ママと子の絆を描いた絵本は数あれど、パパが活躍する絵本を読んだことがある人は、意外と少ないのではないでしょうか。毎日仕事に行って家にいないことも多いけど、子どもにとってパパは偉大でかっこいいもの。この記事では、パパが活躍するおすすめの絵本を紹介していきます。
モニカの家の窓から、お月さまがとても近くに見える夜がありました。一緒に遊びたくて、手をいっぱいに伸ばしてみますが、届きません。そこでモニカは、パパにお願いしてみることにします。
「パパ、お月さまとって!」(『パパ、お月さまとって!』より引用)
するとパパは、ながーいながいはしごを持ってきました。そしてたかーいたかい山へ運んでいき、てっぺんに立て、お月さまへとのぼっていくのです。
- 著者
- エリック カール
- 出版日
日本でもおなじみの『はらぺこあおむし』を手掛けたエリック・カールの絵本です。
ながーいながいはしごを、たかーいたかい山にたて、パパはお月さまにたどり着きます。愛する娘モニカのもとへ、無事に連れて帰ることができました。
単純でわかりやすい物語を面白くしてくれているのが、本書に施された仕掛けです。長いはしごや大きなお月さまが登場するシーンでは、ページが大きく開いて元の何倍もの大きさに。子どもだけでなく大人でもびっくりしてしまうような迫力になっています。
パパが娘を想う愛情は、絵本を飛び出し、お月さまを持って帰ってきてしまうほどに大きいのでしょう。いざという時に活躍する姿がとてもかっこいいです。絵本を楽しみながら、月の満ち欠けを学べるのも嬉しいポイントです。
ぼくのおとうさんは、強くてかっこいいみんなのスーパーヒーロー、ウルトラマンです。
でもぼくの前だとちょっと違います。とても優しくて子煩悩な「おとうさん」になるのです。
- 著者
- みやにし たつや
- 出版日
- 1997-04-01
大人気ヒーローのウルトラマンが、真摯に子育てする姿を描いた異色の絵本「おとうさんはウルトラマン」シリーズの1作目です。
どんなにハードな仕事の後でも一緒に遊ぶための力は残しておく、誕生日を祝うために急いで仕事を終わらせる、子どもが描いたパパの絵を見て涙ぐむ……外で活躍しているウルトラマンも、家に帰れば自分の子どもを愛してやまない、普通の「おとうさん」なのです。
不器用なりに一生懸命子育てに取り組むウルトラマンの姿がとても新鮮。日々懸命に子育てに勤しむ親御さんも元気にしてくれるストーリーです。
僕の家族は、お父さん、お母さん、僕、あこちゃん、そしてお母さんのおなかの中にいる赤ちゃん。お父さんとお母さんは、家族みんなで赤ちゃんを迎えようと、この家で産むことを決意しました。
準備もできて、あとは赤ちゃんが産まれてくるのを待つだけです。どきどきそわそわ、落ち着かない雰囲気のなか、僕は気になったことをお父さんに問いかけます。
「おとうさんは、いつおとうさんになったの?」(『おとうさんがおとうさんになった日』)より引用
お父さんは頭をポリポリかいて、少し照れくさそうにしながら、僕が産まれた日のことを話しはじめました。
- 著者
- 長野 ヒデ子
- 出版日
- 2002-05-10
イラストレーションやエッセイ、翻訳などさまざまなジャンルで活躍する長野ヒデ子の作品です。どんなお父さんにも訪れる「その瞬間」を感動的に描いています。
いつもの景色が輝いて見える、嬉しくて嬉しくてくすぐったくなる、不思議な力が湧いてくる、お母さんが眩しくみえる、赤ちゃんを抱っこする手が震える……世の中のお父さんが共感できるエピソードの数々に、読み進めるほど涙腺が緩くなってしまうはず。
子どもに読んであげればお父さんの存在感がより大きくなりますし、親御さんが読めばあの時の気持ちを思い出せるでしょう。プレゼントにもおすすめです。
ぼくのパパは、とっても大きい。
