おすすめした本が次々と売り切れるほど、影響力のある「読書芸人」のカズレーザー。この記事では、彼が薦めた作品のなかから、歴史に関する本を中心にご紹介します。一体どのようなラインナップになっているのでしょうか。
強大な帝国を築いたローマ。本書では、ローマの建国から西ローマ帝国の滅亡までを描き、なぜ「普遍帝国」と呼ばれるほどの隆盛を極めることができたのかを紐解いていきます。
最大の特徴は、歴史書ではなく「物語」として描かれていること。たとえば「侵略」と一言で済まされてしまう出来事にも、その裏には多くの人の想いがあるのです。歴史という名に隠されたドラマを物語にすることで、ローマ帝国やそこに暮らした人々の魅力を鮮やかに蘇らせています。
- 著者
- 塩野 七生
- 出版日
- 2002-06-01
1992年に1巻が刊行された塩野七生の作品です。単行本で15巻、文庫本で43巻という大長編。全巻を読破するのは相当なエネルギーが必要ですが、どの巻から読んでも物語についていける構成になっています。
本作のなかで特におすすめなのは、文庫本で3~5巻を使って描かれている「ハンニバル戦記」。カズレーザーも絶賛していました。ローマとカルタゴという国家間の戦いが記されているのですが、強敵であるローマ相手に10年間も暴れまわった名将ハンニバルの奮闘が見どころです。
紀元前に生きていた人々がいきいきと躍動する筆力は圧巻。歴史に詳しくない人でも楽しめる、興亡の物語です。
日本を代表する詩人で彫刻家の高村光太郎。本書は、生涯をかけて書いた詩のなかから93編を厳選してまとめたものです。高村が生前に手掛けた最後の詩集でもあります。
詩集というととっつきづらいイメージを抱く方もいるかもしれませんが、高村光太郎は、簡単な誰にでもわかる言葉で書こうとしていました。
- 著者
- 高村 光太郎
- 出版日
カズレーザーのおすすめは「ぼろぼろな駝鳥」。「何が面白くて駝鳥を飼うのだ」という問いから始まり、「人間よ、もう止せ、こんな事は」と締めくくられています。たった13行ですが、そのなかに問題提起と怒りが込められているのです。
常に人間らしい生き方を求めていた高村。どの詩からも、人生を肯定して愛を貫こうとする信念が伝わってきます。言葉のひとつひとつが心に染み入る作品でしょう。
MacとiPhoneで世界を変えたスティーブ・ジョブズの人生を描いた、伝記漫画です。
1976年にアップル社を設立し、成長させてきたジョブズ。しかしその過程は、自分が作った会社を追い出されるなど、けっして順風満帆ではありませんでした。
- 著者
- 上川 敦志
- 出版日
- 2013-10-30
困難に直面した時も、自分を信じて努力を惜しまなかったジョブズの人生がポジティブに描かれています。アップルを追い出された時のことも、「クビになったことは人生のなかで最高のことだった」と振り返ったそう。その気質とエネルギーに、多くの人が惹きつけられるのです。
またジョブズは、多くの名言も残してきました。たとえばたとえばアップルの経営が苦しくなり、コカ・コーラ社の社長を引き抜こうとした時。「このまま一生お前は砂糖水を売り続けるのか、俺と世界を変えるのか選べ」と言ったそう。ユーモアと情熱を感じられます。
本書は漫画ながら、そんな彼の熱量をあますことなく描写。子どもに人気のシリーズですが、大人でも十分に楽しむことができるでしょう。
なぜ「ホモ・サピエンス」がすべての食物連鎖の頂点に立つことができたのか。この謎を、「認知革命」「農業革命」「科学革命」という3つの革命を軸に解き明かしていく歴史書です。
本書では、国家や宗教など、目に見えないものを信じて共有することができたからこそ、ホモ・サピエンスは発展してきたと主張。人類が紡いできた軌跡を教えてくれます。
- 著者
- ユヴァル・ノア・ハラリ
- 出版日
- 2016-09-08
2016年に刊行された、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの作品です。
本書を面白くしているのは、イメージのかけ離れたサンプルを上手に結び付けて話をまとめる作者の手腕でしょう。たとえば実在しないものを想像する人間の力を、ドイツにあるシュターデル洞窟の彫刻「ライオンマン」と、フランスの自動車メーカー、プジョーの「ライオンのマーク」を比較することで説明しているのです。読者の興味を継続させつつ、納得のいく結論へと着地する筆力に圧倒されます。
また、歴史だけでなく未来に目を向けているのも魅力です。テクノロジーが劇的に発展し、次のステージを迎えた人類は、これからの世界をどう生きていくのでしょうか。
カズレーザーだけでなく、バラク・オバマやビル・ゲイツなど世界中の著名人が絶賛した名著です。ぜひ読んでみてください。
日本人であれば1度は聞いたことがあるであろう「応仁の乱」。しかしその知名度の高さに反して、実態を理解している人が少ないのも事実です。なぜなら、戦いは実に11年間も続き、対立の構図も複雑で、全体像を捉えるのが難しいから。
本書では、室町時代を生きた興福寺の2人の僧侶の日記を中心に、当時の人々が何を考えていたのか、応仁の乱がなぜ発生してどう終結したのかを検証しています。学術的な内容ですが、構成の巧みさと簡潔な文章で、最後まで飽きることなく読むことができるでしょう。
- 著者
- 呉座 勇一
- 出版日
- 2016-10-19
2016年に刊行された呉座勇一の作品です。応仁の乱を題材にした作品はこれまでにも多々ありましたが、わかりづらいものが多く、本書は数少ない成功例だといわれています。
歴史の大きな転換点となり、新たなパワーバランスを生みだすことになった応仁の乱を、作者は第一次世界大戦に類似していると主張しています。さまざまな思惑が錯綜し、戦をコントロールすることができなくなり、結果的に長期化してしまったのだそう。
カズレーザーは、関ヶ原の戦いほどメジャーにならず、三国志ほどファンがいるわけでもなく、「地味」だとしながらもわかりやすいとおすすめしています。