女優として活躍する杏(あん)。実はかなりの読書家として知られていて、本を紹介するラジオ番組「BOOK BAR」のナビゲーターを10年以上も担当していました。この記事では、これまでに杏がおすすめした本のなかから、6作を厳選して紹介します。
1986年生まれ、東京都出身の杏(あん)。10代のころからファッション誌でモデルとして活動をはじめ、女優としてデビューした後は連続ドラマや大河ドラマに次々と出演する活躍を見せています。
常に本を持ち歩いているほどの読書家で、年間100冊ほどを読むとのこと。特に新撰組をはじめとする歴史ものが大好きで、好きな作家として司馬遼太郎や池波正太郎をあげています。
2008年から2019年まで、J-WAVEで放送されていたラジオ番組「BOOK BAR」では、ナビゲーターを担当。大倉眞一郎とともに毎回お気に入りの本を中心に話を展開する内容で、これまでに2人で1000冊以上を紹介しました。
3人の子どもの母親として、プライベートでも忙しい日々を送っている杏。寝かしつけの時間などを利用して、読書に勤しんでいるそうです。
この記事では、杏がラジオ番組でおすすめした本をご紹介。魅力的なものばかりなので、ぜひお手にとってみてください。
また、杏の出演した映画やテレビドラマについて知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
<杏の多才さを知れば出演作がより面白い!実写化した映画、テレビドラマを原作の魅力ともに紹介>
西日本新聞の女性投稿欄「紅皿」に、1954年から10年間のあいだに寄せられた戦争に関連する投稿をまとめた作品です。
終戦したとはいえ、常に戦争が身近にあった時代。女性たちは何を見て、何を思って生きていたのでしょうか。
- 著者
- 出版日
- 2019-06-14
2013年、NHKの連続テレビ小説「ごちそうさん」で同じ時代の女性を演じた杏。戦争を語り継ぐことの大切さを感じ、本書を紹介しました。
投稿欄なので600字以内という制限がある文章。そのなかには「空襲」や「赤紙」など現代では聞くことのない言葉がたびたび登場します。戦争というものが生活のなかに深く食い込んでおり、それが「日常」だったと感じることができるでしょう。
そんな状況のなかでも、当時の人々は大切な人を想い、明日を見て生きていました。戦争を知らない人こそ読んでおきたいノンフィクションです。
作家の村上春樹と、イラストレーターの安西水丸の共著です。
2人が興味をもった製品の「工場」を実際に訪ねてみようという企画。カラーイラストとともに、インパクトのある訪問記が綴られています。
- 著者
- 村上 春樹 安西 水丸
- 出版日
- 1990-03-28
杏は村上、水丸両者と面識があるそうで、「おふたりが30~40代だった頃に、工場見学をしていたと思うと、ほっこりします」とラジオで語っていました。
工場見学はすべて1986年におこなわれたもの。日本が「モノづくり大国」として勢いがあった時代です。人体模型、結婚式場、消しゴム、コム・デ・ギャルソン、アデランス……とそのジャンルはさまざま。2人はまるで少年のように好奇心いっぱいで見学をしていきます。
堅苦しさはまったくなく気軽に読める一方で、鋭い観察眼で切り込む時もあるのが面白いところ。単なるエッセイではない、ルポルタージュに仕上がっています。
大正時代末期、アメリカで日本人初のベストセラー作家になった女性がいました。アメリカに移住した旧越後長岡藩の家老、稲垣茂光の娘である杉本鉞子(えつこ)です。
本書は、英語で記した自叙伝『A Daughter of the Samurai』を日本語に翻訳したもの。当初は一部の章が削除されていましたが、「新訳」はすべて掲載された完全版になっています。
- 著者
- 杉本 鉞子
- 出版日
- 2016-03-19
ラジオ番組「BOOK BAR」の公開収録で、特に印象の残った本として紹介していました。
武家の娘として育った杉本鉞子。貿易商として働く男性と結婚したことをきっかけに、25歳でアメリカに渡りました。本書には、文化や習慣がまるで異なる土地で暮らした日々が綴られています。そこには同時に、日本の風習も綴られており、未開のアジア人女性の物語としてアメリカでヒットしたそうです。
鉞子は2人の子どもに恵まれるものの、若くして夫を亡くし、一時日本に帰国します。しかし再び渡米。困難な状況に陥っても常に前向きでいられるその強さと、凛とした姿は、まるで武士のようにも見えるでしょう。
絵本作家で二児の父でもあるヨシタケシンスケの育児エッセイ漫画です。育児雑誌「赤ちゃんとママ」で連載されていたものをまとめました。
父親が抱いている、口に出せない本音や不安が赤裸々に綴られています。
- 著者
- ヨシタケシンスケ
- 出版日
- 2017-04-22
ラジオのリスナーから、子育て中の杏におすすめとして紹介された作品です。
育児エッセイというと、母親目線の奮闘記がほとんどですが、本書に描かれているのは育児にまつわる本当に些細なこと。当事者だったらついイライラしてしまっていたことも、ヨシタケのイラストとともに読んでいるとクスっと笑えるのが魅力です。
文字はほとんどないので、疲れている時でも気軽に読めるでしょう。プレゼントにもおすすめです。
さくらももこが妊娠と出産を綴ったエッセイです。
新しい命の誕生というと、神秘的でキラキラしたものを想像しがち。しかしさくらももこは過度な期待をせず、あくまで「そういうものだ」と自然体でとらえているのが魅力的でしょう。
- 著者
- さくら ももこ
- 出版日
- 1999-06-30
自身も妊娠と出産を経験した杏が、さくらももこにしかない視点で書かれていると絶賛した作品です。
帝王切開での出産に特別な感動がない自分に失望したり、自分は人見知りだから初めて会った人(赤ちゃん)を急には愛せないと言い切ったり……妊娠や出産にナーバスになっている人が読むと、気持ちを楽にしてくれます。
ゆるい表現の連続でおもしろおかしく読める一方、子どもに対する姿勢や宇宙観、死生観などハッとさせられる部分も。妊娠や出産を体験していない人でも興味深く読むことができるでしょう。
親から虐待を受けていた人から「親への手紙」を募集し、インターネット上で寄付を募って出版された作品です。
身体的な虐待にはじまり、ネグレクトや心理的、性的な攻撃などを生き抜いた生の声は、全部で100人分。年齢も10代から50代と幅広いのが特徴です。
- 著者
- 出版日
- 2017-10-02
発売時には、本書を5冊単位で購入し、執筆者ひとり分の謝礼を支援する「サポート購入」という仕組みがありました。杏のもとにも、児童虐待防止を啓蒙してほしいと、この制度を利用して購入された本が届いたそうです。
本書を読むと、虐待を受けたという事実はけっして過去にものにはならず、何年経っても、大人になってもずっと続くものだということがわかります。多くの読者はその内容に衝撃を受けると思いますが、心の傷口から血を流し続けている人がいるのだと、まずは知ることが大切です。
「そんな親なら捨てちゃえば?」という言葉に、少しでも救われる人がいることを願うばかりです。