しがみつくにははしごがいるし、くしゃみや笑い声は台風みたい。かくれんぼをするる時は山の向こうに隠れなければいけません。
- 著者
- カール ノラック
- 出版日
- 2006-12-01
ベルギーの絵本作家カール・ノラックの作品です。小さな子どもから見たパパの姿がユーモアたっぷりに描かれています。
パパがはしると、じめんが ふるえる。
こわがっているみたい。
パパはサッカーも すごく つよいよ。
キックは おつきさまに とどくほど。(『ぼくのパパはおおおとこ』より引用)
これは決して大げさな表現なわけではなく、ぼくにとってはすべて本当のこと。大きくて頼もしくてかっこいいパパの姿なんです。
「せかいいちのパパがいるひとみんなに」という副題が、読後はすとんと胸に落ちるでしょう。優しさと包容力にあふれたパパの何気ない姿が、子どもにとってはかけがえのないものなのです。
なんやなあ。うちの おとんは、
なんでこう だらだら しとるんやろか。(『おとん』より引用)
寝っ転がりながらテレビを観ているおとんを横目に、ぼくは思いました。もしかしたら、「おとん」という呼び方がよくないのかもしれない。ためしに「パパ」と呼んでみると、おとんは目をぱちくりさせて、びっくり顔をしています。
さあ、かっこいい「おとん」になってもらうためには、なんて呼んだらいいのでしょうか?
- 著者
- 平田 昌広
- 出版日
- 2008-06-01
父と子の絆を関西弁でおもしろおかしく描いた一冊。作者の平田昌広は、西日本の人たちの元気いっぱいな方言で絵本を作りたいと思ったそうです。
「パパ」「おとうさま」「ちちうえ」などの日本語だけでなく、中国語の「ばあばあ」、イタリア語の「バッビーノ」など、ぼくはさまざまな言葉で呼び掛けます。
でもやっぱり、1番しっくりくるのは「おとん」。だらだらしてかっこよくないかもしれないけど、おとんは「おとん」なのです。なんだかんだで仲良くじゃれあう父と子の様子に、心がぽかぽかとあたたかくなります。テンポのよい関西弁は声に出して読むと気持ちよく、読み聞かせにもおすすめです。
パパはいったい何の仕事をしているんだろう。学校の宿題で「お父さんの仕事」を調べることになったぼくは、パパの車にこっそり乗りこみました。
到着したのは、大きな体育館です。中には四角いリングがあり、かっこいいドラゴン・ジョージと、マスクをかぶったゴキブリマスクが闘っていました。ずるいことをして、ドラゴンを痛めつけるゴキブリマスク。ぼくは、パパがぼくを叱るときみたいに思わず叫んでしまいます。
「わるいことばかりしてると、りっぱな おとなに なれないんだぞ!」(『パパのしごとはわるものです』より引用)
その声に気づいたかのように、こちらを振り返るゴキブリマスク。マスクの中の目を見て、ぼくは驚きました。それは紛れもなく、パパの目だったのです。
- 著者
- 板橋 雅弘
- 出版日
- 2011-04-23
2018年に実写映画化された本作。作者の板橋雅弘は、プロレス好きが高じてこの絵本を作ったそうです。
大好きなパパの仕事が、悪者のレスラーだった……そんな事実を知って、ぼくはショックを受けてしまいます。しかしパパは、パパの試合を観て笑顔で帰っていく人々のなかでぼくを抱えて、こう言いました。
「わるものが いないと、せいぎの みかたが かつやくできないだろう?
みんなのために パパは がんばって わるいことを しているんだ。」
「わかんないけど、わかることにする」(『パパのしごとはわるものです』より引用)
自分の仕事に誇りをもち、胸を張ってリングに立ち続けるパパ。その仕事をなんとか理解しようとするぼくのいじらしい姿に、読者の心は揺り動かされます。働くお父さんとその家族に読んでほしい、感動必須の傑作です。