祭が行われる日、いつも仲のよいジョニーとハレハレ君は、ひょんなことからケンカをしてしまいます。そして、ハレハレ君は次郎たちと祭りに行くことに。
しかしいつも一緒にいるジョニーが隣にいないことを寂しく思い、祭りの最後に月へ想いをはせるのでした。ジョニーへの謝罪と、明日からまた仲よくなれますようにと。
そんな思いが届いたのか、月を見上げていたジョニーもまた反省するのでした。
「ボクが意地をはったから悪いんだ 明日あやまろう」
(『COJI-COJI』2巻より引用)
ジョニーの人間らしい素直さが感じられるひと言。素直になった2人は、仲直りをします。
素直になることは、簡単なようでなかなか難しいこと。しかし、大切な人を失わないためには、素直になることが大切さだと教えてくれるエピソードです。
ここに紹介したものは、ほんの一部です。本作にはこのほかにも、さくらももこの生きるヒントが隠されています。また、ちょっとしたBL要素やまるちゃんとのコラボエピソードなど、さまざまな見所が満載となっている本作。ぜひ一度お手に取って楽しんでください。